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碧井 湊
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 画面の向こうで、ミカエルは、氷よりも冷え切った目をディケイルに向けていた。
「何の用だ?暴動の首謀者が」
「用事がなければ、連絡しては悪いか?」
「用事が無ければ、おまえなどに構っている暇はない」
「――あ、そう」
「余計な事はいい。要件を言え」
 
 ――相変わらずだ。この、人を見下した言い方。……当時は腹立たしかったが、今は、懐かしさすら覚える。
 
 「では、率直に言う。――俺は、あんたに宣戦布告する」
「勝手にしろ。おまえがどうしようと、叩き潰すのみだ」
 ディケイルは、口角を上げてニヤリとして見せた。
「――本当に、そんな事を言っていいのかな?ミカエルさんよ」
「………?」
「―――あんた、『核』使っただろ?」
 ミカエルは、少なくとも表面上は動揺を見せず、射抜くような目をディケイルに向けている。
 
 「――証拠はある。……俺たちは、置き土産に『ドミニオン』を頂いた。中身を見てビックリしたぜ……」
 ディケイルは親指の爪を噛んだ。――イライラしている時の癖なのだ。
「……『核』の置き場はふたつあった。だが実際は、『核』はひとつしかなかった。
 地球から、そんな不要なモノを持ってくるハズが無い。――つまり、ひとつは、使われた。
 その理由は――。
 おまえは、秘密裏に『核』の開発を進めていた。これまで、主に製造されてきた『ウラン』ではなく、『G-883』による、核兵器――。
 しかし、あんたは、ヴィクトール・ラザレフの遺志を引き継ぎ、『全ての暴力の放棄』を唱えている。……だから、せっかく核兵器を作っても、地球で『実験』をする事ができなかった。――そこに、ガニメデでちょうど良さそうな『暴動』だ」
 ミカエルは、表情ひとつ変えずに黙っていた。
「そこで、あんたは『ドミニオン』に、核をふたつ持たせた。――小さいのと大きいの。
 小さいのは、コロニーひとつ消し去る程度の小型のもの。大きいのは、――その50倍の威力がある、ガニメデコロニー全てを吹き飛ばしても余りあるもの―――。
 俺が『ドミニオン』で見た『核』のサイズが、コロニー1個をターゲットにするにしてはあまりにデカかった。被害の状況を考えると、必然的にそういう事になる」
 
 ……相変わらず、ミカエルは黙っている。――何か反応しろ。ディケイルはまた爪を噛んだ。
「あんたは、『暴動』がもっと大きくなっていたら、『大きいの』を使うつもりでいた。――だが、コロニー長やら幹部連中から連絡が入り、まだ、俺たちに従っていない、反暴動派の連中の方が数が多いと聞き、仕方なく、俺たちが根城にしているらしいと情報があった、第3コロニーひとつを壊すだけで我慢した」
 ――自分でも気付いていた。今、ディケイルの瞳は、ミカエルのものとは対照的に、焼けるような熱を持っているだろう。……すぐに熱くなる。それも自分の悪い癖だと、自覚はしている。ここは冷静にならなければ……。
 
 「……そもそも、暴動の鎮圧程度に、『ドミニオン』が出てくる事からして、おかしいと思ったんだよ。実際に現場を見に行って、これは普通じゃないと確信した。――あんたも、『ドミニオン』の連中に報告を受けて、見ただろ?
 ―――あれが、あんたが目指す『平和』なのか?
 自分のコントロールの効く範囲だけが平和ならば、その他は、全て切り捨てる。それが、あんたに出された課題の『答え』なのか!?
 ……それが、ヴィクトール・ラザレフが目指したものだと、本当に、そう思っているのか?」
 
 ……ミカエルはようやく口を開いた。
「――何も為してこなかったおまえなどに、何が分かる」
「…………」
「『トランセンダー』として、俺は、可能な限りの事をしてきた。――その結果がこれだ。
 ヴィクトール・ラザレフがどう思おうが、あのオヤジの作り出した最高傑作であるこの『私』が、この世界を作り出した。……それ自体が、ひとつの『答え』ではないのか?」
「もし、そうだとするならば、あのオヤジは、とんでもない『不良品』を作った、という事だ」
 ディケイルに『不良品』と呼ばれ、ミカエルは明らかに冷静さを失った。
「――私が、『不良品』だと……!?
 では、おまえは何だ?自分の為すべき役割から逃げ、『平和』どころか、『争い』の種を撒き散らす、おまえは何だ!?
 ―――おまえは、人間以下の『ゴミくず』だ!」
「あぁ、そうだ。俺は『ゴミくず』だ。自覚はしている。
 ……だが、世の中、その『ゴミくず』でなければ気付けない事、『ゴミくず』でなければできない事があるから困る」
 ディケイルは、落ち着き払った素振りで、ミカエルの様子を見ていた。
「俺は、『選択肢』を作るために立ち上がった。あんたは、その『選択肢』を潰したい。――あんたの作り出した体制にとって、余計な『選択肢』を与える事は命取りだからな。それはいい。
 ――俺はあんたと取引をしたい」
 
