忍者ブログ
オリジナル小説のダストボックス

WRITE | ADMIN

PR
カウンター
プロフィール
HN:
碧井 湊
性別:
非公開
自己紹介:
頭の中には、
いつも何かのストーリー。
なかなか、
文字にならないのが難点。

詳しい事はこちらへ。
メールフォーム
感想・ご意見等 お気軽にどうぞ
Powered by NINJA TOOLS
忍者サイトマスター
バーコード
ブログ内検索
当ブログの利用方法
★プラグイン最上部のブログタイ
 トルをクリックで、トップページ
 へ戻ります。
★トップページより、各小説タイ
 トルをクリックで、目次ページ
 へ進みます。
★プラグイン内「カテゴリー」から
 も、目次ページを開けます。
★小説各ページに「次へ」のリン
 クはありますが、「前へ戻る」
 リンクはありません。プラウザ
 内の「←」をご利用いただくか、
 一度目次ページへ戻るかして、
 ご覧ください。
アクセス解析


忍者ブログ [PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


web拍手 by FC2


09.  英雄の条件
 
 
 「――何を馬鹿げた事を言っている。おまえは、自分の立場が分かっているのか?」
 チーフは、ディケイルをあざ笑う言葉を浴びせた。だが、ディケイルは表情ひとつ変えなかった。
「そこ言葉、そっくりそのままあんたに返す。
 ――今の自分の立場を、よく考えてみろ。反乱軍のごみカスどもに部下全員を人質に取られ、あんたは情けなく手を上げている。……完全にあんたの負けだ。
 ならば、これからどうする?大人しく地球に帰るか?
 地球に帰れば、待っているのは『懲戒解雇』だ。そうなれば、あんたの家族も、道連れだ。路頭に迷い、そのうち、『野犬狩り』に殺される。
 ――それよりは、ここで死んだ方がマシじゃないのか?そうすれば、あんたは『殉職』扱いされ、家族には遺族年金が入る。
 ……どちらを選ぶかは、あんた次第だが」
 
 ―――ズバリと指摘され、チーフは言葉に窮した。
 
 「しかも、ただ、あんたに死んでもらおうと言っている訳じゃない。
 ――俺は、あんたを許せない。だから、今すぐ撃ち殺しても構わない。だが、敢えてそうしない。なぜだか分かるか?」
 ディケイルの目は、刃のようにチーフの顔を突き刺していた。
「あんたは、『敵』も『味方』も、自分以外の人間はどうでもいいと思っている。そうだろう?
 でなければ、一般市民が何千人も住んでいるコロニーを爆撃するなんていう、悪魔の行為ができるはずもない。違うか!?」
「違う!コロニーの空爆は、『上』からの指示だ。俺は、それに従ったまでだ」
 チーフが弁明すると、ディケイルは不快そうに鼻を鳴らした。
 
 「あんたは、自分のために、自分の立場を守るために、ただ、それだけのために、多くの命を奪った。――なぜ、『上』に、それは間違っていると言わなかった?なぜ、命令を鵜呑みにした?
 ――それは、その方が『楽』だからだ。『上』が敷いてくれたレールの上を走ってさえいれば、何も考えずとも、ある程度のところまでは行ける。自分は『責任』を取らない。……そうしていく事に、何の疑問も持たない。
 ………俺は、そういう人間が一番嫌いなんだ」
 
 ――周囲の空気までもが、氷の大地同様、凍結したかのように、向きあった2人は微動だにしない。
「……だから、最期くらいは、あんたには『責任』を背負って、死んでもらいたい。罪の無い人間を大勢、一瞬で焼き尽くした『罪』をな。
 ――それだけではない。あんたは『指揮官』だ。その『責任』も果たさせてやる。
 俺も指揮官だ。だから分かる。――部下たちは、あんたに『命』を託している。その『責任』を、あんたの腕で、部下たちに見せてみろ。
 ―――それに、俺が負ければ、大人しく死のう。それで構わない。俺たちの組織は、あんたたちとは違い、各自が自分の『意思』で動いている。……だから、俺ひとりがいなくなったところで、困りはしない。
 もし、俺が死んでも、仲間たちには、あんたらに手出ししないように約束させる。あんたは、俺の首を、地球に持って帰ればいい。それだけだ」
 
