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21.  密談
 
 
 ――正直、ディケイルの『協力者』というのは、マーズ開発社長のマグワイヤではないかと思っていた。……それくらいの立場の人物でなければ、あれほどまでに都合良く条約が整ったり、ディケイルの「密航」の手配をしたり、そういう事は困難だ、と思ったのだ。
 しかし、実際は、ソウに連絡を送って来た、その「社長秘書」が、『協力者』本人。
 ……ただの「秘書」ではないな。ソウの直感がそう告げた。
 
 「――あら、いらっしゃい。……待ってたのよ」
 髪を整え、アクセサリーで飾った美女が、フォンシェに歩み寄った。――そして、首筋に腕を回すと、背伸びをして濃厚なキスを送る。
 ………これには、さすがのディケイルも唖然とした顔をして固まった。
 一方、フォンシェの方も、全く照れる様子も無く、その「愛」の行為に応えている。……本物の「ナイスガイ」とそれ以外の差を、歴然と見せ付けられた気がした。
 長いキスが終わると、美女は指先でフォンシェの口元を拭い、
「今から仕事なの。……部屋を貸してあげるんだから、後で、ねっ」
と、熱い視線を送っている。
 ――ソウには刺激が強過ぎて、見ていられない。
 
 それから、美女は「出勤」したようだ。軽く見送った後、フォンシェはディケイルの向かいに腰を下ろした。――何となく気まずい空気を感じたのか、
「……どうした?」
と不思議そうな顔をする。……「ナイスガイ」にとってはあまりに自然な行為で、その他大勢がそれをどう見ているのか、それすら想像した事が無い、といった様子だ。
 
 ディケイルが、黒い髪をボリボリと掻きながら言った。
「あんたの客人を連れて来た。――これでいいだろ?」
 透き通ったグリーンの瞳が、ソウをまじまじと見つめた。
「挨拶が遅れて申し訳ない。――フォンシェ・アレハンドロだ」
 そう言って、右手を差し出した。
「……ソウ・ナカムラです」
 ソウは握手を返しながら思った。――この人物の魅力は、整った外観だけでなく、内面から出ている、頭脳明晰な「オーラ」のようなものも含まれているだろう。……だから、この人の周囲の女性たちも、頭の悪い人では無く、才色兼備の美女ばかりなのだ。
 ……全く、羨ましい限りだ。
「急にお呼び立てして申し訳無かった。――こいつの身勝手さに手を焼いてしまったのだ」
と、フォンシェは素知らぬ素振りでソファに寝転がるディケイルに目をやる。
 
「……あ、あの、――一体、おふたりはどういう関係で?」
 ソウは駄目元で聞いてみた。案の定、フォンシェとディケイルは顔を見合わせ、どういう反応をすべきか無言で相談しているようだった。
「――幼なじみ、というか……」
「腐れ縁だ」
 ――予想通り、何とも抽象的な言葉で返された。
「……では、なぜ、アース・コーポレーションと縁の深いあなたが、なぜ、『暴動』に加担するような事を?」
「失礼だが、加担しているつもりは無い。アース・コーポレーションの『非』を償う意味での人道的支援として……」
「――こいつには中途半端な誤魔化しは通用しないぜ?そのために、この場所を選んだんだろ。正直に言えよ」
 ディケイルに突っ込まれ、フォンシェは渋い顔をした。
 
「……分かった。では、今回あなたをお呼び立てした理由を全てお話しする。
 ――火星は、子会社として独立しているとはいえ、『地球』の傘下には変わりなく、各所に設けられているカメラやマイクで、地球に『監視』されている。――特に、火星が『中立』を宣言して以降、ガニメデと火星との交流を、地球側は厳重に監視している。そのため、ガニメデから火星にやってきた人物には、尾行を付けるほどの徹底ぶりだ。――ガニメデで大臣を務める、あなたほどの人物ともあれば、複数の尾行が付いてもおかしくない。そこで、あれほどの回りくどい方法をとらせてもらった。……お手間を取らせた事を、まずお詫びする」
 ――そこで、フォンシェの『恋人』を動員して、さり気なくソウを誘導した。まぁ、あそこまで徹底的にやれば、確実に尾行は巻けだだろう。……しかし、『棺』の発案は、ディケイルの嫌がらせに違いない。
 
