忍者ブログ
オリジナル小説のダストボックス

WRITE | ADMIN

PR
カウンター
プロフィール
HN:
碧井 湊
性別:
非公開
自己紹介:
頭の中には、
いつも何かのストーリー。
なかなか、
文字にならないのが難点。

詳しい事はこちらへ。
メールフォーム
感想・ご意見等 お気軽にどうぞ
Powered by NINJA TOOLS
忍者サイトマスター
バーコード
ブログ内検索
当ブログの利用方法
★プラグイン最上部のブログタイ
 トルをクリックで、トップページ
 へ戻ります。
★トップページより、各小説タイ
 トルをクリックで、目次ページ
 へ進みます。
★プラグイン内「カテゴリー」から
 も、目次ページを開けます。
★小説各ページに「次へ」のリン
 クはありますが、「前へ戻る」
 リンクはありません。プラウザ
 内の「←」をご利用いただくか、
 一度目次ページへ戻るかして、
 ご覧ください。
アクセス解析


忍者ブログ [PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


web拍手 by FC2


 「元帥」はソウに手を差し出したが、今回ばかりは、握手を返すことはできなかった。
 「………お、俺は、会社側の人間だ。おまえらの仲間になるつもりは無い」
 ――何を今さら、言い訳がましい事を言っているのだ。ソウのその矛盾を、「元帥」はあっさりと見抜いていた。
「じゃあ、なんでここに来た?」
 ……ニヤニヤする「元帥」に、ソウは、手に持った紙袋を差し出した。
「――差し入れだ。食え」
 紙袋を受け取ると、「元帥」は中を覗き、ハンバーガーとチキンナゲットだと確認して、隣の男に渡した。
「悪い、俺は菜食主義者なんだ」
 ――何と面倒臭いホームレスだ!
 腹を空かせているらしい他のホームレスたちは、そのわずかな食糧を、だが仲間と分け合って食べだした。
 ……この悪臭の中で、よく食べられるな、と思うが、耐性が付いているのだろう。
 
 「―――じゃあ、帰る」
 ソウが帰ろうとすると、当然の事ながら、ホームレスたちは行く手を塞いだ。
「……さすがに、アジトまで知られちまった会社側の人間を、『はいそうですか』と帰す訳にはいかないなぁ」
 「元帥」は、武器のひとつひとつを確認しながら、気の無い口調で言った。
「……じゃあ、どうする?」
「まぁ、とりあえず、人質にでもなってもらおうか。手伝って欲しい事もあるし」
「―――これから、一体どうするつもりだ?」
 ソウが聞くと、「元帥」はチラッと顔を上げた。
「ま、とりあえず、鉱山でも乗っ取ろうかと思ってる」
 ――この男、とんでもない事をサラリと言ってのける。
 
 すると、通路の奥から、また数人の「守衛」がやって来た。
 「元帥!第15コロニー隊、撤収完了しました!」
「全員無事か?」
「はい、おかげさまで!……戦利品は、マシンガン8丁にハンドガン3丁、弾薬6カートン、それに催涙弾14個です!」
「ご苦労さん」
 それを聞いて、マックが言った。
「これで全員揃ったな」
「あぁ。………そろそろ、移動するか。いつまでもグズグズしてると、ここがヤツらに見つかるのも時間の問題だ」
 そう言って「元帥」が立ち上がると、一同「イエッサー!」と敬礼のポーズをした。
 ――あまりにも「ソレ」っぽい感じで、ソウはこんな時ながら感心してしまった。
 
