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 2月8日。ガニメデ。
 ディケイルとソウは、「ドミニオン」を追い出された。
 
 ……というのも、あくまでドミニオンは「戦艦」であり、いつまでも住んでいられては、整備などに支障を来す、という理由だった。
 ――まぁ、ほとんどの人たちが既に他に住居を移し、面倒がっていたディケイルとソウが、残っていただけなのだが。
 そして、第1コロニーの空き部屋が「官舎」として宛がわれ、そこへ引っ越す事となったのだ。
 
 ――ディケイルの住居は、マルコー元コロニー長が使っていた部屋だ。第1コロニーの一角、数少ない住居地区でも、ひときわ大きなマンションの、最上階に当たる。
 部屋を見るなり、ディケイルは入る事を拒否した。
「イヤだ。こんな広い部屋はイヤだ。――落ち着かないじゃないか」
 荷物運びを手伝っていたソウも、正直、同じ感想だった。
 ――床には、豪華そうな絨毯が敷かれ、天井にはシャンデリア、ピカピカに磨かれた大理石のテーブルと、いかにも高級そうなソファー。……寝室に至っては、天蓋付きベッドという、かなり「勘違い」した内装だ。
 「コロニー長」という立場を利用して、一体、何をしていたのやら……。
「……でも、ここしか部屋が空いてないんだ。――移民が増えたから、いっぱいいっぱいなんだよ。我慢しろ」
「イヤだ。絶対にイヤだ。……倉庫か資材置き場でもいいから、他を探してくれ」
「そんな事言うな。レイが可哀そうだろ」
 ――レイの名前を出すと、さすがのディケイルも、あまりワガママは言わなくなった。
「………落ち着かなくて不眠症になって、また倒れたら、おまえ、責任取れよ」
 恨み事を聞き流し、ソウは荷物を適当に置くと、自分の部屋に向かった。
 
 ソウの部屋は、同じマンションだが、もう少し下の階の、一般的な部屋だ。
 こちらは、急遽空いた部屋だったので、片付けが済んでおらず、マタルとレイが先に行って、掃除をしてくれているようだった。
 ――それでも、やはり、戦艦内の部屋よりは、無駄なモノが無いだけ、広い。
 前の住人が、家具やら電化製品やらを置いて行ってくれたので、何も用意しなくても、このまま住めそうだ。
「――なんで、この部屋、急に空いたんですか?……もしかして、オバケが出るとか!?」
 マタルが、ゾンビのマネをして歩き回る。――レイも一緒になって、舌を出しながら歩いている。……ずいぶんと、性格が明るくなったようだ。
 ディケイルに「美容室を紹介してくれ」と言われ、ソウが行きつけのところを教えたら、レイを連れて行っていた。髪型もサッパリして、髪の色も、明るいグレーに変えている。――こう見ると、中性的な感じはあるが、かなりモテそうな顔立ちだ。
「……まさか、オバケは無いだろ。――いや、単に、結婚して同居を始めたから、この部屋が空いた、それだけだよ」
「ふぅん……。――参謀長は、『結婚』しないの?」
 ――そうきたか。
「………相手が居れば、してるさ」
「じゃあ、『相手』は居ないの?」
「……居ると思うか?」
「思わない!」
「―――そこは、元気よく言うところと違う」
 ……正直、ソウには「彼女」とか「結婚」とか、どうでもよかった。――と言えば、嘘になるかもしれないが、マタルと一緒に住んではいるが、ひとり身の今が、気楽でいいと思っている。
「――昼から、大事な式典があるんだ。早く片付けちまおう」
 
 大事な式典。
 ――「ガニメデ独立政府」の発足を発表する式典だ。
 
 ディケイルは、「そんな堅苦しいのはイヤだ」と渋っていたが、対外的に体裁を保っておかなければ、「独立国家」としてのまとまりがなくなる。
 
 ディケイルが代表選で当選してから、とりあえず、その「体裁」を整える作業が最優先だった。
 「政府」と名乗るには、国家代表だけでなく、「大臣」やら「議員」やらも居なくてはならない。立候補して落選した者中心に、ディケイルが人を集め、任命した。
 ――ソウも、何気に「総務大臣」という役職になっている。
 あとは、制服。――これこそ、見た目だけのモノだが、一応「軍」のトップである以上、それなりの格好をしておいてもらわなければ、威厳が保てない。……だが、今はそんなモノを用意する余裕はないので、とりあえず、数の揃っている空港職員の制服を、「ガニメデ独立支援軍」の軍服として採用する事になった。
 
