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 だが、ソウの手は背後からの叫び声に止められた。
 急に廊下でドタドタという足音がしたと思うと、
「キャアーッ!!」
という野太い悲鳴が響いた。――マーガレットだ!
 カミラがその声に振り向いた。……と、背後に立ち、手を伸ばそうとしているソウと目が合った。まずい!!
 
 「伏せろ!!」
 ディケイルの鋭い声が飛んだ。同時に、カミラの手元向けてキックが飛ぶ。
 
 次の瞬間。
 
 床に身を投げたソウの頭上で、閃光が迸った。
 続いて、腹の底に響くような破裂音、そして、熱風。
 
 ソウの視界は、一瞬で煙と埃に閉ざされた。何かが爆風に乗って飛んできて、ソウの頬を切り裂いた。
 あちこちで悲鳴が聞こえる。何かを呼び掛けるように叫ぶ声も響いているが、全く状況が分からない。
 起き上がろうとするが、爆風で倒れた椅子やテーブルに半ば埋まったような状態で、そこから脱出するのに少し時間が掛かった。だが、その頃には、爆煙も多少落ち着いて、周囲の状況が何とか分かるようになっていた。
 
 ―――目の前に、首の無い死体があった。――カミラだ。エプロンから伸びた右腕も、もぎ取られたように無くなっている。
 周囲に散らばった血痕と肉片。……その少し向こうに、焼けただれた頭部。
 
 反射的に口を押さえる。全身から血の気が引くのが分かった。
 
 しかし、床に倒れているのはそれだけでは無かった。
 黒い髪の痩せた男の姿も見えた。床に突っ伏したまま、ピクリとも動かない。
「―――ディケイル?」
 身体の隅々から血の気が失せ、冷たく硬直するのを感じならが、ソウは血の海の中を這うようにディケイルに近付いた。
 だが、近くに来てみれば、生きているのは分かった。荒い呼吸に交じって、低く呻く声も聞こえる。意識もあるようだ。
「おい――」
 抱え起こそうとして、だが、ソウの手は止まった。
 
 床に投げ出された肢体の、右脚の膝より下が、存在しなかった。
 
 
 
 それからは、よく覚えていない。さすがに、また脳貧血を起こして倒れたとか、そんな事は無いと思うが、気が付けば、病院の廊下のソファーに俯いて座っていた。
 軍服のあちらこちらに血痕が染みついて乾き、黒ずんで固くなっている。手も埃と血で汚れている。ひどい格好だ。
 廊下の横の自動ドアが開き、手術着姿の医師が出て来た。ぼんやりとそれを見上げると、医師は言った。
「命に別条はありません。しかし、右下肢は損傷が激しく、縫合する事はできませんでした。――今後、車椅子なり義足なりの生活になるでしょう」
 ……それで、ようやく理解した。俺は今、ディケイルの手術が終わるのを待っていたのか。
 それから、ディケイルの病室を案内されたが、部屋に入る事は拒否された。
「強めの麻酔を使いましたので、明日までは目を覚まさないでしょう」
と言われたが、こんな不衛生なナリで入られては困る、という理由でやんわり断られたのだろう。
 ソウは追い出されるように病院を後にした。
 
 軍本部に戻り、事務所に入ると、一同が一斉にこちらに顔を向けた。既に深夜の時間帯だったが、主なメンバーは全員残っていた。
「どうだった?」
 マッド・テイラーが立ち上がって聞いて来た。他の人たちもソウの言葉を待っている。
「命に別条は無いそうです」
 それを聞いて、室内にホッと安堵する空気が流れた。
「ですが、足は戻りませんでした」
 その空気も、続けて発せられた言葉で、一気に澱んだ。
 
 「―――これって、ワタシのせいなの?」
 マーガレットが場違いな大声を張り上げる。
「だって、あの状況をみたら、悲鳴を上げたくもなるわよ。本気で心配したから、ついつい叫んじゃっただけなのに、どうして……」
 マーガレットは顔を両手で覆った。
「……そもそも、なぜあの場におまえが来たんだ?」
 ソウは泣く「フリ」をしているマーガレットに視線を向けた。――相当険悪なものになっているだろうが、こればかりはどうしようもない。
「だって、みんな出て行っちゃうじゃない?でも、ワタシだけ置いとく訳にはいかないって、エドちゃんが。
 とは言っても、やっぱり気になるじゃない?ソワソワしてたから、じゃあ、ワタシを一緒に連れて行けば問題無いでしょ?ってコトになって……」
「まさか、あんな大声を出すとは思ってなかったんです。――すいませんでした」
 事務所の端のほうに居たエドが、小さくなって一同に頭を下げた。
「……起こってしまった事は仕方が無い。今は事件の調査の方が先だ」
 マッド・テイラーに促され、一同は事務所を出た。――その前に、マーガレットは手錠の鎖で身体を椅子に縛り付けられ、身動きできないように両手も固定された。
「ちょっと、ひとりで置いてかないでよ!私だって捜査員の一員よ!」
 背後で叫ぶダミ声を無視して、食堂に向かう。
 
