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30.  迷走
 
 
 ――初めてマーガレットと同じ部屋で一夜を過ごしたが、ディケイルがウンザリしていた理由が分かった。……とにかく、イビキがうるさいのだ。
 ディケイルの定位置であるソファーにゴロリと横になり、グーガーという大音響を、事務所じゅうに響かせる。
 ディケイルの怪我に責任を感じているのか、エドもソウと一緒に事務所に泊まり込むと言ったはいいが、これでは、捜査にも仕事にも全くならない。
「……口の中に雑巾突っ込んでいいですか?」
 半ば本気の顔でエドが言ってきた。
「どうせなら、鼻と口にガムテープを貼ったほうが効果的だろう」
 ひどい事を言いながらも、それを実行できるわけでも無く……
 
 朝を迎える頃には、ふたりともグッタリしていた。
 
 だが、当の本人は極めて気持ち良さそうに目覚め、
「おはよぉ。――あれ、何か疲れてない?休んだほうがいいんじゃないの?」
と、素知らぬ顔でソウの顔を眺めてきた。――今晩もあんな調子だったら、今度こそ本当にガムテープを貼ってやる。
 
 その朝、珍しくニーナが事務所にやって来た。
「今朝の朝食当番だったんで、ついでに寄ってみました。――元帥、大丈夫なんですか?」
 やはり、どこからか噂は流れている。人の口に戸は立てられないとはこの事だ。
「意外と元気そうにはしてた。あいつのことだ。すぐに戻って来るよ」
「それは良かった。……それよりも、エドくんの方が危険そうね」
 エドは、目の下にくっきりとクマを蓄えて、ニーナを見た。
「ニーナちゃんと一緒の夜なら、全然疲れないんだけどね」
「……意味深な発言、やめてくれないかしら?」
 そうエドに白い目を向けつつ、マーガレットの脇を通った。マーガレットは、相変わらず大きな化粧ポーチを広げて手鏡に向かっている。……そういえば、夜寝ている時も、化粧を落としていなかった。そこに、また重ね塗りをして、大丈夫なのだろうか?
「……マーガレットちゃん、いっぱい口紅持ってるのね。ちょっと見せて」
 やはり女性だ。化粧品には興味があるのだろう。ニーナは化粧ポーチに並んでいる口紅のひとつに手を伸ばそうとした。
 ――だが、マーガレットは慌てた様子で化粧ポーチを閉じた。
「や、やだぁ、安物だから、あんまり見ないで」
「……あら、そう。――ごめんなさいね」
 何となく気まずい雰囲気を残して、ニーナは去って行った。
 
 ――それからも、ソウとエドは事件の捜査書類に貼り付いていたが、もう何度も見尽くしている文面からは、何も出てくる気配は無かった。
 しかし、ソウもエドも意地になって、充血した目を見開いていた。
「……おい、見ている方が痛々しい。少し休んで来い」
 マッド・テイラーが渋い顔をこちらに向けた。
「ですが……」
 ソウは反論しようとしたが、エドが
「それもそうですね。少し休みましょうか、参謀長」
と伸びをしながらこちらを見た。
「だが、早く……」
「また今晩、泊まり込むつもりなんでしょ?なら、少しは休んでおかないと、持ちませんよ?」
 ――確かに、ソウの本能は、エドの意見に猛烈に賛成していた。……仕方ない。
 
 だが、エドもさすがに自宅へ帰る気にはならなかったようで、ふたりで休憩室に向かった。
「参謀長、コーヒーどうですか?」
 エドが、紙コップをふたつ手に持って、ソウが寝そべるベンチの向かいに座った。
「――寝る前に、よくコーヒーなんて飲めるな」
「あれ?参謀長、寝る気だったんですか?」
「だって、おまえ、そう言って……」
「俺は、あのオッサンのクサい化粧品の臭いから離れられれば良かったんです」
 ……確かに、あの鼻につく臭いが無いだけで、何となく落ち着く気がする。起き上がってエドからコーヒーを受け取り、その香りを思い切り吸い込んだ。――それだけで、頭の中までリフレッシュできた気分だ。
「――にしても、あのオッサン、顔洗わないんですかね」
 ……ソウも思ってた事だ。エドも気付いたらしい。
「よほど素顔を見られたくないんじゃないか?」
「何か、隠したい事がある証拠ですかね?」
 ――それも十分に考えられる。だからといって、何の証明になる事でもない。
「そもそも、この事件の『答え』ってどこなんでしょう?」
「……『答え』、とは?」
「犯人が誰なのか?凶器は何なのか?どうやって犯行を行ったのか?その目的は何だったのか?――どこまではっきりさせれば、事件解決って事になるんでしょう?」
 ……確かに、ディケイルの推測が正しければ、事件は地球がガニメデへ向けている陰謀にまで追及するほどの、とんでもない展開になる。どこまで暴けば、本当の事件解決となるのか……、実のところ、ソウにも分からなかった。
 
