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29.  罠
 
 
 ベッドに横になってはみたが、やはり、眠る事はできなかった。
「……昨日の夜、難民施設のへんで、何かあったみたいですね」
 朝になり、マタルが聞いてきた。だが、どう説明すれば、この子たちにショックを与えずに事実を伝えられるか、ソウにはその術が思い付かなかった。
 言い出せないまま、子供たちは学校に出掛けて行った。
 
 病院の面会時間を待って、ソウはディケイルの病室へ向かった。
 ――起きているだろうか?ソウは不安に身体を支配されたまま、病室の扉を開いた。
 
 だが、当の本人は、ベッドの上で身を起こして、テレビを眺めていた。
「……よう、ソウ。――顔色悪いぞ、どした?」
 ソウが立っているのに気付くと、あっけらかんとした顔を向けた。……何だか、見舞いに来た俺のほうが病人みたいじゃないか。
「大丈夫なのか。――その、……脚は」
「無くなったらしいな、右脚」
 唖然とするほど何事も無い様子でディケイルは言った。
「今時、脚の1本無くなったところで、何も困りはしない。高性能な義足もあるしな。そうすれば、俺のキック力は、また上がるぜ?」
「…………」
 虚勢なのか、本心なのか、ソウには分からない。だが……。
 ホッとしたのか疲れが出たのか、急に力が抜けて、ソウは備え付けの椅子に腰を下ろした。
 
 「――昨日の事件の事、他に何か分かったか?」
 ディケイルに言われて、ようやくソウは本来の目的を思い出した。
「その前に、だ。……なんで、昨日みたいな事になったのか、まず、そこから説明してもらおう」
「話すと長くなるぜ?入院患者にそんな負担を強いる気か、あんたは」
「じゃあ、短く分かりやすく話せばいいだろ」
「――ソウがそんなに冷たいヤツだとは思わなかった」
「余計な事はいいからさっさと教えろ」
 ディケイルに白い目で睨まれながらも、ソウは促した。
 
 「……まず、ブライアン・マルコーは犯人じゃない」
「えっ……!?」
 想定外の言葉に、ソウは仰天した。
「……な、なんで?」
「なんでって、それが事実だ。――俺も騙されていたが、ブライアンの証言には『嘘』がある。
 まず、『同じ駅に発信機と爆弾を同時に置く』事は不可能だ」
「………?」
「つまり、こういう事だ」
 ディケイルは、布団の上にベッドを操作するリモコンを置き、「これがホームとして」と、次はテレビのリモコンをそれに並べ、「これがシャトルだとする」と示した。
「ブライアンの話では、ホームに発信機を、シャトルに爆弾本体を置いたと言っていた。発信機と爆弾が5m以内に近付いた時、爆弾に取り付けられた受信機が反応し、起爆する、と。……だが、考えてもみろ。発信機から5m以内に停車中のシャトルの車内に爆弾を設置して、受信機をONにしたとする。――その瞬間、爆発するだろ?」
「あ……」
 言われてみれば、あまりにも単純な事だ。
「ブライアンは誰も居ない駅で作業をしたと言っている。逆に、誰か居れば、ブライアンの不審な行動は阻止されていただろう。――という事は、ブライアンが爆弾を設置したと証言している前後、シャトルは停車したままだったという事だ。
 それから、爆発の時、近くのビルに居た目撃者の証言で、シャトルは駅に停車してから爆発した事は分かっている。だとすると、ブライアンの言った方法で爆弾を起動させる事は不可能だ。
 それに、もうひとつ嘘があった」
 
