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07.  運命
 
 
 「――ま、待て!!」
 ソウには、そう言う事しかできなかった。
 彼女が、チラリとこちらを見る。――何とか、引き止めは成功したようだ。
「慌てるな!……その、ダンプカーを運転していたのは、彼じゃない。――俺だ」
 とっさに出た言葉だったが、彼女を動揺させるには十分だった。
「えっ……!」
 しかし、ディケイルが落ちつき払った口調で否定した。
「ソウ。出まかせを言ったところで、彼女は、全て見抜いている。そんないい加減なごまかしなど、通用しない」
「…………」
 ディケイルに本人に否定されては、もう、やりようが無いではないか!
 彼女も、再び覚悟を決めたようだ。
「茶番はもう終わりかしら?」
「あぁ。撃て。それであんたの気が済むのなら。
 ―――本当に、申し訳ない事をした」
 ……ディケイルが素直に謝罪したので、彼女に一瞬迷いが生じたようだ。――しかし、すぐに気を取り直し、
「じゃあ、いくわ」
と、ハンドガンを構え直す。
 ソウは、反射的に目を反らした。
 
 ――その時、隣に人の気配があるのに気付いた。……いつから居たのだろう。目の前の光景に意識を集中し過ぎていて、全く気付かなかった。
 ……ゆっくりと見上げてみると、守衛の制服を来た人物が、ライフル銃を構えて立っている。――ホームレスとは違う。「本物」の守衛っぽい。
 
 その人物は、穏やかな、だがきっぱりとした声で言った。
「――ニーナ、やめろ、銃を下ろせ」
 その声に、彼女はハッと顔を上げた。そして、その人物をまじまじと見つめ、
「……兄さん………」
と呟いた。
「ニーナ。おまえを人殺しにはしたくない。――やるなら、私がやる」
 
 ―――ダメだ。もっと事態は悪化した。
 ソウは為す術も無く、頭を抱えて座り込んだ。
 
 「兄さん……」
「だが、勘違いするな。私が撃つのは、その人ではない。――おまえだ」
 ――えっ?
「どうせ、おまえは、その人を殺して、自分も死ぬつもりだったのだろう?……ならば、この私が、おまえの命を終わらせてやる」
「…………」
 ソウはポカンとして、その守衛を見上げた。――どうなってるんだ?一体……??
「――その人は、ここに居る数百人の人間の命を背負っている。……いや、人類の未来を背負っているのかもしれない。そんな人を、今、こんなところで、死なせてはいけない」
「…………」
「どうしてもというのなら、私がおまえを撃つ。そして、私もおまえに付き合って、死ぬ。
 ――これなら、3人仲良く、あの世に行ける。どうだ?」
「………兄さん……」
 ニーナと呼ばれた女性は、力の無い目でその人物――「兄さん」を見た。
「――私は、ビリーと一緒にあの現場に居た。その人は、必死で我々を避けようとした。……だから、あえて、我々を指揮していたチームキャプテンのほうへ突っ込んだんだ」
 ―――そうだったのか!?ソウは全く気付かなかった。
「キャプテンが逃げれば、我々も逃げられる。そう考えたんだろう。――しかし、キャプテンは逃げなかった。だから、ビリーも逃げられなかった。
 彼らにとっては、車を止めれば、我々に全員殺される。――それが分かっていたから、ああするしかなかった。――私が彼の立場でも、そうしただろう」
「…………」
「おまえには、さすがに、今回ガニメデに来た理由を言えなかった。――今まで、我々の任務の事を隠していた。その私が、一番悪い。……撃つなら、私を撃て」
 
 ――短い沈黙の後、ニーナはハンドガンを取り落とし、糸の切れたパペットのように、床に崩れ落ちた。兄はそんな妹に駆け寄り、抱き留めた。
 
 「―――本当に、ご迷惑をおかけした。私の言葉では、説得力が無いが、……心からお詫びする」
 その人物はそう言い残し、号泣するニーナを抱えて、部屋を出て行った。
 ディケイルは、黙ってそれを見送っていた。
 