 事件現場では、既にチャンが数人の部下と共に実況見分をしていた。――チャンは、事務所という場所が嫌いなようで、部下たちと動いている事が多い。それが倉庫整理の雑用だったりもするが、文句も言わずに、いつも黙々と何かをしている。……爆破事件の時も、倒れたソウの後を引き継いで、遺体の身元確認作業をしてくれたようだ。
 食堂の中は、椅子やテーブルが散乱し、その隙間に、埃と血で床に不気味な抽象画が描かれていた。――だが、不思議な事に、床自体はそれほど壊れていない。それは天井も同じだった。
「……何か分かった事はあったか?」
 マッド・テイラーに聞かれると、チャンは無言で金属製のカプセルのようなものを渡した。
「――やはり、水素爆弾か」
「あと、これが起爆装置みたいです」
 チャンの部下のひとりが、電気系統の基盤のようなものを見せた。
「俺が見てもよく分からんな。明日、警察で調査してもらおう」
 
 マッド・テイラーはその後、まだそのままにされている遺体を確認した。――ソウはそれに目を向けられなかった。
「……ひどいな」
「頭が吹き飛ぶなんて、相当なモンですね」
「あぁ。……だが、被害は非常に小さい範囲にとどまっている。あんな近くに居た参謀長が無事だったくらいだ。――爆発半径は1m以内って事になるな」
「すると、範囲は狭いけど、範囲内での威力は強烈、ってことですか」
「そういう事だろうな」
 マッド・テイラーとエドの会話を聞きながら、ソウはあの時の事を思い出していた。
 ――マーガレットの声がして、カミラは振り返り、ソウに気付き、そして……
「だけど、被害者、爆弾のスイッチである瓶のフタから手を離してましたよね?なのに、どうして爆弾は爆発したんでしょう?」
 エドがもっともな疑問を提示した。
「元帥が蹴ったからだろう。その衝撃で……」
 ――いや、違う。ソウは目の前ではっきり見ている。
 
 ディケイルの足が爆弾に届く前に、爆弾は破裂している。
 
 ソウはハッとした。
「……誰かが部屋の外から爆弾を操作した可能性がある」
 ソウの言葉に、一同は凍り付いた。
「―――本当か?」
 マッド・テイラーがギョッとしたようにソウを見た。
「爆弾が爆発したのは、あいつ――元帥が蹴り飛ばしたからではありません」
 さすがに全員、ソウの言葉を信じたようだ。
「あの野郎、マーガレットを調べてきます!」
 エドが部屋から飛び出して行った。……だが、すぐに戻って来た。
「――ボディーチェックをしてみましたが、それらしいものは出てきませんでした。……すぐに捨てたのかもしれません」
「今、食堂の外を調べてみたが、不審な物は見当たらなかった」
「……実は、マーガレットが怪しいというのはただの思い込みで、他に犯人が居るのかも……」
 エドがボソリと言った。
 
 ――もし、そうだとしたら、俺たちは、今まで何をしてきたのか?ディケイルは、脚を失ってまで……。
 
 ソウは気分が悪くなり、床に座り込んだ。見ないようにしているとはいえ、濃い血の臭いが、容赦無くソウの神経を攻め立てる。
「……参謀長、あんたは帰って休め。あとは俺たちで処理しておく」
 このままこの場に居ても邪魔になるだけだろう。ソウは重い身体を引きずるように、今は自宅にしているディケイルの部屋に帰った。
 
 ……マタルとレイは寝ていた。いつものように、同じベッドで肩を並べて、静かに寝息を立てている。こんな時間だから当然だ。
 ――まだ、ディケイルの事は言っていない。
 この格好も見られなくて良かった。ソウは、血まみれの軍服を脱ぎ捨てゴミ袋に入れ、シャワーを浴びた。
 頭から熱めの湯をかぶると、頬がピリピリと痛んだ。……傷がテープで止められているのを忘れていた。しかし、今は、そんな事はどうでもいい。
 
 この先、どうなるのか。
 
 目の前が暗闇に閉ざされた気分だけは、いくらシャワーを浴びても洗い流せなかった。


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