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16.  切り札
 
 
 マルコーは、コルジエの街に潜伏していた。
 小さな街だが、父子ふたりが隠れるには十分だ。
 ミカエル・アイヒベルガーには何度か電話したが、その度に、場所を変えるように気を付けている。
 宿泊場所も転々としなければならない。息子のブライアンには悪いが、当分、落ち着かない生活になるだろう。
 「守衛」にだけは気を付けなければならない。顔を隠すように、帽子を被り、服装も目立たないものに買い替えた。
 
 1時間後に、取引の予定になっている。
 もちろん、メモリーカードのコピーもいくつか用意した。――絞り取れるだけ絞り取らなければ、気が済まない。
 ――そろそろ、行かなければ。
 息子を部屋に残し、マルコーはホテルを出た。
 
 外は、すっかり暗くなっていた。――スイスの冬は寒い。凍るような風が、肌を刺す。
 マルコーはコートの襟を立て、バス停へ向かった。
 取引場所は、「バスの中」だ。……帰宅時間帯のバスの中という、混雑した状況に敢えてした。自分をカムフラージュするのと、相手が乱暴な事をできないようにと考えたのだ。
 
 ――だが、マルコーは、バス停まで辿り着く事ができなかった。
 
 元々、路地裏にある小さなホテルのため、大通りまで出るには、必然的に人通りの少ない道を歩く事になる。
 その時、マルコーの正面で、誰かが止まった。
 
 ……見ると、ものすごい美女だ。この寒い中、タイトなビジネススーツに身を包み、スレンダーな長い脚を、惜しげもなく見せている。――背後の街灯でシルエットしか見えないが、きっと、顔もいいに違いない。
 マルコーは、すれ違いざまに、その顔を拝んで行こうと思った。
 
 「――ターゲット、確認」
 マルコーが近付くと、その美女は、感情の無い声で言った。
「………!?」
 ――ま、まさか、こいつ、「守衛」なのか!?
 だが、どう見ても、そのような物々しい装備ではない。――移動した事で、照明の角度が変わり、美女の顔が見えた。
 ………その美女の肌は、金属の色をしていた。
 
 ――アンドロイド!!
 
 しかし、武器を持っている様子は無い。何をする気だ――?
 マルコーは、徐々に距離を開け、後ずさった。
 アンドロイドは、顔を動かし、それを目で追っている。
 
 ……守衛に連絡をしているのか?――もしそうなら、まずい!!
 マルコーは走り出した。大通りまで出てしまえば、何とかなるハズだ!
 
 「――射殺します」
 アンドロイドは、無機質な声で言い、腕を前に出した。――その掌……いや、腕全体が変形し、ガトリング砲のような形になる。
 その銃口から、光線が一気に噴き出した。
 
 ……マルコーには、為す術も無かった。
 背中から数え切れないほどの穴を穿たれ、動力を失ったゼンマイ式の玩具のように、前のめりに倒れた。
 
 血と肉の塊と化したマルコーに近付き、それを見下ろす美女の目が光った。……生体センサーだ。――誰がどう見ても、生きているはずは無いのだが。
「――任務完了いたしました。帰還いたします」
 生体センサーの数値を確認し、腕を元に戻すと、アンドロイド――ケリーは、その場を立ち去った。
 
 
 
 ―――外が騒がしいのに気付いて、ブライアンは、窓の外を覗きこんだ。
 何やら、ホテルの前を少し行ったところに、人だかりができている。
 ………何だろう?
 
 ――父親からは、絶対に部屋を出るなと言われていた。……しかし、ブライアンは、なぜかそれが気になって仕方なかった。
 見に行こうとドアまで行き、思い出して、また部屋の中へ戻る。――このカバンだけは、絶対に手放してはいけないと言われていた。
 そのショルダーバックを肩に掛けると、ブライアンは部屋を出た。
 
 ホテルを出ると、大勢のざわめきが聞こえた。遠くから、救急車の音もする。
 その、人混みの中から、会話が聞こえた。
「――ひどいわね」
「でも、この人、『失業者』でしょ?仕方ないんじゃない?」
「触らぬ神に祟りなし、ね。――行きましょ」
 ……ブライアンにはその意味がよく分からなかったが、人の隙間から覗き、見えた光景は、――悪夢だった。
 
