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オリジナル小説のダストボックス

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碧井 湊
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 ――もう、狐に化かされているのか何なのか、全く訳が分からない。……だが、従わざるを得ない。
 8階でエレベーターは止まり、ソウは案内表示に従ってナースセンターへ向かった。
 ナースセンターには3人の看護師らしい女性が居た。誰に話し掛けようか……、おどおどと見ていると、そのうちの一人が「どうされました?」と声を掛けて来た。――そして、またまた絶世の美女。間違いない。「仕掛け人」だろう。
 ソウは、ディケイルがポケットに入れていったモノを出した。――またもや、名刺大のカード。そこには、……何も書かれていなかった。
 しかし、その看護師は
「あ、分かりました。――案内しますね」
と言い、ナースセンターから出てきて、廊下を歩き出した。――それに付いて行く。
 看護師は、『STAFF ONLY』の扉を開き、その先へ進んでいく。場違いな感じを隠しきれず、ソワソワしながら、でも、付いて行くしかない。
 そして案内された先は、――業務用の非常エレベーターだった。
「1階でお待ちになっているそうですよ。では」
 そう言って、彼女は去って行った。……ソウはエレベーターのボタンを押した。
 
 「病院に『非常エレベーター』と名の付くエレベーターが必ずあるのはなぜか?」
 ――どこかでこんなクイズを見た事がある。本来、非常時の避難にはエレベーターは使えないのに、「非常エレベーター」とはこれいかに?
 答えは、……『死体』を運ぶため。
 さすがに、一般の患者が乗る可能性があるエレベーターで、亡くなった方を運ぶのはまずい。……という事で、「業務用」を兼ねて、一般の人が使えないエレベーターが存在するのだ。
 ……やたら広いエレベーターを見回しつつ、ソウは何となくイヤな予感がした。
 
 そして、こんな時の予感ほど、的中するモノなのだ。
 
 1階へ降りると、黒いスーツを着た男に捕まった。――ディケイルだ。黒ネクタイに白い手袋までしている。……まるで葬儀屋だ。
 で、引っ張って行かれた先にあったものは……
「これに入れ」
 シレッとした口調でディケイルは言ったが、――その指が差し示した先にあるものは、「棺」だった。
「……じょ、冗談よせ……」
「誰も火葬場に運ぶなんて言ってない。ただの容器だ。――しかも『新品』を用意してやったんだ。さっさと入れ」
 ――「棺」の中古品なんて御免被る!
 仕方なく、ソウは棺の中に横になった。薄いクッションは敷いてあるが、背中が痛く、寝心地が悪い。……寝心地が良くても困るが。
 ディケイルは涼しい顔で棺にフタをかぶせた。……まっ暗になって何も見えなくなる。
 その後、リフトのようなもので台車に乗せられたのだろう、宙に浮いた感じがした後、どこかに運ばれている感覚があった。――すれ違いざまに「アーメン」と声を掛けられたのが聞こえた。……起き上がって脅かしてやりたい衝動に駆られるが、今は自重しておいた。
 それから、車か何かに移される感覚。――そして、クラクションと当時に、車は発車した。……もういいだろう、そう思って、ソウは棺のフタを少しだけ持ち上げ、覗きこんでみた。車窓の外で、白衣の医師らしい人物と数名の看護師が並んで、こちらに黙祷を捧げているのが見えた。……「尾行を巻く」にしては、やり過ぎではないか?
 
 ――とりあえず、死人の「演技」はもう終えていいだろう。ソウは棺のフタを押し上げ、起き上がった。
 振り向くと、運転席にディケイルが座っている。助手席には誰も居ない。車内には2人だけのようだ。
「……とりあえず、説明してもらおうか?」
 ソウが言うと、ディケイルは
「『死体』は黙って寝てろ」
と返してきた。
「――後で殴る。俺にはその資格があると思ってる」
「あぁ、殴りたきゃ殴れ。ただし、それを『避ける』権利は俺にもある」
 ……ああ言えばこう言う!全く、こっちの気も知らないで……!!
 
