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 「――管制塔より報告。
 『ドミニオン』、空港着陸圏内より移動。――第3コロニー方面へ向かっています」
「―――なに!?」
 
 それから間もなく入った連絡で、ディケイルは顔色を変えた。
「……まずい!」
 慌ててマイクを手元に取り寄せ、先程とは違うボタンを押した。
「―――第1コロニー管理局か?」
 モニターの片隅に、若い女性が出た。怪訝そうな顔をしている。
「はい、そうですが……。そちらは?」
「何でもいい!今すぐ、第3コロニーに『避難勧告』を出せ!」
「……は?」
「第3コロニーに避難勧告だ!分からないのか!?」
「……そのような事を言われましても……」
 ディケイルは、包帯をした手で、またデスクを叩く。――大丈夫か?
「時間が無いんだ!早くしてくれ!!」
 すると、女性は不機嫌そうな顔をした。
「そのような事は、私の権限ではできません。『避難勧告』は、コロニー長の裁量でないと出せません」
「………ならば、コロニー長を呼べ。2分以内だ!」
 
 ――だが、コロニー長がモニターに現れたのは、10分以上経ってからだった。
「私が、ガニメデコロニーの総管理責任者である、マルコーだ。――おまえは、暴動の首謀者か?」
「あぁ、そうだ。――今すぐ、第3コロニーの住人を避難させろ。全員、即時に、だ!」
 だが、マルコーは鼻でせせら笑った。
「なぜ、私のような、正式に管理を任されている者が、おまえのような『犯罪者』の言いなりにならなければならないのだ?」
「そんな事は後でいくらでも聞いてやる。早くしないと、全員、死ぬぞ!」
「馬鹿馬鹿しい。――ははぁ、宇宙艦隊の出動と聞いて、我々を混乱させ、何とか逃れようという魂胆だろう?そんな見え透いた手に、誰が乗るか!」
 ディケイルは目を閉じ、大きく息をついた。
「なんでもいい。なんでもいいから……、頼む、第3コロニーに連絡してくれ!」
「断る!」
 ―――通信は切られた。
 ディケイルは、目を閉じたまま、絶望的な表情でうつむいた。
 
 それから間もなくだった。
 
 シェルター全体が揺れた。――重い地響きが、どこからともなく伝わってくる。
 不安に包まれた表情で天井を見上げる人々に目もくれず、ディケイルは目を開き、モニターの映像に見入った。
 
 ――第3コロニー。
 ソウの見慣れた景色が、一瞬で消え去った。画面全体が閃光に包まれた後、轟音が鳴り響き、その直後、映像と音声が消えた。
 
 ――後ろに居る何人かも、それを見ていた。……長い絶句の後、ひとりの鉱員が、震える声を上げた。
「………お、俺の家族は?――第3コロニーに住んでるんだ。家族は……?」
 その言葉を遮るように、再び、地面が揺れた。何人かが悲鳴を上げて、頭を抱えて座り込んだ。
「――俺の家は?かみさんは?娘は?」
「だ、だ、誰か!助けてくれ!俺の家族も、第3コロニーに居るんだよ!」
 シェルター内は、パニック状態になった。何人かが扉に向かって走り出す。それを、マックが遮った。
「落ち着け!おまえら!!今から行っても、どうしようもねぇ!おまえらも死にてぇか!」
「――家族の居ない、おまえらには分からんだろ!そこをどけ!!」
 そう言われては、元ホームレスとしては弱い。――だが、マックは怯んでいなかった。
「俺の家族は、――地球に残してる。生きてるか死んでるかも分からねぇ。……俺がこんなんになっちまったから、ヤツらに殺されてるかも分からねぇ」
 そう言って、突然、泣き出した。……いきなり、ゴツい大男が号泣しだしたのを見て、興奮していた鉱員たちも、一斉に静まり返った。
「だけど、どうしようもねぇんだ!全部、俺がいけねぇんだ!
 ――俺らの家族みたいな、可哀そうな人間を、もう作っちゃならねぇんだよ!だから、俺は、生きて、生きて戦うんだよ!!」
 ……床を叩いて泣きわめくマックを見て、次第に室内は落ち着きを取り戻した。不安な気持ちは変わらないが、とりあえず、座って様子を見る格好だ。
 
 ――だが、落ち着かない人間が他に居た。
 ディケイルは突然立ち上がると、扉に向かって歩き出そうとする。――慌ててソウがその腕を掴む。
「どこに行く気だ!?」
 ディケイルは振り向き、光の無い目をソウに向けた。
「放せ」
「いや、できない」
 ソウはディケイルの肩を掴み、行く手を阻むように正面に立った。
「―――俺は指揮官だぞ?」
「……これが、おまえの計画通りの行動だと言うのなら、放す。しかし、そうじゃないだろう?
 おまえが今動けば、全ての計画が壊れる。……おまえに協力してくれている、ここに居る人たちを見捨てる事になる。――そうじゃないのか?」
 ディケイルは、痛々しいほどやつれた表情をしていた。
 ……しばらく、そのまま目を閉じて立っていたが、やがて、力無くソウの手を振り払うと、モニター前の椅子に戻った。――コンソール・パネルのテーブルに、頭を抱えて突っ伏す。
 
 ―――シェルター全体が沈黙に包まれた。時折、すすり泣く声が聞こえる他、物音ひとつしない。
 
 「……お、おい、さっきの音は何だ?」
 モニターのひとつで、ワトソン空港長が不安げな声を上げた。――ディケイルが動く様子は無い。仕方なく、ソウはマイクを取り、通信のボタンを押した。
 すると、包帯に包まれた手がソウの手を押さえた。
「―――言うな。計画が崩れる」
「…………」
 
 ――その時、ソウは不思議な感覚を覚えた。
 言葉にするのは難しいが、何か、ひしめき合う感情の圧縮されたもののような……
 ――「怒り」「憤り」「哀しみ」「恐怖」、そして「激しい後悔」………。そういったものが、ソウの脳裏を駆け巡った。
 ……こんな感覚を味わったのは、初めてだった。自分の感情とは、少し、違う。自分の思いよりも、もっと、重い。――少なくとも、ソウは今、「後悔」はしていない。なのに、なぜ、今、こんな事を感じているのか……?
 ハッとして、ソウはディケイルを見た。
 ―――これは、もしかして、「ディケイル」の感情……!?
 