 ディケイルは、点滴のチューブを引っ張り、布団の上に円を描いた。――シャトルの線路、環状線を示しているのだろう。それに沿って、シャトルに見立てたテレビのリモコンをぐるっと動かす。
「昨日、実際に乗って確かめてみた。――爆発が起きたあの時刻の近辺では、環状線を1周するのに3時間もかからない。今は、『環』が切れてしまってるから、旧第3コロニーの仮駅と第1コロニー駅との間で往復運転をしているが、引き込み線で列車交換待ちをする時間を含めても、1時間17分で回れた。ブライアンが言っていたのは、恐らく、昼間のあまり人が利用しない時間の事だろう」
 ディケイルは続けた。学校の教室の、窓際にあるブライアンの席から、シャトルの線路が見える。そして、シャトルの屋根には大きく車両番号が書かれている。それを毎日見るうちに、同じ車両が3、4時間置きに通り過ぎるのを発見したのだろう、と。
「ブライアンは、その知識を自慢したくて仕方が無かった。だが、誰も相手にしてくれない。話す相手が居ない。そこで、時間を置いて爆弾を爆発させたトリックとして組み込んで、俺たちに話した。――実際、普通に『時限爆弾』と言われたら、ブライアンの嘘は見破れなかったかもしれない。こればかりはブライアンの自己満足さまさまだ。
 ――学校帰りに爆弾を設置したという証言も、これで嘘だと分かった。第一、何時間も車内に不審物が置いてあれば、さすがに誰か気付くだろう。この点にも、もっと早く気付くべきだったんだ」
「…………」
「旧警察にも行って、マッド・テイラーが拾った起爆装置の基盤らしきものも確認してきた。――よく見ると、デジタル腕時計の一部のようなものが付けられていた。時刻かタイマーかは知らないが、『時間』で起爆させたのは分かった。それだけでも、ブライアンの証言は覆る。……それに気付かなかったのも、俺の不注意だ」
 昨日、ディケイルが街頭端末なんかから連絡を入れて来たのは、それらを調べて回っていたからという事か。

 その時、ふと、ソウは思った。
「――そういえば、マーガレットの持ち物の中に、腕時計がたくさんあったじゃないか!それを調べれば……」
 だが、ディケイルは軽く否定した。
「そんな証拠、処分もせずにずっと持ってると思うか?」
 ……確かにそうだ。いい案だと思ったんだが……。
 
 「それから、念のため、俺とヤツとの『対談』が終わった後から、再び俺の家に来るまでの行動も調べた。だが、難民監視係の日誌を見ても、当日係だった者の話を聞いても、ブライアンはその間、ずっと部屋に籠ったきり、外出した記録は無い。
 監視の目を盗んで窓から出ようとしても、窓の外は『外』だ。無理に開けようとすれば『気圧感知器』が鳴る。――それに、そんな事、防護服も無しに正気でできる事じゃない」
 コロニー以外の建物では、窓を開く事は命取りだ。気圧差で内部の空気が外に漏れ出し、代わりにマイナス160℃の冷気が吹き込んで来る。万一、窓が破れてそのような状況になった場合のために、各部屋に「気圧感知器」の取り付けられているのだ。
「――つまり、たとえ時間をずらしたとしても、ヤツが証言の通りに爆弾を設置する事は、状況的に不可能だ」
 
 しかし、とソウは思った。
 今のディケイルの話はブライアンの「嘘」を暴いているだけであって、「無実」を証明しているのでは無い気がした。他に何か出てこれば、簡単に壊れてしまいそうな論拠……。そんなものを並べ立てて、ブライアンの「白」を証明しようとするのは、ディケイルらしくない。――まるで、「答え」が先にあって、後付けでその理由を付け加えているみたいだ。
 現に、ブライアンが爆弾制作をしていた「物証」がある。それはどう説明するのか?
 
 その疑問を投げてみると、ディケイルは頭を掻いた。
「――やっぱり気付いたか。だが、俺はブライアンが『白』だと確信している。
 あの工具類は、爆弾を作ってしまい不要になった後、マーガレットがうまいこと言って、ブライアンに隠させたのだろう、と思ってる。だから、学校を調べに行った時、マーガレットにナビゲートされたかのようにアレが見付かった。……証拠は無い。ただの想像だが」
 
