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碧井 湊
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 玄関のチャイムが鳴ったので、インターホンを確認してみると、――見知った顔が映っていた。
 レイは、急いで玄関に向かった。――だが、そこで止まった。扉を開ける、それだけの行為なのに、何だか、とても緊張する。……ただ、帰って来た家族を迎え入れるだけなのに。
 目を閉じ、ひとつ深呼吸して、レイはドアを開いた。
「………ただいま」
 その人は、相変わらずの姿で、そこに立っていた。――少し、雰囲気が変わった気がするが、気のせいだろうか?
「――おかえりなさい」
 レイは、ドアノブをその人に手渡すようにドアを押し開け、――そのままキッチンへと走った。
 ……どんな顔をして、顔を合わせればいいのか分からない。心の準備が必要だった。
 
 昨夜、マタルが泊まりに来た時、ディケイルが帰って来ると聞いて、レイは心から喜んだ。――というよりも、安心した。マタルの前ではあるけれど、ホッとして緊張が一気に解けたような気がして、座り込んでそのまま泣いてしまったほどだ。
 
 ……人の心を「見る」行為、それが、どんなにその人を傷付ける事であるかを知って、レイは心底、後悔していた。――今までは、それを当り前のようにやってきた。それに気付く人すら居なかった。……でも、元帥の「過去」が明かされた時のガニメデの状況を見て、「知ってはいけない事」の存在を知った気がした。
 今まで、「革命軍」に積極的に協力してくれていた人たちの、その多くが、元帥が「薬物中毒」だったというニュースを見て、手のひらを返したように冷たくなった。
 中には、「あんた、騙されてるんだよ?」と、同情した顔で説得してくる人も居た。
 ……みんな、分かってない。「過去」は「過去」なんだ。元帥が、その「過去」のせいで、どれだけ傷付いて、どれだけ重荷を背負ってきたかも……。
 今の元帥は、全然そんな人じゃないのに。
 レイは、どうしようも無く悲しくなった。
 
 マックやマタルは、「そんなの、無視しておけばいいよ」と慰めてくれたが、やはり、「知ってはいけない事」を知ってしまった「罪」の意識が、レイの心の中をモヤモヤと支配していて、意味も無く、こうなった事その全ての責任が自分にあるように、レイには思えた。
 
 ――その、モヤモヤを晴らしてくれる張本人が、今、すぐ近くに居る。……ダメだ。まともに顔を合わせたら泣いてしまいそうだ。
 でも、その前に、謝っておかなきゃ……。
 
 レイは、キッチンに駆け込んだ理由をごまかすために、慌ててリンゴジュースを用意した。「これなら元帥も飲めるハズ」と、マックの奥さんのマリーが教えてくれた、無添加の銘柄のヤツだ。
 ジュースを注いだグラスを両手に持ち、心を決めて、リビングに入った。
 
 ディケイルは、ソファーに腰を下ろし、落ち着かない様子をしていた。
 とりあえず、その前にグラスを置く。そして、レイも向かい側のソファーに座り、――ジュースを飲んだ。
 ……目が合わせられない。
 レイは、実際に顔を向けなくても、周囲の状況の全てが分かる。――ディケイルも、レイと同じように、黙ってグラスを口にしている。
 ――ぎこちなく時間が過ぎた。ジュースだけが早く消費されて、グラスは空になった。
 
 ……何か言わなきゃ。
 レイは、思い切って顔を上げた。――だが、先に切り出したのは、ディケイルの方だった。
「レイ。――悪かったな。………俺は保護者として最低だな」
 レイは言葉を出す事ができなかった。それでも、何とか意思表示をしようと、首を横に振った。――もう、涙が目からこぼれ落ちていた。イヤだ。こんなつもりじゃなかったのに……。レイは目を伏せた。
「おまえが俺の事を心配してくれているのは分かってる。――分かってて、こんな態度しかできない保護者は、俺から見ても、本当に最悪だと思う」
 ……自分でも何を言っているのか分かっていない様子で、ディケイルは頭を掻いた。
 レイは必死になって考えていた。――違う、違うんだ。悪いのは僕なんだ。相手の気持ちも考えずに勝手な事をした、幼稚で未熟だったのは僕の方なんだ……。
 頭の中ではいくらでも言葉が浮かぶのに、声にならない。それでも、無理矢理声を絞り出してみると、
「………ごめんなさい」
の一言しか出て来なかった。――それと同時に、涙がいっぱい出てきて、抑えられなくなった。レイは両手で頭を抱えて、膝の上に屈み込んだ。
 
 不意に、肩に手を置かれて、レイはハッと顔を上げた。――ディケイルが、レイを見下ろしている。いつの間にこちらに来てたんだ?普段なら気配に気付かない事など絶対にあり得ないが、やはり、心が乱れている時は、そうはいかないようだ。
 ディケイルは、指先でレイの頬を拭った。
「泣くな。――おまえに泣かれたら、俺の立場が無いだろ」
 そう言って、レイの視線に合わせるように床に片膝を付くと、――両肩に手を置き、額と額を合わせた。……あの時にように。
「……もう、おまえには隠し事はしない。――ただ、全てを知れば、おまえは俺の事が嫌いになるだろう。そうしたら、……自分の好きなようにすればいい」
 
