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05.  仲間


 ようやく体勢を立て直した守衛たちが、ディケイルに銃を向ける。だが、相手は巨大ダンプカーだ。運転席の位置は、普通の建物でいえば、3階~4階の高さになる。何人かが発砲したが、照準が合わない。
「チッ。うるさいな」
 ディケイルはそう言って、運転席から身を乗り出し、マシンガンを構えた。

 ズババババババババ。

 どんな「戦い」でも、上の位置に居た方が、絶対的に有利だ。マシンガンの弾は、弧を描くように軟らかい岩盤に穴を穿ち、弾け飛んだ。――威嚇のつもりか、誰にも当たらなかった。もしくは、当てなかったのか。
 ――どちらにせよ、あいつ、銃が使えるじゃないか。

 「……早く来いよ、そっちの『人質』さんコンビ」
 呼ばれてハッとし、ソウはジョルジュを抱え起こした。彼に銃を向ける格好をして、ダンプカーに向かう。……銃身が長すぎて、この体勢では実際はジョルジュに銃口が向かないのだが、上からディケイルが威嚇しているので、守衛たちはソウに道を開けた。
 運転席へと向かうハシゴに辿り着くと、先にジョルジュを登らせ、ソウも続く。運転席に転がり込んだら、ディケイルはすぐにドアを閉め、
「さっさと車を出せ」
と言った。窓越しに下を見ている。守衛がハシゴを登って来ないか、警戒しているのだろう。
「……出せって、今まで、誰が運転してたんだ?」
「俺だよ」
 ディケイルが、チラッと振り向いた。
「じゃあ、あんたが運転すればいいじゃないか」
「俺、無免許なんだよ」
 ―――そんな事を言っている場合か!?
「いいから、早く動かせ。守衛が来るぞ」
 ……それも事実だ。ハシゴに飛びつかれてしまったら、運転席まで来られてしまう。――それを防ぐには、走るか、守衛を撃ち落とすしかない。
 どちらかといえば、後者は気分のいいものではない。
 ソウは座席に座り、ギアを動かし、アクセルを踏んだ。

 再び動き出した巨体に、守衛たちは為す術もない。このダンプカーは、落盤事故対策のため、外壁や天井も、かなり頑丈にできていて、装甲車以上の強度があるらしい。マシンガンが何丁あろうと、相手にはならない。――対戦車ミサイルでもあれば、話は別だろうが。
 慌てふためき逃げまどう守衛たちの間を、ダンプカーはゆっくりと鉱山口へと向かった。
「向こうから逃げてくれるから問題ない。気にせず進め。止まるな」
 ディケイルに言われ、ソウはギアを切り替えた。

 ――少し落ち着いてみて、ソウはいつもはガランとしている広い運転席が、妙に窮屈なのに気付いた。……振り向くと、30名余の男たちが、ギュウギュウとひしめきあうように身を寄せ、すぐ後ろから、じっとソウの運転の様子を見ている。――ホームレスたちだ。マックも居る。
 ……非常に居心地が悪い。
 また、荷台のモニターを見てみると、そこにも、人が大勢乗っていた。皆、ヘルメットを被っているので顔は見えないが、100人以上は居る。……外部作業員用のヘルメットで足りないところは、運転室の者たちの、守衛用のヘルメットも渡したのだろう。
 ――あまり考えたことが無かったが、これなら、コロニーの外へ出る移動手段になり得る。長時間は無理だろうが、あのヘルメットの呼気清浄機なら、数時間なら平気だろう。

 ――しかし、だ。一体どこへ向かうのか?

 横目でディケイルを見ると、無線で何やら話していた。多分、チャンと連絡を取り合っているのだろう。
 その横で、ジョルジュがキョトンとした顔でソウを眺めていた。――急に銃口から解放されて、状況が全く掴めていない、といった顔だ。
「……悪いが、状況を説明してくれないか?」
 ディケイルが無線機を戻したところで、ソウは声を掛けた。
「まず、どこに向かう気だ?」
「宇宙空港に決まってるじゃないか」
 ――決まってるのか。俺は聞いてないぞ!?
「……じゃあ、荷台の人たちは、何なんだ?人質か?」
「いや、そうじゃない。仲間だよ」
「――は?」
 ……鉱山組のホームレスたちは、50人程度だったはずだ。いくらなんでも、こんなに居るわけがない。
「新たに仲間になった、と言ったほうが正しいな」
「どういう意味?」
「中に居た鉱員たちを、説得してきた」
 ――あの、守衛が来るまでの短時間で?あの人数を!?
「……催眠術でも使ったのか??」
「まさか」
 ディケイルは、マシンガンの弾を取り換えながら言った。
「『働かされる』か、『自分の意思で働く』か、どちらがいいかと聞いたら、全員、こちらを選んだ。それだけさ。
 ――全員乗りきらなかったから、また後で、迎えに行かなきゃならない。それまで、エドが何とか乗り切ってくれるはずだ」
 ……言われてみれば、エドの姿が見えない。
「それにしても、『元帥』のあんちゃん、とんだペテン師だぜ」
 マックが口を出した。
「あの中に、『サクラ』を何人か紛れ込ませておいて、それで……」
と、荷台の方を指差した。
「人聞きが悪い事言うなよ、マック」
 ディケイルは弾の充填を終え、マシンガンを構える格好をした。――マックに向けて。
「じょ、冗談キツいぜ、兄貴!」
 マックが冷や汗を流しながら愛想笑いをすると、ディケイルは涼しい顔で銃を壁に立て掛け、
「……まぁ、否定はできんがな」
と言った。