 ……ソウも、守衛の制服に着替えさせられ、弾薬をいくつか持たされ、移動することとなった。――これでは、まるでこいつらの「仲間」だ。
 
 列の先頭を「元帥」が行く。
 近くを歩いていたマックに、ソウは小声で聞いてみた。
「今から、どこに行くんだ?」
 すると、マックから意外な返事が返って来た。
「さぁ、知らねぇ」
「……え!?」
「今日の事だって、聞いたの、今朝だぜ?」
「…………」
 それで、この統率された動き。どんな魔法を使っているのか……?
 ついでに、前から気になっていた疑問を投げてみた。
「――あの、『元帥』って人、一体何者なんだ?」
「それも知らねーんだよ。ただ、1年くらい前から、ここで路上生活をしてるらしい。……だけど、鉱山の『脱走組』じゃないみたいだし、なんでわざわざ『ガニメデ』にまで来たのかねぇ?」
 ……逆に質問し返されたが、ソウが答える問題でもない。
「じゃあ、あの人の名前は?」
 すると、「元帥」は歩きながら軽く振り向き、
「『ディケイル』だ。ディケイル・ウェイニー」
と答えた。
「………初めて名前聞いたぜ」
 マックがポツリと言った。
 
 それから、何となく、マックの生い立ちを聞かされる事になったのだが……
 「マック」というのはニックネームで、本名はアレックス・マクレガーというらしい。
 元はアース・コーポレーションの社員だったのだが……
「……酔ってケンカしちまってな。クビになった」
 ――で、奥さんと離婚。ひとり娘の親権も、当然の事ながら持っていかれ、絶望の最中、「再就職試験」に何とか引っ掛かり、ガニメデへ来たらしい。だが、鉱山労働のあまりの厳しさに、絶っていた酒に逃げ、ある日、二日酔いで無断欠勤。そのまま、宿舎を逃げ出してしまったという。
「……で、このザマさ」
「――だけど、なんで、『社員』の俺に、そんな事まで話してくれるんだ?」
 ソウが聞くと、マックは当然の事のように答えた。
「『元帥』が、あんたの事は信用していい、って言ってたから」
「………じゃあ、なんで、『元帥』の事をそんなに信じてるんだ?」
「なんでって……、あの人が居なかったら、俺、今頃、どうなってたか分からねぇ。『命の恩人』だからな」
 ――宿舎を飛び出したはいいものの、やはり、ガニメデでホームレス生活をするという事は、常軌を逸した過酷さだったようだ。空腹で体調を崩し、行き倒れていたところを、ディケイルに助けられた。
「それから、ホームレス仲間を、いろいろ紹介してくれてな。――この前居たチェンも、そのひとりさ。そのおかげで、みんな助け合って生活してるんだ」
 
 ――何となく、ディケイルがホームレスたちを統率するために使った「魔法」のカラクリが分かった気がした。
 ホームレスが大人数まとまって行動しては目立ってしまう。誰かに怪しまれて警備に通報されたら「最期」だ。だから、ディケイルがまず、ひとりひとりのホームレスと接触を持ち、都合の良さそうなメンツ同士を紹介して知り合わせる。こうして人脈を広げていき、直接会う事は無くとも、連絡が伝わる体勢を作っておく。
 ――これが、あの時言っていた「準備」なのだろう。
 ……という事は、ソウに声を掛けてきたのも、計画のうちなのかもしれない。一体、俺に何をさせようというのか……。
 
 「あ、それと、一応、俺、ここじゃ『少将』ってコトになってるんだ。そういう事で頼むよ」
「――偉い人なんだな」
「そんな事は無い。俺なんて下っ端さ。チェンなんて、『大将』なんだぜ?それに、やっぱ、『元帥』は格が違う。頭の悪い俺から見ても、すげぇヤツだって事は分かる」
「へぇ……」
「この前だって――」
 すると、またディケイルが振り向いた。
「マック少将、そいつは『社員』で『人質』なんだ。あんまりペラペラ話さないでくれ」
 ……先程気付かれたから、お互い、もっと気をつけて話していたのだが……。かなりの地獄耳だ。
 注意され、マックは恐縮したように黙り込んだ。ソウも黙って歩く事にした。
 
