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オリジナル小説のダストボックス

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 ―――点滴。青い液体の入ったパックから、チューブが垂れ下がっている。
 白い天井、窓から差し込む光。……ベッドに横たわったディケイルの上で、木陰が揺れている。
 サワサワという風の音、鳥の声、そして、規則的な機械音。
 目をやると、ベッドのすぐ脇で、モニターが何かを波形を表示している。その横には、いくつかの数値。モニターからは、たくさんのコードが延びていて、それが、ディケイル全身に絡みついている。
 ――頭が痛い。……割れるようだ。
 手で頭を覆いたかったが、腕が動かない。――何かでベッドに固定されている。……脚も同様だった。
 ………痛い、苦しい、――ひどく、気分が悪い。
 青い点滴は、ぽつん、ぽつんと、規則的に、雨垂れを落としている。――その度に、腕に、波打つような灼痛が走る。………耐えられない。
 ディケイルは、必死で顔を上げて、腕を見た。
 ――点滴のチューブを刺された腕は、赤黒く腫れあがっていた。
 ………このままでは、殺される―――!!
 
 「イヤだ―――!!!」
 ……ディケイルはガバッと起き上がり、それが夢である事に気付いた。
 全身が汗で濡れて、呼吸も乱れている。
 ――腕を見ると、典型的な栄養剤の、薄黄色い透明な液体の入った点滴のチューブが、テープで固定されていた。……腕は、普段通りの色をしている。
 しかし、それが耐えられなくなり、テープを引きはがし、点滴を抜いた。
 ―――こんなところには居たくない。もう、御免だ……!
 ディケイルは起き上がろうとした。だが、ひどいめまいがして、再び、ベッドへ頭を戻した。
 窓の外には、人工的な星空が広がっている。――その他には、何もない。
 ……なぜ、こんなところに居る?
 ―――思い出すと、体調を崩してフラフラだったディケイルを、ソウが病院に運んでくれた記憶に結びついた。
 ……まぁ、ソウの立場としては、当たり前の事をしてくれたまでだ。だが――。
 
 点滴台に取り付けられた装置が、ピカピカと警告灯を光らせはじめた。……それが、ナースセンターに通じたのだろう、ひとりの男性看護師が、部屋に入って来た。
「――すいません。寝がえりをうったら点滴が抜けてしまったようで……」
 とっさに、ディケイルは言い訳したが、看護師には分かっているようで、
「安静剤を入れておきますね」
と言い、再び点滴の針を刺そうとした。
 ―――ほとんど無意識に、ディケイルは動いていた。
 左腕に意識を集中している看護師の首に、右腕を背後から回し、そのまま締め上げた。慌てた看護師はディケイルの腕を振りほどこうともがいたが……
 ……しばらくそうしていると、看護師は、ガクリと膝から崩れ落ちた。
 ――人間、そう簡単に死ぬモンじゃない。悪いが、数時間、眠っていてもらう。
 ディケイルは、ベッドから降りた。――めまいも収まったようだ。そして、看護師の白衣を拝借すると、可哀そうな被害者に布団を掛け、病室を後にした。
 
 ……病院の外に出ると、さすがに寒い。当然だ。パジャマ1枚に、薄い白衣を羽織っただけなのだから。
 時間は深夜らしく、病院から駅に向かう途中も、シャトルの中にも、人気は無かった。――元々、病院のある第1コロニーは、「行政」的な施設が集められており、住居はほとんど無いのだ。昼間こそ賑わいを見せるが、夜になれば、人っ子ひとりいなくて当たり前だ。
 空港も、同じようなものだった。
 仮設の巨大テントの中は、ガランとしていて、夜のサーカスを思わせる不気味さを醸し出していた。
 ディケイルはテントの中を通り過ぎ、これまた仮設のボーディング・ブリッジから「ドミニオン」に入った。
 
