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10.  白い髪の少年
 
 
 『地獄』―――。
 
 そんな抽象的な言葉、想像の世界でしかないと思っていた。
 ――だが、ソウの目の前の光景は、その想像を遥かに凌ぐものだった。
 
 跡形も無く崩れ落ち、コンクリートの破片へと姿を変えたビル。
 冷気が吹きすさぶ中、赤い炎が煌々と燃えている。
 ヘルメットのゴーグル部分を、真っ黒い煤が襲う。こまめに手で払わないと、前が見えなくなりそうだ。
 
 「……………」
あまりの状況に、一同は声を出す事すらできなかった。
「―――だ、誰か、居ないか?」
 しばらくして、マックがようやく言葉を発した。
「――探そう。希望は捨てるな」
 ディケイルはそう言って、歩き出した。ソウや他の面々も、それに従う。
 
 まともに建っている建物など無かった。窓ガラスは溶け、蒸発し、かつて壁であったものの残骸から、鉄筋がブツブツと溶けだし、塊になっている。
 あちらこちらに、生活の名残は見えるが、どれも焼けただれ、煤をかぶり、それが過去のものであった事を物語っていた。
 
 ―――一体、地球のヤツらは何をしたのだ?どうして、ここまでひどい事ができる!?
 
 ソウにとっては、あまりにも現実離れした光景で、逆に、ヘルメットの外側は映画か何かなのではないか?とも思えて来た。このヘルメットは、3D映像を楽しむためのもので、今、ソウは立体3D映画の中に来ているのだ……。
 
 しかし、それが現実である事を、すぐに思い知らされる事となる。
 
 少し行くと、巨大な物体が、建物の瓦礫を覆うように落ちているのが見えた。――コロニーの屋根だ。
 その隙間から、「黒」と「赤」以外の色が見えた。――明るいグリーンだろうか?炎に照らされてチラリチラリと、その存在を訴えていた。
 それを見て、マックが声を上げた。
「―――おい!人の『脚』だ!……ひょっとしたら、あの屋根に護られて、生きてるかもしれねぇ!」
 それを聞いて、一同は一斉に「それ」に駆け寄る。――確かに、ライトグリーンのスラックスに包まれた「脚」だ。ソウにも見覚えがある。確か、よく行くハンバーガーショップの制服が、こんな色だった。
「……持ち上げるぜ!せいのっ!!」
 マックが合図し、一同は屋根に手をかけ、引っ張り上げようとするが、とてもじゃないが、歯が立たない。
「………畜生!」
 
 ――すると、遠くから、ノシ、ノシと、何かを踏みつけて歩く音が聞こえてきた。……ソウが顔を上げると、炎の中を、こちらに向かって歩いて来るゴリアテが見えた。――コレだ!
 急いでエドに無線連絡を送る。
「……おい!こっちだ!分かるか!?」
「―――カメラが煤だらけで、よく見えないっす」
「あまりあちこち踏み付けるな。少しでも空いている道を歩け」
 ――ゴリアテはすぐにやって来た。その巨体で、屋根の端を掴むと、グイと持ち上げる。
 
 ………その下を見て、ソウはヘルメットの上からだが、口を押さえずにはいられなかった。
 ――その「脚」は、どこにも繋がっていなかった。片脚だけが、屋根に挟まるようにして落ちていた。
 その向こう側には………
 
 瓦礫の上に、数十体の、かつて「人」であった「もの」が、散乱していた。確認するまでもない。―――生きている人など、居ない。
 コロニーの巨大な屋根に押しつぶされ、ただ、炎を受けてはいないので焼けてはいないが、蒸し焼きになったような状態で………
 
 ソウは立っていられなくなり、地面に手を着いた。頭を上げている事さえ苦しい。目の前が靄をかけたように暗くなり、冷たい汗が、身体じゅうから噴き出している。
 ――ひどい、ひどい、ひどい………。
 気分の悪さで気を失いそうだったが、うっすらと目に入った地面の色に見覚えがあり、何とか正気を取り戻した。
 ……赤い、レンガ敷きの地面。―――公園の広場と同じ色だ。
 
 ………人々は、公園の広場に逃げ込んだものの、多くの者はコロニーの屋根で圧死し、それでも何とか助かった少数の人も、この下から逃げ出す事はできず、外からの灼熱の炎に焼き殺された………。
 
 ――本来ならば、この中に、ソウが居ても全然おかしくないのだ。
 あの時、ディケイルと出会わず、「独立支援軍」に参加せず、空港に居なければ、ここに倒れている人々と同じように、炎に追われ、逃げまどい、――死んでいた。
 
