忍者ブログ
オリジナル小説のダストボックス

WRITE | ADMIN

PR
カウンター
プロフィール
HN:
碧井 湊
性別:
非公開
自己紹介:
頭の中には、
いつも何かのストーリー。
なかなか、
文字にならないのが難点。

詳しい事はこちらへ。
メールフォーム
感想・ご意見等 お気軽にどうぞ
Powered by NINJA TOOLS
忍者サイトマスター
バーコード
ブログ内検索
当ブログの利用方法
★プラグイン最上部のブログタイ
 トルをクリックで、トップページ
 へ戻ります。
★トップページより、各小説タイ
 トルをクリックで、目次ページ
 へ進みます。
★プラグイン内「カテゴリー」から
 も、目次ページを開けます。
★小説各ページに「次へ」のリン
 クはありますが、「前へ戻る」
 リンクはありません。プラウザ
 内の「←」をご利用いただくか、
 一度目次ページへ戻るかして、
 ご覧ください。
アクセス解析


忍者ブログ [PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


web拍手 by FC2


23.  屈辱
 
 
 3月に入ってから、ようやく学校が再開された。
 結局、ブライアン・マルコーは他の子供たちと同じように、同じだけの期間学校に行かず、同じ時に同じ学校に復帰した。
 ――「学校に行かない」という選択肢もあったのだが、後々の「計画」のため、難民施設に引きこもっていては都合が悪かったからだ。
 
 ……だが、クラスでの立場は、以前とは全く変わっていた。
 学級委員でクラスメイトのリーダー的存在だった、あの頃の雰囲気は、全く無い。みんな、遠巻きに刺すような冷たい視線を向けていた。何をする時も、ひとりになった。以前は、ブライアンの言う事に調子を合わせていた面々も、完全無視を決め込んでいる。
 ……まぁ、こうなるのは目に見えていた。
 学校が始まってすぐはこんな感じだったのだが、数日もすると、様子が徐々に変わって来た。
 ブライアンに向かって、「人殺しの子供」だの「地球に帰れ」だのと罵声を浴びせ、さらには、机に落書きしたり雑巾を投げ付けてきたり……。
 それは、日に日にエスカレートし、ある日、ブライアンはクラスメイトたちに取り囲まれた。
「……おまえ、死ねよ」
「そもそも、何で生きてるんだよ?」
「さっさと死んで、責任取れよ」
 ――一体、何の「責任」なのだ?
 
 こういう頭の悪い連中に限って、自分が「正しい」と思い込みたいのだ。でないと、自分の存在意義すら不安になる、そんな愚かな人間なのだ。だが、自分が「正義のヒーロー」になるほどの能力も無い。――そこで、少しでも自分よりも「非」があったり弱い立場だったりするヤツを貶めて、それで自分が「ヒーロー」になった気になっている。そして、他者を裁く「権利」があると、勘違いをする。
 ……かつての自分がそうだったから、手に取るように分かる。
 それでも、まだ、自分が被害者だったり遺族だったりすれば分かるが、ブライアンの前でニヤニヤする連中の顔をザッと見回しても、旧第3コロニーに住んでいた者など、ひとりも居なかった。
 
 けれども、そんな歪んだ「正義」を振りかざす連中が下す「裁き」ほど、残酷なものは無い。
 
 誰かが、「死ーねっ!死ーねっ!」と手拍子を始めると、コーラスのように、それは広がっていった。そして、
「『遺書』くらい書きたいよな?親切に用意してやったよ」
と、目の前に、ノートの切れ端とシャープペンシルが置かれた。
「おっ、ナイス!おまえ気が利くな」
 ――そういうのは、「気が利く」では無く、「悪知恵が働く」が正解だ。
「さぁ、さっさと書きな。……頭が悪過ぎて書く事が思い付かないのか?なら、俺が教えてやるぜ?
 ――『僕のパパのせいで、7400人もの人が死にました。その責任を取って死にます。ごめんなさい』。――これでいいだろ?」
 ……黙って聞いていれば、いい気になって……!ブライアンは机の上で拳を握りしめた。
「早く書けよ。……シャープペンの使い方も忘れたのか?なら、それも教えてやるよ!」
 子供のひとりが、シャープペンシルを握り、それを振り上げた。――鋭い先端がブライアンの方を向いている。そして、その意図を察したように、他の子供がブライアンの腕を押さえた。机の上に手のひらを固定し、避けられないようにする。
 さすがに、ブライアンも慌てた。だが、後ろからもガッチリと押さえ込まれ、身動きが取れない。
「………やめろ……!!」
 ブライアンの悲鳴に近い声は、だが「死ーねっ!死ーねっ!」のコーラスにかき消された。
 ――ブライアンは後悔した。マーガレットに渡されたハンドガンを、持って来れば良かった。そして、こいつらを撃ち殺せば……!!
 