 ………生々しい、人の形をした、何か。
 その近くに、見覚えのある帽子が落ちていた。
 
 「―――パパ―――」
 
 その声は、近付いてきた救急車のサイレンに紛れて、誰にも聞かれる事は無かった。
 救急隊員が降りて来たが、「被害者」の有り様を見ると、担架に乗せようとはしなかった。
「……社員証が見当たりません」
「―――誰だ?救急に連絡したの。これはうちの担当じゃない。……仕方ない、『保健所』に連絡しておくよ」
「さっさと片付けてもらわないと困る」
 ……救急車は行ってしまった。
 それに合わせるように、集まっていた人々も、徐々に散って行った。
 
 ――ブライアンは、呆然とその場に立ち尽くした。
 
 ………「失業者」になると、死んでも、誰も悲しんでくれないんだ……。まるで、ゴミのような扱いだ。
 ――でも、これは、僕の「パパ」なんだよ?
 つい、この前まで、ガニメデで一番偉い人だったんだよ?
 
 ………僕だって、学校では一番頭良くて、人気者で、クラス委員だったんだ。
 ――だけど、今は、住む家も無いんだ。
 ―――パパもママも、居なくなってしまったんだ――。
 
 僕は、これからどうすればいい?
 
 ブライアンの方へやってくる足音が聞こえた。――保健所か?それにしては早すぎる。
 ………守衛!?
 
 ブライアンは、とっさに物陰に隠れた。
 やって来たのは、やはり守衛だった。
「――あーあ、ひどいモンだぜ」
「でもま、自業自得だろ。……早く片付いて良かった。これで、ゆっくり飲みに行ける」
 ホテルの方角からも、守衛が来た。
「……宿泊していた部屋は空でした」
「同行者は、どんなヤツだ?」
「10歳くらいの子供らしいです」
「―――可哀そうに。この寒い中、野たれ死ぬのがオチだろ」
「とっとと、報告して帰るぞ」
 
 ――守衛たちは去って行った。
 
 ………死んでたまるか。
 ブライアンの中で、悔しさが、決意に変わっていった。
 ――生きて、何としても生き抜いて、この無念を晴らしてやる!!
 
 
 
 1月23日。ガニメデ。
 ソウは、目の回るような忙しさの中を駆け回っていた。
 ――ディケイルが復活してくれたおかげで、「考える」作業は少なくなったが、その代わりに、やる事が増えた。……ディケイルが、思い付き次第、細かい仕事を次々と押し付けてくるのだ。
 しかし、鉱山で漫然と働いていたあの頃に比べると、何という、充実した日々なのか。体力的にも精神的にもキツいが、それでも「嫌だ」と思った事は、不思議と無かった。
 
 今も、ディケイルに頼まれて、旧コロニー管理局まで取りに行っていた資料を持って、ドミニオンへ帰るところだった。
 艦長室に入ると、ディケイルはデスク――には着かず、ソファーの上に片あぐらで座り、手元の資料に向き合っていた。……テーブルの上に、紙の束とバナナの皮が散乱している。――気にはなるが、「ゴミくらい片付けろ」などと言えば、「あんたやってくれ」と返されかねないので、あえてスルーする。
 
 「―――ガニメデコロニー全体の、地下水路の地図だ」
「……おう、お疲れさん」
「――こんなモン、何に使うんだ?」
「補強工事して、シェルターにするんだよ。レイたちも生き残ったくらいで、崩れさえしなければ、けっこう、シェルターとして使えそうな気がしてな。――ついでに、各コロニーを繋ぐ通路になるモノを追加すれば、いざという時の避難経路にもなる」
 ………なるほど。そうしてあれば、先日の第3コロニーのような悲劇は防げる。――さすが、元ホームレスの発想といったところか。
 
 「あと、旧管理局で聞いた話だが……」
 ディケイルが、書類から目を話してソウを見上げた。
「CPが停止されてから、旧貨幣が使われてるだろ?あれでトラブルがけっこう出ているようだ。――そのうち、大ごとになれなければいいが」
「統一通貨も作らなくちゃな。――あと、犯罪などの対策に、法律も作る必要がある」
 ……考えれば考えるほど、気の遠くなるほどの膨大な作業だ、――「建国」というのは。
「―――どれも、早くやらなければならない事ばかりだ。……出来るのか?」
 ディケイルは、少し考えている様子だったが、ふと、何かを思いついたように立ち上がった。
 
 「そうだ!選挙をしよう!」


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