 「――今から、どこへ向かうんだ?」
 棺の中のクッションだけで車の揺れからくる衝撃を受けるのがつらかったので、ソウはモゾモゾと荷台から助手席へ移動した。ワゴンタイプで天井の高い車だったから、そんなに苦も無く移動できた。
「聞かなくても、薄々分かってるんだろ?」
「――『協力者』のところ、だな?」
「あぁ」
「誰なんだ?それ」
「あんたが火星に来てから出会った美女たちの『恋人』、ってトコだな」
 ――「たち」って……!あの、3人の美女に「三股」を掛けている、そんな贅沢な人生を送っている男が存在するのか!!
 ……だが、今はそんな事を羨ましがっている場合では無い。ディケイルにこれまでの事を問い詰めたいが、あまりにいろいろあり過ぎて、何から切り出せばいいかが分からない。
「――次の『代表』は決まったのか?」
 ソウが考えていると、ディケイルの方が先に切り出した。……やはり、気にはなっているようだ。
「まだだ。今、候補者を募集している段階だ」
「そうか。―――悪かったな」
「そうやって先に謝って、俺が追及するのを逃れる魂胆か?」
「――やっぱりバレてるか」
「一体、何をしに火星に来たんだ?……それも、何で俺たちに黙って……!
 ――中には、おまえが『自殺』でもしたんじゃないかって、心配してたヤツも居たくらいだぞ」
 それが自分であるとは、今になっては恥ずかしくて言えたモンじゃない。
「まさか。さすがにそこまで弱くねぇよ」
「じゃあ、火星に来た理由は?」
「――一言で言えば『作戦会議』だな」
「………?」
「要するに、今後、地球がどう出るか。それに対抗する策を相談しに来た、そんなところだ」
「……それだったら、何も、そんなコソコソ隠れて行かなくてもいいだろ」
 多分、空港で見落としたのは、ディケイルが意図的に変装していたからだ。――その時は全く思い付かなかったが、真っ先に「美容室」へ聞き込みに行けば、その消息が掴めたかもしれない。……以前から髪を切るのを嫌がっていたのは、単に触られるのがイヤとかそんな問題では無く、必要があった時に、このように「変装」して身を隠せるように。――そういう理由からだったのか。
「……『協力者』は、『ガニメデ革命』自体を応援するのであって、俺個人に協力する気は無いと言っている。――あんな事件があっただろ?」
 「あんな事件」。――ディケイルの「薬物中毒疑惑」が報道された事だ。
「だから、俺がガニメデの中で干されたんじゃないかと言ってきた。……ならば、どうすれば俺のガニメデでの立場を彼に示せるか。
 ――一旦姿を消して、それでも俺の帰る場所はあるのか、それで判断する。……それが一番分かりやすいと思った」
 ……相変わらずだが、無茶苦茶で強引で、そして危険なギャンブルだ。
「それで、俺を呼び出した、と。……だが、もし、俺がおまえを見限って誰も来なかったとしたら、どうしてた?」
「ジ・エンド、だ」
「…………」
 だが、しかし……。
「――それと、もうひとつの可能性として、迎えに来た俺の席までもがガニメデに無いという事態になっていたら、その場合はどうする?」
 ディケイルは、チラリと横目をソウに向けた。
「……あんたの席は、『総務大臣』じゃなくて『参謀長』だ。それは、誰もが認めている。――あんたの席は無くならないよ」
 ………こちらの状況は何も話していないが、全てをお見通しのようだ。ソウはバツが悪くなって頭を掻いた。
「だが、軍総司令官の位は、自分からマッド・テイラーに渡してしまった。――どうやって戻る?」
「何とか、俺の席作ってくれよ、『参謀長』さん。――あんたの家の掃除夫でもいいぜ」
「……おまえみたいな整理整頓ができない掃除夫なんていらない」
「…………」
 ――まぁ、火星へ来る途中の船の中で、このパターンも想定はしていた。マッド・テイラーに連絡を取れば、問題無く解決するはずだ。
 
