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 目が覚めたら翌朝だったのには、さすがに驚いた。子供たちも、もう出かけている。
 慌てて船を出ようとして、そういえば、ディケイルはどうしただろう?と、医務室へ寄ってみる。
 ――すると、なんとディケイルはまだ眠っていた。
「……マック少将に聞いたけれど、元帥、疲れると熱を出したり体調を崩す事が多いようですね。――今も、少し熱がありそうなので、もうしばらく、寝かせておいたほうがいいと思いますよ」
 看護師の女性に言われ、仕方なく、ソウはディケイルの事を看護師に頼み、艦を出た。
 ――全く、まともな食事をしないから、身体が弱って、こういう事になるのだ!
 
 ソウは、ダンプカーでまた「現場」へ出ようとしたが、やめた。
 ――もっと、早急にやらなければならない事がある気がする。
 地球から家族を呼び寄せると同時に、こちらの「社員」を地球へ送り返すと言っていた。となると、その人数を把握して、こちらに移住した場合の住居やら、船の手配やらを、しなくてはいけない。
 ……ソウは、呑気に寝込んでいるディケイルが恨めしくなってきた。
 
 その日も、各鉱山の管理事務所やら第1コロニーの本部ビルやらを駆け回り、データのまとめに奔走していた。
 夜、疲れ果ててドミニオンに帰ってみると、部屋がきれいに片付いていた。
「――あれ?」
 ソウが戸惑っていると、マックに声を掛けられた。
「部屋の移動をしたんだ。アニキは『副艦長室』な」
「………は!?」
「大丈夫だ。元帥は『艦長室』だから」
 ――何が「大丈夫」なのか分からない。が、とりあえず、副艦長室へ行ってみた。
 
 ……すると、マタルが掃除をしていた。ソウに気付くと、掃除機を持つ手を休め、ソウに敬礼をして見せた。
「参謀長!今日から被保護者としてお世話になります、マタル・アブラハム・ラーディンであります!よろしくお願いします!」
「……よ、よろしく………」
 
 ――副艦長室は、リビングとベッドルーム、それにシャワールームとトイレまで付いていて、正直、ソウが住んでいたアパートより格段に広かった。ベッドルームを覗くと、ツインの様式になっていて、さすがにそこまで大きくはないが、シングルベッドが2つ、並べられていた。
 リビングは、ソファーとテーブル、それに、様々な情報を得るためだろう、巨大なモニター設備が置いてあるだけで、いっぱいになるくらいの広さだが、それでも、ソウの住んでいたアパートよりは……。
 ソウは、掃除機がけをしているマタルを見ながら、全く落ち着く事ができず、ソファーの上に正座して座った。
「――参謀長って、日本人なんですか?」
 マタルが聞いてきた。――そういえば、ガニメデへ来て、生まれ育った国の事について、話をした事は無かった。聞きもしないし、敢えて話もしない。そんな事、どうでも良かったから……。
「……あぁ、そうだけど。――何で?」
「名前がソレっぽいし、正座なんてしてるから。……もっと、寛いでください。自分の部屋なんですから」
「あ、あぁ……」
 ――しかし、この状態で落ち着けと言う方が無理だ。
 
 とりあえず、ソウはマタルに話し掛ける事にした。
「……他の2人は?」
「カティは、今日からニーナさんの家に住むそうです。――ニーナさんの家、第2コロニーだから、無事なんです」
「ふぅん。……じゃあ、あの……」
「レイは、今頃、元帥と一緒に、艦長室にでも居るんじゃないでしょうか?」
「――あ、あの、そんな、敬語、使わなくてもいいから」
「しかし、本官は、本日付けで、『参謀長専属補佐官』の任命を受けたのであります!」
 ………一体、ディケイルのヤツ、子供相手に何を吹き込んでいるのか!?
「……そ、そう。――そういえば、日本人って、そんなに珍しいかな?」
 すると、マタルは顔を上げて、こちらを見た。
「あ、いえ、そういう訳じゃないですけど……」
 それから、少し目を伏せた。
「――俺、アラブ人だから、それだけで、差別というか……、いじめられてたんです」
「…………」
 
 マタルの話によると、両親ともにアラブの出身で、牧畜を主にしていたのだが、アース・コーポレーションによる「統一」のおかげで、それでは生活をしていけなくなり、仕事を求めて、ガニメデへ来たそうだ。
「でも、両親は、鉱山の事故で亡くなりました」
 ――その後、孤児院へ預けられたが、孤児院の他の子供たちや、学校のクラスメイトにもいじめられた。
「歴史とか、よく知らないんですけど、何か、200年くらい前に、地球のアメリカってところで、何千人もの人が亡くなるテロ事件があったそうですね。
 ……俺の名字が、その犯人と同じだとか言われて……」
 ――その「テロ」の話は、ソウも教科書で読んだ事がある。「史上最悪のテロ事件」として、テストにも出た気がする。
「――俺、関係無いんですよ。だけど、みんな、俺の事、『テロリストの子孫』だとか、『危ないヤツ』だとか言って、誰も相手にしてくれない」
 ……そんな中、手を差し伸べてくれたのが、カティだった。
「カティのおかげで、俺、ひとりにならないで済みました。――それは、レイも同じです」
 レイもまた、アルビノのおかげでいじめられていた。……その3人が肩を寄せ合い、周囲の冷たい視線の中、何とか支え合って生きてきた……。
 ――ヘタな血縁関係よりも、もっと深い絆で、この3人は結ばれているのだろう。……身内の居ないソウには、うらやましくさえある。
 
