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28. 遭難
 
 
 所用で出掛けていると、携帯に着信があった。――街頭端末から?
 出てみると、
「ソウ、頼みがある」
という、ディケイルの声が聞こえた。……一体、あいつは何をしているのか?
「――難民施設に出入りしているボランティアの名簿と、納入した日用品のリストを用意してほしい。……ニーナにでも聞けば分かるだろう」
 確かに、ニーナは難民支援ボランティアのまとめ役のような事をしている。だが……
「自分で聞けばいいだろ?」
「急ぎなんだ。頼んだぜ」
 ……電話は切れた。
 ――何となくは分かっている。ディケイルはニーナと直接話すのを避けている。「独立戦争」が始まったばかりの頃、あんな事件(*06『銃口』[2]参照)があったから、当然といえば当然だが。
 ソウは、事務所に戻ろうとしていたその足を、宇宙空港へ向けた。
 
 ニーナはハンガーに居た。ソウが声を掛けると、貨物船の整備をしていたニーナは手を止め、ハシゴから降りて来た。
「あ、参謀長。この間はどうも」
 ――この間……?――爆発当日に会った時のことか。何か、顔を見つめ合った気がする。……今更ながら、何となく照れ臭い。
 ソウは咳払いでごまかして、話を切り出した。
「ちょっと聞きたい事があるんだけど。――難民支援をしてくれているボランティアの人たちの名簿みたいなのって、あるかな?」
「ありますよ。それが何か?」
 ……そう聞かれても、その用途はソウも知らない。
 
 事務所にあるという事で、ふたりは場所を移した。
 自分のデスクらしきところから、ニーナはファイルを取り出し、ソウに見せた。
「難民施設に出入りしてる人は、これだけですね。時間や日にちで、入れ替わり立ち替わりシフトを組んでるから、実際に施設に居る人は数人ですけど、トータルだと……」
「60人も居るのか。多いな」
「まぁ、毎日来れる人は少ないから。逆に毎日じゃ『仕事』になっちゃいますもんね。主婦の人が多いですけど、家事の時間の合間に、って感じで、短時間で参加してる人が多いです」
「へぇ……。――あと、それと、難民に支給した日用品のリストみたいなのも、あるのかな?」
「ありますよ。でも、それをまとめてるのは私じゃなくて、……この人、カミラさんっていう主婦の方です」
 ニーナが名簿の上のほうを指した。――この人、休日以外はほとんど毎日参加している。
「難民の人たちから注文があった品を手配したりっていう仕事をやってもらってます。上に提出しないといけないから、リストにまとめてると思いますよ?――ちょうど今日の夕食の当番だから、今頃食堂に居るかも」
 ニーナに言われて時計を見ると、食事の時間まであと1時間というところだ。
「……あ、今日、私、食事を運ぶ当番なんです。でも、まだちょっと仕事が残ってて……。もし、今から行くんなら、ついでに運んで行ってもらえると……」
 
 難民の食事は、空港のレストランで用意され、それをニーナたち空港職員が難民施設へ運び、ボランティアによって提供される、という形になっている。
 ――何だか都合良く使われたな、と思いつつ、ニーナの笑顔に軽く引き受けさせられてしまった。ソウは大きなバケツのような鍋に入ったシチューを抱え、運搬車を借りて軍本部へ戻ることにした。
 
 食堂には、数名のボランティアが既に来ていた。全員女性だ。ソウが鍋を渡すと、だが、想像以上の腕力で軽々とそれを受け取り、コンロにかけ、温め始めた。――いい香りが食堂に広がる。
「……あと、カミラさんっていう方、いらっしゃいませんか?」
「私ですけど、何か?」
 厨房の奥から、エプロン姿の中年女性がやって来た。――エプロンがあまりにも似合う、主婦の典型みたいな人だ。
「あの、難民に支給している日用品のリストを見せてもらいたいんですけど」
 だが、朗らかなその笑顔は、ソウの言葉を聞いた途端に消えた。
「今忙しいので。後からじゃいけませんか?」
 ぶっきらぼうに拒絶され、ソウは面食らった。
「――カミラさん、こっちは大丈夫よ。今日のメニューは簡単だし。行ってきて」
 他のボランティアに言われ、渋々といった様子で、カミラは厨房から出て来た。
 
