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22.  刺客
 
 
 翌朝、搭乗手続きを済ませてから、ソウは空港の売店を眺めていた。
 ――マタルにはTシャツを買っていこうと思う。レイとカティにも同じものを選んだ。だが、マッド・テイラーやらマックといったあのへんも、ソウが火星に来ている事は知っている。何か買って行ったほうがいいだろうか……。
 クッキーの箱が積まれたコーナーを眺めるソウに、ディケイルが呆れたような目を向けた。――さすがにメガネは外している。もう、変装など必要無いのだ。
「さっさと決めろ。乗り遅れるぞ」
 ――全く、誰のせいで俺がこんなところまで来たと思ってるんだ。……だが、出発時間が押し迫っているのは事実だ。急いで、手当たり次第に適当に箱を取り、支払いを済ませた。……かなりの大荷物になってしまった。
 そんなソウをジロリと見ると、手を貸すわけでも無く、ディケイルはさっさと歩き出した。
 
 今度の旅客船も、行きと同様、寝台タイプの船だ。――だが、問題は、シングルの部屋が空いていなくて、ツインルームになってしまった事だ。
 ……男同士、ツインルームで仲良く寝るというのは、できれば遠慮したい。しかし、飛び込みで席が取れただけマシだ。贅沢は言っていられない。
 部屋に入ると、――だが、やはり何となく気まずい。ディケイルはそんなソウの様子を気にするでも無く、寝台にゴロンと横になった。
 ……まぁ、せっかく同じ部屋になったのだ。連絡事項だけは伝えておこう。ソウは寝台に腰を下ろし、ディケイルの方を見た。
 
 「……いろいろ連絡しておくべき事がある。聞くだけ聞いてくれ」
「何だ?」
「俺が火星に来る前、難民船がガニメデに来た」
 ディケイルが少しだけ顔を上げた。
「……どこから?」
「地球のスイスから」
「………」
「おまえの方針に従い、上陸許可を出し、今は第3コロニー跡にある仮設住居に収容してある」
「そうか」
 ――まるで「俺には関係ない」とでも言うように、ディケイルは頭を下ろした。……全く!
「で、その難民の中に、マルコー元コロニー長の息子が居ると、昨日、マタルから連絡があった」
「………それを先に言え」
 ディケイルが起き上がった。――勝手なモンだ。
「どうする?」
「どうするも何も……」
 ディケイルは、俯き加減に頭を掻いて、答えた。
「『誰でも受け入れる』と宣言した以上、何もできない」
「……本当に、それでいいのか?」
「仕方ないだろ。俺は、たとえミカエル・アイヒベルガーが亡命して来たところで、受け入れるつもりでいる。――まぁ、今後の議会がどう判断するかは知らんがな」
 ……また、極端すぎる例えだ。
 それから、ディケイルは顔を上げてソウを見た。
「難民を上陸させる時、どういう手続きを取った?」
「まず、ワトソン空港長から難民船の代表に、マニュアルに従った質問をしてもらい、それで問題が無かったから、あとは、テイラー総司令官に船内の確認をしてもらって、不審物も見付からず、そのまま仮設住居に案内した」
「荷物検査は?」
「……してない」
「…………」
 ――言われてみれば、どこの空港でも荷物検査やボディーチェックは必須項目だ。……だが、それが抜けていたからと言って、ディケイルに白い目で見られる筋合いは無い。文句があるのなら、火星に「逃亡」する前に言え。
 そんなソウの視線を気にする様子も無く、ディケイルは苦い顔をした。
「―――フォンシェに聞いただろ。地球は火星に対し、監視を強めてきている。……という事は、その流れで、ガニメデにスパイを送り込んできたとしても、全く不思議は無い」
「……じゃあ、アース・コーポレーションが堂々とスパイを送り込んで来た可能性が強い、と?――それを安易に上陸させてしまったのは失敗だったと?」
「いや。――極端な話、たとえその全員がスパイだったとしても、その証拠が無い以上、受け入れざるを得ない。……だが、最低限のチェックはしておきたったな」
「でも、今も、監視の目が行き届いた場所に全員集めて収容している。今から指示を出して、荷物検査なりを行えば……」
「もう遅い。――監視の目があるとはいえ、完璧じゃない。武器なり危険物なりを持ちこんで、どこかチェックを逃れられそうな場所に隠してしまえば、それまでだ」
「…………」
 ――やっぱり、ソウのやり方が失敗だったと言いたいのか。ソウは本格的に不機嫌になってきた。
 それが顔に出たのだろう。ようやくソウの様子に気付いたようで、ディケイルが気まずい顔をした。
「――何も、あんたのせいだとか、そういう事を言ってる訳じゃない。どんなにチェックを厳しくしたところで、入ろうと思えば入れるモンだ。……俺がガニメデを出る時だって、空港に相当な数、俺を探してるだろう人が居る事は分かった。でも、見付からずに船に乗れた。そんなモンだ。
 それに、武器や不審物と一言に言うが、持ち込まずとも、知識と技術だけ持っていれば、いくらでも現地で調達可能だ。――例えば、爆弾のようなものなら。そんなモノ、調べようが無い」
「ば、爆弾……!?」
 今度は何を言い出すのだ?ソウは目を丸くした。
「例えば、の極端な話だ。――スパイが目的なら、爆弾を作ったところでしょうがない。テロリストじゃあるまいし、さすがにそんな事は無いと思うが……。
 だが、今後は難民も増えるだろう。きちんとしたマニュアルを作らないとな」
「とりあえず、マルコーの息子の件は……?」
「様子見、しか無いだろ。――ガニメデに着いたら、直接、話を聞いてみるかな」
 ――例の、ディケイルがマルコーに渡した『種』の件の確認もあるのだろう。
 
