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17.  反撃
 
 
 ミカエル・アイヒベルガーは、執務室で、いつものようにモニターに見入っていた。
 
 ――元ガニメデコロニー長のマルコーの件には、正直、肝を冷やしたが、ケリーと守衛から、「処理」が完了したと聞き、ひとまずは安心した。……妻は、解雇通告の直後、レマン湖に身を投げたと報告を受けているので、心配はない。あとは、行方不明の息子だが、10歳という年齢で、何ができよう。
 マルコーの持ち物を調べたが、映像の入ったメモリーカードは1枚だけ、生活費に使っていたとみられる商品券も、ほんの少額しか持っていなかった。そのため、メモリーカードのコピーの存在の可能性も考え、息子が持って逃亡したとして、捜索中ではあるが、商品券を使おうとする不審な子供の報告も、特に受けていない。――恐らく、この冬の寒さで、ひっそりと凍死でもしたのだろう。
 
 今は、そんな事に気を回しているよりも、もっと早く、やるべき事がある。
 ――ガニメデを潰すのは、今がいい機会だ。
 恐らく、アース・コーポレーションの管理下を出たはいいが、内政は混乱の極みであるに違いない。様々なシステムを全て新たに構築せねばならず、それをしなければ、市民の不満を招き、やがて市民の心は離反する。
 ……軍事的な体制に気を回している余裕など、とても無いだろう。
 
 ミカエルは、通信を開き、ある人物を呼び出した。
「――警備部長、話がある」
 モニターの向こうに、警備部長のリンが、日に焼けた顔を見せた。
「何でしょう?CEO閣下」
 ――会社組織で「閣下」という呼び方はおかしいが、この男、昔は某国の軍の幹部だった経歴を持っているためか、ミカエルの事を「閣下」と呼ぶ。――まぁ、悪い気はしない。
「君に、宇宙艦隊を預ける。――ガニメデを潰してきてくれ」
「かしこまりました」
 ――それだけ言って、リンの姿はモニターから消えた。……余計な事を言わずとも、察して動く。リンはそれが出来る、数少ない人間だ。
 
 警備部防衛課に所属する宇宙警備本部、通称「宇宙艦隊」は、「月」に建設中の軍用プラントに、本拠地を置く。
 ――表向きは、地球、火星、ガニメデの物流経路の安全確保が目的となっているが、実際は、こういった「反乱」が起きた時のための組織、「戦争」のプロフェッショナル集団だ。
 軍事力的には、宇宙戦艦6隻――うち1隻はガニメデに奪われてしまったが――を中心に、宇宙空母、巡洋艦、駆逐艦、哨戒艇、補給艦などを多数保有し、万一、地球に現存するだけの軍事力全てを持って対抗したとしても、勝てる相手ではないレベルになっている。
 ――宇宙における戦力規模は、地上のそれと比べ、それほどまでに強大なものなのだ。
 
 ……それらを、戦争のプロであるリンに自由に使わせる。
 ―――ディケイルに、勝てる要素など無い。
 
 ただ、問題があるとすれば、ミカエルがガニメデを攻める「理由」。
 ――ガニメデに『社員』が残っていれば、その救出とでも不法占拠への実力行使とでも言えたのだが、こちらから引き揚げさせている以上、ガニメデの「存在」を認めた事になる。
 ……ディケイルがそこまで考えて、あの「条件」を出してきたかは分からないが、実際、傍から見ればそういう認識になる。
 ――これは、予想以上にミカエルにとって痛手だった。
 
 「………理由……か……」
 ――いや、そんなに難しく考える必要は無い。元々、ガニメデコロニー自体が、アース・コーポレーションの「所有物」なのだ。それを実力行使で取り戻すために、「社員」たちを、安全のために一旦引き揚げさせた。これでいいではないか。
 問題など、どこにも無い。
 
 さらに、いくつものモニター映像がミカエルの頭脳を通過した後、通信のアラームが鳴った。――情報部の部長だ。
 モニターに現れたその人物の顔は、動揺しきっており、目が泳いでいる。
「……どうした?」
「も、申し訳ございません。――『厳重禁止』されていた、あの映像が、オンライン上に流れました!」
 
 ――ミカエルは、モニターを操作し、情報部から送られてきたデータを開いた。
 ………それは、動画投稿サイトに掲載された、「ガニメデ暴動」の一部始終だった。
 
 ――しまった!
 
 油断した。やはり、コピーは存在していたか!!
「――すぐに削除しろ、今すぐにだ!」
「そ、それが……」
「何をしている!?」
「………件数が16万8000件もありまして、全て削除するのには3時間以上かかります!」
「――何だと!?」
「さらに、今現在も、その動画のアップロードが次々と行われています。――その全てを削除するのは、不可能です!!」
 
 ……ヤラれた!!
 ディケイルが送り込んだ『犬』は、マルコーではなく、息子の方だったのか!!
 