 ―――何とか、収まった。
 ソウは立ち上がろうとするが……、腰が抜けたように、うまく立てない。
 ……すると、のこのことマックがやって来た。
「よぉ、元帥。ちょっ………」
 何か言おうとしたが、床にヘタりこんだままのソウと、やけに深刻な顔をしているディケイルを見て、若干、空気を読んだようだ。
「――あれ?さっきの女、……もしかして、修羅場だったのか?俺、てっきりまたアニキが仕込んだ『サクラ』かと思ってたよ」
「…………」
 まぁ、事実、理由がどうであれ、ニーナが切り出してくれていなければ、あの演説は、うまくいっていたかどうか分からない。
 ニーナには、感謝しなければならないだろう。
 
 ――ディケイルに促されて、ようやく思い出したように、マックは、ロビーに人があふれ返って困っていると言った。
「……仕方ないな。行くか」
「どこに?」
「ロビーに決まってるだろ」
 ……呆れたような目をディケイルに向けられ、ソウはムキになって立ち上がった。
 
 ――確かに、玄関ホールからロビーは、人で埋め尽くされていた。……いや、入りきらない人々が、シャトル駅のほうまで行列している。
「……これは想定外だったな」
 ディケイルはボサボサの頭を掻き回した。――と、手を怪我している事を思い出して、顔をしかめた。
「……あんたにとって、どこまでが『想定内』なんだ?」
 すると、ディケイルはあっけらかんと言った。
「守衛たちを仲間に引き入れるところまでは、計画通りだったんだ。――ただ、テレビ局と野次馬は予想していなかった」
 ………え?
 ――すると、鉱山を乗っ取り、ダンプカーを奪い『扉』をぶち壊し、空港を占拠し、その後、守衛が押し掛け、その前で丸腰で演説をし、彼らを説き伏せるところまで、筋書き通りだったと……?
 ソウの目には、どう見ても、行き当たりばったりだったようにしか見えなかったが……。
「俺ら、能の無い人間が、いくら集まったところで『軍』としての力にはならない。――戦闘のプロを仲間に入れたかったんだ。そのためには、彼らに完膚なきまでの屈辱を与えて、追いつめなければならなかった。……これでいいか?」
 ――分かったような、分からないような……。
「………しっかし、この人だかり、どうすればいい?」
「あんたの演説に感動して来てくださったファンの方々だ。自分で何とかしろよ」
「……いつから、そんなに意地悪くなった?」
 ソウに冷たい目を向けると、ディケイルは、ロビー中央の、時計台の台座に飛び乗った。そして、よく通る声で人々に呼び掛けた。
 
 「おーい、ちょっと聞いてくれ。
 ――俺の呼び掛けに応えてくれて、ありがとう。……だが、ここに居ては危険だ。
 そのうち、また、地球本部から『警備』がやってくる。――そうなった時、ここは、『戦場』になる」
 人々は、一斉にディケイルを見た。……これだけの人を一度に振り向かせる事ができるのも、ある意味、才能だろう。
「だから、みんなは、一旦、家に帰ってほしい。そして、俺たちと地球側と、どちらが正しいのか。……それを見守っていてほしい。
 ――正義が必ず勝つ。俺は、そう信じている」
 ………ディケイルの口から、「正義」などという臭いセリフが出てくるとは思わなかった。――だが、それを聞いた人々の様子を見て、ソウは理解した。
 
 「人間」というのは単純なもので、世の中に「正義」と「悪」が存在しているのなら、自分は「正義」の側でありたいと思っている。――「正義」など、世の中には腐るほど存在し、そんな概念、無いに等しいのだが。
 それを分かっているから、自分たちのカテゴリーを代表する人間に、「我々が正義である」と言われると、安心するのだ。……そして、時として、それを盲信する。
 
 ―――この男は、とんでもないペテン師だ。
 
 そんな、ディケイルの言葉を聞いた人々は、彼に惜しみない拍手を送り、声援を投げかけた。
 それに手を振って応えると、ディケイルはさっさとお立ち台から飛び降り、「行くぞ」とソウの腕を引っぱり、隠れるように空港長室へ戻った。


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