 ソウは反射的に、手を引っ込めた。
 ディケイルは、伸ばした右手を、そのままだらんとデスクの上に置いていた。
 
 ―――これは、一体………!?
 
 だが、再び轟音がシェルター内に響くと、ソウの頭からそんな事は吹き飛んだ。
 ――先程より、もっと近い。揺れも大きい。―――恐らく、頭上。
 人々は、じっと、この恐怖が過ぎ去るのを待った。
 
 ……数分で、その音はおさまった。
 無意識に頭を抱えていたソウは、ハッとしてモニターを見た。――ワトソンたちが映っていた映像のあった場所には、もう、何も映っていない。
 ………背筋が冷えた。
 
 「―――こ、こちら管制塔、聞こえますか?」
 モニターから、押し殺した声が聞こえた。……映し出された映像を見てソウは息をのんだ。
 ……管制室は、血の海になっていた。管制官たちは、見るも無残な姿で床に倒れている。――しかし、誰が話しているのだ?
 ディケイルがバッと起き上がって、マイクを握った。
「そちらは無事か!?」
「はい、こちらは全員無事です。――今のところ」
 ………よく見ると、血まみれの管制官のひとりが、通信機を前にして、こちらを見ている。――死んだフリ?
「ドミニオンは、空港施設を空爆した後、たった今、着陸した模様です。映像をそちらに送ります」
 すると、別のモニターに、薄闇の空港の様子が映し出された。――宇宙戦艦の巨体から、次々と人が降りてきていた。――全員、完全武装している。
「わかった。そのまま、『任務』を遂行してくれ」
「了解です!全力で『死んで』ます!」
 ――そういえば、チャン大将たちの姿が見えないが……、どこかに隠れているのだろうか?
 
 ……その後すぐに、今度はニーナから通信が入った。
「―――大丈夫か!?」
 映された映像は、先程とアングルが違う。――恐らく、カウンター内の非常用通信だ。
「大丈夫です!……空港長が、腰を抜かしてますけど」
 見ると、ニーナの脇で、ワトソンが真っ白な顔をして、口をわなわなと震わせていた。
「間もなく、そちらに『敵』が行く。――あとは頼む」
「分かりました。……音声だけ残して、様子をお伝えします」
 画像が切られた。――だが、雑音を含めた音声は続いていた。
 
 ……しばらくすると、雑音とは違う音が聞こえて来た。――重々しい軍靴の音。非常に数が多い。
「―――た、た、た、助け、助けて………!」
 ワトソンの震える声が聞こえた。すると、いくつかの足音が、近付いてくるのが分かった。――銃を構える時の、重い金属音。
「た、た、た、た、た、た……」
 ……ワトソンの声は、もう、言葉になっていない。
「―――おまえは何者だ?」
 明らかに、あの場に居る5人とは違う。――『宇宙艦隊』のヤツだろう。
「わ、わ、私は……、く、空港長の………」
「――ガニメデ宇宙空港のワトソン空港長のようです」
 制服のポケットに入れてあった、社員証でも見たのだろう。
「た、た、助けて……」
「縛られています。――『ヤツら』にやられたんでしょう」
 ヤツら。……当然、ディケイルたちの事だ。
「そ、そうだ!」
「『ヤツら』は?」
「だ、第3、コロニーに………、第3コロニーに行くと言っていた」
 ―――これが、ディケイルが言っていた『任務』か。ソウは悟った。
 それにしても、これが「演技」だとしたら、ワトソン空港長は大した「役者」だ。
「空港内には?」
「――多分、居ないと思う。居たとしても、……これでは、死んでるに決まってる」
 すると、別の足音が聞こえた。
「チーフ。管制塔の職員は、皆殺しにされていました。――『ヤツら』は、見当たりません」
「そうか」
 チーフと呼ばれた人物は、空港内を見回るように指示を出し、それからワトソンに言った。
「あんたら、ここが崩れなくて、運が良かったな。でないと、余計な死人を増やすところだった。
 ――まぁ、死人が何人か増えたところで、私は構わんがな」
 
 ………なんという言い草。ソウは、煮えくりかえるような怒りを覚えた。
 ――その隣で、ディケイルが包帯を巻いた手を握りしめている。その目は、危険なほどに鋭い光を放っていた。
 
 その後、チーフは無線で、全員集合するよう、指示を出した。
「建物の屋根は全部壊して、上から確認した。――誰もいないだろう。
 こんなところで時間を取っているよりも、第3コロニーの様子を確認に行く。……まぁ、全員死んでいるだろうが、万一『生き残り』が居たら、見つけ次第、射殺して構わん」
「……わ、私はどうなる……?」
 ワトソンが言うと、チーフは冷たく言い放った。
「どうせ、おまえの処遇は『懲戒解雇』だ。我々の知った事じゃない」
 
 ―――その後、足音は遠ざかり、静かになった。
 直後にモニターが映り、ワトソンが「わ、私はやれるだけの任務をやったぞ!早く、助けに来い!」と訴えたが、ディケイルはそれを無視して、立ち上がった。
 
 「――こちらも、任務を開始する。行くぞ」


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