 『取引』という言葉を聞いて、ミカエルは本来のビジネスライクな思考を取り戻したようで、再び冷たい目をディケイルに向けた。
「―――何だ、取引とは?」
「俺があんたに提示するものは、さっき言った、『核』の件を黙っている事。……それを代価に、あんたに約束してもらいたい事が3つある」
「――ひとつの条件に対し、3つの代価を求めるとは、フェアではない」
「そうか?……俺がマスコミの前でちょっと失言すれば、それを聞いた、あんたの可愛い社員たちはどう思う?
 『平和』を実現してくれたと信じている社長サンが、裏でコソコソ核兵器を作ってると知ったら、『裏切られた』と思うわな。――中には、それに対抗せんとばかりに武力を持ちだす者も出てくるかもしれない。
 そうなったら、あんたの『理想』は終わりだぜ?」
「………分かった。条件を言え」
「まず、ひとつ目は、『火星を攻撃しない』事。――俺らと『不可侵条約』を結んだといっても、あんたらの敵になったワケじゃない。あくまで『中立』なんだ。だから、火星には手を出すな。
 ふたつ目は、ガニメデに居る俺らの仲間の家族で、今現在、地球に居る人たちを、全員、ガニメデに呼ぶ。――彼らにも手を出すな」
「……分かった。――もうひとつは何だ?」
「今、ガニメデに居る者で、アース・コーポレーションに従いたいと思っている人たちを、地球で引き受けろ。――彼らは関係ない。切り捨てるな」
 ミカエルは少し考えていたが、やがて、
「分かった」
と言った。
「取引は以上だ。俺は行く。時間を取らせたな」
 ディケイルがモニターの前から立ち去ろうとすると、ミカエルがそれを呼び止めた。
 
 「――恥ずかしくは無いのか?」
「………何が?」
「同じ『トランセンダー』として、おまえは今の状況に満足しているのか?
 ――愚鈍な『ノーマル』どもに、いいように使われているのを自覚しているのか?」
 
 ディケイルは足を止め、ミカエルを振り返った。
「『不良品』のトランセンダーの『玩具』になるよりは、100倍マシだ」
 そう言って、部屋を後にした。
 
 
 
 ―――画面の向こう側では、ミカエルが怒りに震えていた。
 それを抑える事ができず、椅子に当たる。重厚な椅子ではあるが、強く蹴り飛ばされ、横に転げた。
 その音を「異常」と感知したのか、アンドロイドのケリーがやって来た。
「大丈夫ですか?」
「――何も問題ない。出て行け!」
 怒鳴りつけられたのだが、無表情にいつもの調子で部屋を出て行く。……それが、さらにミカエルを苛立たせた。
 ミカエルは通信に向かい、声を荒げる。
「フォンシェ!フォンシェは何をしている!?さっさと通信に出ろ!!」
 ――ミカエルがこのように冷静でない様子を他人に見せる事など、これまでに一度も無かった。モニターの向こうに現れたフォンシェが、目を丸くしているのも無理は無い。
 
 「――おまえは一体何をしていた?」
「……何の事でしょうか?」
「――なぜ、ガニメデと条約などを結んだ?」
「お言葉ですが、私には、そのような権限はございません。全ては、マグワイヤ社長が裁量の範囲内でなさった事です。そのご質問は、マグワイヤ社長に直接なさってください」
 フォンシェの整い過ぎた顔が、シレッと話をはぐらかす。――今に始まった事ではないが、ミカエルはこの顔が憎たらしくて仕方なかった。
 
 ――しかし、そのおかげで、ミカエルも若干態度を落ち着かせた。
「………おまえ、アイツといつから連絡を取り合っていた?」
「『アイツ』とは、だれ……」
「ディケイル・ウェイニーだ!――ガニメデへ逃げたのは知っていたが、まさか、生きているとは思わなかった。……奴が『反乱』を起こす事は、いつから知っていた?」
「さて、私にはさっぱり……」
 ――あまり直接的に聞いても駄目だ。もっと、具体的なところを攻めなければ。
 
 「おまえ、携帯端末を2台持っているようだな?――そのうちの1台は、私にも秘密にしている。それはどういう事だ?」
「――お恥ずかしい話ですが、今、交際している女性に渡してあるのです。私もそれなりの年齢です。いけませんか?」
「………では、ガニメデ宇宙空港の詳細図が、何者かにハッキングされたという報告が来ている。――どうやら、火星からの仕業のようだ。何か知らないか?」
「申し訳ございません。連絡の不行き届きで、そのような情報は私の元へは届いておりませんでした。さっそく、調査本部を立ち上げ、犯人を至急………」
「もういい!!」
 
 ミカエルは通信を切った。
 ―――どいつもこいつも!!どうしてこうなんだ!?
 なぜ、私の『味方』になってくれない?
 