 それから間もなく、とあるハシゴのところで列は止まった。ディケイルを先頭に、次々とハシゴを登って行く。ソウもそれに続く。出口は、やはりマンホールのようだが、フタは開いていた。丸い穴から顔を出すと……
 コロニーと鉱山を結ぶシャトルが、目の前に見えた。周囲を見回すと、シャトルが何両も並んでいる。恐らく、シャトルの車両基地だ。
 薄暗い照明の中、車両の間を進み、少し開けた場所に出た。線路のレールの材料が、山積みされている。
 
 ――そして、その脇に、見覚えのある顔……。
 「『元帥』!お待ちしてました!」
 そう言った男の顔は……、見間違いようも無い。自分の部下だ。
 その男も、ソウに気付いたらしい。「あっ!」と声を上げると、凍りついたように固まった。
「……こんなところで何してるんだ!?エド」
「ナカムラ主任こそ、どうして……!」
「なんだ、知り合いだったのか」
 ディケイルは澄ました顔でふたりを見比べた。
 ……さらによく見ると、エド――エドワード・ボスロイの背後にも、見た事のあるような顔が並んでいる。――ドリーム鉱山の従業員たちだ。数人居る。
 ――ディケイルの人脈は、「社員」の中にまで広がっていたのか……!――しかし、「契約社員」ばかりで、「会社」の中での立場が一番上なのは、ソウのようだった。
 お互い、気まずい空気の中で向き合っていたが、そんな空気を意に介さないように、ディケイルは積み上げられたレールの上に身軽に飛び乗り、通る声で言った。
 「みんな、よく集まってくれた。感謝する。――今日集まってもらったのは他でもない。いよいよ、以前から連絡していた『計画』を実行する時が来た。みんなには、それに協力してもらいたい」
 
 ――ソウは周りを見渡して、驚いた。
 地下水路で見た時には、さほどな人数と思わなかったが、こうして、広い場所に集まって見ると……、100人を超えている。――いや、200人近く居るかもしれない。
 ――鉱山労働者の中には、マックのように、労働条件の厳しさから逃げ出し、ホームレスになる者も少なくない、とは聞いていた。だから、「一斉清掃」が行われたのだろう。しかし、こんなに多く居たとは知らなかった。……もちろん、これでホームレス全員というわけではないだろう。「一斉清掃」で殺された者も居れば、まだ、どこかに隠れている者も居るはずだ。恐らく、ガニメデのホームレスの、ごく一部……。
 ソウは、いろいろな意味で「ゾッ」とした。
 
 ホームレスたちは、生き生きとした目で、ディケイルを半円に取り囲んでいる。その誰もが、「希望」と「信頼」を胸に持っているように、ソウには見えた。
 ――「金」と「力」で押さえつけられているソウたち「社員」とは、大違いだ。
 
 静かに「元帥」の言葉を待つ人々の様子を確認して、ディケイルは続けた。
「……これから、『ドリーム鉱山』組と『ガニメデ宇宙空港』組とに分ける。……奇数数字のコロニー隊のうち、守衛の制服を着ている者は鉱山、他を空港に分けると、どんな感じになる?」
 その言葉に従い、速やかにチーム分けがなされた。――すると、「鉱山組」は50名程度、「空港組」は150名くらいになる。それを確認し、納得したようにディケイルは頷くと、
「では、詳しい作戦を説明する」
と言った。
 
