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19.  漂流
 
 
 2月19日。
 相変わらず、ディケイルの行方は分からない。
 
 3日前のあの後、ソウは「独立支援軍」が本拠地を移した、旧第3コロニー跡地の仮設施設に駆け込み、マックやチャンはじめ、そこに居た全員にディケイルを探すように告げた。
 ――レイをソウに預ける。……その意図を考えた時、「自殺」するのではないか、という最悪の事態が頭をよぎったのだ。
 元々、精神的に不安定なところのあるヤツだ。追い詰められたら、何をしでかすか分からない。
 ……だが、それから4日経っても、ディケイルの消息は掴めなかった。――「遺体」も見付かっていない。何とかいい方に考えて、「生きている」と思いたい。
 
 最後に、ディケイルがソウに手渡した紙切れ、――それは、マッド・テイラーを「ガニメデ独立支援軍総司令官」――つまり、軍のトップに任命する辞令だった。
 ……本当に、ディケイルはソウたちを見捨てたのだろうか?
 
 レイには、ソウの家に来て一緒に住もうと言ったのだが、
「元帥が帰って来るといけないので」
と、レイはあの家に残る事を決めた。――10歳の子供があの広さの家にたったひとりで置いていかれるというのは、相当寂しいだろう。マタルが気を使って、レイと一緒に寝ると言い出した。……そうすれば、もしディケイルが帰って来たら、すぐに連絡をくれるだろう。
 
 一方、議会の不信感も、抑える事が出来なくなってきていた。
 掻き回すだけ掻き回して、その張本人が消えてしまったのだ。当然の事だ。
「……そもそも、なぜ薬物中毒の経歴のある人物を、国家主席などに推薦したのか」
 そんな声も上がり、ソウに糾弾の矛先が向けられる事もあった。――俺だって、有権者にそう言って、投げ出したいくらいだ!
 
 それでも、ソウが動かなければ、ガニメデは崩壊する。
 ディケイルが書き残した「やるべき事リスト」に沿って、各大臣に指示を仰いだり議会に議案を提出したり、ソウは今まで以上に忙しくなった。
 ――ディケイルが居ないからといって、何も手を打たずに破滅を見守る事なんて、とてもじゃないができない。やれるところまではやらなければ……。
 
 そんな中で、薄々、ソウも感じてはいた。
 ――ソウの立場は、ディケイルあってのものであって、ソウがいくらひとりで張り切ったところで、周りはついてきてくれない。
 どうにも空回りしている感があって、余計にうまくいかない。
 ただでさえ、ソウは元「社員」で、圧倒的多数の元「非正規社員」から、偏見の目で見られる事もあるのだ。一度など、面と向かって
「会社に従っていれば、もっといい生活できてただろうに、なんでわざわざ、『社員』の立場を捨ててまで、ここに残る必要があったんですか?」
と聞かれた。――陰では、いろいろな憶測が流れているのかもしれない。
 
 ……正直、疲れた。
 マンションの一室に帰ると、室内は真っ暗だった。マタルも居ない。もう遅い時間だから、レイのところに行ったのだろう。適当に服を脱ぎ散らかすと、ベッドに倒れ込んだ。
 ――こんな事をしてて、何になるんだろう。
 『ガニメデ革命』に参加してから、初めて、こんな事を思った。
 ……何となく、口寂しくなって、片付けこんでいたタバコを取り出した。――室内で吸ったところで、もう、喫煙を取り締まる「社則」に縛られる事は無いのだが、残った臭いでマタルに不快な思いをさせるのはいけないと、ベランダに出た。
 手すりにもたれ掛かり、ガニメデコロニーの夜景を見渡す。……地球のどんな小さな都市よりもお粗末な夜景だろう。街頭がポツンポツンと光っているだけで、住居にも商業施設にも乏しい第1コロニーの風景は、あまりにも寂しいものだった。
 タバコを箱から1本取り出し、火を点けた。――深く煙を吸い込むと、懐かしい感覚が蘇ってきた。
 
 ……漫然と毎日を浪費していたあの頃と、今の自分に、どんな差があるだろう?
 
