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18.  傷
 
 
 ガニメデ独立政府代表となった今も、ディケイルの日々の様子は相変わらずだった。
 レイが起こさないと、ベッドから出て来ない。食事を用意しても、フルーツにしか手を付けない。……レイは、同居人として、相当フラストレーションが貯まっていた。
 
 孤児院時代から、食事は自分たちで用意する事になっていたので、そのおかげで、料理は得意だ。マタルやカティに食べさせても、必ず「美味しい」という返事が返って来る。――なのに、レイの保護者は、絶対に食べてくれない。
 引っ越しをしてからは、毎日食堂という訳にもいかないので、レイが炊事をしているのだが……。
 フルーツしか食べないのが分かっているのなら、フルーツしか出さなければいい、そうも思ったが、これは、レイの「意地」だ。
 第一、あんな食生活をしていては、また、体調を壊して、倒れてしまうだろう。「国家主席」という大役に就きながら、そんな事でみんなに迷惑を掛けられては、同居人として、面目次第も無いではないか。
 
 「――元帥、朝です。起きてください」
 そう言ってカーテンを開け、眩しそうにまた布団をかぶるディケイルを横目に、キッチンへ行く。
 ……トーストにハムエッグにサラダ。
 誰がどう作っても、味に差など出ないメニューだから、万一、レイの味が気に入らないとしたところで、それに関係無く食べられると思うのだが、引っ越してから1週間、一度も口にしていない。……せいぜい、サラダのトッピングのリンゴをつまむくらい。
 
 ……ボサボサ頭のまま、ディケイルは眠そうな顔でテーブルにやって来た。――さすがに、完全に無視するのは申し訳ないと思っているのか、テーブルにだけは着くのだ。
 ――だが、やはり、皿の上を見ただけで、電子新聞を見る作業に移ってしまう。
 ………レイは、半ばキレた。
 
 言葉にして、何と言えばいいのかよく分からなかったので、意識を集中して、ディケイルの心に「侵入」する事にした。
「――元帥」
 レイが呼び掛けると、ディケイルはレイの顔を見た。――その瞬間、目から、ディケイルへ意識を飛ばす。
 
 ―――目まぐるしい「情報」が、レイの頭の中へ入って来る。
 ……今見ていた記事の内容、仕事の事、地球に対する不安、そして、過去―――。
 
 ―――急に、レイの意識は、とある「空間」に落ちた。
 時々ある。それは、「ポケット」のようなもので、雑然としている「記憶」の中でも、その人の中で特に強く印象に残っている物、場所、――そういった「空間」が、ポカリと口を広げている事があるのだ。
 ――子供たちが、テーブルを囲んでいる。目の前には、美味しそうな食事。……だけれども、ディケイルはそれを恐れている。なぜ?
 
 ―――毒―――。
 
 その言葉が頭に浮かんだ瞬間、レイの意識はバチンと音を立てるように、自分の中へ引き戻された。
 ――いや、気のせいではない。……確かに、音はした。
 左の頬が、痛い。
 
 目の前に、ディケイルが、見た事もないような険しい顔をして立っていた。手が宙に浮き、レイを平手打ちしたのが分かった。
 
 「人の心の中をむやみに覗くな。――言っているだろう?」
 そう言うと、ディケイルはリビングの方へ行ってしまった。
 
 ――レイに怒った事などないディケイルが、あのような表情をした事が、レイにはショックだった。……いや、それ以上に、ディケイルの心の中にある、深い「闇」を、覗き見てしまった事の方が、大きいかもしれない。
 ―――毒―――。
 普通に出てくる言葉では無い。一体、どういう意味なんだろう……?
 
 頬の痛みとショックと後悔で、レイの目には、涙が浮かんでいた。
 ――こんな顔のまま、マタルやカティに会えないじゃないか。
 レイは、急いでテーブルを片付け、洗面所へ顔を洗いに行った。
 
 
 
 ………さすがに元気の無い声で「行ってきます」と言って、レイは出掛けて行った。
 ――手を上げたのはやり過ぎだった。ディケイルも内心、後悔していた。
 レイが、ディケイルの事を心配していてくれるのは分かっている。――それを素直に受け入れられない自分が悪い事も。
 
 夜になったら、少し話をしよう。……そう思っている時、インターホンが鳴った。
 玄関に出てみると、――ソウだ。何やら難しい顔をしている。
「……朝からどうした?」
 ディケイルが尋ねるが、それには答えず、
「入るぞ。いいか?」
と言って、勝手に入って来た。
 ソウはそのまま、自分の家であるかのようにズカズカと進み、リビングのテレビモニターのスイッチを入れた。
「……つい、先程から始まったニュースだ。見てくれ」
 
 ―――そこには、ディケイルの最も見たくないものが映っていた。
 
 それは、ひとりの痩せた男。格子の入った窓のある、殺風景な部屋にうずくまっている。
 ――そして、急に頭を抱えて何やら訳の分からない事を叫び、暴れ出した。壁を殴り、鉄格子に頭を打ち付け、床を転げ回る。
 ……すぐに何人かの白衣の人物が来て取り押さえようとするが、それでも、男は暴れるのを止めない。だがやがて、床に抑え込まれると、カメラに言っているのだろう、こちらを見上げて喚き散らした。
「殺す!殺してやる!!おまえが俺を殺さないのなら、俺が殺してやる!!」
 ――その男は、鋭いグレーの目をしていた。
 
 ――映像は、そこで終わった。
 画面が切り替わり、アナウンサーとコメンテーターが何やら会話をし出す。
 ……そんなものはどうでも良かった。
 ―――だが、その画面の端に表示されているテロップが問題だった。
 
