忍者ブログ
オリジナル小説のダストボックス

WRITE | ADMIN

PR
カウンター
プロフィール
HN:
碧井 湊
性別:
非公開
自己紹介:
頭の中には、
いつも何かのストーリー。
なかなか、
文字にならないのが難点。

詳しい事はこちらへ。
メールフォーム
感想・ご意見等 お気軽にどうぞ
Powered by NINJA TOOLS
忍者サイトマスター
バーコード
ブログ内検索
当ブログの利用方法
★プラグイン最上部のブログタイ
 トルをクリックで、トップページ
 へ戻ります。
★トップページより、各小説タイ
 トルをクリックで、目次ページ
 へ進みます。
★プラグイン内「カテゴリー」から
 も、目次ページを開けます。
★小説各ページに「次へ」のリン
 クはありますが、「前へ戻る」
 リンクはありません。プラウザ
 内の「←」をご利用いただくか、
 一度目次ページへ戻るかして、
 ご覧ください。
アクセス解析


忍者ブログ [PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


web拍手 by FC2


 「――これで、事件解決のための重要な証人を失った。この損失は大きい」
「だがおまえ、昨日カミラに、『実行犯は2人居る』というような事も言ってたじゃないか。そっちから当たれば……」
「いや、俺の想像が正しければ、そっちを崩す事は、マーガレットの正体を暴く事よりも難しい」
「………?」
「まず、本当に犯人が2人居るのか。あれは俺が出任せで言っただけで、証拠は何も無い。ただ、カミラがひとりで爆弾をふたつ設置したとするならば、その行動があまりにも不自然に見えるから、ふたり居ればスムーズにできるだろう、そう思っただけだ」
「つまり……」
「1個目は上りのシャトル内に設置されていた事は、状況から明白だ。……マーガレットからの指示を受け、車内に爆弾の入ったカバンか何かを残して、第1コロニー駅で降りた。――1区間なら、不審物に気付く人も少ないだろうし、たとえ、走行中の車内で気付かれたとしても、どうする事もできない。それに、ヘンな小細工などしなくても、タイマーでセットしておけば、まず目的のタイミングに爆弾を起動できる。……だが、そうなると、2個目の爆弾を設置したタイミングが分からなくなる」
「もっと、事前に置いてあったとか……」
「もしそうやって、カミラひとりでやったと考えると、第2コロニー駅で爆弾を設置した後、第1コロニー駅でシャトルを降りた、って事になる。――環状線をほぼ1周するか、下りのシャトルに乗って空港駅以降の駅で降り、すぐまた上りのシャトルに乗り換えるかという、誰が見ても不審な行動を取らなくてはならない。……さすがにそんな怪しい行動は避けるだろう。それから……」
 ディケイルは右脚の膝を立てようとして動かないのに気付き、左脚を折って、そこに肘を乗せた。親指で顎を支えながら、独り言のように呟く。
「2個目の爆弾は、駅のホームで衝撃を避け、誘爆するのを防いだと思っていたが、それではあまりにも不確実だ。実行犯とは別に、囮用の犯人役をも用意する程、慎重な『首謀者』が、そんな適当な事をするとは考えにくい。もっと確実に、1回目の爆発で集まって来た人々を巻き込む方法、それは……」
 ディケイルが暗い目をした。
 
 「1回目の爆発の後、その現場で2個目の爆弾をセットする事」
 
 「―――ま、まさか!」
 ……地獄絵図と化した爆発現場で、怪我で動けなくなった人々や、周辺の駆け回る救助隊の人々を横目に、涼しい顔をして、新たなる犠牲を生みだす爆弾のタイマーをセットし、平然とその場を立ち去る人物。――想像しただけで、ソウの全身に鳥肌が立った。「恐怖」では無い。「嫌悪」のためだ。
「だが、それが一番確実で、効果を最大限に発揮できる方法だ」
「し、しかし……!!」
 ――そういえば、ディケイルは、2個目の爆弾を設置した人物に心当たりがあるような素振りを見せていた。
 それを察したように、ディケイルはソウに目を向けた。
「誰よりも早くボランティアの一員が行っていた不正を察知し、その立場を利用して脅迫、カミラ夫人を追い詰められた人物。そして、1回目の爆発直後に現場に行き、誰にも怪しまれず、しかも安全に行動できた人物。
 ――テロ事件の中継は見たか?」
「あぁ。……真っ先に現場に『視察』に行って、迷子になっていた子供を救出した、とアピールしていた大臣が居たな……」
「だな」
 
