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 先にシャトルに乗り込んでいた誰かが、緊急停止装置を解除し、復旧ボタンを押した。間もなく、シャトルは動力を取り戻し、昇降ドアが開く。
 ――ディケイルはそこから乗り込むと、近くの座席に、倒れこむように身を預けた。
「………大丈夫か?」
 ソウも、何となくその隣に座る。
「……………」
 ディケイルは、割れた窓から、抜け殻のような目を外に向けていた。
 ――それ以上、何を言っていいのか分からず、ただ黙って座っていると、ディケイルがポツリと話し掛けてきた。
 
 「――なぁ」
「……ん?何だ」
「―――俺は、やっぱり、『人殺し』か?」
 ここのところ、立て続けに起こる出来事が、やはり、ディケイルを苦しめていたのだ。少し、考えをまとめてから、ソウは言った。――あまりにクサいセリフだったので、少し、口に出すのに躊躇したが。
 
 「人類の歴史をみてきても、血を見ずして『革命』が成功した例など無い。今は、他からどう思われようが、世界が変わってしまえば、それは皆に認められる。
 ――『英雄』というのは、そういうものなのではないか?……俺は、あんたを、そういう人だと思って見ている」
 
 ………口に出してから、あまりにありきたりでチャチな事を言ったものだと、ソウは反省した。
 ディケイルは、相変わらず窓に顔を向けている。
「――10人殺せば『人殺し』だが、10万人殺せば、それは『英雄』だ。―――何かで、そんなセリフを聞いた事がある。
 ………ならば、俺は『人殺し』でいい。それで充分だ」
 
 ――救助組の乗り込みが終わったのだろう。シャトルが静かに走りだした。窓から、すさまじい冷気が吹き込んで来る。
 
 「だが――」
 ディケイルは、ヘルメットの下で、ソウにやっと聞き取れるくらいの声で言う。
「『英雄』とは、『勝つべくして勝つ者』。――そんな話も聞いた事がある。
 ――そういう意味であれば、俺は『英雄』になりたい。……そうでなければいけないと思ってる」
 ソウは、風音に紛れて聞き逃さないよう、静かにディケイルの声に集中した。
「――だけど、人の『命』を背負う事が、こんなに、重いものだとは思わなかったよ。
 今まで、自分だけで生きて来た。だから、『失うもの』など何もなかったんだ。
 でも、今は違う。――『失ってはならないもの』ばかりで、もう、どうしていいのか分からないんだ。
 ……『勝つべくして勝つ』。それは分かってる。勝てるように、必死で対策を考える。――しかし、どんな作戦を考えたところで、それは確実性のない、ただの『ギャンブル』なんだ。……完全に、思い通りにはならない。必ず、何かを犠牲にする。
 ―――それが怖いんだ………」
 
 ……ディケイルが、こんな気持ちでいたとは……。ソウは考えた事が無かった。
 今までの様子を見てきて、真っ直ぐに、ただ前しか見て無くて、理想に向かって、猪突猛進、突き進んでいる、そういうヤツだと思っていた。
 犠牲を払う事への痛みを抱え、一旦は立ち止まっても、「進む」事への躊躇は無い。そうだとばかり思っていた。
 ソウは思い出した。シェルターに居る時感じた、あの、「激しい後悔」。――それを言葉にすれば、こんな感じだろうか?
 「革命家」としては致命的な、精神的な弱さを持っている。誰かが後押ししてやらないと、どこかで壊れてしまうかもしれない。
 
 ディケイルは続けた。
「本当は、逃げ出したいと思ってる。こんな事、始めなければよかったと思ってる。――あの時、大人しく死んでいれば、こんなにたくさんの人たちを巻き込まないで済んだんだ。
 ――俺ひとりが死ねば済むものなら、もう、やめたい………」
 
 ………かなりな重症だ。
 「自分で言い出しておいて、何だその弱気は!?」と一喝すれば、それまでの話でもある。――しかし、それでは誰も救われない。ただ、ディケイルに『責任』を押しつけているだけだ。
 ソウは、また少し考えてから、言った。
 
 「――こういう言葉は聞いたことがあるか?
 ……『英雄』とは、ひとりでは存在し得ない――」
 
 ………これは、ソウが咄嗟に考えたハッタリだ。
 だが、ディケイルはハッと顔を上げて、ソウを振り返った。
 
 「ひとりで悩むな。仲間が居てこその『英雄』なんだ。
 ――言い方を変えれば、ひとりで背負い込んで、ひとりでいいトコ取りするな。
 これだけの、仲間がいる。――そのみんなで、『英雄』になればいいじゃないか」
 
 ヘルメット越しに、グレーを瞳が真っ直ぐにソウを見ていた。それに向かって、ソウはグイと親指を立てた。
 ――この男を後押しする「誰か」、そのひとりに、なってみようじゃないか。
 
 「俺だって、『英雄』になりたいっていう、子供じみた夢を捨てたワケじゃない。
 ―――その称号を盗まれないように、気を付けろよ」
 
 
 
 シャトルは、第1コロニーを通過し、第2コロニー駅で停車した。――次の「駅」が存在しないからだ。
 駅を降りると、街は混乱の極みになっていた。第3コロニーとの隔壁へ向かって、救急車両が向かおうとするが、逃げまどう人々が障害になって、全く動けない。
 
 すると、マックがその前へ出て、大声を上げた。
「みんな!落ち着け!敵はもう居ない。もう、これ以上、攻撃はない!だから、無事なヤツは、まず、家に帰れ!」
 ……拡声器を使っているわけでもないのだが、マックの声は、人々の喧騒の中を響き渡った。――すごい肺活量だ。
 その声で、人々は若干落ち着きを取り戻したようで、徐々に人がはけて行った。
 
 それに合わせて、救急車両も前へ出る。それを追うように、「救助組」の面々も、隔壁へ急ぐ。
 コロニーの隔壁は、鉱山にあった扉と同等な強度を持ったものだと、聞いた事がある。普通に予測される災害程度では、これを破る事はできない。
「――だけどよ、これを開けちまったら、第2コロニーもヤバくねーか?
 だって、これの向こうは『外』だろ?」
 ……まぁ、第3コロニーが壊滅していれば、当然、そういう事になる。
 救急隊員たちも、扉を見上げて、固まってしまった。
「………どうするよ、アニキ」
 ディケイルは黙って扉を見上げて考えている様子だったが、ふと思い付いたように言った。
 
 「少しだけ開ければいい」
 
 ―――考えていたワリには、あまりに単純な……。
「人ひとり通れるくらいに、少しだけ開けて、俺たちが通過し終わったら、また閉めてくれ。――できるか?」
「……そのくらいならば………」
 消防隊員たちは、隔壁の操作盤の前に行った。
「―――では、開けますよ」
「おう!みんな!できるだけ近くに来て、走る準備をしろよ!」
 マックが気合を入れる。
 
 ……重々しい音を立てて、扉がゆっくり動きだした。数十センチの幅が開いたところで、マックが合図を送る。
「行くぜ!早くしろ!」
 防護服姿の男たちが、次々に扉の向こうへ消えて行った。
 ――ソウも、誰かに突き飛ばされるようにして、扉の隙間に転がり込んだ。ゴツゴツのコンクリートの上に投げ出され、「痛っ!」と腰をさすりながら立ち上がり、顔を上げると………
 
 
 そこは、まさに『地獄』だった。


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