 『スクープ!!ガニメデ革命の指導者に、薬物中毒の疑惑!?』
 
 「――これは、本当なのか?……ディケイル」
 ソウが、ディケイルに目を向ける。――真剣な目だ。……ソウは、何かあると、いつもこんな目をする。――ディケイルが逃げようとするのを許さない目。
 
 「………あぁ、本当だ」
 
 ディケイルが言うと、ソウは呼吸を止めたように黙り込んだ。
「この映像の男は俺だ。間違いない」
「…………」
 それを聞き、ソウは苦しそうにうつむいた。
「――どうして、今まで黙ってたんだ」
「…………」
「俺にくらい、教えてくれても良かっただろ……」
「――言えなかった。言いたくなかった」
「それで済む問題か!?」
 ソウが、今度は怒りを込めた目をディケイルに向けた。
 
 ――こうなる事は、薄々分かってはいた。………だが、それは、予想よりも大幅に早かった。
 
 ミカエルは、ディケイルの「過去」を知っている。――それを、いざという時の「切り札」に使ってくる事くらいは予想できた。
 しかし、まさかこの時期とは……!!
 
 ソウの視線が痛すぎて、ディケイルは目を閉じた。
 
 ――地球側が何も動いてこないところを見ると、マルコーがうまく動いてくれているのだろう、と思っていた。地球側が情報をシャットアウトし、火星やガニメデではインターネットの情報も制限されていたから、それを実際に確認する事はできなかったが。
 同時に、ミカエルが何か反撃してくるだろうとも思っていた。でなければ、地球側としても、状況が収拾できない。
 それが何なのか。――恐らく、時間が若干騒ぎを落ち着かせてくれるのを待ち、アース・コーポレーションの正当性を訴え、その上でガニメデへ総攻撃を仕掛けてくる、そう思っていた。
 そもそも、マルコーにメモリーカードを渡したのは、そのための時間稼ぎだった。
 だが……!!
 
 ディケイルは言った。
「引退する」
「―――は?」
「『選択肢』を提示するという、俺の役目は終わった。……もういいだろ」
「おまえ……」
「さすがに、薬物中毒患者が『国家主席』の椅子に座っているワケにもいかない」
「――しかし、……今は、どうなんだ?」
「やってない。――昔の話だ」
 ……あんなモノ、もう、二度とやってたまるか。
「な、なら、それを病院で証明してもらって……」
「いや、――一度、そういうモノに手を出したヤツは、もう信用されなくなる。それが普通だ」
「…………」
 
 言葉を無くしたソウを残して、ディケイルは部屋を出た。――部屋のカギは、テーブルの上に置いてきた。あとは、ソウが考えて、レイに渡すなりしてくれるだろう。
 
 その日の午後、臨時議会が招集され、ディケイル・ウェイニーの代表辞任が承認された。
 
 
 
 ――初の議会開催が、7日前に決まったばかりの代表を罷免する臨時議会――。
 あまりの展開に、ソウは、どうしていいのか分からなくなっていた。
 
 「議会」と言っても、各コロニーの代表者、各大臣、それに議長と代表という、30名足らずの小さな「会議」だ。
 そこで、ディケイルが出した「代表辞任『案』」を多数決で採決したのだが、反対したのは、ソウと、防衛大臣を任されていた、ディケイルの知り合いらしい男だけだった。――圧倒的な多数意見で、ディケイルは「切り捨て」られた。
 
 議決が議長によって承認されると、ディケイルは議場を後にした。
 続いてすぐに、次の代表を決める選挙の日取りなどの話し合いが始めったが、ソウはいてもたってもいられなくなり、中座して、ディケイルの後を追った。
 
 ディケイルは、議場のあるコロニー管理局の建物を出るところだった。
「―――おい!」
 ソウが呼び止めると、暗い目をこちらに向けた。
「……ま、まさか、軍司令官の役職まで辞めるワケじゃないよな?」
「当然、辞める」
「…………」
「元薬中患者が、軍のトップってのもマズいだろ」
「みんなが納得しないぞ?」
「するもしないも、……こうなっちまったんだ。仕方ない」
 そう言って、ディケイルはソウに紙切れを渡した。
「マッド・テイラーに渡しておいてくれ。――『辞令』だ」
 呆然と紙切れを見つめるソウを残して、ディケイルは歩き出す。ハッとして、再びソウは声を上げた。
「待て!―――俺たちを、見捨てるのか?」
 今度は、ディケイルは振り向かなかった。
「――後の事、頼んだ。………レイの事も」
 それだけ言って、早足に歩き去った。
 
 ―――ソウは頭の中が真っ白になった。
 ……一体、何が起きたんだ?何がどうなって、今、俺はここにこうしているんだ??
 
 全く、訳が分からない………。
 
 ソウは、かなり長い時間、そのまま立ち尽くしていた。
 だが、よく顔を出していた事務所の事務員の女性に声を掛けられ、我に返った。
「――あの、どうなさいました?」
「………い、いや………」
 ――戻らなければならない。……今、ソウは、ガニメデを支える立場に居る。
 
 ビルの廊下を歩きながら、ソウはディケイルの言葉を思い出していた。
 ――後の事、頼んだ。………レイの事も―――
 ………勝手だ。勝手過ぎる。散々周囲を振り回しておいて、突然、引退だなんて……!
 
 その時、ふと引っ掛かり、ソウは立ち止った。
 
 ………レイの事も―――?
 
 レイを俺に預ける、という意味か。……ならば、ディケイルはどこに行く気なのだ?
 
 そう考えて、頭に浮かんだ内容に、ソウは凍りついた。
 ……あいつ、まさか………!!


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