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14.  抱擁


 1月17日。
 地球から、「ガニメデ独立支援軍」のメンバーの家族、その第一陣が、地球から到着した。
 瓦礫の山と化していた空港も、おおかた片付き、火星から贈られた仮設施設で、何とかその機能を再開していた。
 巨大なテントを張った形のロビーの中で、迎える者、迎えられる者が、それぞれ名を呼び合い、抱擁し合った。
 ――ソウは、迎える家族など居ないのだが、名簿の確認のためにその場に居た。ニーナたち空港職員にも協力してもらい、人の列の誘導やら整理やらに、てんてこ舞いだ。
 ……相変わらず、ディケイルの体調は戻らず、寝込んでいる。――レイをしばらくソウが預かろうかと提案したのだが、ディケイルはそれを断った。
 しかし、我を張るのはいいが、いつまでも寝込んでいられては、こちらが困る。……これも、どうしたものか。

 「……マリー!レイチェル!!」
 突然、ソウのすぐ近くで、ものすごい大声がした。ビックリして振り返ると、マックだった。
 ――マックの視線の先に、2人の女性が居た。……これまた大柄な黒人の女性と、マタルたちと同じくらいの年齢の女の子。手をつないで、マックの声に顔を向けた。
 マックが、ハグしようと両手を広げて、2人に駆け寄る。
 ――しかし、それは果たされなかった。女性は、勢いよくマックの頬に平手打ちをすると、ドスの効いた声で言った。
「この、ろくでなし!」
 ……間違いない、マックの別れた奥さんだろう。
「あんたのせいで、私たちの生活は滅茶苦茶よ!!」
「……す、すまん………」
「何さ!今頃呼び寄せて!――地球じゃ居場所がなくなったから、仕方なく来たけど、どうしようって言うのさ!!」
 ――マックは、ズボンのポケットから、何やら取りだした。それを奥さん――マリーに差し出した。……指輪のようだ。
「もう一回、結婚してくれ!!頼む!」
 そう言って、指輪をマリーに押しつけると、その場に座り込んで、土下座した。――マックの「故郷」にも、土下座の風習なんてあるのか?ソウは不思議に思った。
 マリーはというと……
「……そんなところに座ってんじゃないわよ!みなさんの邪魔でしょうが!!」
 そう言って、マックの首根っこを捕まえると、引っ張り上げて立たせた。――言葉や態度とは裏腹に、目には涙が光っている。
 ――マリーは、そのままマックに顔を近付けると、
「………今度、レイチェルに悲しい思いをさせたら、――ブッ殺す」
 そう言って、マックに抱きついた。
 ――これでは、一生マックは奥さんに頭が上がらないな……。そう思いながら、娘のレイチェルを間に挟んで、3人並んで出口へ向かうのを見送った。

 ……と、視線を動かしていくと、すぐ横に、人が立っているのが見えた。黒いボサボサの髪――、ディケイルだ。
「――おい、おまえ、大丈夫なのか!?」
 驚いて顔を見ると、――ひどくやつれて、ひどい顔色をしている。
「………無線を鳴らしても、反応がなかったから、来た」
 ――そういえば、館内用のトランシーバーを使っているので、無線は事務所に置いてきてしまった。
「……何か用か?」
「これを、渡しておく」
 ディケイルは、1枚の紙切れをソウに手渡した。――細かい字で、何やら箇条書きにされている。
「――今後、『独立』までにやらなくてはならない事を、思い付く限り書いておいてみた。……よろしく頼んだ」
 そう言うと、フラフラと歩き去ろうとする。――ソウは紙を見てみた。チラッと見ただけで、「議会設立」やら「軍の組織化」やら「貨幣の統一」やら、ソウにはどうしていいかさっぱり分からない事ばかりが書かれている。
 ……こんな事を押しつけられては、たまったモンじゃない!
「おい!ちょっと待て!」
 ソウが反射的に腕を掴むと、ディケイルは振り向――こうとして、バランスを崩し、倒れた。
「――お、おい!!」
 慌てて抱え上げるが、意識が朦朧としている。――まずいな。
 ソウは、後ろに向かって声を張り上げた。
「おい!マック!!悪いが、こっちに来てくれ!!」
 ――出口近くに居たマックは、奥さんに「先に言っててくれ」と言い、すぐにこちらに走って来た。
「ど、どうした!?」
「ディケイルを病院に運ぶ。手伝ってくれ」
 そう言って、トランシーバーでその旨をニーナに伝え、マックと共にディケイルを抱え上げる。……想像以上に軽い。マックひとりで運べそうなくらいだ。――だが、そうもいかない。
 マックとソウに両肩を支えられながら、しかしディケイルは、うわ言のように、
「……病院はイヤだ。病院は行きたくない」
と訴えていた。
「―――おまえは病院嫌いの子供か!?」
「なんでもいいから……、病院だけはイヤだ……」
 ――まぁ、何と言おうと無視するのだが。

