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オリジナル小説のダストボックス

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 ―――重苦しい沈黙のまま、ダンプカーは空港に到着した。
 
 空港もまた、鉱山と同じように、コロニーとは離れた独立した施設になっている。
 この理由も、鉱山と同じようなもので、宇宙船の燃料である「プルトニウム」が事故を起こした時の対策になっているのだ。
 宇宙船は、地上や大気圏内で使われている乗り物に比べ、とんでもなく大量のエネルギーを必要とする。なぜなら、それらの乗り物と比べ、比較にならない程サイズが大きく、また「重力圏離脱」や「大気圏突入」といった、特殊な行為を行わなければならない。さらには、万一遭難した時のために、必要な量の3倍の燃料を積んでいなければならない、と法律で決まっているのだ。――だから、高価な「G-883」を使っていては、とてもじゃないが採算が取れない。
 そのため、宇宙船には、ちょっとした原子力発電所級の「エンジン」が搭載されている。
 もし、それが事故を起こせば……。
 もちろん、空港には、放射能対策を考慮に入れた消火設備が整えられ、事故に対するあらゆる対策はできている。そして、どこかに大規模な「核シェルター」が備えられているとの噂もある。
 
 ダンプカーが入れるのは、滑走路の脇にある、貨物船専用のハンガーだ。「ハンガー」とは、基本、航空機の整備や補給を行う建物の事だが、ガニメデの場合、外で作業を行おうとすると宇宙服を着なければならず、それよりは、と、貨物の積み下ろしも、空調設備の整ったハンガー内で行えるようになっているのだ。――旅客船の場合は、ボーディング・ブリッジがあるから問題ない。
 専用ゲートに社員証を通すと、ゲートが開いて入れるようになる。――勤務時間ではないが大丈夫だろうか?ソウは不安になったが、そのへんはアバウトになっているらしく、巨大なゲートは道を開けた。
 中に入ると、いつも出迎えてくれる、荷物昇降用ロボットの「ゴリアテ」の姿は無かった。――それどころか、空港従業員らしい人影が、全く見えない。照明も落ちて、まるで無人の廃墟のように、薄気味悪い暗闇が広がっている。
 
 適当な位置にダンプカーを止めると、ディケイルはまた無線で連絡を取った。その後、マックたちに指示を出し、マックたちはそれに従い、荷台の人々を下ろす作業に入った。
 その様子を横目で見ながら、ディケイルは空港の建物に向かって歩きだした。
「あ、あの……、僕は、どうしたら……?」
 おどおどとジョルジュが聞くと、
「一緒に来い。――あんたもな」
と、ソウを見た。――その顔は、ひどく疲れているように見えた。
 
 ……ソウは、毎日のように空港に通ってはいるが、建物の中に入った事は無い。――初めてガニメデへ来た、あの時以来だ。しかも、「STAFF ONLY」のこんなエリアなんて、全く知らない。メインの照明は切られ、非常灯がところどころ点いているだけで、案内表示も見えない。……なのに、まるで通い詰めている従業員のように、迷う様子もなく、ディケイルは奥へと進んでいく。――やはり、ただのホームレスではない。先程の事といい、どんな過去を背負っているのか……?
 
 いくつかのドアを抜けると、突然広い空間に出た。――さすがに、ソウにも分かる。空港ロビーだ。
 すると、奥から人がやって来た。――チャンだ。
「『元帥』のおっしゃる通り、空港の封鎖を完了いたしました」
「従業員は?」
「予定通り、帰宅させました」
「……ご苦労さん」
 それから、チャンに案内されて、ディケイルはさらに奥へと歩いて行く。ソウとジョルジュも、付いて行くしかない。
 
 ホールの反対側から、再び「STAFF ONLY」エリアへ進入し、通路の突き当たりのエレベーターに乗る。エレベーターの壁は透明になっていて、上へ上がって行くと、空港施設が一望できるようになっていた。
 暗い駐船エプロンの中に、ぼうっと薄明かりを点け、宇宙船が1隻泊まっていた。……見慣れた貨物船とは形が違う。多分、守衛たちが乗ってきた輸送艦か何かだろう。
 ガニメデ宇宙空港は、地球や火星の宇宙空港とは違い、旅客のほとんど居ない、貨物専用のローカル空港だ。……まぁ、ガニメデの事情を考えれば当然の事だ。だから、こんな旅客用ターミナルに船が泊まっているなんて、非常に珍しいのだ。
 その宇宙船の近くに、良く見ると、何人かの人間が歩いている。守衛の装備を着ているが……、恐らく、こちら側の人間だろう。
 
