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06.   銃口
 
 
 慌ててロビーに向かうと、確かに、ガラス扉の向こうに、大勢の人影が見える。
 ……いつしか、朝が近い時間になっていた。コロニーの朝用照明の明かりに照らされ、黒々としたシルエットが整列しているのが分かった。
 そして、拡声器のこんな声も聞こえる。
「――空港を占拠している諸君!
 我々はアース・コーポレーション警備部の者だ。この空港は、アース・コーポレーションの所有物であり、諸君が行っているのは、違法行為である!
 即刻、空港を解放し、投降せよ。――でないと、実力行使に出る事になる!」
 
 「………ま、まずくないですか?」
 ジョルジュがマックの大きな背中に隠れるようにして、言った。
「……まずいだろうな」
 ――宇宙空港の正面玄関とはいえ、その外は「外」ではない。専用シャトルの駅と、建物で繋がっている。……であるから、このガラス扉は、単なる仕切りで、防弾とか強化とか、そんな大層なモノではないに決まっている。
 ……本気で来られたら、一巻の終わりだ。
 
 銃を構えたホームレスたちも、それに対抗して、ガラス扉の中から、待合室のソファーに身を隠して銃を構えてはいるが、まともに使いこなせる者が居るとも思えないし、正面から撃ち合ったら、普段訓練を受けている守衛たちのほうが圧倒的に有利だ。
 ………どうする?一体どうする…!?
 
 「……ダメだ、俺たちじゃいい案なんて浮かばねぇ。『元帥』を呼んで来よう」
 マックが正論を言った。……あの様子で大丈夫か?とも思ったが、今は、そんな事を言っている場合ではない。無理矢理にでも、引っ張って来なければ……!
 
 ジョルジュに銃を渡し、2人を玄関警備の増援に残して、ソウはシェルターに走った。――こんな時は、このらせん階段が鬱陶しい。
 シェルター内に駆け込むと、人々が一斉にこちらを見た。それに構わず、相変わらず壁に向かって頭を垂れているディケイルに駆け寄った。そして、その襟元を掴み、
「こんな事をしている場合じゃない!……外が、大変なことになっている」
と告げた。
 ――恐ろしく無表情な顔でソウを見上げたディケイルだったが、ソウの鬼気迫った顔を見て、ハッとするように目を見開いた。
「……そうだな、こんなところで止まっている暇はないな」
 そう言って、立ち上がった。
 手を取って走ろうとすると……、痛かったのか、反射的に手を振り払われた。――当然だ。無機質の機械相手に素手でボクシングを仕掛けて、無事なほうがおかしい。指の骨でも折れているのかもしれない。
 仕方ないので、半ば背中を押して、ディケイルを走らせる。ロビーに着くまでの間に、簡単に状況を説明した。黙って聞いていたが、ロビーに着くと、その状況を見て、ひとつ大きく息をした。
 
 ……そして、何も言わず、玄関に向かって歩いて行く。
 
 「――ちょ、ちょっと待て!?何をする気だ??」
 すると、ディケイルは振り向いた。
「外に出る」
「……ま、待て!殺されるぞ!?」
「かもな」
「かもな、って……!!」
 ――一体、何を考えているのか分からない。
「……あ」
 思い出したようにこちらに歩み寄ると、肩に掛けたマシンガンをソウに渡した。
「手を怪我してて使えない」
 ―――素手で、あんな大勢の、武装した守衛の前に出るというのか!?気でもおかしくなったか!!
 
 他のホームレスたちと一緒に銃を構えていたマックとジョルジュも、驚いた顔でこちらを見ている。
「『元帥』!あんた正気か!?」
 マックがズバリと聞いた。
「あぁ、正気だ。心配するな」
 そう言って、今度は一直線にガラス扉に向かった。
 怪我をしていない方の左手で、扉を押す。
 
 ――外の喧騒が、ロビーの中にも入って来た。
  その中へディケイルが踏み込んだ。
 ……朝日の中に、そのシルエットが浮かび上がって見える。
 
 ……ガラスに光が反射してよく見えなかったが、扉が開くと、守衛だけでなく、一般の住人――野次馬もかなり居るのが見えた。テレビ局らしい車両もある。――ガニメデのコミュニティー・チャンネルではない。地球の報道局の、ガニメデ支局だ。
 ――恐らく、この騒ぎは「一斉清掃」では済まなくなり、テレビ局が中継に乗り出し、それを見た住人の一部が、こうして見に来ているのだろう。
 ガニメデ所轄の守衛たちが、野次馬を必死で下がらせようとしているが、圧倒的な人数で、現状を維持するだけで精一杯な様子だった。
 その、野次馬の前に、銃を構えた本部の守衛、――恐らく、50人程。……50の銃口が、一斉にディケイルに向き直った。
 その中から、隊長らしい男が出てきて、今度は拡声器ではなく、直接話し掛けた。
 ――雑音が多いが、耳を澄ませば、ソウの位置からでも何とか聞こえる。
 