 救急車を呼ぼうかとも思ったが、ガニメデで一番大きな病院は、第1コロニーにある。シャトルに乗ればすぐだ。

 病院に着くと、急患扱いですぐに診察室へ通してくれた。
 ――一通り、検査を終えると、医師はソウに言った。
「過労によるストレスと、栄養失調ですね」
 ……やっぱり。
「2、3日、入院してしっかり休めば、問題ないでしょう」
 「入院」と聞いて、またディケイルがゴネ始めた。
「イヤだ……、入院はイヤだ………」
「うるさい、黙れ」
「……い、イヤだ……、誰か……、助けて………」
 ――全く、助けられてるのはどっちだ?

 だが、病室に着くと、事件は起こった。

 ベッドに寝かされ、点滴を打たれようとした瞬間、突然、ディケイルが暴れ出したのだ。
「うわあああああああ!!!」
 今まで聞いた事がないような叫び声を上げ、腕を振り回して看護師を突き飛ばし、部屋から逃げ出そうとする。
 ――一瞬、何が起きたのか、ソウには理解ができなかった。

 とっさに、マックが前に出て、ディケイルの行く手を塞ごうとする。――だが、ディケイルのハイキックが飛び、それがマックの首筋に命中した。……そのまま、マックは目を回して倒れてしまった。
 ……あのマックが、一発K.O.!?――しかも、相手はあの貧弱なディケイル……!!
 ソウは、呆然と立ち尽くすしかなかった。

 しかし、ディケイルの逃亡劇もそれまでだった。
 数人の看護師が入って来て、慣れた動きで、ディケイルを後ろから抑え込み、腕に注射をする。
「――や、やめろ―――!!」
 ディケイルは、最後の抵抗を見せたが、やがて、床に崩れ落ちて動かなくなった。……鎮静剤を打たれたのだ。

 看護師たちは、ディケイルをベッドに寝かせ、それからマックの介抱に当たった。
 遅れて入ってきた医師が、ディケイルに点滴を注射すると、ソウに話し掛けてきた。
「――やはり、こういう事もあろうかと、こちらの病棟に案内して正解でしたな。……先程は説明しませんでしたが、ここは、『精神科病棟』です」
 ……道理で、看護師たちが、暴れる患者の扱いに慣れているワケだ。
「この患者さんの様子を見て、もしかして、と思ったのです。――過去に、何か、深いトラウマを抱えていらっしゃるようだ」
「………そ、それは、どうすれば、治るんでしょうか?」
「それは人それぞれですので、何とも言えませんが、――過去と向き合い、それが『過去の事』であると、本人が認識する、それが一番でしょう」
 ――言われてみれば、ソウは、ディケイルの『過去』の事を一切知らない。……ホームレスになる前は、一体、何をしていたのか……?

 とりあえず、強制的に2、3日、休んでいってもらいます。その後の事は、それから考えましょう。――医師はそう言って、病室を出て行った。
 ……ディケイルは、先程のパニックが嘘のように、穏やかな表情で眠っていた。
 ソウは、ディケイルに渡されたメモ用紙を見た。
 ――とにかく、今は、早く元気になってもらわないと困る。かなり乱暴なやり方だったが、これで、少しは休めるだろう。

 ……額にガーゼを貼られ、マックが戻って来た。
 理不尽な暴力に対する怒りでは無く、腕に自信があるワリに呆気なくのされたのを恥じるような照れ笑いを浮かべて、額を撫でていた。
「――家族水入らずの時間を奪ってしまって、悪かったな」
 ソウはマックにそう言って、共に病室を出た。


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