 ……今度は無茶苦茶を言い出した。――止めるべきか?
 ソウは周囲を見回すが、誰も動こうとしない。――それだけ、ディケイルの事を信頼しているのだろう。仕方なく、ソウも黙って見守ることにした。
 
 「……それが、俺があんたに『決闘』を申し込んだ理由だ。自分が正しいと思うのなら、その『正義』を俺に見せろ。
 武器は選ばせてやる。好きなものを使え。……それに、見ての通り、俺は右手が使えない。利き手では無い左手で相手してやる。―――それでも拒むか?」
 
 ――チーフは沈黙していた。だが、屈辱と動揺で、肩が小刻みに震えているのが分かる。
 「俺は気が短い。さっさと決めろ。……それとも、あんたにとってこれだけの好条件を出してやってるのに、俺に勝てる自信が無いのか?」
 ディケイルがさらに追い打ちをかける。
 
 ――やがて、決意したように、チーフはゆっくりと動き、肩のマシンガンを手に取り、構えた。
「やっと決めたか。では、今からやろう。
 ――あんたも、映画か何かで見たことくらいはあるだろ?互いを背にして立ち、お互いに10歩、前に進む。――その後、振り向いて、ズドン、だ。いいな?」
 チーフは無言で肯定を示し、ディケイルにゆっくりと歩み寄った。ディケイルも前に進み、お互いが手の届く距離になったところで、互いに振り返った。――背中合わせに立っている格好になる。
 
 それから、ディケイルが急にこちらを見た。
「おい、ソウ!おまえがカウントしろ」
 突然話を振られ、ソウは心臓か止まるかと思うほどドキッとした。
「……は!?」
「立会人になれと言ってるんだ。――あんたも、誰か信用できる部下を呼べ」
「――私には、そのようなものは必要ない」
 チーフが言うと、「私が、その役目、引き受けよう」と、ひとりが前に出た。――元守衛隊長のマッド・テイラーだった。
「彼は、私の元上司だ。――こうなったのも何かの縁、最期を看取らせてもらう」
「――き、貴様――!!」
 チーフは歯ぎしりしたが、これで、「準備」は整ってしまった。……ソウも1歩前に出た。
「……では、私とナカムラ『参謀長』とで、交互にカウントを行う。いいな?」
 ―――ちょっと待て。いつ俺は「参謀長」になったんだ!?知らないところで、何を吹き込んでいるんだ、あの男は……!?
 しかし、それに対して抗議している雰囲気では全く無い。――この「決闘」の顛末を見守る、それが今遂行すべき任務だ。
 
 「――では、カウントを開始する。………『1』!」
 マッド・テイラーが言うと、両者が動きを合わせて、1歩前に出た。
「―――『2』!」
 ……もう、何がなんだか分からない。なるようにしかならない。半ば投げやりな気持ちで、ソウも声を上げた。
「――『3』!」
 だが、マッド・テイラーの声に被るように、衝撃音が聞こえた。――シャトルの中からだ。誰かが銃を発砲したのだろうか?
 
 その場に居た者たちが、その音に一瞬意識を取られた隙に、チーフは動いた。
「うわあああああっっ!!」
 野獣のような声を上げ、チーフはマシンガンを構えて振り向いた。銃口から、火花が迸る。――激しい銃撃音。周囲で銃を構えて威嚇していた者たちは、とっさに地面に身を伏せた。
 
 「チーフ!約束を破られては困る!」
 マッド・テイラーがチーフに向けて発砲した。――その銃弾は心臓に当たったはずなのだが、しかし、チーフは発砲を止めない。
 ………防弾装備になっているのだ!
「くそっ!!」
 ――こんな勝負、勝ち目が無いではないか!……ディケイルは……、ディケイルは無事なのか!?
 ソウが這うようにしてディケイルに目をやると………。
 
 ディケイルは、身を低くし、真っ直ぐにチーフのほうを見ていた。
 頭上スレスレを銃弾が飛び過ぎる。――なぜか、それが、まるでディケイルは銃弾を見切っているように、ソウには見えた。スローモーション映像のように、正面から飛んでくる銃弾をひとつひとつ認識し、それに合わせて微妙に体勢を変えている。――なぜ、そんな風に見えるのだ?そんな事、絶対に無理だ。あり得ないだろ??
 その、スローモーション映像の中で、ディケイルはハンドガンを前に構えた。そして、一点を見定めると、引き金を引く。
 