 ――キャサリン・ギルバート法務大臣。
 
 「………マジか……!」
「あくまで俺の想像でしか無い。かと言って、どれだけ調べたところで、尻尾を出すとも思えない。ヘタしたら、こっちが消される」
「しかし、なぜ、彼女がそんな事を……」
「『地球』のスパイだからに決まってるだろ」
 ……そう言われれば、何となく納得できる気がする。キャサリン女史は、これまで、地球側に反発するような態度を見せてはいたものの、それ以上に、ディケイルたち『独立支援軍』を非難する言動も多かった。――この矛盾が、その証拠とも思えてくる。地球への非難は、ガニメデでの自分の立場を確保するため、軍への誹謗は、地球に対する忠誠を示すため……。そう考えれば辻褄が合う。
 
 「……今の事は誰にも言うな。――マーガレットにもな」
「分かってる。……しかし、この先、どうやってマーガレットを落とすか……」
 期待していた手掛かりは、永遠に失われてしまった。
「あいつをここに連れて来い。あいつも文句は言えないだろう。――で、徹底的に監視してやる。まだ、爆弾の材料をどこかに隠し持っている可能性がある」
 確かに、それが見付かりさえすれば、何よりの証拠になるが……
「今度こそ、おまえ、殺されるぞ?」
 ソウは、カミラの持った爆弾が爆発した原因は、マーガレットの悲鳴にあったのでは無いか、と思っている。カミラは起爆スイッチである瓶のフタから完全に手を離していたし、爆発した時、ディケイルの足は爆弾に届いていなかった。――たとえば、特殊な周波数の声を出す技術をマーガレットが習得していて、それに反応して起爆するように、設定されていた、とか……。
 あまりにファンタジー過ぎるので、ディケイルにバカにされそうで言っていないが。
 
 「――今度こそ、とは?」
 だが、ディケイルはキョトンとした顔をソウに向けた。
「カミラの持ってた爆弾は、何か、外部からの信号で起爆した可能性が強い。……それを使ったのがマーガレットだという証拠は、まだ出てないがな。つまり、おまえは殺されそうになった」
「………普通に俺が蹴ったから爆発したのかと思ってた」
 ――マジか!?
「じゃあ、なんでそんなモノを蹴ったんだ?」
「勝手に足が動いた。――というより、あのオバサンが普通に持ち歩いてたようなモンが、蹴ったくらいで爆発するハズが無いと思った。
 それに、あのオバサン、爆弾を使う気は無かったしな」
「……え?」
「本気で自殺する気なら、あんな、他人を脅すような真似をする前に、さっさと使ってる。どう足掻いても逃げきれない状況だったろ?なのに、あんなに計画性の無い脅し方をするのは、説得されるのを待ってる、そう思うのが自然だ。
 ……だが、追い詰められてパニックを起こしたら、何をしでかすか分からない。だから、足が出た。
 ――それさえも『罠』だとしたら……」
 ディケイルの目に鋭い光が差した。
「俺があいつと決着を付けてやる!」
 そう言って、ベッドから降りようとするから、ソウは慌てた。
「ま、待て!今は安静にしてなきゃ……」
「うるさい。真正面から殺されそうになったんだぜ?ナメられてじっとしてられるか!」
「いいから、今は動くな!」
 ソウが肩を押さえ付けると、ディケイルが足を蹴り上げて抵抗しようとした。――が、傷口がどこかに当たったのだろう。「ウッ……」と呻いて、ベッドに崩れ落ちた。
「……だから、言わんこっちゃない……」
 勝ち誇ったようなソウの顔を、ディケイルは恨めしそうに見上げた。
 ……だが、このままにしておけば、そのうちまた病院を「脱走」するだろう。
 ソウは、ディケイルの肩に手を置き、その顔を正面から見つめた。
「――必ず、俺がマーガレットの尻尾を掴んでやる。だから、今は治療に専念しろ。
 ………俺を信じろ」
 
