忍者ブログ
オリジナル小説のダストボックス

WRITE | ADMIN

PR
カウンター
プロフィール
HN:
碧井 湊
性別:
非公開
自己紹介:
頭の中には、
いつも何かのストーリー。
なかなか、
文字にならないのが難点。

詳しい事はこちらへ。
メールフォーム
感想・ご意見等 お気軽にどうぞ
Powered by NINJA TOOLS
忍者サイトマスター
バーコード
ブログ内検索
当ブログの利用方法
★プラグイン最上部のブログタイ
 トルをクリックで、トップページ
 へ戻ります。
★トップページより、各小説タイ
 トルをクリックで、目次ページ
 へ進みます。
★プラグイン内「カテゴリー」から
 も、目次ページを開けます。
★小説各ページに「次へ」のリン
 クはありますが、「前へ戻る」
 リンクはありません。プラウザ
 内の「←」をご利用いただくか、
 一度目次ページへ戻るかして、
 ご覧ください。
アクセス解析


忍者ブログ [PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


web拍手 by FC2


 1月21日。地球。
 スイス・ジュネーヴの宇宙空港に、1隻の旅客船が到着した。
 ――ガニメデからの『社員』たちを乗せた船だ。
 出迎えも無く、空港へ降り立った人々は、船内で案内された通りに、アース・コーポレーションの本社ビルへ向かった。
 
 ――時間は夜だ。それも、深夜に近い時間帯。さすがの超大企業のビルも、閑散としていた。
 ……それにしても、こちらにも案内人すら居ない。どうなっている?マルコーはやや憤慨して、巨大な玄関ホールを見回した。
 すると、正面の壁――いや、壁に近い「空間」に、突如としてモニターが現れた。……金髪の若い男が映っている。――ミカエル・アイヒベルガーだ。
 
 「長旅、お疲れだった」
 ミカエルは、言葉とは裏腹な冷たい口調で言った。
「さて、諸君の今後の事だが、残念ながら、職場を失ってしまったため、簡単に転勤先を見つける事ができない。よって、――全員を、一旦『解雇』する」
 ……「解雇」という言葉に、一同はどよめいた。
「ちょ……、ちょっと待ってください!わ、私たちに、何の落ち度があったんですか?なぜ、解雇されなくてはならないんですか!?その理由を教えてください!!」
 マルコーの隣に居た若い女性、――通信オペレーターが声を上げた。すると、ミカエルは氷の色の瞳を彼女に向けた。
「何も、ただ解雇しようと言うのではない。――3日後に、再雇用試験を行う。その成績により、職場を振り分ける。……社員へ戻る道も、まだ残されている」
 それを聞き、一同は安堵の表情を見せた。
「―――ただし」
 ミカエルは、視線を一同の中央に立つ人物へ向ける。
「……マルコー・ガニメデコロニー総管理責任者は、そのリストから外す。以上」
 ――モニターから、ミカエルの姿が消えた。
 
 マルコーは、しばらく、その言葉の意味が理解できなかった。……「そのリスト」とは、何の事だ?――リスト、―――再雇用試験の受験者リスト―――!?
 ようやくそれに気付き、マルコーは慌てた。
「……お、おい!!社長!!ど、どういう事だ!?これは、一体……!!」
 先程までモニターがあった空間に向かって叫んでみるが、誰も、何も答えない。
「な、なぜ、……私が解雇されなければならない。――不当だ。こんなのは、不当解雇だ!!」
 いくら叫んでも、何の反応も返って来なかった。
 ……気付くと、他の面々はそれぞれ宿舎に案内され、玄関ホールには、マルコーとその家族だけが残されていた。
 
 ――なぜだ。これまで、必死にアース・コーポレーションに尽くしてきたこの私が、なぜ……!?
 