 それとは関係ないが、ソウは、思った事を言ってみた。
「もしかして、マタル、……カティの事が好きなのか?」
 すると、マタルの顔がみるみるうちに赤くなった。――冷やかしのつもりで言っただけなのだが、図星だったようだ。
「………ヘ、ヘンな事言わないでください!確かに、カティの事は、『仲間』として好きですよ?で、でも、そんな……」
 マタルは動揺をごまかすように、掃除を再開した。
 
 マタルが掃除を済ませると、2人は、夕食をとりに行く事にした。
 食堂へ行くと、レイがひとりで食事をしていた。カウンターでカレーライスをもらい、ソウとマタルは、レイと同じテーブルに就いた。
「――あれ?元帥は?」
 マタルが聞くと、レイは
「部屋で寝てる」
と答えた。――マタルの方は見るのだが、ソウの方へは、決して顔を向けない。長い前髪で顔を隠したまま、同じくカレーをすくっていた。
 ……ここの「家族」は大丈夫だろうか?ソウは不安になった。
 
 ――案の定、翌日の朝も、レイはひとりで食堂に来ていた。
「………元帥、まだ体調悪いのかな?」
 マタルが言うが、レイはうつむいたまま返事をしなかった。
 ――何かあったのか?
 パンをかじっていると、入口から元気のいい声が聞こえた。
「おはよう、子供たち!今日も元気に頑張ろう!」
 ――ニーナだ。傍らにカティも居る。
「おはようございます」
 カティもペコリと挨拶した。
「――あれ?元帥ってば、まだ寝込んでるんですか?」
 ニーナは食堂を見回した。
「……さぁな」
「それじゃ、参謀長、元帥の代わりも頑張ってくださいね!」
 ニーナはそう言って、子供たちを引き連れて仕事場へ向かった。
 ………いや、あいつの代理なんて、させられてたまるか!
 ソウは、食堂を出――ようとして、思い出したように、厨房の従業員からリンゴをひとつ分けてもらうと、艦長室へ向かった。
 
 ……ノックをしても返事が無いので、ソウはドアを押してみた。――カギは空いている。
 入ると、基本的にはソウたちの部屋と同じだが、こちらのほうがひとまわり広いようだった。――執務机みたいな大きなデスクが、奥にドンと置かれている。
 寝室のドアは閉まっていたが、押してみると、開いたので、入ってみることにした。
 
 ――ディケイルは布団をかぶって、苦しそうな息をしていた。
「……おい、大丈夫か!?」
 近付いてみると、ひどい汗だ。額に手を当てると、熱も高い。
「看護師を呼んでくる」
 ソウは部屋を出て行こうとしたが、ディケイルの弱々しい声が、それを遮った。
「……いや、いい」
「どう見ても、いいワケないだろ?」
「大丈夫だ。――それよりも、レイは大丈夫だったか?」
「ニーナに連れられて仕事に向かったみたいだが、……何かあったのか?」
 ディケイルは寝がえりをして、ソウのほうへ顔を向けた。
 
 「――あの子、『トランセンダー』なんだ」
「………え?」
 
 「トランセンダー」という名前は聞いた事がある。どこかの脳科学者が、世界中から優秀な子供を集めて、特殊な教育を受けさせ生み出した、大天才だとか……。
 ――あくまで「噂」だが。
 
 そんな言葉がポンと出てきて、ソウは戸惑った。
「……なんで、そんな子が、こんなところに居るんだ?」
「『トランセンダー』とは、2種類ある。
 ひとつめは、ヴィクトール・ラザレフってオッサンが作り出した天才児。
 もうひとつは、母体に居る時の特殊な環境により、遺伝子に影響を受け、急激な変化を遂げた『新人類』――」
 ……ソウが頭に浮かんだのは、恐らく前者の事だろう。――しかし、「新人類」とは、一体……?
「前者は実在している。――アース・コーポレーションのCEOの、ミカエル・アイヒベルガーなんかがそうだ。……言わば、『ラザレフタイプ』」
 
 ――へぇ、そうなのか!都市伝説だとばかり思っていた……!!
 
 「……だが、後者は、理論上の可能性の話であって、これまで、実際に出現したのは確認されていなかった。――だが、レイは間違いない。その、突然変異を起こした新人類、『ナチュラルタイプ』だ」
「…………」
「恐らく、レイの両親には、そんな知識が無く、手に余った末に手放したのだろう。――あんたも、レイの近くに居る時、頭が痛くなったりした事はないか?」
 ……そういえば、この前、コロニーの片付けをしている時、休憩所で話していたら、頭が痛くなった……。
「――まだ、レイは、脳波のコントロールができないんだ。普通の人間なら、何も感じないが、少し『勘』が鋭いヤツなら、近くに居るだけで体調がおかしくなる。……『ラザレフタイプ』に比べて、『ナチュラルタイプ』は、それほどまでに強力なんだ」
 
 ―――だが、そう語るディケイルは、なぜ、そんな事を知っているのだ?
 ソウがその疑問を口に出すより早く、ディケイルはソウの手に持ったリンゴに手を伸ばした。
「――昨日の夜は、頭が痛くて眠れなかった。おかげで、この有り様さ」
 リンゴをかじりながら、ディケイルは額に手を置いた。
「……あいつ、俺の事を恨んでいるに違いない」
「なぜ、そう思う?」
「分かるんだ。……だから、あんなに脳波を出して警戒している。――レイも、疲れるだろうに」
「……そんなんで、この先、やっていけるのか?」
「分からん」
「…………」
「――だが、やるしか無い。……他の人に、この役目を任せるわけにはいかない」
「………なんで、そこまで……」
 ソウは聞こうとしたが、一口かじったリンゴを手に持ったまま、ディケイルは目を閉じた。――看護師を呼ぼうか迷ったが、今はそっとしておこうと思い、リンゴをサイドテーブルに置き、ソウは部屋を出た。


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