 ………レイと一緒に、ディケイルも美容室へ「強制連行」したのだが、どうしても、髪を触られる事を嫌がり、また暴れられても困るので、断念した。
 ――空港のエンブレムの入ったスーツに、あのボサボサ頭は、どうしても似合わない。
 
 部屋の片付けを終え、着替えを済ませ、ディケイルを迎えに行くと、居心地悪そうにソファーで小さくなっていた。一応、言っておいた通り、「軍服」に着替えてはいるが……。
「――せめて、その寝グセくらい直しておけ。――ホラ」
 部屋に転がっていたヘアブラシを渡すと、ディケイルは仕方なさそうに洗面室へ向かい、髪を整えて戻って来た。……そうすると、今までとかなり印象が変わる。元・ホームレスの貧相な顔も、それなりに見えてきた。――人間の「見た目」とは不思議なものだ。
 
 ――式典の会場は、宇宙空港の仮設施設のロビーという事になっていた。
 元々、ガニメデコロニーに式典や祭りをやるような広い場所は無く――強いて言えば、第3コロニーにあった公園の広場くらいか――、旧コロニー管理局のホールか、空港のロビーかという選択になったのだが、式典に参加する人々にとって思い入れの深い空港のほうが向いていると、ここに決まった。
 
 既に、「独立政府」の役員たち、「独立支援軍」のメンバー、ガニメデ放送局のテレビカメラ、そして、この記念すべき瞬間に立ち合おうとする多くの人々で、空港内は人で溢れ返っていた。
 
 ――式典開始の時間。
 特設されたステージの上に、「大臣」を任された者たちがまず上がる。――ソウも、緊張のせいで妙な歩き方になっているのを自覚しながら、ステージの奥へと進んだ。
 そして、ステージ中央の演台へ、ディケイルが立つ。
 すると、今まで騒がしかった聴衆が、一斉に声を落とす。
 
 「―――まず、ここに至るまでの過程で、その尊い命を失った犠牲者の方々へ、黙祷を捧げる」
 ディケイルが言うと、会場はシンと静まり返った。
 
 ……目を閉じる。
 すると、ソウの脳裏に、これまでの出来事が次々と浮かび上がる。
 
 ―――つい、1ヶ月と少し前までは、ソウは、何の疑いも無く、「アース・コーポレーション」の社員として、日々漫然とした生活を送っていた。……力強い輝きを放つ、グレーの瞳を持った、ホームレスに出会うまでは。
 ……今、思い起こすと、なぜソウは、この「独立戦争」に足を踏み入れたのか、よく分からない。ただ、自分の中の何かを掻き立てられ、衝動的に動いた、その結果が「今」なような気がする。
 ――出会い、仲間意識、敵対心、怒り、憎しみ、悲しみ、そして、喜び――、それらの全ての出来事を、仲間たちと共に分け合ってきた。
 以前のソウは、ただ、存在しているだけの「存在」だった。自分ひとり、この世から消え去っても、誰も何も困らない。ただ、死ぬのがイヤだから生きている。……そんな事さえ考えていた。
 だが、今は違う。「仲間」のために生きて、「仲間」が居るから生きている。――「自分」ではあるが、この「自分」は、自分だけのものじゃない――、そう、実感できるようになっていた。
 ――「自分」のためではなく、それを必要とする「誰か」のために働く。……それは、なんと充足感に満ちたものだろうか。
 ………「アース・コーポレーション」に居た頃には、決して味わえなかった感覚だった。
 
 ―――だが、その代償として、多くの『死』を見て来た。
 
 ディケイルのやっている事は、間違っているとは思わない。だが、それにより、犠牲になる命が出るのならば、それは本当に「正義」だろうか?
 ……それは、ソウには答えを出す事ができない、究極の難問だった。
 今後も、その難問は解かれる事は無いだろう。
 
 ――答えを見つけられるのは、数百年後、「歴史」が定まった後に生まれた人々によってのみだ。
 
 ………それまで、ソウは、その疑問をずっと胸に抱いて、生きて行く事になる。
 ――ソウは果たして、それに、耐えられるだろうか……?
 