 しかし、そんな事にこだわっていても話は進まない。ソウは先を促してみた。
「――で、そうなると、ブライアン以外に『実行犯』が居る事になる、と……」
「それで、あんたにボランティアの名簿を調べてもらった」
「……なぜ、ボランティア?」
「難民施設に出入りできる外部の人間はそれしか無い」
 ……やっと、俺が頼まれた内容の意味が分かった。
「その名簿ってのを調べて、物品の管理をしているのがあのオバサンだった、というわけか。で、話を聞こうと食堂に行ったら……」
「いきなり爆弾を出されて、何がなんだか分からないまま、今に至る、というワケだ」
「………巻き込んで悪かったな」
 ディケイルはソウの頬に貼られたテープを見た。――いや、ディケイルが謝るところでは無いだろう。少なくとも、昨日の件での一番の被害者はディケイルだ。
 
 「昨日、おまえがあのオバサン――カミラを説得する時に言っていた事は、どういう意味だ?」
「ブライアンが犯人では無いとしたら、どの人物だという確定まではできなかったが、実行犯はボランティアの中に居ると確信していた。
 で、食堂で騒ぎが起きてるって聞いて行ってみたら、あの状況だ。間違いなく、あのカミラとかいうオバサンが『実行犯』だ」
「だから、俺が尋ねて行ったから動揺して……。――しかし、それと難民に支給した物品リストと、どんな関係があるんだ?」
「カミラは自ら進んで実行犯になったワケじゃない。誰かに脅されていた」
「マーガレットか?」
「いや、違う。恐らく、ガニメデ『内部』の人間……」
 すると、まだ他にも、「黒幕」的な人物が存在するという事か……!?
「ここからも、俺の想像に過ぎないが、カミラは、物品を発注する時、自分が欲しい物も一緒に注文を出して、横領をしていたのではないか、と思う。物品担当者の特権だ。
 それが誰かにバレて、脅迫されていた」
「しかし、そんな些細な事で、あの『爆弾テロ』を起こすまでに追い詰められるのか?」
「あいつに言った通り、ガニメデは小さな社会だ。特に、主婦同士の人間関係は、男の俺らには理解しづらいものがある。その中で干されたら逃げ道が無い、カミラはそう思ったんだろう。
 そして、一度脅迫に屈したら最後、初めは小さな事を強要されるだけだったが、だんだん内容がエスカレートしていき、本人の罪悪感も募って行った。――しかし、人間とは不思議なもので、悪い事だとは思っていても、罪悪感が強ければ強いほど、それがバレたら最後と罪を重ねて行く。そこまでしてでも、今の危うい『安寧』を守りたかったんだろう。その結果が、爆弾テロ事件であり、昨日の『自爆』だ」
 だから、物品リストで「多過ぎる」と指摘したソウの言葉で、罪悪感が最悪の方向に向いてしまった、と……。

 「しかし、俺が物品リストに注目したのは、それだけじゃない。
 マーガレットと『実行犯』が爆弾をやりとりする媒体として、物品、――生理用品が使われたんじゃないかと思ったんだ」
 ……なるほど、ソウが指摘したのも、マーガレットに支給された生理用品だった。
「『生理用品』ってヤツは、あまり堂々と見せたりしないモンだ。だから、支給品として渡す時も、中身が見えないよう、紙袋か何かに入れて受け渡しをされていたハズだ。それに、男は、ソレを持ったところで、本来の重量を知らない。製品の袋の中に爆弾の材料が混ざっていたところで、外観を見ただけで、それ以上中を見ようともしないから、何か他のものが入っていても、気付かない。
 ――少なくとも、俺は生理用品を買ったことも手に持ったことも無い。あんたはあるか?」
「……あるワケ無いだろ」
「男は大抵、そういうモノを見せられると遠慮する。――その心理を利用されたんだ」
 マーガレットの部屋を捜索した時、ディケイルがやたらとソレを気にしていた。――あの時は誤魔化されたが、今から思えば、確かに怪しい。
「物品支給リストを見れば、何か分かるんじゃないかと思ったんだ。
 ……それがあんな事態の引き金になるとは、予測できなかった」
 ディケイルが苦痛の表情を浮かべた。


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