 ――最上階に着くと、今までとは少し雰囲気が違うフロアになっており、目の前の廊下を突きあたりまで行くと……。
 そこは、宇宙空港長室だった。
 ノックもなく、無遠慮にドアを開け、チャンを先頭に室内に入った。
 中では、数人の守衛姿の「ホームレス」たちに銃を向けられ、ひとりの中年男が椅子の上で小さくなっていた。
 その男――恐らく、空港長だ――は、チャンの顔を見ると、恐怖に震える声で言った。
「お、おまえの言った通り、従業員には、『本部守衛課からの命令だ』と言って、全員に自宅待機命令を出した。――ま、まだ、私に用があるのか?」
「用があるのは、俺の方でね」
 ディケイルが、空港長の前のデスクにドカリと腰を掛けた。
「な、何なんだ!?あんたは」
「そんな事はどうでもいい。――少し、気が立っているのでね。真面目に答えないと、広いオデコに穴が空くかもよ?」
と、マシンガンの銃口を額に当てる。空港長は「ひ……ひぃ………」と、妙な音を立てて息を吸うのに精一杯なようだ。
「シェルターはどこだ?」
「シ、シェ、シェ……ッ………」
 ――空港長は、すっかり血の気の引いた顔を、さらに死人のようにこわばらせ、言葉も出ないといった様子だ。――ソウは見ていて可哀そうになってきた。
「いいか、もう一度だけ言う。『シェルターはどこだ?』」
 一音一音、区切るように言うと、ディケイルは銃口をグイと強く押し当てた。――あまり苛めると、余計にしゃべれなくなりはしないか、とも思うが……、そんな事を言える空気ではなかった。
 ディケイルのグレーの目は、研ぎ澄まされた刃のように、冷たい光を放っていた。――これまでの彼の様子からは、とてもこんな顔をする人物とは想像できなかった。
「…………し、しら………」
「知らないと言えば誤魔化せると思ってるのは、この寝ぼけた頭か、え!?」
 空港長は、もうこれ以上頭を後ろに下げられないところまで銃口で押され、椅子ごと後ろに倒れる寸前だ。――いや、失神寸前なのかもしれない。
「――この空港の地下には、核シェルターがある事が分かっている。……『500人分』のな」
 噂には聞いていたが、アレか。
「そのシェルターは誰が使うようになっている?第1コロニーのお偉いさんと、あと誰だ?――コロニーは全部で24。総人口20万人。……コロニーに何かあった時には、とても足りないんだよ」
 
 ―――これまで、「コロニーに何かある」とは、ソウでも想像くらいはした事がある。
 例えば、隕石が落ちたり、宇宙船が墜落したりして、屋根が壊れるだとか、鉱山で爆発があって、毒ガスが蔓延するだとか……。
 その場合の避難方法としては、「速やかに隣のコロニーに退避せよ」くらいの指示は受けているが、その、隣のコロニーまで被害が出ていたとすれば……。その前に、隔壁が閉められる可能性のほうが高い。救助は期待できない。
 とてもじゃないが、逃げ場は無い。――「死」を待つのみだ。
 宇宙船でも、定員分の避難ボートの設置を義務付けられている。――しかし、ガニメデコロニーには、こんなに不確かな安全しか保証されていないのに、災害から逃げるためのシェルターすら、用意されていない。――ごく一部の人々を除いて。
 ……これまで、空港専用かと思ってきたが、それが「第1コロニー用」となると、話は別だ。………ソウは、何だか腹が立ってきた。
 