 ソウには、家族が居ない。地球に居た頃に両親ともに亡くなり、兄弟もない。親戚付き合いも特に無く、付き合っている彼女も居ない。――全くの孤独な身の上だった。
 だから、第3コロニーが襲撃された事を知った時も、どこか、他人事のような感があった。心配すべき人もなく、悲嘆に暮れる人々を、「可哀そうだ」と見ていた。
 ―――しかし――。
 ……ハンバーガーショップに居た、ちょっと可愛いあの店員も、マーケットの前でいつもギターを爪弾いていたあのおじいさんも、アパートの廊下を走り回るから迷惑だった隣人の子供も……、みんな、いなくなった。
 ソウに関係する人々のほとんどが、この一瞬で消え去った。
 ――ソウは、ひとりなどではなかった。………この場になって、改めて実感した。
 
 ………なんで、助けられなかったのだろう。
 自分だけ安全なところに居て、自分と関わってくれた多くの人たちを、見捨てた。
 本当に、どうしようもなかったんだろうか?何とか、助ける手段はなかったんだろうか?
 ……せめて、シェルターでもあれば………。
 
 ―――この時、「シェルター」という言葉に、なぜかソウはハッとした。
 ……「シェルター」?それがどうしたんだ?当然、コロニーにシェルターが完備されていれば、このような被害は防げた。……いや、そういう意味とは少し違う気がする。――今、心の中に思い浮かんだモノは、一体何だったんだろう……?
 
 だが、それが形になろうとするより前に、「声」がソウの意識を現実に向けさせた。
「おい!大丈夫か!?」
 マックだった。大きな身体で、ソウを心配そうに見下ろしている。
「………大丈夫、――だ」
「帰って休んだ方がよくないか?」
「いや、――大丈夫」
「そうか?……でも、どっちにしろ、一旦空港に戻ってくれ。――で、ダンプカーを持ってきてほしいって、『元帥』が言ってた。……何かに使えるかもしれねぇ、って」
 ――確かに、この瓦礫を少しでも片付けなければ、もし、万一、生存者が居たところで、救出も難しいだろう。
 一緒に行こうか?と言うマックの申し出を断って、ソウはひとり、第2コロニーへ戻った。
 
 
 
 ディケイルたちは、気分の悪くなったらしいソウをマックに任せ、さらに見回りを続けていた。
「―――誰か居ないか!?居たら返事してくれ!!」
 ……もう、何度叫んだだろう。声がかすれて喉が痛い。――しかし、こちらの呼び掛けの声と足音以外、物音ひとつしない。
 ディケイルはひどく疲れていた。――当然だ。あの、「一斉清掃」のあった日以来、ろくに寝ていない。さらに言えば、強度の偏食のおかげで、普段から、体力が無いのだ。
 ……目が回る。それでも、もし、万一、救える命があれば、それを言い訳に見捨てる事なんてできない。一通りは見回らなければ……。
 
 だが、それからしばらくすると、めまいだけでなく、ひどい頭痛までしてきた。
 ―――まずいな。
 
 ディケイルは、「第六感」的なものが、他の人よりも鋭いところがある。――だから、こういう、人が多く亡くなった場所などに来ると、その「念」が頭に入って来て、体調が悪くなる事があるのだ。
 ――この頭痛も、多分、ソレだ。
 頭痛の中で、その「念」が、徐々に具体的になってくる。
 ――暗い。狭い。息苦しい。――怖い。怖い。怖い。怖い。―――
 
 ……あれ?
 ディケイルは不意に立ち止った。
 ―――なぜ、「痛い」とか「熱い」とかという、もっと「死」と直結する感覚が無いのだ?まるで、生きている人間の思いみたいだ………。
 
 その時、ディケイルはハッと気付いた。
 ――誰か、生きている!!
 間違いない。――恐らく、暗く、息苦しいような狭い場所で、じっと助けを待っている。……どこだ?それはどこだ??
 
 「――どうした?」
 ディケイルの様子に、マッド・テイラーが聞いてきた。――だが、今はそれに返答をする余裕などない。もっと、意識を集中して………。
 
 ――暗い。筒状の丸い空間。頭の上に、障害―――。
 
 ………マンホールの中か?しかし、爆撃で道路が陥没して、地下水路もほとんど崩れているようだが……。
 ――だが、可能性は捨ててはいけない。
 
 ディケイルはマッド・テイラーに言った。
「この辺りのマンホールの中に、誰か、閉じ込められているかもしれない。探してくれ」
 マッド・テイラーは一瞬キョトンとした顔でディケイルを見たが、すぐに周囲の仲間に指示を出し、散った。


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