 「……これです」
 カミラは、食堂の粗末な椅子にソウを案内し、カバンからファイルを取り出すと、テーブルに置いた。――そのまま、目を合わせないように顔を伏せている。さっきの態度の急変といい、なぜだろう?
 開いてみると、手書きの表が目に入った。……几帳面な性格らしい。誰がいつ何を注文したか、そしてそれをいつ渡したかという内容が、分かりやすく書かれていた。領収書の類も添付されている。
 その中でも、やはりマーガレットとブライアンが住む203号室の状況に、自然と目が行く。――そこで、ソウはあれ?と思った。
「……この部屋、何だか生理用品の支給が多いですね……」
 確かに、部屋の捜索をした時にも出て来た。しかし、と思う。ソウは女性でもそちらの病気でもないからそのへんはよく分からないが、それでも、週に3回の支給は、多くないだろうか?
 反応が無いので、カミラに目を向けてみた。……すると、ソウの想像を絶したものが目に入った。
 
 カバンから化粧品の瓶のようなものを取り出し、それを両手に持ち、充血した目を大きく見開いてソウに向けている。――「般若」のような顔とは、まさにこの事だろう。そして、カミラは言った。
「――これ、何だが分かる?……フタを開ければ爆発するわ」
 ……つまり、爆弾……!?
 カミラはガバッと立ち上がった。パイプ椅子が倒れ、食堂内に大きな音が響く。
 厨房内からこちらを窺っていたボランティアのひとりが、甲高い悲鳴を上げた。
「……ちょ、ちょっと待って……!!」
 ――一体、どういう事だ?俺が何をした?なんでこんな状況になる??
「もう終わりよ。何もかも終わったわ」
 カミラは興奮した様子で瓶を前に突き出した。
「……こうなったら、こうするしか無いのよ。悪いけど、道連れにさせてもらうわ」
 そう言って、フタに手を掛けた。――ま、まずい!!
 ボランティアの悲鳴を聞いて、軍の人間だろう、何人かの足音が駆けつけて来たのが分かった。だが、背後の廊下から食堂内の様子を見て、ピタッと止まった。
 厨房のボランティアのひとりが、助けを求めて廊下に飛び出そうとした。それを、カミラの声が鋭く制した。
「動かないで!みんな私と一緒に死ぬの!」
 ――いや、まず、なぜ死ななければならないのかを、説明してくれないか?
 だがここは、相手を落ち着かせるのが先決だろう。ソウは両手を顔の高さに上げ、無抵抗をアピールしながら、ソロソロと立ち上がった。
「……ま、まず、落ち着いて。落ち着いて話し合おうじゃないか。それからでも遅くはないだろ?」
 だが、カミラは充血した目をソウに向け、
「いまさら遅いわ。もう終わったって言ってるでしょ!」
と、意味不明の事を叫ぶだけだった。――まぁ、落ち着いてと言われて落ち着いてくれれば世話は無いが。
「……じゃあ、なんでもう『終わった』のか、まずそれを教えてもらえないか?」
「うるさい!黙れ!!」
 ――ダメだ。火に油を注いだだけだ。
 背後の人の気配が、次々と増えてくるのを感じた。それも、カミラを興奮させる材料になっているかもしれない。――まずいな。
 
 その時、人混みの雑音の中に、金属音が混じったのが聞こえた。抑えてはいるが、冷たく重い波長は、――間違いない、銃を構える音だ。
 食堂と廊下とを隔てる壁に隠れて中を狙っているとして、カミラと銃口との間にはソウが居る。――ソウの背中を冷たい汗が流れ落ちた。
 だが、カミラはそれには気付いていないようだ。ただ、増え続けるギャラリーに向かって、
「来ないで!みんな死ぬわよ」
と叫んだだけだった。
 ――道連れにすると言ってみたり、死ぬから来るなと言ってみたり、言っている事が矛盾だらけだ。それだけ、カミラ自身が混乱しているのだろう。
 そう言いながらも、カミラは瓶のフタから手を離さない。爆弾がどれほどの威力のものだかは分からないが、ソウは生きた心地がしなかった。挙げた手の先から血の気が引いて、ビリビリと痺れてくる。
 ――どうする?どうすればいい??
 
