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 ……全く、俺にどうしろと……!!
 コートを羽織ってマンションを飛び出し、空港へ向かうシャトルに駆け込むと、マッド・テイラーに連絡を取った。――着陸は許可せざるを得ない。ディケイルが独立の演説で、「誰でも受け入れる」と宣言しているのだ。だが、万一、相手が難民船を装ってテロ目的で来ていたとしたら、こちらも武力で以って対応しなければならない。マッド・テイラーなら、それを分かって、部下を連れてきてくれるだろう。
 ――だが、一番の問題は、「誰でも受け入れる」と言った張本人のディケイルが居ない事だ。……俺が勝手に着陸許可を出したとなれば、議会で問題になるかもしれない。
 ……もう、知った事じゃない。「責任を取れ」と言われれば、その場で辞めてやる!
 
 空港には、着陸させるよう、既に連絡しておいた。だが、乗員を降ろすのは「軍」が来てからだ。
 仮設の空港ビルには、空港職員たちが集まっていて、滑走路の脇で止まっている、水上艦なのだろう、珍しい形をした宇宙艇を眺めていた。――宇宙艇に不審な動きは、今のところ無さそうだ。
 集まった空港職員の中に居たワトソンが、ソウを見ると話し掛けてきた。
「あの宇宙艇のパイロットの話では、地球のスイスから来たと言っている」
「スイス……?――アース・コーポレーションの本拠地じゃないか」
「スパイか何かを送り込んで来たのだろうか?」
「――いや……」
 もし、そうだとしたら、あまりにも露骨過ぎる。
「とりあえず、妙な動きが無いか観察を続けて、軍を待とう」
 
 その間に、対応がしやすいように、宇宙艇をハンガーに移動させるよう、ワトソンに指示した。ボーディングブリッジを使うのは、今は危険だ。念のため、状況が把握しやすい広い場所で、確認作業を行った方がいいだろう。
 
 マッド・テイラーが部下十数名を引き連れてやって来たのは、それから間もなくだった。――ニーナの兄、エトウ・パルネラも居る。元守衛隊中心の、即戦力部隊だ。
 ワトソンから話を聞いて、すぐに空港の片隅にあるハンガーに向かう。――ソウも、その後を追った。
 
 ハンガーは、あの「空爆」の被害を受けず、以前のままの姿を保っている。現在の仮設空港ビルと同じく、巨大なテント状のその建物に入ると、その中央に、宇宙艇は停まっていた。
 完全武装の元守衛たちは、宇宙艇を取り囲み、銃を構えた。それを確認して、マッド・テイラーがソウに合図を送った。
「……私は、ガニメデ独立政府で総務大臣を務める、ソウ・ナカムラだ。上陸の許可をする前に、少し話を聞きたい」
 ワトソンが、管制塔を通してコクピットと直接話ができるよう、専用の無線を貸してくれていた。
 ソウの位置から、コクピットの中が確認できる。――男が2人、こちらに向かって手を挙げていた。
「――我々は、地球の難民を運んで来ました。亡命を求めます」
「その目的は?」
「あなたがたの首班は、誰でも無条件に受け入れると宣言していたはずだ。その質問の意図が分からない」
 ……全くその通りだ。「敵意が無いのか確認してくれ」と言われたのが、どういう話をすれば良いのやら……。
 見かねたように、横で見ていたワトソンが口を出した。
「では、マニュアル通りの安全確認を行う。――まず……」
 ……マニュアルがあるのなら、先に言ってくれ!
 ワトソンが一通り質問を終え、とりあえず全項目に合格したのか、ソウに「OK」のサインを送った。
「……では、前方の出入り口より、全員、外に出ろ。不審な動きがあった場合は、武力を以って対応する」
 マッド・テイラーは、部下に指示し、搭乗口付近に人員を移動させ、銃口を集中させた。――その先で、ゆっくりと扉が開き、乗客らしい女が出て来た。……いや、女にしてはゴツ過ぎる。服装は、ピンクのタイトなワンピースという姿だが、シルエットは、どう見ても男だ……。
 その、「女装の男性」を先頭に、10歳くらいの男の子、60歳過ぎの老夫婦らしいカップルと、次々と人が出て来た。空港側が用意した、移動式の階段で降りる。
 ――人の流れが一旦止まると、宇宙艇の前には、数十人の人だかりができていた。最後に、コクピットに居た2人が昇降口に顔を出した。
「船内の確認を行う。全員、そのまま待て」
 マッド・テイラーが数名の部下を引き連れ、階段を駆け上がった。マシンガンを構え、船内を見て回る姿が窓越しに見える。
 
 その間、ソウは「乗客」たちの様子を見ていたのだが……
 なぜか、2番目に出て来た子供が気になった。――マタルやレイと同じくらいの体格だ。だが、他の乗客たちのように、オドオドしたり、銃による威圧にかしこまっている様子が無い。……何か、達観したような表情で、ソウたちをジロジロと眺め回していた。
 ――あれ?この子供、どこかで見た事あったっけな……?――いや、気のせいだろう。そんなハズが無い。
 
