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04.  錯乱
 
 
 「鉱山組」は、無人シャトルに乗り込み、ドリーム鉱山に向かった。その車中、フルフェイスのヘルメットをかぶり、ひとりひとりに武器が渡された。――これなら、どう見ても「守衛」に見える。
 渡されたマシンガンを興味津津に眺めるホームレスたちだったが、誰ひとりとして、その使い方を知らない。
「武器など、格好つけるためのモノで、使うモンじゃない」
 ディケイルはそう言って、座席にドカリと腰を下ろし、窓の外を眺めだした。
 ……ソウにもマシンガンが渡されたが、当然、異論を唱える者は居た。だがマックが
「この人は大丈夫だ。俺が保障する。文句があるヤツは、俺が相手するぜ!」
と言うと、皆、黙った。……大柄で腕っ節の強そうなマック相手に、誰もケンカなど売りたくない。
 
 ガニメデにある全ての鉱山は、コロニーから独立したところにある。その理由はもちろん、鉱山で何らかの「事故」があった時、コロニーに被害を及ぼさないためである。そのため、コロニーと鉱山は、無人シャトルで結ばれており、それで鉱員たちは行き来している。
 
 鉱山は、コロニーの中には無いとはいえ、外気の吹きさらしのただ中にある、という訳でもない。それでは、人間が生きる事ができない。
 各鉱山は、鉱山口を覆うように建てられた、巨大な建物に護られている。その中には、空気循環システムや空調システム、機械をコントロールするための設備、事務棟などが設置されている。――しかし、コロニーのように高性能な設備ではなく、出入りも多いため、かなり寒い。だから、鉱山での作業着は、耐寒用の特殊なものだ。
 
 ――今着ている守衛の制服も、それに近いもののようで、多少、外を歩いても、大丈夫なようになっていそうだ。……いや、むしろ、作業着よりも数段モノがいい。ヘルメットにも、簡単な「呼気清浄機」が付いている。――こんな装備、守衛に必要なのだろうか?これを揃えるだけの金を鉱山従業員のために使ってくれていたなら、「脱走者」も、もっと少なかったに違いない。
 
 シャトルは、エアカーテンを抜けて鉱山の建物に入り、静かに止まった。一同は、駅でシャトルを降り、鉱山口へ向かう。
 ――こんなに堂々と行って大丈夫なのだろうか?
 ソウは不安になったが、ディケイルは何食わぬ様子で進んでいく。
 
 駅の「改札口」に当たるところが、鉱山警備の守衛の詰所になっている。その前に来ると、ディケイルは顔を出した夜勤の守衛に話し掛けた。
「鉱山に『野良犬』が何匹か逃げ込んだという情報が入った。確認したい」
 すると、慌てて守衛が出て来た。
「し、しかし、ホームレスのヤツらが、守衛の制服と武器を奪って逃亡中だから、身分を確認するように、と上司から聞いております。……失礼ですが、社員証と、お顔を拝見させてください」
 ――どうする気だ?ソウの額を冷や汗が流れた。
 だが、ディケイルは動じる事なく、言葉を返した。
「――その、上司の役職は?」
「………係長代理であります」
「そうか。では……」
 ディケイルは、胸のポケットから社員証を出し、見せた。――制服と一緒に、守衛から奪ったのだろう。
「私は『課長補佐』だ。文句があるなら、私に言えと伝えておけ」
 ……ディケイルがそう言うと、守衛は、
「は、はい!失礼いたしました!」
と、バネじかけの人形のような動きで敬礼し、ディケイルが歩き去るのを見送った。――その後を、ソウたちもゾロゾロと続く。
 ……直立不動の守衛を横目で見て、ソウは心から可哀そうに思った。横で、マックがボソリと、
「こんなに簡単でいいのかよ」
と呟いた。
 
 ――あまりに呆気なく、鉱山口への侵入を達成してしまった。
 さて、これからどうする気だ……?
 