 ディケイルは、半泣きの空港長の額から、銃口を外した。そして、今度は先程とはうって変わり、同情するような目で彼を見下ろした。
「………可哀そうに、あんたはその人数の中には入ってないのにな。『職務』のために、お偉いさんの犠牲になる。見上げた精神してるぜ」
 ――今度はすがるような目つきで、空港長はディケイルを見上げた。額からは外されたものの、銃口は真っ直ぐに空港長の頭を狙っている。……それと目が合ったに違いない。
「お疲れさん。俺はあんたのような素晴らしき『職業人間』の最期を看取れる事を、誇りに思うぜ。―――あばよ」
 ディケイルは引き金に指を掛けた。
 すると、
「ま、待て!!」
と、慌てた様子で空港長は顔の前に手をやった。
「―――お、俺は、『シェルター利用名簿』の人数に、入ってないのか??」
 空港長の焦る様子に、ディケイルは意地の悪い表情でニヤリとした。
「認めたな」
 
 ――今の発言で、空港長は暗にシェルターの存在を認めた。それどころか、ディケイルの脅しが真実であると言ったも同然になる。……空港長は「ハッ」と目を見開き、言葉を失った。
「……俺の言ったことはハッタリだが、あながち嘘じゃないと思うぜ?現に、こんなホームレス連中にあっさり空港を乗っ取られちまってさ、これが『本部』に知れたら、あんたの処遇はどうなると思う?
 ――普通に考えて、まず、『懲戒解雇』だな。
 そんなヤツ、誰がシェルターに入れてくれる?」
 ……そう言われ、空港長は絶望的な表情をした。
 それを見て、ディケイルは銃を下ろし、空港長のほうへ身を乗り出すと、薄い頭を手で撫で回した。
「あんたは、本当に真面目で、嘘のつけない人間だ。――あんたの上司はどうだか知らないが、俺は、あんたを信用できるヤツだと思ってる。殺したくはないんだよ。
 ――だから、シェルターの在り処だけ教えてくれれば、悪いようにしない。最大限の礼をもって、接することを約束する。『本部』に許してもらいたければ、俺から上に掛けあってもいい。もし、俺たちの仲間になりたければ、こちらは来る者拒まず、だ。……今すぐに答えを出す必要は無い。ゆっくり考えればいいさ」
 すると、空港長は泣き出した。――本格的な号泣だ。すすり上げる声の途中、途切れ途切れに、
「……俺は……、こんなに……まじめに………、会社のために……。…なのに、………上は……、分かってくれない………」
と、切に訴えはじめた。
 頭に手を置いて空港長を見下ろしていたディケイルは、今度は呆れたような顔をした。
 
 ――とにもかくにも、空港長は、壁の隠し金庫から、鍵を取り出し、ディケイルたちを地下シェルターへ案内する事にしたようだ。
 空港長――アドルフ・ワトソンだと名乗った――は、歩きながら、自分の生い立ちやらここに来る前にしていた仕事の話やらをしていたが、ディケイルは上の空で難しい顔をしたまま、チャンは、元々口数が少ない人なのだろう、完全無視を通しているので、仕方なく、ソウが適当に相槌を打つ事になった。……だがソウは、そんな話の内容よりも、ディケイルの様子が気になった。やはり、先程の「ひき逃げ」の事が心に引っ掛かっているのだろう。――もちろん、ソウだって胸が苦しい。だが、実際に手を下した人間にとって、それは何倍ものものだろう。
 それと同時に、ディケイルが人を殺す事を何とも思わないような人間で無い事に、ソウは心のどこかでホッとしていた。そうでなければ、この先、とてもじゃないがやっていけない。
 
 「――で、これが、シェルター専用の階段になります」
 ワトソン空港長は、鍵を差し込み、重々しい金属の扉のノブを回した。見るからに頑丈そうなそれは、だが予想外に軽い動きで、手前へ開いた。
 中は、打ちっぱなしのコンクリートになっており、非常用の照明に照らされ、十分に明るい。10メートル程の廊下があり、その先は、らせん状の階段になっていた。……手すりの下を覗くと、相当深い。どこまで階段は続いているのだろう……?
 だが、実際に降りてみると、4~5階程度のものか。たまに、運動がてら、エレベーターを使わずに階段でアパートに帰る事があるが、その方がよっぽどキツい。
 階段が終わると、また少し廊下になっていて、その先に、先程と同じような、金属の扉。それを開けると………
 