 ――「サクラ」というのは、昔からよく使う手だ。客が少ない店などが雇い、いかにも流行っている店のように見せ、他の客を呼び込もうという、アレだ。
 「アース・コーポレーションを自主的に退社する」という、重大な決断を、そうそう簡単にできるワケがない。だから、「サクラ」を使い、ディケイルたちに率先して同調する人間が流れを作って、他の鉱員たちの決断を促したのだろう。――何事も、最初に行動を起こすというのは、なかなかできるものではない。「誰かと同じ事をする」方が、ずっと楽なのだ。

 ……しかし、そうまでして、人数を増やして……
「――そんな事をして、後で気が変わったりしたら、どうするんだ?」
「そうしたら、脅されて『人質』になった事にして、逃げてくれればいいと言ってある。あとは、本人の意思次第だ」

 ――しかしそれよりも、ソウには聞いておかなければならない質問があった。
「……で、あんたは俺を、どうする気だったんだ?ディケイル」
 ―――聞こえないフリを決め込もうとするディケイルの様子に腹が立って、ソウは鉱山から「外」へ出るゲートの段差を、わざと揺れるように通り抜けた。……いつもなら、こんな乱暴な運転はしない。
 それで、若干不安になったのか、ディケイルは仕方ない、といった様子で口を開いた。
「――あんたなら、うまくやってくれる、と思ったんだよ。……もしくは、うまく逃げてくれる、とな」
「………あのなぁ……」
 ソウは言葉を続けようとしたが、急にジョルジュが話に入って来た。
「ぼ、僕は、どうなるんですか!?」
 ――ソウは話の腰を折られ、苦々しい目でジョルジュを見たが、ディケイルは救われたかのように、すぐ会話に乗った。
「あんたも『人質』だ。向こうに着いたら、好きにしてくれて構わない。――巻き込んで、悪かったな」
「……あいつ、エドは、あなたたちの仲間なんですか?」
「エドは仲間だ。――親友のあんたを巻き込みたくなくて、黙ってたんだろう。今夜決行すると聞いた時も、渋い顔をしていた」
「あいつ……!」
 と、ジョルジュは今度は急に怒りだした。
「こんな、面白そうな事を、俺に黙って、ひとりでコソコソやってるなんて……!!――後で、絶対にブッ飛ばしてやる!」
 ―――若いな。
 ……そう言うソウだって、まだ26歳だ。まだまだ、若い、ハズ……。

 ――と、ふと、ソウは思った。
 ………そういえば、ディケイルは、作戦が始まって以降、ソウの事を「人質」と呼んでいた。
 つまり、逃げようと思えばいつでも逃げられる「逃げ道」を作っていたつもりなのか。だから、作戦の詳しい説明もせず、ソウの判断に任せた……。
 ――要するに、俺は自分の意思で行動し、自分の意思で今、ここに居る、と………。
 ―――ふざけるな。

 「ソウ、あんただって、『人質』だ。一通り終わったら、帰っていいぜ」
 ―――この期に及んで……!!帰れるワケがないだろ!
「……なんでもいいから、後で1発殴らせろ」
 さすがに、仲間たちの手前、無視する事もできなかったのか、ディケイルはポツリと言った。
「―――悪かったな」
 ……その言葉が、あまりに寂しそうに聞こえて、ソウは「あれ?」と思った。

 その時、分かった気がした。
 ――実は、こんなに多くの「仲間」に囲まれている今も、ディケイルは、「孤独」なのではないか。
 ……そういえば、ディケイルは銃の使い方を知っていたにも関わらず、誰にもそれを教えなかった。――それは、自分以外の「仲間」に、「殺人」をさせたくなかったからではないか。……「罪」を負わせたくなかったからではないか?
 「責任」のある行動は全て自分で引き受け、最後には「全部俺の責任だ」と言って、他の仲間の弁明ができるようにしている。……考え過ぎだろうか?

 ――何となく、「殴らせろ」と言ったのが申し訳ないような気になって、ソウは黙って運転に集中した。


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