 マルコーは、床に崩れ落ち、両手を冷たい床についたまま、動けなくなった。
「――パパ……?」
 ひとり息子のブライアンが、マルコーに駆け寄った。だが、その声に応える事すらできない。
「―――イヤ、こんなのイヤ。……わ、私の人生、返して!!」
 妻は、叫びながら、フラフラとビルを出て行った。……そのまま、妻は行方不明となり、マルコーには、それを探す術もなかった。
 残されたマルコーと息子のブライアンは、やがて、見回りに来た守衛につまみ出され、ジュネーヴの街をさまよう事となった。
 
 「――パパ、お腹空いた」
 ブライアンが言っても、マルコーは返事すらしない。ひたすら、虚空を眺めて、街を漂っている。
 やがて、朝になり、交通量が増えて来た。――そんな中を、道へフラフラとよろめき出るものだから、急ブレーキをかけたトラックの運転手に怒鳴られる。
「どこ見て歩いてるんだ!バカ野郎!!」
 アスファルトの路地に倒れ、走り去るトラックを見送りながら、マルコーは思った。
 ――私は、あんなヤツらなど、小指の先で動かせる立場の人間だった。なのに、今は、あのトラックの運転手よりも、低い「立場」に居る。
 
 ……マルコーは、情けなさで涙が出て来た。
「………パパ……?」
 心配そうに見守る息子の前で、マルコーは泣くしか無かった。
 日が昇り、さらに交通量が増え、マルコーたちにクラクションを鳴らす車が増えてきた。
 ――まずい、このままでは「守衛」に通報される……!!
 マルコーは息子の手を取り、裏路地へ入って行った。
 
 ――だからといって、行く場所など無い。
「………パパ、お腹空いた……」
 息子に催促され、ようやくマルコーは思い当った。――もしかしたら、まだ、社員証のCPは使えるかもしれない。
 とりあえず試してみようと、マルコーは近くのカフェに入ってみた。
 時間は朝8時。――案の定、CPはまだ使えた。始業が9時なので、それまでは、まだ、CPが凍結されない!!
 ホットドックをかじる息子の腕を引っ張り、マルコーはコンビニエンスストアに向かった。……こんな時間に開いている店はこのくらいしかないのが残念だが、それでも、CPを、貨幣価値のあるモノに交換しておけば、何とかなるかもしれない。
 マルコーは、社員証に残っている全てのCP――全財産を、商品券に変えた。商品券は、「CP」でも「現金」でもないが、ほぼ、どこの店でも使える!これだけあれば、しばらくは、生活していける!!
 
 こうして、マルコーはようやく落ち着きを取り戻した。
 ――すると、徐々に怒りが湧き出て来た。
 ………これまで数十年、アース・コーポレーションに身骨を砕いてきた私を、いともあっさりと見切った、ミカエル・アイヒベルガー。
 そして何より、この私を、ここまで追い詰めた張本人、ディケイル・ウェイニー!
 
 ……そういえば、ガニメデを出る時、ディケイル・ウェイニーが私に渡してきたモノがある。一体何なのか――?
 公園のベンチに座り、マルコーは携帯端末にそのカードを差し込んでみた。
 ――操作をして中身を開くと、それは、動画のようだった。
 ………よく見ると、第3コロニーを戦艦が爆撃した時の、監視カメラの映像だった。更には、一斉清掃の映像、そして、ディケイルの空港前での演説の映像もある。
 
 ――マルコーはニヤリとした。
 ………なんていい「土産」を、あの男はくれたんだ!!これは、恨むどころか、感謝をすべきなのかもしれない……!
 