 
 
 ……と、偉そうな事を言ってはみたものの、何か新しい手掛かりがあるわけでも無かった。ソウは軍本部の事務所で、頭を抱えていた。
 
 マッド・テイラーから、カミラの自宅を捜索した結果、難民への支給品と同じものが多数見付かったと連絡された。物品リストと照らし合わせ、カミラが「横領」していた事が、明らかになった。
 そして、『第2コロニー駅爆破事件』で、2回目の爆発で使われたものと同等か、あるいはそれ以上の威力と思われる水素爆弾も見付かった。――残念ながら、カミラ以外の指紋や他の人物に繋がるようなものは出なかったが、カミラが事件に深く関わっていた事は証明された。
 ――だが、それだけで、真相が明らかになるほどの供述は、夫や子供からも得られなかった。
 ………夫や子供は、この先、どうする気だろう?少し気になったが、今は、とてもそんなところにまで思考を割り振るような余裕は無い。
 
 旧警察に持ち込んだ、カミラの爆弾の起爆装置らしきものからも、特にこれといった情報は得られなかった。第2コロニー駅で使われたものもそうだったが、元々、ガニメデコロニー内の電器店でも販売されているような、ごくありきたりな電気回路で、だが、あまりに破損していて、起爆の仕組みとか、詳しい事は全く分からない状態だ、という事だけが分かった。
 
 時間だけが無為に過ぎて行く。マーガレットはマッド・テイラーのデスクに繋がれ、ふてくされた顔で化粧直しをしていた。ディケイルの見舞いに行きたいと訴えていたのだが、全員に完全無視を決め込まれたのだ。
 ――さて、どうしたものか……。
 そんなマーガレットの様子を手の間からチラリと見る。が、マーガレットは素知らぬ様子で鏡を眺めているだけだった。
 
 すると、突然、思いがけない人物が事務所にやって来た。
「………マック!!」
 その姿を見て、マッド・テイラーが声を上げた。
「今日、退院だったんだよ。――けど、まだこんな状態で、まともに動けねぇ。悪いが、もうしばらくは、家で休ませてもらうぜ」
と、松葉杖と奥さんのマリーに身体を支えられながら、ギブスがされた足と、包帯でぐるぐる巻きの腕を見せた。
「――俺が居ない間、なんか、いろいろ大変だったらしいな」
「あぁ。元帥まで入院してな」
「何だ?知らなかったぜ。――また、栄養失調か?」
「いや。……怪我だ」
「―――それを先に言えよ!」
 マックは本気で知らなかったらしい。確かに、ニュースでは、難民施設で爆弾自殺があり、1名死亡、軍の人間が1名重傷を負った、とだけ報道されていた。
「知ってたら、退院する前に見舞いに行ったのによ。……この足じゃ、マリーが居なけりゃ病院まで行けねぇ」
「あいつなら大丈夫だ。すぐに戻ってくるさ」
と、ソウは、先程マッド・テイラーたちにも伝えたディケイルの様子を、もう一度繰り返した。
「……勝手に防衛隊の人たちを捜査に借りてる。悪いな」
「何も悪くねぇよ。――俺じゃ、そういう頭使う事は分からねぇ。さっさと解決してくれよ、アニキ」
 そう言って、マックは物言いたげな視線をソウに投げた。
 ソウは、マックのところへ行き、一緒に事務所を出た。
 