 「――船内に隠れている人物、不審物は発見されなかった」
 一通り確認を終え、マッド・テイラーが昇降口からそう告げた。……こうなったら、もう、受け入れるしか途は無い。
「……では、長時間お疲れ様でした。今から宿舎に案内します。ですが、まだしばらくは監視だけはさせていただきますので、ご了承ください。
 後日、個別に身元確認を行いますので、それまでは、宿舎で大人しくしていてください」
 ――確か、旧第3コロニーの、要塞の工事現場に、仮設住居の空き部屋がいくつかあったはずだ。一人一部屋なんて贅沢はできないが、2、3人詰め込めば、何とかなるだろう。周囲の仮設住居も、入居者のほとんどが「軍」関係者だ。安全の面でもベストだ。
 
 旧第3コロニーまで「難民」を送り届け、全員の入居を見届けた頃には、夜明けになっていた。ソウはその足で空港に戻る。――旅行支度をして出てきて良かった。このまま、朝の便で火星に向かおう。
 空港に向かうシャトルの中から、ガニメデの空に降り立とうとしている、小型旅客船の機影が見えた。
 
 
 
 ブライアンは、少々ガッカリしていた。
 あまりにも適当な安全確認。――もし、僕らの中にテロリストが混ざっていたとしても、あれでは簡単にすり抜けられてしまうじゃないか。「テロリスト」って言ったって、武器を持って来ているとは限らない。……「敵」は、この程度の相手なのか?
 ――そして、出迎えた人たちの中に、ディケイル・ウェイニーの姿が無かった事も残念だった。……この先、潰してやろうとしている人物の顔を、一度じっくり拝んでおきたかった。
 あの、間抜けなツラの「総務大臣」だか何だかが言っていた「亡命の目的」。……コクピットと外との会話の様子は、船内放送で聞く事ができた。――それを、ブライアンに直接聞かれたのなら、躊躇無く「ガニメデをブッ潰す事」と答えていただろう。
 ……ただ、今はまだ力が無さ過ぎる。しばらくは大人しくして、機を窺うとするか。
 
 いつか、ガニメデも地球もブッ潰して、僕が「1番」になってやる。――そして、父さんを超えてやる!!
 
 ――それにしても、狭い仮設住居に押し込まれ、さらに2人で1部屋とは……。
 それも、同居する相手は、あの「オカマ」だ。成り行き上、そうなってしまった。
 
 まぁ、普通に見て、悪い人では無いと思う。
 船の中でも、いろいろ親切にしてくれた。気分が悪くなり気絶してしまったブライアンを介抱してくれたり、宇宙艇のオーナーからの差し入れと渡された食料を、みんなに平等に配って回ったり。……多少お節介な部分はあるが、基本的には「いい人」だ。
 今も、配給される食料やら寝具やらを、取りに行ってくれている。……ベッドは無い。床に転がって寝るのか。――キャンプ体験だとでも思っておこう。
 
 「――お待たせぇ~。毛布しか無いけどごめんね、だって。……ま、仕方ないわね」
 ……思い切り毛布を抱えているはいいが、口紅やらファンデーションやらで汚れそうなのが気になった。……毛布を受け取る時には、身体に近くない側のをもらおう。
 その後、非常食なのだろう、ビスケットと缶ジュースで食事を済ませ、ブライアンは床に就いた。マーガレットは、シャワーを浴びてくると言って、共同浴場へと向かったようだ。
 ……船内でも出来る限り眠るようにしていたので、さすがに眠れないだろう。そう思っていたが、やはり、疲れが出た。
 ブライアンは、いともあっさりと眠りに落ちた。
 
 
 
 ソウも、火星行きの旅客船に乗るや否や、疲れに押し潰されるように眠りに入った。長距離用の宇宙船なので、座席では無く、個室の「寝台」になっている。狭いベッドに横になり、毛布を被る。――が、それも、携帯端末の呼び出し音に妨害された。……今度の相手は、マタル。――しまった、慌てていて、メモを置いてくるのを忘れていた!!
「……悪い、マタル。実は、今から火星に『出張』なんだ」
「大丈夫ですか?昨日も遅かったみたいだし」
 身体の事を気遣ってくれる相手が居るというのは、何だかくすぐったいようで、嬉しい。
「俺は大丈夫だ。――それよりマタル、しばらく家を空けるが、レイと仲良くやるんだぞ」
「分かってますって。……お土産、期待してま~す」
 ――電話は切れた。
 ディケイルの事を伝えるべきか。レイの名を出した時、一瞬迷ったが、やめた。――万一、ディケイルが「まとも」で無い状態だった時、レイにそれを伝えるのは酷だろう。
 ……にしても、あの子供たち、俺なんかよりよほどしっかりしている気がする。
 
 窓の外を眺めると、漆黒の星空が一面に広がっていた。外気が無いだけ、光を遮る障害も無く、星々は瞬きもせず、その儚い光で虚空を満たしていた。
 
 ――ソウが宇宙船に乗るのは、人生で2度目だ。
 1度は、地球からガニメデへ来た時。――その時は、この星空を眺めながら、何を考えていただろう。……いや、淡々と「会社」の命令に従っているだけで、何も考えていなかった気がする。――未来、自分がどのような道を歩むのかも。
 今は、そればかりが気になって仕方無い。……この先、俺はどうなるんだろう。結局、ディケイルに振り回されっぱなしで、「レール」を踏み外してしまった。そのレールの下にあったハズの「ガニメデ独立政府」という受け皿も、今や割れかけている。――落ちるところまで落ちるのか、それとも……。
 
 今のソウは、この宇宙船と同じように、虚空を漂い漂流しているのかもしれない。
 それならば、ジタバタせず、流れに身を任せるしか無い。


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