 「……ちなみに、あの『彼女』たちは、こいつの『彼女』のほんの一部だぜ?――一体、何人『彼女』が居るんだ?それも正直に答えろ」
 ディケイルが妙なところで便乗して突っ込む。だが、フォンシェはあっさりと答えた。
「多分、20人は居ると思うが、数えた事は無い。――勘違いされては困るから先に言っておくが、私は独身だから、何人彼女を持とうが、『浮気』として責められる理由は無い。それに、彼女たちはそれを分かっていて、私に付き合っているのだ。――嫉妬とか独占欲だとか、そういうドロドロしたものが嫌いなのでね。私に他にも付き合っている人が居る事を同意の上で……」
「分かった分かった。――話を戻せ」
 自分から質問しておいて、ウンザリした顔で話を遮るディケイルを、軽く睨んで、フォンシェは咳払いをした。
 
 「――失礼した。
 ……そして、地球の監視の目を逃れるため、このような場所を選んだ。私の自宅よりも、こちらの方が確実に『安全』だ。だから、こいつが突然逃げ込んで来た時も、ここにかくまった。
 ……こいつ、――ディケイルが火星に来た理由は聞かれたか?」
「あ、はい。――ガニメデでの『立場』をあなたに示すため、と……」
「なるほど。
 ……だが、真相は、おまえに自信が無くて確かめたかったのだろう?本当に、自分のような人間を受け入れてくれるのか、と。
 でなければ、ガニメデの今の状況を放置して離れたりしないはずだ」
 ……つまり、ソウを「試して」いたと……?
 軽くトゲを込めた視線をディケイルに向けると、ディケイルは気まずそうに目を伏せた。
「正直、あなたが来てくれなければ、こいつの扱いに本当に困るところだった。だから、多少オーバーな話をしてあなたを煽ってしまった。申し訳なかった。……だが、完全に嘘では無い。――火星に来て、私に連絡をよこした直後のこいつの様子は、自殺でもしかねないくらいで……」
「うるさい。黙れ」
 ディケイルがフォンシェに、ソファに置いてあったクッションを投げつけた。それを軽く受け取り、フォンシェは構わず続けた。
「だが、あなたがこちらに来ると教えてやると、明らかに元気を取り戻した。――それだけ、ディケイルがあなたを信頼しているという事だ。だから、私もあなたを信用する」
 ……ディケイルを見ると、ふてくされたようにソファに顔を埋めている。――かなり子供っぽい一面もあるのだな、と、ソウは可笑しくなった。
 
 「先程のあなたの質問に答えよう。
 ……私がこいつの『味方』をする理由。――ミカエル・アイヒベルガーの事が嫌いだから。以上だ」
「………はぁ」
「それだけじゃないだろ?」
 ディケイルがチラリと顔を上げて、フォンシェに視線を向けた。
「――あわよくば、アース・コーポレーションを乗っ取ろうと考えている。違うか?」
「人聞きの悪い事を言うな」
 フォンシェは動揺を見せず、背後の棚からウイスキーの瓶を取った。グラスを取りに行くつもりなのだろう、そのまま立ち上がる。
「アース・コーポレーションが『失敗作』である事は、もう既に明白だ。それを乗っ取ったところで、何にもならない。
 私が目指しているのは、そうではなく――」
 フォンシェはキッチンに姿を消し、グラスを3つとアイスペールを持って戻って来た。――ソウにも勧められたが、ソウは遠慮した。アルコールはビール専門なのだ。ディケイルにも形式上勧めるが、当然、飲まない。
 フォンシェはグラスに氷を入れ、ウイスキーを注いだ。それを、グラスを回してかき混ぜながら、言った。
 