 鉱山口は、分厚い氷を掘り進んだ奥の壁に、ポカリと口を開けている。入ると、ちょっとしたドームのような空間があり、その片隅に、プレハブ小屋の「管理室」が設置されている。その脇から、坑道が延び、その入り口に……
 例の「扉」は存在していた。
 岩盤を掘っただけの「穴蔵」とは明らかに異質な、機械的で、無機質で、冷たく、重い……。ソウは普段、全くと言っていいほど気になどしていなかったが、こうして見ると、背筋が寒くなるような不気味な存在に見えた。
 ディケイルは、「それ」にツカツカと歩み寄り、ソウを振り返った。
「なぁ、『人質』。これはどうやって閉める?」
「……そこの、管理室の中に操作盤がある」
「そうか」
 そう言って、ディケイルは管理室のドアを開けた。――中で、半ば居眠りしていた作業着姿の男が、驚いた表情で椅子から飛び上がった。
「あんたが責任者か?」
 ディケイルの制服を見て、慌ててかしこまった姿勢を作り、その男は答えた。
「鉱山長は、今は夜勤の時間帯ですので、自宅でお休みになられています。夜勤の副鉱山長は、外の事務棟に居られます」
「じゃあ、あんた、誰?」
「わ、ワタクシは、夜勤担当のシステム整備の職員であります。何か、トラブルがあれば出動できるよう、ここで待機しているのであります!」
「ふぅん……、まぁいいや。――『人質』、扉を閉めてくれ」
 
 作業着姿の男は、訳が分からないといった顔をして、状況を把握するのに必死なようだ。――さらに、後から入って来た地球本部の「守衛」の制服を来た人物が、ヘルメットを外すと、見覚えのある顔だったりするから、さらに混乱した様子を見せた。
 
 「………ナカムラさん!どうして、ここに……!?」
「『人質』なんだ。悪いな」
 そう言って、ソウは奥の壁に取り付けられている箱の前に行った。そして、そこに付けられている数字のボタンを、教えられている暗証番号通りに押し、箱のフタを開いた。
 ――その中央に鎮座する、赤いライトが内蔵された、ボタン。
 それに手を置こうとすると、作業着の男が目を丸くした。
「ナ、ナカムラさん!それは、『非常扉』のボタンですよ!?」
「知ってる」
「それを、どうするんですか?何かあったんですか!?」
「何もないけど、押すんだよ」
「そんなことしたら、――コロニーじゅうが、大騒ぎになりますよ!!」
「あぁ、そうなるだろうな」
 
 ――「非常扉」が閉まる。それはコロニーにとっても一大事である事は、教えられていた。実際に、扉が閉まるのを見たのは、災害訓練の時だけだが、扉が閉まる事で、自動的に消防に通報され、無人シャトルは緊急停止し、コロニーとコロニーを繋ぐ隔壁は閉鎖され、各コロニー内にはサイレンが鳴り響き、避難所への退避命令が出され、鉱山及びコロニーの管理責任者が召集され――。
 とにかく、「非常事態宣言」が出されるのだ。
 
 ――ソウは、自分でも「どうかしている」事を把握していた。
 「人質」とは名ばかりで、銃を突きつけられ脅されているわけでもない。そればかりか、自分で武器も持っている。――どう見ても、「人質」という状況ではない。
 この状況で、このボタンを押すのは、――「自分の意思」だ。
 なぜ、こんな事をするのか?こんなことをして、自分の立場はどうなるのか?
 
 ……しかし、この時のソウは、そんな事よりも、この先に何があるのか、それをこの目で見届けたくて仕方なかった。――詳しくは、何も聞かされていないが、あの男、ディケイル・ウェイニーなら、何かやってくれる。――それが、楽しみでさえあった。
 
 いつの間にか、ディケイルたち「鉱山組」の連中は、坑道の中へ入っていた。――そんな事をしたら、閉じ込められるじゃないか!?
 そう思ったが、ディケイルが
「早く押してくれ」
と言ってきたので、それを信じ、ソウはボタンを押した。
 
 ―――と同時に、鉱山内にけたたましいサイレンが響き渡った。それにかき消されるようにだが、だが確かに、扉が動く、重々しい機械音も聞こえる。
 「……も、もう、僕は知りませんから……」
 作業着の男は、頭を抱えて床に座り込んだ。――この男、ソウの事を知っているようだが、ソウは、顔を見た事がある程度の認識で、名前までは知らない。それを、少し悪い気がした。
 
 少しして、当然の事ながら、事務棟に居た副鉱山長や事務方の職員、入口の守衛などが走ってくるのが見えた。
 ……この時になって、初めて理解した。――俺は、どうすればいい??
 ホームレスの連中は、扉の向こうに入ってしまった。明らかに、その仲間と思われる格好をしたソウが、武器を所持してここに居る。
 ――今さら、言い逃れなどできない。目撃者だって居る。
 考えを進めるうちに、ハッとした。
 ………この先、必ず地球側の「守衛」たちも来るだろう。そうなった時……。
 
 ――俺ひとりで、矢面に立つ事になる――!!
 
 「……畜生!ヤラれた!!」


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