 かなり広い空間になっていた。学校の体育館ほどの広さもあるだろうか?天井も高く、こんな地下でも圧迫感が無い。
 そして、正面の壁に、いくつものモニターが並んでいた。
「……これは、コロニー各地の、警備用の監視カメラの映像が見えるようになっています。ここのコンソール・パネルで操作すると……」
 ワトソン空港長はそれを実演して見せた。スイッチを入れると、パッと全てのモニターに、あちらこちらの風景が映し出される。
 ――先程、ソウが見た、「一斉清掃」と同じアングルの映像もあった。……まだ、遺体が片付いておらず、痛々しい骸が、路地の中央に折り重なっていた。
 
 「………で、自分たちは安全なところに居て、コロニーの危機を映像で見て楽しむ、か」
 ディケイルは、ソウと同じ映像を見ているようだった。そして突然、
「ふざけるなっ!!」
と声を荒げ、コンソール・パネルに拳を打ちつけた。――モニターが一斉に停止し、次々と黒い、元の画面に戻った。
 そして、ビクッと凍りついたワトソン空港長、目を丸くするソウとジョルジュに背を向け、部屋の端のほうへ歩いて行き、壁に向かって座り込んだ。
 
 ―――さすがに、何と声を掛けていいのか分からない。

 ディケイルとしては、全てのホームレスを助けたかったに違いない。しかし、それも敵わず、さらには、自らの手で、敵ではあるが、人の命を奪う事になってしまった。
 一見、成功したように見える、鉱山と宇宙空港の乗っ取りだが、こうして見ると、完全に思い通りとはいかなかったようだ。――だが、だ。犠牲無くしてここまでの「作戦」を成功させようというほうが無理だ、とソウには思える。「多少の犠牲」は、致し方ないのではないか……。
 しかし、それでさえも、ディケイルにとっては、出さなくても良い犠牲だったのだろう。それを、自分の責任と思っている――。
 「人の命」を何とも思わない指導者も困るが、あまりにそれにこだわりすぎては、この先、「戦争」をやっていけるのだろうか……?ソウは少々不安になった。
 
 そうしている間にも、時間と事態だけは確実に進んでいく。
 チャンから連絡を受けたのだろう。マックが鉱員たちを連れて、シェルターにやってきた。鉱山から連れて来られた男たちは、泥で汚れた顔で、突然現れた巨大な地下空間をキョトンと見渡していた。
「――で、これからどうするのさ、元す…」
 ソウは、慌ててマックの口に手を当てて、言葉を止めた。マックも、ディケイルの様子に気付いたらしい。小声で、
「……アレか?」
と聞いてきた。―――マックたちはともかく、荷台に居た鉱員たちは、ダンプカーで起こった出来事に気付いていないだろう。ここで、あまり言うべき内容ではない。
「………しかし、これからどうするんだ?」
 マックが、今度はソウに聞いてきた。
「さぁな、俺に聞くなよ」
「じゃあ、チャン大将、次は何をすればいい?」
「――俺に聞くな」
「……チッ、じゃあ、誰に聞けばいいんだよ?」
 ――確かにそうだ。ここでこうしていても仕方ない。……何かしていた方が、まだマシだ。
 ソウは、ディケイルを見たが、相変わらず、うな垂れて座っている。――仕方ない。
「……まだ、鉱山に『仲間』が残っているだろう。そいつらを迎えに行くか」
「そうだな。そうするか」
 ソウとマックは、ダンプカーに戻るため、階段へ向かおうとした。すると、
「ぼ、僕も行きます!」
と、ジョルジュが付いてきた。――それから、
「わ、私を仲間に入れてくれるという話は、どうなったのかね?」
と、ワトソン空港長まで追いかけて来た。
「悪いな。俺は『仲間』じゃないんだ。――あいつが落ち着いたら、本人に直接聞いてくれ」
と、ソウはディケイルに責任を投げた。――所在無さげに部屋の中央に立つワトソン空港長を置いて、3人は階段を上った。
 
 ――しかし、結局、ダンプカーまではたどり着けなかった。
 廊下を少し進むと、守衛姿の「仲間」が走って来て、こう告げたのだ。
 
 「報告です!
 空港ロビーの正面玄関を見張ってたんですが……、
 扉の外に、守衛たちが、大勢集まってきています!」


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