「――私が目指しているのは、『力』や『金』では無く、『システム』による太陽系世界の統一だ」
 
 ……何だかとんでもない話になってきた。確かに、監視カメラや盗聴器のある場所でできる話では無い。
「今、アース・コーポレーションがやっている事は、『独裁』以外の何物でも無い。
 そうでは無く、多様な価値観を抱えながらも、様々な交流を通して、全体としてはひとつに繋がっている世界。――そうでなければ、全ての人々が平和に暮らせる世界など、作れはしない」
「……その、手始めとして、ガニメデの独立を……?」
 要するに、『ガニメデ革命』の真の首謀者は、フォンシェ・アレハンドロであって、ディケイル・ウェイニーは彼の命を受けた実行犯に過ぎない、という事か?
「いや、『ガニメデ革命』は、こいつが勝手に始めた事だ。私はまだ早過ぎると反対した。――もう少し、アース・コーポレーションの『支配』が行き詰ってからでないと、後々大変だ、と」
 ……余計、よく分からなくなってきた。
 「以前から、私は先程話したような『理想』を持っていたのだが、ご覧の通り、現在はアース・コーポレーションに身を置いている。ヘタな事は出来ない。――だが、その一方で、会社内部の情報を手に入れられるので、それを元に、今後の対策を練っていたのだ。
 ……そうしたら、こいつが勝手にドンパチ始めてしまった。――正直、迷惑だ」
 すると、ディケイルが口を尖らせた。
「仕方無いだろ?あの時始めていなければ、俺は死んでた。――それに、こんなモン渡したり、俺を煽るような事をしたのは、どこのどいつだ?」
 そう言って、携帯端末をテーブルに投げた。……なるほど、この携帯端末の真の『持ち主』は、フォンシェだったのか……。
「だからと言って、あんな風に成り行きで始める必要は無かっただろう?――『一斉清掃』の情報を得られなかったのは私の力不足だが、それを知った時に私に連絡してくれていれば、対応できた。――黙って勝手な事をして、その責任を私に押し付けるのは、筋が違うのではないか?そのための連絡用として渡しておいたのに、何も活用していないのは、おまえの方だ」
 ――ディケイルは不機嫌そうな顔をして黙った。……このディケイルを黙らせる程の論客とは、やはり、フォンシェ・アレハンドロという人物は只者では無い。
「あなたがたのような、一般の人々を大勢巻き込んでおいて、その挙句に自分が不利になると逃げ出してくる、――正直、こいつがこんな腰抜けだとは思っていなかった。大変なご迷惑をお掛けした。代わって、私がお詫びする」
 フォンシェがソウに頭を下げる。
「あ、いえ……」
 ソウは慌てて、顔の前で手を振ってそれを止めようとするが、ディケイルがその手を掴んだ。
「勝手に謝らせておけ。――こいつにこそ、あんたに謝らなければならない『理由』があるんだからな」
 ディケイルはフォンシェに鋭い視線を向けた。
「おまえ、口では正論っぽい事を言ってるが、そもそも、こうなる事がおまえの『計画』だったんじゃないのか?
 ――俺がガニメデを掻き回し、地球と対立関係を築く。そして、ガニメデと地球が互いに潰し合い、力を弱めたところで、火星がその両方を掌握する。そのために、今は『中立』の立場を表に出して傍観を決め込んでいる。――つまり、ガニメデは地球を挑発するための駒に過ぎない。……違うか?」
 
 ――フォンシェは返事をしなかった。グラスを傾け、無言でそれを飲み干した。
 
 ……ソウには、もうどうしていいのやら分からなくなっていた。ソウの思考の範囲を大幅に逸脱していて、全く口の出せる内容では無い。
「何とか言えよ、このタヌキが」
 ディケイルが悪態をつくが、フォンシェは涼しい顔を崩さなかった。
「おまえがどう思おうと、私の知った事じゃない。私は、私の思う道を進むまでだ」
 
 ディケイルは苛立ちを隠そうともせずに立ち上がった。そして、
「行くぞ、ソウ」
と言い、玄関に向かって歩き出した。
「――ちょ――、……行くって、どこに?」
 慌てて追い掛けると、ディケイルは足を止めずに言った。
「あいつは彼女をここで待つつもりだろう。逢瀬の邪魔をするほどヤボじゃない。引き揚げる」
「だからって、――こんな時間じゃ、もう空港も閉まってるだろう。どうするんだよ?」
 ……つい先程までの、あまりに高レベルな議論とは比較にならない低次元の質問だったが、ディケイルは立ち止った。――案外、こういう細かいところを考えていないのだ。
「あなたにお渡しした『社員証』は、明日になればただのゴミ屑になる。それまでは、好きに使ってくれて構わない」
 後ろで、フォンシェの声がした。……見ると、フォンシェがリビングの前に立ってこちらを見ていた。――やはり、あの『無記名の社員証』という代物は、フォンシェが立場を利用して手配したものだったのか。
「だそうだ。……適当にホテルでも探そう」
 ――で、明日の便でガニメデに帰れ、という事か。
 ディケイルは玄関を出て行ってしまったが、ソウはフォンシェに向き直った。
「何から何まで配慮していただき、ありがとうございます」
 ……先の事は分からないが、今は、この人物のおかげでガニメデが何とかなっていると言っても過言では無いだろう。ソウは頭を下げた。
「いや、……あんな問題児を押し付けてしまった以上、私にも責任はある。私にできる事は、フォローさせてもらうつもりだ。
 ――あいつの事を、よろしく頼む」
 ……何だかんだ言って、お互いがお互いの才能と人格を信頼し合っている。ディケイルとフォンシェは、そういう関係なのだろうと、ソウは思った。――ただ、ふたりが何者で、どういう関係なのか?という疑問は残されたが、ソウが踏み込むべき事では無いのかもしれない。


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