 ……ドミニオンの中も、寝静まっていた。ところどころで、夜勤の見張り当番なのだろう、空港職員の作業着を着た人が、どこかの部屋で何やら作業をしていた。
 ――ディケイルは、真っ直ぐに艦長室へ向かった。
 
 当然のことながら、艦長室もシンと静まり返っていた。そっと、寝室のドアを開けると、――レイが、ベッドに横になっている。
 ……寝ている様子だったので、ディケイルはそのままドアを閉めようとした。すると、
「――勝手に戻って来て、大丈夫なんですか?」
と、背中を向けたままレイが言った。
「……起きてたのか」
「今、起きました」
「…………」
 ディケイルは、リビングに戻るのもどうかと思い、レイのベッドに腰を下ろした。
 
 ―――だからといって、会話が続くワケでもない。しばらくそうしていると、やがて、レイの方が口を開いた。
「――あなたは勝手な人だ」
「………?」
「たくさんの人を巻き込んでおいて、自分は現実から逃げている。――誰も、戻って来ないのに。みんな、もう、戻れないのに」
 ……痛い事を言う。――ディケイルの頭に、またレイの「意識」が入り込んできた。頭がガンガンする。
「それでも、あなたはまだやめようとしない。――なぜなんですか?こんな事をしていて、何の意味があるんですか?」
 レイがこちらを振り向いた。――瞳のない、いわゆる「白目」が、真っ直ぐにディケイルを見据えている。
 
 ………この目だ。ディケイルには分かった。――この目が、人の心を読み、人の心を支配する。……だが、この少年には、まだそれが分かっていない。
 
 「――分かってるんだろ?何もかも」
 ディケイルは、レイから視線を外した。
「………俺は、無能な人間だ。――そんなヤツが、夢を見てしまった。もう、何人巻き込もうと、それを実現する意外に、終える手段が無いところまで来てしまっている。
 ――そうなってから、後悔している、愚かな人間だ、俺は」
「……怖いんですか?」
「あぁ、怖いさ。負けるのも怖い。死ぬのも怖い。――だが、それ以上に、信じてくれた仲間を裏切る事になるのが、一番怖い」
「……僕の事も、怖いですよね」
 ――レイが、痛いほどの意識を飛ばしてくる。
 
 ………それを感じて、ディケイルはハッと気付いた。――これまで、レイはディケイルの事を警戒していると思っていたが、正確には、それは正しくない。……警戒しているのはディケイルの方で、その心を、そっくりそのまま、ディケイルに返してきているのだ。
 ――レイの根本にあるのは、「警戒」ではなく、「救い」……。
 
 ………レイは、この通り、人間が通常「視覚」を得るために持っている器官を持っていない。だが、全ての状況が分かっている。――それは、無意識に、「脳波」を周囲に飛ばして、状況を感知しているからだ。だから、目を隠していても開いていても、レイの得る情報量には、全く差がない。しかも、通常の人間では「視認」する事ができない、人の心の動きや押し隠した感情さえも、情報として入って来てしまうのだ。
 では、「目」は何のために存在するのか。――それは、自分の「意識」を他人に知らしめるため。――現実には、無意識に発する「脳波」に乗って、ある程度の「意識」は常に発し続けているのだが、それだけではなく、もっと強い意識、他人に伝えたいと強く思う意識は、「目」から発せられる。
 ――そんな、強烈な「意識」が、もし他人の「意識」とリンクしたら……、他人を自由に操る事だって可能だろう。
 ………だが、本人はまだ、その能力に気付いてない。
 ただひたすら、「救い」を求めて、ディケイルに視線を送っていた。
 
 ――ディケイルは、この子に「心」を読まれるのが怖かった。だから、心を閉ざし、レイに接していた。レイもまた、「心」が読めないディケイルの真意が分からず、ディケイルを「怖い」存在だと思っていた。――実際にレイが読んでいる、ディケイルの「運命」にも、その原因の一因はあるのだが。
 
