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 2211年1月5日、19時50分。
 仕事を終えアパートに戻ったソウは、全く落ち着けないでいた。
 帰りに、ファーストフード店でハンバーガーを買ってきたのだが、夕食を摂る気にもなれない。
 とりあえず、テレビを点けて、どこかの局でそれっぽいのを放映していないか探す。だが、火星経由で地球から配信される娯楽番組やドラマばかりだった。
 20時。
 相変わらず番組が見つからず、頭を掻きながらリモコンを見て、ふと思った。
 ――コミュニティー・チャンネルか?
 ソウは、そのボタンを押してみた。
 
 ――画面に映ったのは、防犯カメラの映像と思われる、あまり鮮明でない画像。
 路地裏の風景を映している。
 
 ………これだ!
 
 ソウはテレビの前に座布団を蹴飛ばし、その上に座った。
 ――映像はまだ動かない。……もしかして、チャンネルが違うのか?
 しかし、それから間もなく、複数の人間の足音が聞こえてきた。直後に、画面の左から中央に、10人ほどの人たちが走ってくる。――見るからにホームレスだ。
 その後を、銃を持った3人の守衛が追う。そして―――。
 
 ズババババババババ。
 
 マシンガンの銃声が鳴り響き、ホームレスたちは次々と倒れた。――何とも言えない絶鳴を残して。
 あまりに、呆気ない「死」だった。
 
 ソウは、目を見開いたまま、両手で耳を塞いだ。
 ――なんで?なんでだ!?
 あの男は、「楽しみにしていてくれ」と言っていたではないか。
 こんなモノを見せたかったのか!?自分が死ぬ瞬間を……!!
 
 だが、すぐに画面は切り替わった。
 また、違う地域の、路地裏。――見覚えがある。間違いない。「第3コロニー」だ。
 そこでも、守衛とホームレスのチェイスが繰り広げられていた。銃を構え、追う守衛。逃げまどうホームレス。
 
 ―――もうやめてくれ!!
 
 心の中でソウが叫んだ瞬間、事態は急展開を迎えた。
 追う側の守衛が、次々と倒れたのだ。
 
 ――え?
 
 訳がわからず、画面をよく見ると――
 ちょうど、街路灯の明かりと建物の影になった部分の境目の、膝くらいの高さの位置に、地面と平行にピンとロープが張られていた。
 そのロープに足を取られて、5人の守衛が折り重なるように倒れている。
 すると……、建物の陰から、ひとりの男が出てきた。―――そのシルエットは、間違いない。あのホームレスだ!
 彼は、先に逃げていた仲間に向かって、腕を振って合図を送った。すると、ホームレスたちは、近くの物陰を探り、次々と守衛に向かって走って行く。
 その手には、鉄パイプや野球のバット――、中にはシャトル駅の標識なんてのもある。
 ホームレスたちは、それを振りかざし、折り重なっているため動くに動けない守衛たちに振り下ろした。
 ――逆に残酷な場面だ。
 しかし、殺す気は無いようだ。抵抗できないくらいにボコボコにすると、ひとりひとり地面に転がし、武器を奪う。そして、――なぜか服も脱がせていく。
 あの、リーダー格のホームレスは、作業をしているホームレスたちから武器を預かり、肩に掛けた。――マシンガン5丁。それをあっという間に手に入れてしまった。
 そして、下着だけにされた守衛たちに向かって、
「風邪ひくなよ」
と声を掛けると、他の仲間たちと共に、画面の向こうへ消えようとしていた。
 その途中、不意に立ち止まり……
 
 こちらを向き、右手の親指を立てて「グッ」というポーズをした。
 
 ソウは思わず立ち上がった。
 ―――な、何なんだ?こいつ!?
 まるで、ソウに向かって合図をしたような……!
 
 ……とりあえず、あいつが何をしようとしているのかは分かった。
 守衛から武器を奪い、反逆の狼煙を上げたのだ。――「地球」に対して。
 だが、そうなると、敵は守衛だけではない。相手は、宇宙戦艦を何隻も抱えている「警備部防衛課 宇宙警備本部」、――果ては「アース・コーポレーション」そのものだ!
 マシンガン5丁で、何ができる!?
 
 ポカンと目と口を開けたまま、テレビ画面を眺めるソウの前で、また別の光景が繰り広げられていた。
 今度は、ホームレスを追って狭い路地に入って来た守衛の頭上に、水の入ったボトルやらコンクリート片やら、当たると痛そうなゴミが大量に降り注いだ。――ビルの非常階段で、大きな箱を持ったホームレスが、してやったりという顔をしている。
 ……あいつ、確か、「チャン」とかいう奴……!
 また別の画面に切り替わると、今度はマンホールの穴の中へ、守衛が消えて行った。――足の骨折程度のケガで終わる事を祈るしかない。
 
 ……それらの光景を見入るソウの心に、このところ感じたことのない、懐かしい気持ちが沸き上がって来るのが分かった。
 それが何かのか、記憶の深いところを探るのに、少し時間がかかった。
 やがて、網に引っ掛かって宙釣りにされている守衛を見て、思い出した。
 
 ――ソウは、子供の頃、サッカーをしていた。
 校内のクラブで、メンバー11人という弱小チームだったが、ソウはリーダーをしていた。
 当然、負ける事の方が多いが、だが、試合前から、諦めるような事は無かった。
 「勝つため」に、緊張と興奮の中、フィールドに飛び出していく、あの気持ち――。
 何とも言えない、高揚感。
 
 その時の自分と、画面の向こうで戦っているホームレスが、リンクして見えた。
 
 一度、有名な強豪チーム相手に1ゴールを上げたことがある。
 試合は負けたが、その充足感は……
 
 社会人になり、就職してから、一度も味わった事がないものだった。
 
 もちろん、サッカーと戦争を同じ次元で考えるものではない。
 ――だが、このくらいの突破口がなければ、今の「自分」から、何も抜け出せない。
 
 今までに、何を成した?
 決まった時間に出勤し、決まったように仕事をし、決まった時間に家に帰り、自分の「自由」を怠惰に消費していく。
 それでも、目的があればいい。毎日に小さくとも充実感があればいい。
 だが、俺はどうだ?
 数少ない「正社員」という、ちっぽけな優越感が味わいたいがために、ガニメデにまで来たのか?
 
 俺だって、社会の「歯車」のひとつだ。
 その歯車が「意思」を持てば、社会の形が変わるかもしれない。
 
 ソウは、ほとんど無意識に、玄関に向かっていた。
 途中でふと思い出し、ハンバーガーの紙袋を掴み取ると、そのまま外へ飛び出した。
 
 ――守衛に見つかれば、殺されるかもしれない。
 だが、そうなったら、全力で逃げるまでだ。
 ディフェンスをかいくぐってゴールを上げた、あの時のように。


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