 車は、とあるマンションの地下に入って行った。地下駐車場の片隅に駐車すると、ディケイルが何かを渡してきた。
「これに着替えてくれ。上に羽織るだけでいい」
 ――見ると、作業着のようなブルゾンだった。背中の部分に、『水道工事はウォーター・ロードへ!』というロゴが入っている。……車も、「霊柩車」とはいえ、外見はシルバーのワゴンだ。これでは、どう見ても水道工事の業者に見えるだろう。
 いつの間にか着替え、帽子まで被り、手には何やら道具箱らしきものを持っているディケイルに連れられて、マンションの地下入り口へ向かう。
「あんた、『社員証』預かってないか?」
そう聞かれ、思い出してズボンのポケットから、あの無記名の社員証を取り出した。それを、入口の扉の横の機械にかざすと、――ロックが外れる音がした。……この『社員証』は、一体何なのか……?
 
 ディケイルは、知った場所であるかのように廊下を進んでいく。突き当たりのエレベーターに来ると、今度も迷い無く、最上階のボタンを押した。
 ――エレベーターの中からでも分かる。ガニメデには無いタイプの高級マンションだ。セキュリティだけでなく、扉の窓からチラチラと見えるエレベーターホールの様子からしても、センスの良い金属製の装飾があったり、――ソウには縁の遠い感じの雰囲気をしている。
 エレベーターを降り、ディケイルはツカツカと廊下を進む。そして、ある部屋の前に来ると、インターホンを押した。……この扉も、重厚な装飾が施されていて、一味違う感じがする。
「すいませーん!水道工事のウォーター・ロードの者です!お電話をいただき、修理に伺いましたー!」
 ディケイルがインターホンに呼び掛けると、中から
「はぁ~い」
と女性の声が聞こえた。それからすぐ、ドアが開いて出て来た人物は……。
「あら、――なんだ、アンタなの」
 ……物凄くセクシーなキャミソール姿の若い女性だった。そして、案の定、とんでもない美人だ。――「夜の世界」独特の、少しすれた感じはあるが。
 ―――これが、ディケイルの協力者!?ソウは呆気に取られるしか無かった。
 
 美女は玄関を開け、さっさと奥へと入って行ってしまった。――ディケイルとは旧知らしい。ディケイルも、まるでここが自分の家であるかのように、ズカズカと上がり込む。
「お、お邪魔しま、す……」
 オドオドと周囲を見回しつつ、ソウも後に続いた。
 ――派手さは無いが、女性らしく可愛い感じに、しかも明るく清潔なトーンで、室内のインテリアはまとめられていた。住む人のセンスが窺われる。
「……あなた、初めての顔ね。どうぞ、――お茶でいいかしら?アルコールもあるけど」
「あ、いえ、……お構いなく」
 居心地悪そうにリビングの絨毯に座っていると、目の前のテーブルに紅茶の入ったカップを置き、美女はニコリと笑顔を残して去って行った。――前屈みになる時、どうしても大胆に開いた胸元に目が行ってしまう。……ダメだダメだ、俺はここに何をしに来たんだ!?ソウは意識を振り払うようにカップの紅茶の一気飲みした。――そして、その熱さにむせ返った。
「――大丈夫?……そんなかしこまってないで、リラックスしてよ、ホラ」
 おしぼりをソウに渡しながら、美女は言った。……やはり、胸元が気になる。
 一方、ディケイルはというと……、――ブルゾンを脱ぎ捨て、まるでここが我が家であるかのように、ソファに寝転がって、電子新聞を眺めていた。
 