 「――まず、鉱山組は、守衛らしい格好をして、俺について来い。
 空港組は、俺から連絡が入るまで待機。その後は、シャトルで空港に突入する。細かい指示は、チャン大将に従え。いいな?」
『イエッサー!』
「この作戦のポイントは、『守衛をどう動かすか?』だ。追手である本部の守衛は、ガニメデのボンクラどもとは違い、地球から来たエリートだ。――だからこそ、つけ入るスキがある」
 ディケイルは、銃身の長いマシンガンに杖のように寄りかかった。
「――『敵』は、ガニメデの下っ端たちの協力を得ず、独自で動いていると考えている。つまり、こちらの状況が、『敵』に知られていない公算が高い。――ここまでほぼ無傷で来られたのが、その証拠だ。……妙なプライドなど捨てて、所轄の力を借りて居れば、こんな事にはならなかっただろうに。『縦割り組織』というのは、そんなモンだ」
 ………それが、「作戦」とどういう関係があるのだろう?一同はキョトンとするしかない。
「だが、同時に、こちらも向こうの人数など、詳しい情報が分かっていない。――だから、こちらの思惑通りに敵を『動かす』」
 ――敵を動かす!?そんな事が可能なのだろうか?……そう言いたいように、空気がざわめいた。
「俺たち鉱山組が鉱山を派手に乗っ取る。そうすれば、守衛は鉱山を取り戻すため、こちらに集中する。――そのスキに、空港組は宇宙空港を占拠しろ」
 ディケイルの言葉の意味を納得したように、一同は頷いた。
 しかし――、と、だが、ソウは斜に構えていた。そんなにうまくいくものだろうか?
 その思考を見抜いたように、ディケイルがこちらを見たような気がした。
「……もちろん、100%うまくいく保障は無い。もし、守衛に攻撃を受けた時は、全力で逃げろ。相手は地球のエリートだ。まともに相手をしたところで勝ち目は無い。――もし、万一、敵に捕まるような事があれば、『ディケイル・ウェイニーに脅された』と言って、投降しろ。――俺の居所を教えれば、命は助かるかもしれない」
 ―――一同はシンとした。
「だが、俺はこの作戦の勝てる公算は、90%以上だと思っている。
 なぜなら、先程も言った通り、『敵』は連携不足であり、さらに『地の利』もこちらにある。――あとは、『時の運』が、どちらにあるか……。それだけだ」
 
 ……先程の勢いとは打って変わって、重い沈黙が一同を包んだ。
 ホームレスたちにとって、改めて、命懸けの「戦争」である事を認識されられたのだ。
 ここまでが、うまくいきすぎていたのだ。敵が、自分たちの存在をナメ切っていたから、完全武装の守衛たち相手に「勝つ」事ができたのだが、――ここからは、そうはいくまい。
 
 その、重い空気を払いのけるように、マックが声を上げた。
「だけどさ、考えてもみろよ。
 『元帥』が居なきゃ、俺たち、今夜、みんな野良犬みたいに殺されてたんだぜ?――ここで死のうが、悔いがあるヤツは居るのか?どうだ!?」
 ……すると、少しの間を置き、ひとり、続いてひとり、手にした銃を、頭上に掲げた。それは、ホームレスたち全体に波のように伝わり、やがて、「オー!」という喚声に変わった。
「―――ありがとう」
 ディケイルは小声で言うと、マシンガンを肩に担ぎ、「演台」から飛び降りた。
 
 「では、鉱山組、出発する」
 ディケイルの声を合図に、守衛の制服を着たホームレスたちは歩き出した。――脇のほうで、チャンがディケイルに目線を送っているのが分かった。通り過ぎる時、「あとは任せろ」と言うように、軽く敬礼して見せる。
 ……しかし、俺はどうすればいいのか?
 ソウは突っ立っていたのだが、
「人質!あんたは鉱山に来てくれないと困る」
とディケイルに呼ばれ、慌てて後を追った。
 
 ………この先に待っているのは、一体何なのか。
 自由か、希望か、それとも、「死」か――。
 
 それは、誰にも分からなかった。


>> 次へ
PR

web拍手 by FC2


※ Comment
HN
TITLE
COLOR
MAIL
URL
COMMENT
PASS


※ この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:



Powered by 忍者ブログ  Design by まめの
Copyright © [ Second Box ] All Rights Reserved.
http://secondbox.side-story.net/