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15.  迷彩
 
 
 地球行きの旅客船の離陸時刻を前に、空港には、どこからともなく人が集まって来た。――アース・コーポレーションに忠誠を誓う『社員』たちだ。
 
 ソウの調査したところによると、「暴動」前のコロニーの人口は約20万人。……この中に、「ホームレス」は入っていない。
 ――そのうち、『社員』とその家族が約500人、非正規社員とその家族が19万9500人。
 ………第3コロニー襲撃の犠牲者が約7400人。その全てが、非正規社員。
 そして、ガニメデに残ると決めた非正規社員の、地球から呼び寄せた家族が1万8800人。
 ……人口に比べ、やたら家族の数が少ないのは、元々、身内の無い単身者がガニメデへ労働者として送られた、あるいは、家族全員で移住してきた、そのパターンが多かったからだ。
 それから、「一斉清掃」にやって来て以来、「仲間」となった元守衛が100名。
 現在、空港に集まっている元ホームレスが400名。――騒ぎを聞いて、後から集まって来た者も多かった。恐らく、まだどこかに隠れているホームレスは、もういないだろう。
 
 ――で、今日、地球に帰る『社員』が、約200名。
 ………結局、全体の0.1%に満たなかった。
 
 残りの社員は、ソウやジョルジュのような寝返り組は少数で、そのほとんどが空港の職員や、農業もしくは工業プラントの技術者たちだ。「立場」よりも「仕事」に誇りを持っている彼らは、ガニメデへ残る道を選んだ。
 
 ……ともあれ、トータルとして、人口は1万人以上増えた事となる。――ただでさえ、コロニー都市で、都市計画に余裕などないのに、この1万人を受け入れるというのは、容易な事ではない。
 ディケイルが病院で「寝かされて」いた3日間、ソウは、空き住居やらこれから空く住居やらを調査し、それらを人数が増えた家族に割り振る作業に奔走していた。
 ……だが、何とかなるもので、路頭に迷って野宿する人は、出ずに済んだ。
 
 ――しかし、問題はこれからだ。
 現状、市民の生活状態は滅茶苦茶だ。
 まず、ディケイルが火星に行って「条約」を結んだ直後から、アース・コーポレーションの社内マネー「CP」の機能は停止された。だが、「お金」が無ければ、経済が成り立たず、市民の生活も成り立たない。
 そこで、誰が言い出したかは分からないが、「CP」に統一される前の、各国の「旧貨幣」が使われるようになった。……為替やら貨幣価値やらはどう計算しているのか、詳しい事は分からないが、それで、何とか物の流通ができているようだ。
 治安の維持も心配だったが、マックが「悪いコトをしたヤツは、俺が相手になってやる!」と息巻いているので、何となく、収まっているようだ。――きちんとした「法律」を定めなければ、こちらもそのうち問題が出てきそうだ。
 
 ……まぁ、現状、ガニメデは「無法地帯」なのだ。
 
 そこへ来て、革命指導者の「入院」。
 ――本当、よく何とかなってきたな、と、我ながら感心する。
 
 ……ここからは、もちろんフォローはするが、ディケイルに頑張ってもらう他ない。
 
 空港の仮設テントの中では、「社員」たちが、恨めしい目をソウたちに向けていた。
「――この、裏切り者が!おまえたちのせいで、私の人生がどれだけ変わってしまったか、分かっているのか!このクズ共め!!」
 マルコー「元」コロニー長が、見苦しい抗議をしている。――そもそも、あの時、ディケイルの申し出を素直に受けていれば、「悪者」は地球だけで、マルコーには影響が及ばなかったに違いない。……それを、他人のせいにして毒を吐いているのは、見苦しいだけだ。
 
 だが、ソウのように冷静に聞き流せる者ばかりではなかった。
「……何だと!?この野郎。――おまえが、7400人もの人たちを見捨てたんだろうが!おまえなど、生きて地球に帰る資格もないわ!!」
 そう言って、マルコーに掴みかかろうとする元鉱員。慌ててそれを制止するが、すぐ横で、また別の人が、マルコーたちに唾を吐きかける。
「おい!やめろ!!――やめろと言ってんだよ!!」
 マックが自慢の大声を披露するが、この時ばかりは効果が無かった。
 空港内は、乱闘へと発展しそうな雰囲気に突入した。
 ………ま、まずい!!
 
 すると、突然、テント内に轟音が響いた。――銃声だ!
 一同は、一気に騒ぎをやめ、一斉に床に伏せた。
 ソウも頭を抱えて身を低くしながら、周囲を見回す。
 
 ―――すると、テントの端のほうに、ディケイルが立っていた。……手には、ハンドガン。すぐ近くの地面に、硝煙が立っていた。
 
 「……おい、こんなところで騒ぎを起こしても、意味ないだろ。『お客さん』を、大人しくお見送りしろ。
 ――『お客さん』はお客さんらしく、黙って船に乗りゃあいいんだよ。……あんたら、自分の「立場」が分かってるか?恨む相手は俺らじゃない。――地球の連中だろうが」
 そう言いながら、ディケイルはハンドガンをポケットに入れると、こちらに歩いてきた。
 ―――そのへんにあった作業着に着替えたのだろう、サイズの合わないダブダブのツナギが、全く似合っていない。
 