 美女の姿がキッチンの方に去ったのを確認してから、ソウはディケイルに小声で話し掛けた。
「………あの美女と、おまえ、――一体、どういう関係なんだ?」
「ん?」
 面倒臭そうに顔を上げて、ディケイルは答えた。
「俺はただの居候」
「つまり……」
 ―――ヒモ?
「勘違いするな。彼女は『協力者』の恋人のひとりだ。俺なんか眼中に無い」
 ……てコトは、その、『協力者』ってのは、少なくとも「四股」はしている、と……!?――ひとりでいいから分けてもらいたい。
 とりあえず、ここで分かったことは、彼女が『協力者』では無く、『協力者』は別に居る事。
「……その、『協力者』は、ここに来るのか?」
「あぁ。もうすぐ来る事になってる」
 ディケイルは、ズボンのポケットから携帯端末を出して、時間を確認しているようだった。――そう言えば、ディケイルの携帯端末の電話番号もアドレスも、ソウは聞いていない。持っている事すら、直接は教えてくれていない。
「……おまえのアドレス、教えてくれよ」
 思い切って言ってみたが、ディケイルはチラッと顔を上げて言った。
「イヤだ」
「……そんな便利なモノを持ってて、俺らに教えないのは無いだろ。今回の件だって、それがあれば、どんなに助かっていたか」
「こんなモノ持ってるって事が知られると、どうでもいい事でも何でも、時間構わず連絡してくるヤツが居るだろ。――そういうの、面倒じゃないか?」
 ……まぁ、確かに、宇宙船の中でかかって来た電話を無視したソウには、何も言えない。
「それに、これは俺もモノじゃない」
「………?」
 それ以上は何も言わず、ディケイルは携帯端末をポケットに入れた。
 
 ――この際だから、前から聞いておきたかった事を聞いてみる、いいチャンスかもしれない。いつかは、確かめなければならない事だとは思っていた。
 ソウは、ディケイルに向き直った。
 
 「―――おまえ、一体何者なんだ?」
 
 突然、まじめな顔で素っ頓狂な質問をされて、ディケイルは珍しく戸惑ったようだ。グレーの目を見開いて、珍獣でも見るような顔でソウを見返した。
「……俺は、真面目に質問している。――おまえ、ガニメデに来る前は、一体どこで、何をしてたんだ?」
「そんな事を聞いてどうする?」
「どうもしない。ただ、知りたいだけだ。……答える気があるのか無いのか、それだけでも答えろ」
 ディケイルは、ソウから目線を外して渋い顔をした。――何とか言いくるめる手段が無いか、考えているのだろう。だが、今回ばかりは、はっきりしておかなければ気が済まない。
「――人の過去なんて、あんまり聞くモンじゃないわ。ヤボなのは嫌われるだけよ?」
 着替えに行っていたのか、真っ赤なドレス姿で美女がリビングに顔を出した。――気付けば、窓の外は薄暗くなっている。そろそろ「出勤」の時間なのかもしれない。
「これは俺とこの人の問題だ。……悪いが、口を出さないでもらえるか?」
 ソウが言うと、「はいはい」と言い、壁の棚に並べてある香水の瓶のひとつを手に取り、再び姿を消した。
 助け舟が撃沈され、ディケイルは目を閉じてため息をついた。
「――何が知りたい?」
「どこで何をしていたか、だ」
 ディケイルは暗く、だが鋭い目でソウを見た。そして、低い声で答えた。
「地獄で囚人をしていた。……これでいいか?」
 ――あまりに抽象的な表現だが、内容が内容なだけに、それ以上突っ込んで聞くのもはばかられた。……また、うまく逃げられた。
 
 ……結局、空気が気まずくなっただけだった。ディケイルは電子新聞に目を戻し、ソウはテーブルのリモコンでテレビを勝手に点けて眺める事にした。
 
 しばらくして、窓の外がすっかり暗くなった頃、玄関で物音がした。誰かが入って来た様子だ。――インターホンが鳴らなかった事を考えると、合鍵を使ってドアを開けたのだろう。……という事は……。
 
 リビングに、背の高い男の姿が現れた。
 癖のある赤毛に、グリーンの瞳、整い過ぎた甘いマスク。
 
 ――マーズ開発社長秘書の、フォンシェ・アレハンドロ、本人だった。


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