 マルコーの足取りはあっさりと掴め、あまりにも呆気なく「処理」する事ができたので、本当にディケイルの指図で動いていたのか?と、疑問にすら思っていたのだ。
 ――子供だと思って、侮っていた。
 例え、コピーが存在して、それがネット上に流れようが、すぐに見つけ出し、削除してしまえば問題ないと思っていた。だから、そのように指示を情報部長に出していた。
 
 ――しかし、ヤツは、動きが無いとこちらが油断している間に、ネット上の表には出ない部分で準備をしておき、一気に公開に来たのだ。
 ……これでは、取り締まりのしようもないし、映像の流出を防ぎようもない!
 
 「――サーバーを落とせ」
「そ、そんな事をすれば、ユーザーが……」
「サイバー攻撃によってサーバーはダウンした!――急げ!!」
 
 だが、すぐに情報部長が血の気を失った顔で報告してきた。
「……こ、これが投稿されている動画投稿サイトは、ここだけではなく、全世界で289サイトにも及びます」
「…………!!」
 
 ――という事は、とてもひとりでは不可能だ。……もう、既に、広まっている可能性が極めて高い。
 ミカエルはデスクにガクリと手をついた。
 
 「―――もういい」
「………は?」
「消えろ」
 ミカエルがそう言って、モニターを消す瞬間、情報部長が泡を吹いて倒れるのが、チラリと映った。
 
 ――こうなってしまっては、ガニメデへの一斉攻撃も中止せざるを得ない。
 今後、アース・コーポレーションへの不信感が高まるのは必然だ。そんな中、また力で押さえつけるような事をすれば、今度は地球で、暴動が起きかねない。
 それだけは、何としても避けなければ――!!
 
 ミカエルは、モニターに流れているその映像に目をやった。
 ………確かに、映像には、『核の使用』に繋がるものは映っていない。ディケイルが「取引」を反故にしたと抗議したところで、そう反論されるのがオチだ。
 だが、そうでなくとも、これで、アース・コーポレーションの、ミカエルの掲げる「理想」の立場はガタガタだ!
 
 「―――あの、ペテン師野郎……!!」
 
 ミカエルは、歯ぎしりするしか無かった。
 
 
 
 ブライアンは、ネットカフェに居た。
 ホテルは危険だと分かったので、ネットカフェを転々として、寝泊まりをしている。――いわゆる、「ネットカフェ難民」だ。
 こういったネットカフェは、健全なところもあるが、裏で悪い事をしているところも多い。アース・コーポレーションの傘下とはいえ、あまり上と仲良くしてないのではないか。――そう思ったブライアンの予想は当たっていた。堂々と商品券で支払いをしているが、通報された様子は無い。
「………坊や、ひとりなのかい?子供がひとりでこんなところに来てると、良くないよ?」
 中には、こう忠告してくる店員も居たが、
「お父さんもお母さんも、出張に行ってるから、家に帰っても、僕、ひとりなんです。
 ――お父さんもお母さんも、行ってきていいよって言ってたから、大丈夫ですよ。……ヘンなサイトも見ませんし」
 こう言ってやると、それ以上、何も言わなかった。
 こういう店の客は、他の客に注意を向けようとはせず、自分の世界に入っている。――そういう点でも、ここは「潜伏」には最適だった。
 
 まず、掲示板サイトに「実験をしたいから、協力者を求める」という内容の書き込みをした。
 ――「大人数で同時に同じ動画を世界中に流したら、どれだけのアクセス数か稼げるのか?」という、他愛のないモノだ――表向きは。……だが、ヒマな連中は予想以上に多く、こんな陳腐な企画に乗って来た者が、一万人以上も居た。
 その参加者に、「決行日時」にしか開けないよう、ロックを掛けた状態で、あの画像データを送り、「できるだけ多く、何回もアップロードして欲しい」と頼んでおく。
 ……そして、当日。
 一斉アップロードが開始され、噂を聞いてサイトを見に来た人が、面白がって、自分でもそのデータをダウンロードし、更にサイトにアップする。
 ―――その後、その動画の内容をじっくり見れば、自分が何に加担したのかを知り、青くなるに違いない。……バカな人たちだ。
 
 ――今、目の前のモニターの画面には、新着動画一覧が映っている。……その全てが、ブライアンが送った「ガニメデ暴動」のものだ。
 ……20万件、30万件……、動画の数だけでこれだけあれば、アクセス数は、どんな事になっているのだろう?
 
 ブライアンは、インターネットの歩き方には精通していた。クラス委員を務めていた当時には、自分でクラス用のホームページを作り、連絡やらクラス通信やらをまとめていた。
 ――その裏で、学校の「裏サイト」を立ち上げ、気に入らない先生の悪口や、いじめられている生徒の様子を撮影した映像などを投稿していた。
 ……けれども、身元がバレないように、考えて、慎重にやっていたから、その映像が問題になった時も、僕が犯人だって見つからなかったんだ。
 
 だから、今回だって、きっと見つからない。
 ――生き残って、アース・コーポレーション、……そして、ガニメデを無茶苦茶にするんだ!!


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