 ……しかし、本当は分かってほしいのだ。誰かに、自分の事を。――自分がどういう存在であり、それを理解した上で、レイという「人間」を分かって欲しい。
 ――カティやマタルは、かけがえの無い存在ではあるが、レイの「トランセンダー」としての能力を理解する事はできない。
 ……それができるのは、ディケイルだけだった。
 
 ディケイルは、レイの横にゴロリと寝転んだ。
「……今、分かった。――俺が一番怖いのは、『俺』自身だ」
 そう言って、レイの額に自分の額を当てた。
 
 普通の人間でも、ある程度は、自分の意識を発したり、それを受け取ったりしている。他人が「怒っている」とか「悲しんでいる」とかいう感情を理解できるのは、そのためだ。――科学的には、相手の顔の表情や声など、視覚的または聴覚的な情報によるとされているが、……「トランセンダー」として、「脳波」の増幅処置を受けたディケイルには、それが分かる。
 ――いくら「トランセンダー」でも、「人工」のものだから、さすがに、レイのような芸当はできないが。
 
 ディケイルは目を閉じ、意識を解放した。――レイの温かい感覚が、自分の中に入って来るのが分かる。
 やがて、その動きが止まり、ディケイルは目を開けた。
 ――目の前で、真っ白い瞳が、涙で光っていた。
 ディケイルは白い髪を優しく撫でながら、言った。
「分かっただろ?……俺は、おまえと一緒なんだ。
 ―――もう、おまえは、ひとりじゃない」
 
 
 
 翌朝。
 ソウは電話の音に起こされた。出ると、病院からだった。
「――も、申し訳ありません!昨夜、患者様が脱走しました!」
「……な、なに!?」
 ソウは慌てて飛び起き、身支度もそこそこに、部屋を飛び出した。
 病院に行くと、看護師たちが右往左往していた。病棟のナースセンターで、当直の担当だったという男性看護師に話を聞いた。
「………点滴のアラームが鳴ったんで、見に行ったんです。――そしたら、急に首を絞められて――。気が付くと、ベッドは空で……」
 ―――あの野郎、面倒を見てくれている看護師にまでそんな事をして……!!見付け次第、もう一発殴らないとダメだ!
 
 ソウは、マックやチャンにも連絡を取り、至急、各コロニーの見回りをするように伝えた。
 ――どこかで行き倒れていたとすれば、誰かが見付けて連絡をくれるかもしれない。ソウは、連絡役も兼ねて、ドミニオンへ戻る事にした。
 ……だが、落ち着いて自分の部屋に座っている気にもなれない。とりあえず、艦内の見回りに出る。
 すると、ひとりで食事を終えて来たらしいマタルに会った。
「――おかしいんですよ。レイのヤツ、まだ起きてきてないんです。……寝坊なんて、アイツらしくないな」
 ………もしかすると………。
 
 ソウは、マタルと一緒に、艦長室へ行ってみる事にした。
 ――半開きになっていた、寝室のドアから中を覗くと………
 
 ディケイルが、レイと並んで、ひとつのベッドで寝ていた。
 向きあい、顔を寄せるようにして……。――まるで、本物の「家族」のように。
 
 ――ソウは、そっとドアを閉めた。
「……マタル、今日はレイを休ませてやれ。ニーナさんには、俺からも言っておく」
「うん、分かった」
 マタルが走り去る後ろ姿を見送り、ソウはマックたちと病院に連絡を入れた。
 ――後で、病院に、騒ぎを起こした謝罪に行かなければならないだろう。
 それに、今日は、『社員』を地球へ送還する船が出る日だ。
 ……何か、トラブルでもなければいいが………。
 
 「――全く、なんで俺はいつもこういう役回りなんだ!?畜生!!」
 椅子の脚に苦情をぶつけようとして、ソウはやめた。そして、チラリと寝室のほうを見た。
 ………悔しいが、殴るのは、明日に延期してやろう。


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