 だが、シャープペンシルは振り下ろされる事は無かった。
 急にコーラスが止まり、代わりに
「やめろよ。もういいだろ」
と静かに言う声が聞こえた。顔を上げると、レイ・マグアドルが、シャープペンシルを握った腕を、しっかりと掴んでいた。
 
 ――通常、いじめられているヤツを助ける行為は、自分もいじめの対象にされる可能性が高い。
 だが、ブライアンには分かった。……レイの場合、それには該当しない。
 
 レイは頭が良く、スポーツもできて、クラスで一目置かれる存在だった。……ブライアンがいじめて、登校拒否になる前は。
 しかし、だからといって、クラスメイトに溶け込んで、仲良くしている風でも無かった。――アルビノで、常に前髪で顔を隠しているようなネクラなヤツだったから、クラスの中で浮いていた。……いや、「浮いていた」というより、一種「特殊な存在」だった、と言った方が正しい。
 そして、ブライアンがレイを集中的にいじめていた事は、クラスの誰もが知っている。――だからこそ、そんなレイが止めに入れば、もうそれ以上、加熱する事は無い。
 
 予想通り、水を打ったように騒ぎは収まり、子供たちはどこかへ散って行った。
 ……レイも同じように、何事も無かったかのように、その場から離れようとした。ブライアンは思わず、その手を掴んだ。
「ちょっと待てよ!」
 レイは振り向いた。――何だか、以前と雰囲気が違う。……顔が、まともに見える。バイオレットの澄んだ瞳が、静かにブライアンを見下ろしていた。
 ――ここで話すのはイヤだ。ブライアンは、レイを引っ張り、屋上に連れて行った。
 
 高い柵に囲まれ、バスケットボールのゴールが設置された屋上には、休憩時間であるにも関わらず、誰も居なかった。
 ブライアンは脇のベンチにレイを座らせ、その前に立った。
「……なんで、俺を助けたんだ?」
「なんで、って……」
 レイはブライアンの肩越しに、遠くの風景を見ているようだった。
「あいつらがおまえに『責任』を取らせる筋合いは無いと思ったから」
「――おまえ、僕の事を恨んでないのか?」
「恨む、って……?」
 レイはブライアンに目を向けた。
「僕は、おまえをいじめて、学校に来れないようにした。――それなのに、なんで僕をかばったんだよ!?」
「それは関係ないだろ?」
 レイは、少し暗い表情をした。
「確かに、いじめられた事に関して言えば、僕はブライアンの事が嫌いだ。
 でも、今はこうして学校に来てるわけだし、もういいよ。
 ――それとは関係無く、あいつらがやっている事が間違っていると思ったから、止めた。……何かおかしい?」
 逆に不思議そうな顔で質問を返されると、ブライアンは、自分がとんでもなく惨めに思えてきた。レイの顔を見ているのが耐えられなくなり、思わず、手を上げた。
 ――急に頬を平手打ちされて、レイは驚いた顔でブライアンを見た。ブライアンは、
「もう、二度と僕に構うな!」
と言い捨て、その場を走り去った。
 
 けれど、その次の日にも、レイは話し掛けて来た。
 あの事があってから、クラスメイトたちも、ブライアンに手を出さなくなった。遠くから冷たい視線を送るとか、陰で悪口を言うくらいの事はあっても、ものが飛んできたりとか、そういうのは無くなった。
 だから、机の前に誰かが立った時、それがレイだというのは、顔を見ないでも分かった。
「今日、学校が終わってから、うちに来てくれないか?」
「―――え?」
「『元帥』が、おまえと話したいと言ってる」
 