 「―――あのさ」
 マックが小声で、だが責めるような目をソウに向けて言った。
「テロ事件の事は、チャン大将から聞いてる」
 ……チャンがマックを見舞いに行っていたのか……!?チャンの交友関係の中で、マックが軍の中では最も親しいとは知っていたが、チャンがマックと和やかに会話しているところは、ちょっと想像できない。
「……チャンも言ってたぜ?なんで、あの化けモノ男をさっさと殺さないんだよ?そうすれば、何もかも解決する、そうじゃないのか?」
 ――確かに、一理ある。ディケイルはマーガレットをほぼ100%、全ての爆弾事件の『犯人』だと思っている。そんな疑わしい人物は、さっさと殺してしまった方が、今後のためなのではないか?
 ソウの心のどこかで何かが揺れた。……なぜ、今までディケイルはそうしようとしなかったのか?そうしていれば、最低でも第2の爆弾事件は防げたのではないか?ディケイル自身も傷付く事は無かった……。
 
 だが、ソウの口からは違う返答が出た。
「……法治国家を目指している以上、何の根拠も無しに、人を裁く事は許されない。――たとえ、どんな立場の人間であってもな。ディケイルだって、そう思ってる」
「だけどさ……」
「マック、おまえ、コロニーの治安を守る防衛隊の長官だろ?……なら、怪しい人間を殺すんじゃなく、『証拠』を見付けるんだ。その上で、法に照らし合わせた罰を下す。――それが『法治国家』だ」
 ――99.99%「黒」でも、0.01%の「白」の可能性が残っていれば、処罰する事はできない。……万一、圧倒的な「黒」に目を奪われ、その命を絶ったとして、0.01%の「白」が真実だと明らかになったとしたら……
 ディケイルの「正義」は崩れ落ちる。
 
 まだ納得してないような顔のマックを何とかなだめ、見送った後で、ソウはその場で考え込んだ。
 ――「国家」というのは、「理念」が何よりも大切なのだ。「理念」では無く、「力」で抑え込むようになったら……、アース・コーポレーションのようになる。
 それから逃れるための唯一の「選択肢」として、ガニメデは独立したはずだ。だから、「黒だろう」で人を裁く事は、決して許されない。そんな思い込みで国民を判断したら、それこそ『独裁』だ。
 ……それも分かっていて、マーガレットはあんなに挑発的な態度を取っているのか……?
 だがそれでもなお、「証拠」を見つけ出さない限りは、マーガレットを拘束する事すらできない。
 国民を守るべき国家が、危険人物を野放しにしている。――大きな矛盾に見えるかもしれないが、この「理念」だけは守らなければ、「独立」した意味が無い。
 
 ――何とか、証拠を……。――次の犠牲者が出る前に。
 
 
 
 その夜、事務所に泊まり込むつもりだったが、一旦子供たちの様子を見に家に帰った。すると、
「元帥がひどいケガをして入院してるらしいじゃないですか?なんで教えてくれなかったんですか!?」
と、マタルにすごい剣幕で睨まれた。誰かに聞いたのだろう。
「――悪かった」
 ソウは頭を掻きながら、頭を下げるしか無かった。
「……マタル、そう怒るなよ」
 夕食の皿を並べながら、レイが静かに言った。
「参謀長は、僕たちがショックを受けないか心配して、なかなか言い出せなかったんだ。怒る相手は参謀長じゃない。――犯人だよ」
 ……まるで、ソウの心の中を読んでいるかのような発言だ。――レイがディケイルの言っていたように、少し特殊な存在だとしても、こんな子供にまで読み取られるくらい単純なのか、俺の思考は……。ソウは自分が情けなくなった。
「それに、参謀長は今からが大変なんだ。――事件はこれで終わったわけじゃなく、もっととんでもない事を呼び込もうとしている。……悲しいけれど」
 ――例の「予言」か?ソウは目を丸くしてレイを見た。
 レイは、皿を持って、そのバイオレットの瞳をソウに向けていた。
 
 「大丈夫。元帥は、僕が守りますから」


>> 次へ
PR

web拍手 by FC2


※ Comment
HN
TITLE
COLOR
MAIL
URL
COMMENT
PASS


※ この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:



Powered by 忍者ブログ  Design by まめの
Copyright © [ Second Box ] All Rights Reserved.
http://secondbox.side-story.net/