 ……しかし、それより何より、ソウには、ディケイルの元気な姿を見た事が嬉しかった。
 
 ディケイルは、ポケットを探り、何やら取り出すと、マルコーに差し出した。
「土産だ。地球に持って帰って、ミカエルと一緒に楽しめ」
 ――それは、メモリーカードか何かのようだった。ミカエル、――ミカエル・アイヒベルガーCEOに渡せ、という意味だろうか?
 ディケイルは、失くすなよ、と言い残すと、テントからさっさと出て行ってしまった。
 
 ソウは慌てて、後の事をマックたちに頼むと、ディケイルを追った。
「――お、おい!」
 駅へ向かおうとしているディケイルを何とか呼び止めて、ソウは言った。
「……バ、バカ野郎!どれだけ俺らに心配かけさせれば気が済むんだ!!」
 すると、ディケイルはニヤリとした。
「心配するのが、あんたの仕事だろ?」
 ―――ソウの頭の中で、何かがキレた。
 思い切り、拳で顔面を狙う。――だが、それは、ディケイルの掌であっさりと受け止められてしまった。
 ……あの時は、わざと殴られたのか。ソウは思い知らされた。
「まだ、手の骨、治ってねぇんだよ。余計な負担かけないでくれ。――あ、それと」
「……何だ?」
「ボクシングってのは、顔面殴っても効果は薄い。やるなら、顎とか目とか、骨の出ているところを狙ったほうがいい」
 ――全く!!………相変わらずだ。
 
 「ところで」
 ディケイルはソウを見た。
「コンタクトレンズの店、知ってるか?」
「―――はぁ??」
 ……ディケイルの目が悪いとは、聞いた事がない。今まで、そんな素振りも見せなかったが……?
「……コンタクトレンズなら、第2コロニーの駅前のビルに、ショップが入ってる」
「そうか、ありがとう」
 呆気に取られるソウを残して、ディケイルはシャトルに乗り込んだ。
 ――さすがに、そこまでついて行く気もない。
 ソウは仕事に戻った。
 
 ディケイルの「買い物」の理由が分かったのは、その夜だった。
 いつものように、マタルと一緒に食堂に行くと、珍しく、ディケイルも来ていた。――その隣で、レイがこちらを見ている。
 それを見て、「あれ?」と思った。……何かが違う。
 ――よくよく考えれば、レイの持つ雰囲気、それ自体が昨日とは全く変わっていた。今まで、ずっと俯き、顔を隠すようにしていたレイが、顔を上げ、時折微笑んだりしている。
 ……何があったのだ?
 食事をしながら、ソウはレイを観察し、しばらくして納得した。
 ―――コンタクトレンズ。
 恐らく、レイは目に何かの障害を持っていたのだろう。それが、見た目にも影響するので、レイにとって、コンプレックスになっていた。
 だが、カラーコンタクトを使用する事で、それが解消された。――小さな事だが、レイにとっては、ものすごく大きな事だったに違いない。
 
 人間、自分の見た目にひとつやふたつ、不満はある。それは、他人からしたら何でも無い事かもしれないが、本人にとっては、性格までも変えてしまうほどの重大事だったりする。――「コンプレックス」のために金をかける事を否定する人も居るが、少しの金で、その人の人生が変えられるのなら、それもいい、と、ソウは思う。
 ……もちろん、限度はあるが。
 
 「……今度、前髪も切ってもらえ。煩わしいだろ」
 相変わらず、洋ナシをかじりながら、ディケイルがレイの前髪を触る。――よく分からないが、ディケイルにも、何か、大きな変化があったようだ。
「それよりも、おまえのボサボサ頭のほうが、俺には気になるが」
 ソウが言うと、ディケイルは肩をすくめて「食事」に集中しだした。
 
 食事を終えると、マタルとレイは、何やら話しながら、2人で走って行ってしまった。
 ――後に残されたソウとディケイルは、特に会話もなく、モニターの野球中継を眺めていたのだが、ふと思いついて、ソウは聞いてみた。
「……そういえば、コンタクトレンズ代、どうしたんだ?」
 すると、ディケイルは思い出したように、小さな紙切れをソウに渡した。――請求書だ。
 ………全く、何で俺がこんな細かいところまで世話をしなきゃならない!?
 半ば、諦めモードでため息をつくと、他に気になっていた事を聞いてみた。
「……地球側は、今後、どう出るだろうな」
「さぁな……」
 ディケイルは気の無い返事をする。
「――だが、これからこっちは、『内政』の安定が最優先で、地球が本気で攻撃してきたら、対応し切れないぞ?そうなったら、どうする?」
「―――しばらく、あちらも攻撃して来ないだろ、多分」
 ディケイルがあまりに余裕のある様子なので、ソウは逆に不安になった。
「……なんで、そんな事が言える?何か根拠でもあるのか?」
 すると、ディケイルはチラリとソウに目を向けた。
「種は蒔いておいた。――あとは、あのオッサンがどう育ててくれるか……」


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