 ……「元帥」、――ディケイル・ウェイニー!!
 ブライアンも、チラチラ耳に入る周囲の噂で知っていた。孤児だったレイだが、第3コロニーが爆撃された後、ディケイル・ウェイニーの「養子」になった、と。
 ………しかし、まさか、こんなに早く「チャンス」が巡って来るとは思っていなかった!昨日の事があったから、カバンの底に、ハンドガンを隠し持って来ている。
 ブライアンは顔を伏せた。――ダメだ。笑いが出てしまう。
 レイは用件だけ言うと、さっさと自分の席へ行ってしまったから、多少、肩が揺れても、気付かれていないハズだ。
 ……明日になれば、僕は「極悪人」を裁いたヒーローとして、一躍有名になるだろう。そして、昨日僕にあんな事をしたバカな連中を、ひざまずかせてやるんだ!
 あんな余裕ぶった顔で僕を貶めたレイにも、思い知らせてやるんだ。僕の、本当の実力を。
 ――今日が、ディケイル・ウェイニーの命日になる!
 
 
 
 レイは、ディケイルが自宅へブライアンを呼ぶと言った時、何となくイヤな予感がした。
 既に「代表」の座を退き、「官邸」として宛がわれた部屋に住み続ける事もできなくなり、レイたちは、旧第3コロニーの「軍本部」近くの仮設住宅に居を移した。
 ナカムラ参謀長かテイラー司令官が配慮をしてくれたのだろう、仮設住宅とはいえ、複数の部屋があり、バス・トイレ・キッチン付きの、何不自由無い住環境になっていた。「旧マルコー邸」に比べればかなり狭いが、レイにとっては十分な広さだ。
 第2コロニーにある学校から、徒歩で家へ向かう途中、一緒に歩くブライアンの何やら自信ありげな様子が気になり、――少し躊躇したが、その「意識」を覗いてみる事にした。
 ――カバン。その底に、その自信の根源はあるようだ。何だろう?………武器!?
 レイは思わず足を止めた。
「――どうしたんだ?」
 数歩先を歩いてたブライアンが振り返った。
「……い、いや、何でもない」
 適当にごまかして、レイはブライアンの後を追った。
 ――だが、レイの背筋を冷たいものが走った後、その悪寒が消えない。レイは再び足を止めた。……やはり、ブライアンを元帥のところへ連れて行かない方がいい。でも、これは元帥の命令だ。どうすれば……?
「どうしたんだよ、一体?」
 ブライアンが少し先で足を止めた。
「おまえが案内してくれなきゃ、家が分からないじゃないか」
 ……レイは迷った末、言った。
「ごめん。ちょっと用事を思い出したから、先に行ってる。――僕の家は、A区画C棟の301だ」
 レイは走り出した。――ブライアンも一緒に走ってきたら、終わりだ。
 ……だが、ブライアンは追っては来なかった。余裕を持った足取りで歩いているのが、振り向かずとも分かった。
 一瞬ホッとしたが、足を止める事無く、家まで走った。
 玄関ドアを開け、リビングに駆け込むと、――ディケイルは昼寝をしていた。
「元帥!起きてください!!」
 乱れた呼吸を収める暇も無く、レイはディケイルを揺すり起こした。
「………ん?何だ?そんなに慌てて。どうかしたのか?」
 細い目でレイを見るディケイルに、レイは早口で言った。
「ブライアンが……、武器を持ってるんです!元帥、逃げてください!!」
「――おまえ、また人の心を『読んだ』な?」
 そう指摘されれば、レイに返す言葉は無い。俯いて額の汗を拭った。
「……まぁいい。――武器って言っても、持っててハンドガンくらいのモンだろ?」
 ――詳しい種類は分からなかったが、イメージ的に、そんな気がする。
「だったら大丈夫だ」
 ディケイルは、レイの頭に手を置いた。
「素人が撃ったハンドガンの弾など、絶対に俺には当たらない」


>> 次へ
PR

web拍手 by FC2


※ Comment
HN
TITLE
COLOR
MAIL
URL
COMMENT
PASS


※ この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:



Powered by 忍者ブログ  Design by まめの
Copyright © [ Second Box ] All Rights Reserved.
http://secondbox.side-story.net/