 「あと……」
 ソウは話題を変えた。
「キャサリン女史が、代表選に立候補した」
「……誰だっけ?それ」
「忘れたのか?――『前』政権で書記を務めた、あの人だよ」
「………あぁ。思い出した」
 キャサリン・ギルバート。――第1コロニーに所属していながら、ガニメデに残った、数少ない人物である。噂によると、旦那が社員でありながら、自らも契約社員としてコロニー管理局に勤務していたが、第3コロニーの惨劇を知るや、地球に戻る事を選択した旦那と離婚、第3コロニーの難民支援ボランティアの中心となった人物らしい。女性陣の熱烈な推薦を受け、ディケイルは議会のメンバーに入れた。
 ……ソウに「なんで社員の立場を捨ててまでガニメデに残ったのか」と言ってきた人物でもある。――よく考えれば、なぜそんな人にそんな嫌味を言われなければならないのかが分からない。女性とは、理解不能な生き物だ。
「……あのうるさいオバサンが代表になると、俺らもやりにくいな」
 ディケイルも分かっているようで、苦々しい表情をした。
「だが、当選はしないと思う。第2コロニーの自治会長の、アームストロング氏も出ている」
 この人物は、第3コロニーの復興のため、各コロニーへ支援を呼び掛けたり、自らも現場に出向いて何かと手を貸してくれたりして、ソウとも面識があった。キャサンリン女史と違い、地球側についた社員とガニメデの非正規社員たちとの間で争いがあった時、その仲裁に入るなど、実に温厚で話のできる人物だ。70歳近い老齢だが、それだけに、人望も厚い。
 ――実は、キャサリン女史が立候補した事を知ったソウが、立候補してくれるよう頼みに行ったのだ。あのままキャサリン女史が『代表』になってしまったら、「軍」と「政府」が分裂する危険があると思ったからだ。……アームストロング氏に、前政権へ参加していたという前歴が無いのも、皮肉な事だが、今回の場合、有利な材料になると思う。
 ソウは知らなかったが、アームストロング氏は、前の選挙の時、ディケイルにも立候補を打診されていたらしい。だが、その当時は復興支援に夢中で、とてもそんな気は起きないと断った。だが、
「――これだけあなたたちが頑張って、ガニメデが変わっていくのを見ていたら、私にももっと何かできないものか、と思うようになってきたよ」
と、今回は快く引き受けてくれた。
 
 「……しかし、あのオバサン、たとえ代表にはなれなくても、もっと立場を上げてくるだろうな」
「――まぁ、それは仕方ないだろう。文句があるのなら、帰ったらすぐに自分で立候補届を出す事だ。まだ間に合うぞ?」
「無理な事を言うな」
 
 それから、ソウは携帯端末の留守番電話の録音を確認した。――案の定、手続きに関する問い合わせばかりで、「自分で考えろ」と言いたくなる内容がほとんどだった。……キャサリン女史の、
「あなた、ご自分の立場というものを分かっておられるのですか!?」
という金切り声も入っていた。
 ディケイルはというと、眠っているのか起きているのか分からないが、向こうを向いてベッドに横になっていた。
 ……眠くも無いが、他にやる事も無いので、ソウも横になる事にした。


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