 今のこの虚しさよりは、まだ、鉱山主任でマンネリした生活を送っていた当時の方が、マシな気さえする。
「……軍に帰りたい」
 煙を吐きながら無意識に呟いて、ソウは思い当った。
 ――そうだ。「ガニメデ独立支援軍」から、「政府」に参加したのは、ディケイルを除けば、俺ひとりだ。
 「軍」の頃は、マックやエドやジョルジュや、仲間が居て、一緒にやっていた感があった。――しかし、今のソウは、ひとりで駆け回っている。……しかも、誰からも歓迎されない中で。
 
 正直、自分では、「軍」という組織には合わないと思う。――「死体」やら「血」を見ただけで気分が悪くなる程度の小心者なのだ。だから、ディケイルから「政府」の仕事を依頼された時は、喜んで引き受けた。
 ――しかし、このままでは、とてもやっていける自信が無い。
「………畜生!」
 点けたばかりのタバコをベランダに投げ捨て、スリッパで踏みつけた。そして、手すりに顔を伏せる。
 
 ……果たして、俺のやってきた事は、これで良かったのだろうか?
 
 しばらくそうして、冷たい風に吹かれていると、部屋の中で携帯端末の着信音が鳴っているのに気付いた。
 ――今度は何の呼び出しだ?
 イライラした気分のまま室内に戻り、テーブルに投げ出していた携帯端末を手に取った。電話の着信だ。……番号が「非通知」になっている。
 ……イタズラか?
 だが……、万一、緊急事態の連絡だったり、――ディケイルからの連絡だったりしたらいけない。
 ソウは、受信ボタンを押した。
「―――はい」
「……ソウ・ナカムラさんでよろしいですね?」
 画面に、赤毛の男が映った。――映画俳優のように整った顔立ちをしている。
「あなたは誰です?」
「私は、『マーズ開発』社長秘書を務める、フォンシェ・アレハンドロと申します」
 ――マーズ開発の社長秘書!?……なんで、そんな人が、俺に……?そもそも、どうやって番号なりアドレスなりを知ったのだ?
「突然ご連絡いたしましたので、驚かれていると思いますが、申し訳ございません」
「……は、はぁ……」
「実は、ひとつ、ご連絡がございまして。急を要する要件のため、そちらは夜分かと思いますが、失礼させていただきました」
「……で、その、要件というのは……」
「ディケイル・ウェイニーの身柄を、こちらで預かっております」
 ―――な、何だと!?
「ど、どういうこと……」
「現在、彼は、火星に居る、という事です」
 
 ……正直、それは考えていなかった。
 ディケイルが失踪してから、もちろん、空港にも貼り付き、それらしい人物の出国が無いかチェックした。――しかし、ディケイルは見付からなかった。
 現在、ガニメデではパスポートといったモノも存在しない。アース・コーポレーション時代は、社員証がパスポートやビザも兼ねていたのだが、独立してからは、それらの身分証明類も、全てオリジナルで作る必要がある。――とてもじゃないが、今の状況では、そこまで手を回すのが追いついていない。
 ――しかし、よく考えれば、以前、ひとりで火星に行って、「条約」を結んできた事もあるのだ。……しかも、それには、裏で手を回した人物が居ると、ソウは見ている。という事は、火星に「協力者」が居てもおかしくない。今回も、その人物を頼りに火星に行った、――その可能性に、もっと早く気付いていても良かったくらいだ。
 
 「彼をそちらに送り返したいのですが、現在、ひとりで渡航させられる状況にありません」
 フォンシェは続けた。
「………と、いうと?」
「実際にご覧になられればお分かりいただけるかと思います」
 ……どうやら、人質に取って何かを要求してくるとか、そういう意図は無いようだ。――しかし、「ひとりで渡航させられない状況」とは、一体……。――もしや、火星に行って自殺未遂を図り、精神に異常をきたしているとか……。つい最悪の事態を想像してしまうのが、ソウの悪いクセだが、――これまで、それが結構当たっているのから困る。
「当方が、付き添ってそちらに行ければ良いのですが、立場上、それが難しい部分があります。――そこで、大変恐縮ですが、どなたか、こちらに迎えに来ていただけると助かります」
「……了解しました。私が行きましょう」
 それから、フォンシェは、ディケイルが「入院」しているらしい病院名を告げた。慌ててそれをメモし、電話は終わった。
 
 ――議会をすっぽかすのは悪いとは思うが、明日、朝一番の便で火星に行こう。……これで、大臣をクビになったところで本望だ。マタルには、テーブルにメモでも残しておけば、分かってくれるだろう。
 ソウは、カバンに手当たり次第に必要そうなものを詰め込み、簡単に旅支度を整えると、寝過ごさないよう、リビングのソファに横になった。仮眠で十分だ。火星への宇宙船で、2日間もヒマがある。
 
 だが、その仮眠さえ、再び鳴った電話の音に中断させられた。
 今度は、ワトソン宇宙空港長からだった。
「――難民船と思われる、所属不明の宇宙艇が、着陸許可を求めている。どう対応すべきか、指示を求める」


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