 レイは、言葉では無く、「意識」で伝えた。
 ――ディケイルを嫌いになるくらいなら、何も知らないままの方がいい。
 
 あなたは、僕のたったひとりの「理解者」なのだから。
 
 
 
 3月3日。
 アース・コーポレーションの執務室で、ミカエル・アイヒベルガーはニュースを見ていた。いつもにように、複数のモニターを流れ作業でチェックしている訳では無い。ひとつの画面を、じっくりと見ている。
 ――それは、臨時に行われたガニメデ代表選の結果についてのニュースだった。
 ガニメデ独立政府の二代目代表に、アームストロングという人物が選ばれたらしい。……この人物などに、ミカエルは全く興味が無かった。
 ――問題は、それと同時に発表された、軍司令官クラスの顔ぶれ。
 制服組のトップである総司令官に、かつて警備部で守衛をしていた、マッド・テイラーが就任した。……さらに言うなら、この情報すらどうでもいい。
 ………宇宙空軍司令長官、つまり、軍の「2番目」の立場に、「あの男」の名がある事。それが何よりも重要だった。
 
 ――止めは刺しきれなかったか。
 
 「あの」映像を流した後、ディケイル・ウェイニーが政府代表を退いた事は聞いた。――その後の消息がしばらく掴めなかったが、もう舞い戻って来ているとは……!
 ……ディケイルのやり方が巧妙だったのか、ガニメデの連中が馬鹿なのか……。
 
 「切り札」のつもりで使った情報だが、止めを刺せないばかりか、大したダメージも与えられなかったようだ。
 ミカエルは唇を噛んだ。
 
 ……いや、しかし……。ミカエルは別のところに着目した。
 確か、総務大臣をしていたソウ・ナカムラという男も罷免され、軍の参謀本部長に任命されている。この男は、ガニメデ暴動勃発当初、その首謀者と言われていたくらいで、ディケイルと関係が深い人物に違いない。
 その男までもが、政府を離れ、軍に移ったという事は……
 ミカエルは、革張りの背もたれにゆっくりと身を預け、ニヤリとした。
 
 ――これは、政府と軍部の対立構造が出来上がっているという証拠ではないか?
 
 ここにつけ入らないでどうする?
 ミカエルは、少し思考に耽った後、デスクに置かれた携帯端末を手に取った。電話帳を検索し、ある名前にカーソルを合わせ、発信ボタンを押す。
 間もなく画面に現れた人物に、ここに来るように伝えると、――その人物はすぐにやって来た。
 
 テオドア・カゼリ。
 ――「ラザレフ生体能力開発機構」の施設の卒業者のひとり。……「トランセンダー」だ。
 
 施設に居た頃は、5番目の成績を収めていた。……だが、今現在、ミカエルと行動を共にする4人の「卒業生」のうち、ミカエルは最も信用を置いている。彼が、「読心術」に長け、その情報を元にそつの無い対応をするせいかもしれないが、ミカエルに対する「忠誠心」という点では、他の4人を遥かに上回る、と思っている。――フォンシェ・アレハンドロなど比べようも無い。
 
 「――そろそろ、お声が掛かる頃だと思っていました」
 ライトブラウンのクセの無い髪の下から、ヘーゼルの瞳が、銀ぶち眼鏡越しに覗いている。……その目で、相手の心を丸裸にする。だが、ミカエルは、それを恐れてなど居ない。――この男に隠さねばならない事など、存在しない。
「……では、分かっているな?」
 ミカエルがそれだけ言うと、テオドアはニコリとした。
「はい。――既に手は打ってあります」
「念のため、具体的に説明してくれるか?」
 テオドアは、眼鏡のフレームを軽く持ち上げた。
「はい、お言葉とあらば。
 ……ガニメデ暴動が起こった当初から、後の事を考え、現地で『スパイ』を調達してありました。そして、そろそろ何か変化が起こる頃だろうと、『工作員』を2名、難民を装って送り込んであります」
「そうか」
 ――さすがだ。「心」だけでなく、「状況」も読んで、「未来」までをも見通している。
「……だが、その『スパイ』や『工作員』は、使えるのか?」
「『スパイ』はすでに、様々な情報をこちらに送ってきています。――ディケイル・ウェイニーが行方不明だった期間に、火星に身を隠していた事も」
「………何だと?」
 ――やはり、フォンシェ・アレハンドロが絡んでいるのか。……だが、確たる証拠が無い以上、本人に問い詰めたところで、シレッと言い逃れられるだけだ。
「そして、――『工作員』の人員選びにも、少し工夫をしました。必ず、ガニメデを分裂させてご覧に入れます」
「分かった。……期待している」
 
 ――テオドアが退室した後、ミカエルはデスクの上で手を組み、ニヤリとした。
 うまくいけばベストだが、たとえ、「分裂工作」が失敗したところで、地球がガニメデを正式に攻める「理由」付けにはなる。
 「ガニメデ暴動」の映像流出事件の後、ミカエルは、やはりその「理由」に悩んでいた。ヘタに宇宙艦隊を動かせば、アース・コーポレーションに吹く風が強まっている今、その逆風を煽ってしまう可能性があるからだ。
 
 ――さぁ、今後はガニメデがボロボロになる番だ。
 そして、今度こそ、ディケイル・ウェイニーは名実共に、死ぬ。


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