 その銃弾は、一直線を描き、チーフの喉元に吸いこまれた。防弾装備のわずかの隙間、襟元とヘルメットのつなぎ目のファスナーの部分、その一点を、銃弾が貫いた。
 ……次の瞬間、そこに、赤い花が咲く。――彼岸花のように、花弁の細長い、そして、儚い花。
 
 「――――!!」
 チーフは、無音の悲鳴を上げると、マシンガンを宙に放り出し、背中から地面に倒れた。
 ……そして、動かなくなった。――その背中に、ゆっくりと、赤い海が広がっていく。
 
 ………誰も言葉を発しなかった。
 恐らく、シャトルから銃声が聞こえて、チーフが倒れるまで、ほんの数秒間の出来事だ。ここに居る多くの人たちが、何が起きたのかさえ、分かっていないだろう。
 ……だが、俺が見たものは、一体何だったんだろう――?
 
 気付くと、ソウはその場にヘナヘナとへたり込んでいた。……全く情けないが、起き上がろうとはしているのだが、力が入らない。
「……無事か?」
 マッド・テイラーに手を貸してもらって、何とか気合いを入れて、立ち上がる事ができた。
 すると、頭上を風が吹き抜けた気がした。――見上げると、ゴリアテの腕がすごいスピードで移動している。
 ……ゴリアテは、銃声がしたシャトルを『手』で叩き、まるで積み木を転がすかのように横倒しにした。
 中で、軍人たちが転がっているのが見えたが、死にはしないだろう。
 ――それが、真剣な『決闘』の邪魔をした報いだ。
 
 ディケイルはというと、片膝を地面に着いて、生気の無い目をチーフの抜け殻に向けていた。
「……おい、大丈夫か!?」
 マックが駆け寄り、腕を取ろうとするが、それを軽く振り払い、ディケイルは無言で立ち上がった。
 そして、ヨロヨロとシャトルの方へ行き、かすれた声を出した。
 
 「―――おまえらは、このまま、地球へ帰れ。さっさと帰れ!……でないと、コロニーの連中になぶり殺しになれるぞ」
 
 それを聞いて、割れた窓から、軍服を着た男たちが次々と出て来た。手にした武器を地面に放り出し、こけつまろびつ、空港の方へ走って行く。壊れていない窓は、マックが銃底で叩き割って回り、そこからも、この状況からの脱却が図られた。
 
 ――それを見送るディケイルの無線が鳴った。
「……あぁ、チャン大将か。―――そうか、『ドミニオン』が手に入ったか。ご苦労さん。
 今から、そちらに『お客さん』たちが行く。輸送船に乗せて帰してやってくれ」
 
 ……その通信で、ソウは悟った。
 チャン大将の役目は、管制塔に潜み、『ドミニオン』がカラ、もしくは維持するだけの最低人員になったところで乗り込み、奪い取る。
 ――初めから、輸送艦と『ドミニオン』を交換する事も目的だったのだ。
 だから、空港への爆撃で輸送艦が壊されないよう、ハンガーに隠しておいたのか。
 
 ………一応は、今回の作戦も『成功』という事になる。
 しかし、その代償は、あまりにも大きい。
 
 ――チーフの乱射により、こちら側にも多少のけが人が出ていた。幸い、命に関わる重傷者は居ないようだったが、防護服に穴が空いただけでも、処置が必要だった。何人かが、仲間に抱えられ、空港へと戻って行った。
 その様子を見送りながら、ディケイルは一同に指示を出した。
「――これから、『第3コロニー』に向かう。……もしかしたら、助けられる人が居るかもしれない。行ける者は、シャトルに乗れ」
 ゴリアテにも指示が出された。同じく、救助要員として第3コロニーへ向かえ、というものだ。ゴリアテは立ち上がり、「敬礼」するように腕を動かすと、ノシノシと重い足音を立てながら歩いて行った。


>> 次へ
PR

web拍手 by FC2


※ Comment
HN
TITLE
COLOR
MAIL
URL
COMMENT
PASS


※ この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:



Powered by 忍者ブログ  Design by まめの
Copyright © [ Second Box ] All Rights Reserved.
http://secondbox.side-story.net/