 「――おまえが暴動の首謀者か?」
「そうだ。――だが、これは暴動ではない。『革命』だ」
 素手である事をアピールするため、両手を肩の高さに広げて、ディケイルは言った。
 ……「革命」などという、カビの生えた古臭い言葉を聞いて、隊長は鼻で笑った。
「『革命』?――馬鹿か!?おまえは」
「あぁそうだ。馬鹿じゃなきゃ、こんな事できるわけないだろ」
 ディケイルがあまりにも堂々と言い返すものだから、隊長は苦々しく咳払いをした。
「――とにかく、おまえは、不法侵入及び不法占拠、公務執行妨害、強盗、傷害、銃の不法所持、――それに殺人の容疑が掛かっている。分かっているな?」
「……あぁ」
 「殺人」と聞いて、後ろのギャラリーたちが黙った。多少は、身の危険を感じたのかもしれない。……そもそも、こんな場所へのこのこやって来るのが間違っているのだが、それに気付いているのだろうか?
「ならば、大人しく投降するか?」
「いや、それはできない」
「――ならば、どうする気だ?」
「今すぐ、ここで撃ち殺せ」
 
 ………ソウは唖然とした。――おい、ここで自ら死を望んで、俺たちを見捨てる気か!?
 
 ディケイルは言葉を続けた。
「――だが、その前に、聞いてほしい事がある。……遺言代わりだ。少し時間をくれ」
「……分かった」
 隊長が言うと、ディケイルは肩で大きく息をした。
 
 「――まず、質問だ。……あんたら、現状に満足しているのか?」
 ……予想外の言葉に、隊長も返答に窮したようだ。
「選択肢が与えられない現状に、あんたら、満足しているのか?」
 ―――ようやく、話の真の意味が分かったらしい。……だが、隊長他、誰も、それに返答をする者はいない。
「与えられた職務をこなし、それがどんなに理不尽なものであったとしても、縦にしか首を振れない。――横に首を振れば、人生を棒に振る事になる。
 言う事を聞くしかない。逃げ道すら選べない。――今のままでいいのか?」
 ………守衛たちをはじめ、野次馬たちも含め、この場に居る一同がシンと黙り込んだ。
「あんたらだって、俺らみたいな人間のクズ相手に、シューティングゲームをしたくてしてる訳じゃないだろ。――自分は、もっと他の事を、もっと価値ある事を、するべきじゃないのか、と、心のどこかで思っているはずだ。もっと、誰かの役に立てる事を。
 ――今の仕事は、世界のためになるのか?そう信じてやっているのか?
 そうじゃない。『上』に言われたから。『上』の言う事を聞かなければ、自分の立場が保てないから。―――そんなんで、本当にいいのか?」
 
 ――明らかに、空気が変わった。動揺した空気が、玄関前を包んでいる。未だ、守衛たちは銃を構えてはいるが、それは惰性であって、まるで意思の無い人形のように、形だけを取りつくろっている、そんな風にソウには見えた。
 
 「人間、働くという事は、自分に与えられた時間、つまり寿命を、金のために捧げる、という事だ。――そんな、命を削った貴重な時間を、命そのものを、自分の意志では無い、虚しいもののために使っていいのか?……自分や、家族や、大切な人のためにそれを使わずに、会社の都合で弄ばれる。それで満足しているのか?」
 ディケイルの声は静かだった。だが、それは、鋭い矢となって、人々の心に突き刺さった。
「……もし、あんたらが望むのなら、俺が、その『選択肢』を提示してやる。――自分が納得して生き、死んでいける、そんな社会を、ここ、ガニメデに作ってやる。
 ――だが、そんなものは必要ない、今のまま、アース・コーポレーションのやり方で満足だ、というのならば、今すぐ、俺を撃ち殺せ。……ご覧の通り、武器は持っていない。丸腰の相手を殺すのに、躊躇する必要もない。俺は、あんたらの仲間を、何人か殺している。――殺人犯だ。
 だが………」
 ここで、ディケイルは少し語気を強めた。
「……中に居る仲間は、皆無実だ。全て、俺が計画し、俺の口車に乗せられてここに連れて来られた、善良なヤツらばかりだ。――彼らには、手を出さないでくれ。頼む」
 
 ―――水を打ったような静寂が続いた。この場に居る全ての人が、抜け殻になったように、静かに、そこに存在していた。――しかし、その抜け殻たちは、確実に、何かに向かって動き出そうとしていた。
 
 そのきっかけを作ったのは、ひとりの女性の声だった。
 「アタシは欲しいわ!」
 野次馬の列をかき分けて、オレンジ色の髪の女性が現れた。――作業着のようなツナギを着ている。
「アタシは欲しいわ。その、『選択肢』ってヤツ」
 まだ若い。闊達そうで元気の良い様子だ。よく通る声で、ディケイルに向かう。
「あなたが、それを見せてくれるんなら、アタシ、協力してあげる」
 
 ――それをきっかけに、「俺も」「私も!」と、声が続いた。人々が次々に玄関前へ押し掛け、守衛の制止がきかない。――いや、守衛たちもその輪の中に入っている。
 ―――最後には、守衛の隊長も、俯き加減に言った。
「……このまま地球に戻っても、居場所など無い。――いっそ、おまえと心中してやる!」
 
 ――さすがのディケイルも、この人々勢いに押されたのか、引き気味に、
「あ、ありがとう……」
とだけ言って、空港の玄関を解放した。
 すると、マックが待っていたかのように、銃を投げ捨て、腕を広げた。
「おお!同志たちよ!」
 そして、誰だか知らない人たちと、手当たり次第に抱き合い始めた。
 ………さすがに、ソウにはそんなオープンさは無い。


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