 「―――この、尊い命を、無駄にはしない」
 ディケイルの声に、一同は顔を上げた。
「『死』とは、『生きた証』であり、その死に、無意味なものなどない。そう思っている」
 ディケイルは静かに語りだした。
「『生きる』という事は、『死』への限りある時間をどう使うか、そういう事だ。
 ……その限られた時間を、他人の手に委ねたくは無い。自分の意思で、それは決められなければならない。
 ――今、アース・コーポレーションが行っているのは、その『権利』を奪う行為であり、人の『命』を弄ぶ所為だ」
 人々は、ただ静かに、ディケイルの言葉に意識を向けている。
「しかし、アース・コーポレーションにより、世界の紛争は撲滅し、人々の生活が向上した事は、認めざるを得ない。それによって救われた人々も、大勢居るだろう。
 ――だから、私は、ここに『選択肢』を提示する」
 
 ディケイルは頭上に手を上げた。「1」を示すように、人差し指を立てる。
「ひとつは、『自由』は存在しないが、無難に生きていける世界。
 全ての選択を他人に委ね、流されるまま、ただ『生』を漂う世界。――命を売り渡し、アース・コーポレーションの『飼い犬』として、生きていく世界」
 ディケイルの手は中指を立て、「2」を示した。
「……もうひとつは、自分の『意思』で生き、全ての責任を自分で持ち、選択していかなければならない世界。
 自らの足で立ち、自らの『生』を築いていく世界。『自由』はあるが、『失敗』もあり、その結果すらも、自分の責任として、背負って生きて行かねばならない、――怠惰な安寧の無い世界」
 
 人々は、ただ、シンと静まり返っていた。――何を思って、ディケイルの言葉を聞いているのだろう、ソウは少し気になった。
 
 「――自らの意思で、『前者』を選ぶというのならば、それで私は構わない。『失敗』を恐れ、全ての責任を他人に押し付け、自分はただ『安寧』を求める。……そうしたいのならば、アース・コーポレーションに従ったほうがいい。
 だが、もし、『自由』を求めるのであれば……」
 
 ディケイルは、演台に両手を置いた。
 
 「ここ、ガニメデに、その『自由』を確保する。
 それを求めれば、何人たりとも拒絶はしない。受け入れる。
 ……だが、勘違いされては困る。――『自由』とは、『権利』とは、必ず『義務』を伴うものだ。
 それでもなお、『自由』を選ぶのならば、私と共に歩んでほしい。
 
 ――最後に、ひとつだけ言いたいのは―――」
 
 ディケイルは、なぜかテレビカメラの方へ視線を向けた。
 
 「この『選択肢』を否定する権利は、誰にも無い」
 
 
 
 ――ミカエル・アイヒベルガーは、執務室のモニターを苦々しい表情で見ていた。
 ガニメデから送られてきた中継だ。……もちろん、一般には公開していない。
 
 ―――ゴミくずが、偉そうに………!!
 
 「ガニメデ暴動」の映像流出事件は、表面上はおさまっている。――だが、報告によると、インターネット上では、アース・コーポレーションのやり方を批判する書き込みが増えているようだ。……見付け次第、それを削除し、書き込んだ主を洗い出すよう、指示はしてあるが、数が数だけに、はかどっていない。
 ――あまり、厳しくやりすぎても、反感を招き、それがさらなる批判につながる事もあり得る。バランスが難しいところだ。
 
 ――「この『選択肢』を否定する権利は、誰にも無い」
 
 ……ディケイルのこの言葉は、間違いなく、ミカエルに向けられている。
 つまり、「アース・コーポレーションに対抗する気は無いが、ガニメデの存在も認めろ」という意味だ。さらに言えば、「地球がガニメデを攻撃した場合、それは一方的なものであり、全ての否は地球側にある」と宣言しているようなものだ。
 
 ――ミカエルを、見えざる言葉の鎖で縛り付け、身動きを取れなくする気だ!
 
 ………「落ちこぼれ」と見くびっていたが、ここまでは、完全にミカエルの「敗北」だ。
 全て先手を取られ、ミカエルの足元さえも掬われた。
 
 ―――しかし、このままにしておく気など、さらさら無い。
 ミカエルの築き上げた「理想」を、あんなヤツに壊されてたまるか!!
 
 ミカエルは考えていた。
 ――『アレ』を使う時期なのかもしれない。
 「最後の切り札」として取っておいたが、考えてみれば、ディケイルが立場を盤石なものにしてしまえば、『アレ』の効果も薄くなるだろう。
 まだ、「砂上の楼閣」である今の方が、その破壊力を最大限に発揮してくれるに違いない。
 
 ミカエルは、モニターを操作し、ひとつの「映像」を映し出した。
 そして、ニヤリとした。
 
 ――これで、ヤツの息の根を止めてみせる!!


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