 
 
 「CEO、お電話が入っております」
 ケリーがミカエルのところへ受話器を持ってきた。
「――映像はないのか?」
「はい、音声だけの通信になっております」
「相手は誰だ?」
「データがありません」
 ……まぁ、仕方ない。ミカエルは電話に出てみた。
 
 「―――ミカエル・アイヒベルガーか?」
 わざと声色を変えたような、不自然な声だった。……誰だ?
「私がそうだが、おまえは誰だ?」
 ……呼び捨てにしてくるような人間に、丁寧に返事を返す必要はない。
「――いいモノを持っている。買ってくれないか?」
 ………脅迫か?ミカエルは眉をひそめた。
「何だ?それは一体?」
「ガニメデ暴動に関する映像だ。――どうだ?欲しくないか?」
 
 ―――クソッ!……間違いない、マルコーだ!!
 そんなものを、敢えて地球に持ち込んだのか!?――いや、待て、あの男にそんな裁量があるとも思えない。………さては、ディケイルに持たされたか!!
 
 「クックックッ……。さぁ、どうする?」
「――欲しくないと言ったら?」
「そんな事は言わないほうがいいと思うよ?あんたが買ってくれなかったら、流しちゃうよ?」
「それはできない。放送局は、私が許可したものしか放送しない」
「――流すって、放送局だけじゃないと思うんだけどなぁ」
 ………インターネット!!
 個人でサイトのオーナーになるなどできるインターネットでは、さすがにアース・コーポレーションの管理の目も完全には行き届いていない。プロバイダは全てアース・コーポレーションの管轄下に置かれてはいるが、捕まる事を覚悟で、フリー端末何かを使われたら、どうしようもない。
 ――あの映像を、動画投稿サイトなんかに載せられたら、まずい事になる……!!
 
 ―――畜生!ミカエルは拳を握りしめた。
 ガニメデから引き揚げてくる人員に、不審な人物が紛れ込んでいないか、それだけを注意していた。――まさか、マルコーが『犬』になるとは、想像もしていなかった……!!
 
 「……さぁ、どうしますか、シャチョウさん?」
「―――分かった」
「さすが、アース・コーポレーションのCEO、モノの価値の分かる方ですね。――では、また後日、ご連絡いたしますので……」
 
 電話は切れた。
 ミカエルはすぐに、ケリーを呼び出した。
「マルコー・元ガニメデコロニー総管理責任者を探し出し、始末しろ」
「かしこまりました」
「ヤツは金を持っていない。まだ、そう遠くへは行っていないはずだ。近くを重点的に探せ」
 ――しかし、その直後に入った連絡で、ミカエルの苛立ちは頂点に達した。
「……CEO、念のためにご報告しておきます。
 昨晩、解雇された、ガニメデコロニー長の社内口座から、全額が引き出されています」
 ―――しまった!!油断していた!
「………駅、空港、宇宙空港、港、バス、タクシー、全ての交通機関で、CP以外で支払いをしようとするヤツが居たら、即刻連絡するように伝えろ!」
「は、はい!かしこまりました!!」
 経理担当の社員は、ミカエルの権幕に恐れをなして、そそくさと通信モニターから消えた。
 
 その頃、マルコーは、宇宙空港が面するレマン湖の上に浮かんでいた。……観光用の手漕ぎボートだ。
 ――普通の公共交通機関と違い、観光施設とは、商品券を使っても違和感のない場所だ。……傍から見たら、優雅に休日を楽しむ父子としか見えないだろう。
 このまま、隣町まで行き、そこで盗難車でも「調達」すれば、問題ない。――いや、『敵』はこちらが全財産を引き出したのを知っているのだ。無理に動かないほうが、裏をかけるかもしれない。
「――パパ、ほら、魚が泳いでるよ!」
 生まれて初めて見る魚に目を輝かせる、息子の楽しそうな横顔を見ながら、マルコーは思った。
 
 ――世界を支配するのは、ミカエル・アイヒベルガーでも、ディケイル・ウェイニーでもない。………この私なのだ!!


>> 次へ
PR

web拍手 by FC2


※ Comment
HN
TITLE
COLOR
MAIL
URL
COMMENT
PASS


※ この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:



Powered by 忍者ブログ  Design by まめの
Copyright © [ Second Box ] All Rights Reserved.
http://secondbox.side-story.net/