 「――おい、俺も仲間に入れてくれ」
 突然、別の角度から声が聞こえて、ソウは驚くと同時に、ホッとした。
 食堂には、前と後ろの2ヶ所に出入り口があり、ソウたちは前方寄りの場所に居た。それとは逆の、後ろ側の出入り口のところに、ディケイルが立っていた。
「来ないでって言ってるでしょ!!」
 カミラは逆上したように叫び、爆弾をそちらに向けた。ディケイルはソウと同じように両手を上げつつ、だが、ソウとは違い、落ち着き払った様子で言った。
「あんた、道連れが欲しいんだろ?なら、もっと近くに人を寄せるべきだぜ?
 いくら水素爆弾でも、そのサイズじゃ、爆発の半径はせいぜい数メートルってとこだ。廊下に居たんじゃ、道連れの仲間に入れない。――入っていいか?」
 カミラは『水素爆弾』という単語に動揺したようだった。動きを止めたカミラの様子を確認して、ディケイルはゆっくりと部屋に入って来た。
「あんた、それが『水素爆弾』って事を知らないんだろ?――つまり、あんたは誰かに渡されて、その誰かに操られてこうしてる。……いや、操られてという表現は悪かったな。――『脅されて』が正解だろう。俺は知ってるぜ」
 ディケイルはチラリとソウに目を向けた。……言葉は無くても分かる。「俺が注意を引きつけるから、背後に回って爆弾を奪え」という意味だ。ソウは、音を立てないように注意しながら、ゆっくりとカミラの視界の外に出た。
 
 「脅されたその理由は聞かない。――けれど、言う事を聞かなければガニメデに居られなくなる、そんな感じの事を言われたんだろう。ガニメデは狭いコミュニティーだ。その中で、妙な噂を立てられたりしたら、行き場が無くなる。愛する家族のためにも、それは避けたかった。……あんたは脅迫者の言いなりになるしかなかった」
 ソウの位置からは、カミラの後ろ姿が見えるだけだが、カミラの興奮は明らかに静まっているのは分かった。代わりに、激しく動揺しつつも、話を聞く気になっている。
「あんたは本当に真面目な人だ。脅されてやらされた事に、必要以上に責任を感じてる。――だが、そこまで思い詰める必要はないぜ?
 ……公表されてないから、あんたは知らないかもしれないが、あの『事件』には、2個の爆弾が使われた。あんたは、そのうちのひとつ、それも、威力の弱い方を設置しただけだ。そうだろ?
 本当に被害を大きくしたのは、2個目のヤツなんだ。――あんたは、その存在を知らなかった。だから、あの『事件』の全ての責任が自分にあると思ってた。……苦しかっただろうな」
 
 ――『事件』。話から察するに、「第2コロニー駅爆破事件」の事だろう。確かに、「爆発は2度起きた」とは報道されているが、「爆弾がふたつ使用された」というのは公表されていない。それを証明するのがブライアンの供述だけで、現場の状況があまりにもひどく、その物証が出なかったため、議会から「市民の動揺をすこしでも軽減すべき」という意見が出され、発表を見送る事になったのだ。
 ……しかし、このどう見ても普通のオバサンが、あの事件に関わっている、と……?犯人はブライアンでは無かったのか?それとも、この人が例の「首謀者」……?
 
 「あんたは脅されて、利用されただけだ。元々、積極的にボランティアに参加するような優しい心の持ち主が、あんな事を考えるハズが無い。あんたは、やりたくてやったんじゃない。――俺が、それを証明してやる。
 ……それでも、まだ死にたいか?」
 ディケイルの説得に、カミラの心は動いたようだ。嗚咽混じりの鳴き声が聞こえ始めた。
「私、……もう、どうしていいのか………」
「あんたは十分に苦しんださ。その苦しみから解放される手段は、何も死ぬ事だけじゃないぜ?真実を話し、罪を償う事で、人は生まれ変われる」
 ディケイルはまた一歩カミラに近付いた。だが、カミラはそれを止めようとはしなかった。
「気分が落ち着いたらでいい。俺に話してみないか?少しはあんたの気持ちを楽にする手伝いができるかもしれない」
「………信じて、いいの?」
 ――完全にディケイルのペースに持ち込んだようだ。カミラは、今にも泣き崩れんばかりの様子で、ディケイルにすがるような目線を送っている。
「信じる信じないは、あんた次第だ。俺を信じろ、だとか、クサい事を言うつもりは無い。だが、あんたのために俺ができる事は精一杯やる。それは約束する」
 ……いつもの、人をナメたような目つきとは大違いだ。ディケイルはグレーの瞳を、真っ直ぐにカミラに向けていた。――この調子でナンパをすれば、百発百中かもしれない。
「――だが、まず、そんな危ないモノは置こうか。何なら、俺が預かるが、どうする?」
 カミラは考えているようだった。……そろそろチャンスかもしれない。ソウはそっと足を前に踏み出した。
 カミラはゆっくりと瓶を前に出し、――フタに置いた手を外した。……今だ!


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