 
 
 ――「ラザレフ生体能力開発機構」の、トランセンダー候補の中で、ミカエル・アイヒベルガーは常にNo.1だった。特に、脳の情報処理速度を特化させる訓練を受け、全てのテストで抜きん出た成績を収めていた。
 
 だが、それは訓練のたまものだけではなかった。ヴィクトール・ラザレフは、世界中からIQの高い子供を集めていたのだが、ミカエルの両親は、両方とも優秀な学者だったと聞く。――赤ん坊の頃には既にラザレフの研究施設に居たので、それは物心ついてから聞いた話ではあるが。だから、遺伝子的にもIQが高くなる要素を多分に持っていたのだ。
 ……その両親は、そんな息子を、金のために、ラザレフに売った。――学者とは、「学者貧乏」という言葉があるくらい、経済的に貧窮している場合が多い。なぜなら、学問や研究といったものには、莫大な金がかかるからだ。理解あるパトロンが付いてくれればいいが、そうでなければ、日々の生活にも事欠く有様なのだ。
 ――両親は、我が子よりも、研究を取ったのだった。
 
 しかし、ラザレフの施設には、そんな子供など珍しくもなかった。――卒業したのは「5人」だが、ミカエルの知っている限り、当初は20人以上の子供が居た。全て、何かの事情で両親が手放した子供たちだ。
 ――ディケイル・ウェイニー、フォンシェ・アレハンドロも、そんな子供のひとりだった。彼らがどんな事情で施設へ来たのか、そんな事は、ミカエルにとってはどうでもよかった。
 
 子供たちの年齢は、ほとんど変わらなかったが、2歳くらいの開きはあったと思う。確か、ディケイルが最年長で、ミカエルが最年少であった気がする。しかし、そんな年齢差など、ほんの幼児の頃の数年で、後は、自らの才能で、ミカエルは子供たちのトップに登りつめた。
 ――その間にも、かなりの数の脱落者が居た。能力的に見合わず、切り捨てられた者も居たが、多くは、――あまりに過酷な「トランセンダー育成プログラム」の中で、正気を失い、命を落とした。
 
 こんな事もあった。
 予告なく、ランダムに、食事の中に「毒」が入れられているのだ。――もちろん、致死レベルの量ではなかったが。それでも、身体の中に入れば、相当苦しい思いをしなければならない。ミカエルも、一度だけ経験した。――これは、「いかなる状況でも生き残る技術を身につける」訓練の一環だった。
 ミカエルのように優秀な子供は、すぐに味の異常を理解し、それを食べないように学習する。――だが、ディケイルは、いつまで経ってもそれができなかった。いつも、毒入りの料理を食べてしまい、もがき苦しんでいた。……そのうち、「フルーツにだけは毒が入っていない」事を発見し、フルーツしか食べなくなった。だから、ディケイルは、他の子供たちよりも、小柄で、痩せっぽっちだった。
 
 ディケイルは、施設の中で「落ちこぼれ」だった。なぜ、切り捨てられないで施設に残っているのか、ミカエルにはそれが不思議で仕方なかった。
 
 しかし、ディケイルは最後まで「脱落」もせずに生き残り、だが、ミカエルやフォンシェたちとは一緒に卒業もせず、施設に残った。
 なぜだ――?
 ……その疑問は、ヴィクトール・ラザレフの死後、ミカエルが「ラザレフ生体能力開発機構」を買い取った事により、解消される事となる。
 
 
 
 ――だが今は、そんな事はどうでもいい。
 「トランセンダー」として、共に生死をくぐりぬけて来た者同士であるにも関わらず、なぜ、分かり合えない?
 ………なぜ、あんな「落ちこぼれ」に、この私が、してヤラれなければならない!?
 
 ――まず、フォンシェを火星などに送ったのが間違いだった。
 ディケイルが施設から「脱走」したと聞き、その捜索をフォンシェにやらせていたのだが、結局、見付けられなかった。その責任を取らせて、マーズ開発へ「左遷」したのだが……。
 今から思えば、ディケイルをガニメデへ逃がしたのも、フォンシェの仕業だったのかもしれない。……もっと早くに気付いて、対応しておくべきだった!そして、フォンシェは手元に置き、監視していなければならなかった。火星のような、自由に動ける環境に置くべきではなかった。
 ―――だが、時は既に遅い。
 これからどうすべきかを、考える方が重要だ。
 
 ディケイルにさせられた、3つの約束。――「火星を攻撃しない」と「ヤツの仲間の家族の開放」はいい。
 ……だが、3つ目の、「ガニメデに居る『社員』の受け入れ」が問題だ。
 ―――その中に、ヤツらのスパイか工作員が紛れ込んでいないという保証はどこにも無い。確認のしようも無い。
 ……しかし、受け入れざるを得ない。でなければ………。
 
 ―――これまでの人生で、これほどまでの「煮え湯」を飲まされたのは、初めてだ!
 
 ミカエルは、しばらく立ち尽くしていたが、やがて、通信のボタンを押し、フォンシェを呼び出した。
「――ご用でしょうか?」
 シレッと素知らぬ顔をした、いけ好かない男がモニターに現れた。ミカエルはその男に言った。
「………『女』にうつつを抜かしていると、身を滅ぼす事になる。――おまえなら分かっていると思うが、念のため、忠告をしておく」
「ご忠告、ありがとうございます」
 ――それだけ言うと、ミカエルは通信を切った。
 
 ………あのふたり、いつか、ブッ殺す!!


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