 とりあえず、一連の爆弾事件に関わった人物は、全部で何人居るのか?
 まず、『首謀者』であり、地球からテロの要請を受けてやって来たと思われる、マーガレット。
 『囮』の犯人役の、ブライアン・マルコー。
 『実行犯』の、カミラ。
 そして、もうひとりの実行犯であり、『黒幕』の疑いがある、キャサリン・ギルバート。
 
 それから、事件の流れ。
 爆弾の材料は、カミラが用意をし、それをマーガレットに渡す。マーガレットがそれと、自分で地球から持ち込んだ金属水素カプセルを合わせて爆弾を制作、カミラと、カミラを通してキャサリンに渡す。
 カミラが余計な事をしゃべったりしないように、キャサリンが心理的に追い詰めつつ、目を光らせていた。
 そして、タイミングを図り、マーガレットがブライアンに『自供』させる。――実は、このタイミングこそが、『第2コロニー駅爆破事件』の決行日時を左右していたのかもしれない。子供のことだ。その時の気分次第で、同じ内容の事でも素直に受け取ったり反発してきたりするだろう。だから、ブライアンの「機嫌」が何よりも重要であり、この計画の成否を決めるものだったのではないか。事件全体の流れを考えた時、必然的にそうなるように、ソウには見えた。
 その、ブライアンの自供の後で、カミラとキャサリンに連絡を取り、事件を起こさせた。……自供の後で爆発を起こさせることで、ブライアンの証言が、さらに強固なものとなった。
 ――その連絡方法。まだ当時は、難民施設内なら自由に動き回る事ができたから、食堂に行ってカミラに合図すれば問題ない。……そういえば、テロ事件の当日、「子供が熱を出した」とか言うから、来たばかりのカミラをすぐに帰したという話を、ボランティア仲間がしていたと、報告書に書いてあった。――その足で、爆弾を設置したのだろう。
 キャサリンには、連絡などしなくとも、「爆破」自体が連絡の役目も果たしたのかもしれない。あれほど分かりやすい「狼煙」は無い。
 ……そう考えると、爆弾が2個使用された件を議会が市民に隠そうとした理由が納得できる。カミラへの脅迫の効力を増すだけでなく、自分から疑いを逸らす目的で、キャサリンが議会をまるめ込んだ、と考えられる。
 そしてマーガレットは自ら、捜査側のディケイルに貼り付くことで、現在の状況を把握する。
 ディケイルが急に外出したりして、怪しいと思ったのだろう。それで、注意していたら、どうやら、カミラが騒ぎを起こしているらしい。で、見張りだったエドを言いくるめて現場へ行き、カミラを殺して口止めする。――その方法は分からないが。
 
 ……ディケイルの話をまとめると、こんな感じだろう。
 だが、どれも推測の域を出ず、証拠が無い。だから、未だに『首謀者』のマーガレットは、素知らぬフリで今ものうのうとしている。
 
 ……とにかく、今はマーガレットの『黒』を証明する材料を見付けることだ。
 ソウは、ひとつだけ、それを証明できる方法を考えついてはいた。――それは、ブライアンを釈放する事。
 ブライアンは、『首謀者』にとって「切り札」だ。ブライアンの無実が証明され、本人から真実が語られるなどという事があってはならない。だから、もし、ブライアンを釈放すれば、証拠を「始末」するために動くのではないか……。
 だが、それもいい案とは思わなかった。――たった10歳の子供を、殺人者に対しての囮として使う事になる。あまりに危険で、人道的にも問題がある。さすがに、ソウにはできない作戦だった。
 
 ――それに、万一、マーガレット自身が『囮』であり、捜査の目を引きつけているその間に、真犯人が次の犯行の準備をしているとしたら……。
「――あーもう、訳が分からなくなってきた」
 ソウは頭を引っ掻き回した。ディケイルみたいに、推測だけであんなにポンポンと事態を組み立てる事なんて出来やしない。
 
 すると、休憩室にもうひとつの足音が入って来た。
 顔を上げると……
「よっ、ニーナちゃん。休憩?」
 エドが親しげに話し掛けると、ニーナは当たり障りの無い笑顔で返した。
「今、朝食の片付けが終わったところなの。今から空港に帰るけど、その前に、お茶でも飲もうかと思って」
「大変だね。……さ、座って」
 エドが自分の隣を示してアピールしたが、ニーナは素知らぬフリで、隣のベンチに座った。
「参謀長たちも大変ですね。徹夜続きとか」
「あぁ、まぁ……」
 ――ただ、寝ていないというだけで、何も成果があった訳ではないので、自慢できる事では無い。
「良かったら、ニーナちゃんも一緒にどう?」
「遠慮しとくわ。――マタルくんとレイくん、よかったら、夜だけでもうちで預かりましょうか?子供ふたりだけってのも心細いだろうし」
「ありがとう。――だが、あのふたりは大丈夫だと思う。……俺よりしっかりしてるよ」
 ニーナはフフフと笑った。
「カティから様子は聞いてますよ。困った事があったらいつでも言ってねって、言ってはあるんですけどね。――そのへんの大人以上に生活意識がしっかりしてるっていうか……。――少なくとも、エドくんよりはまともな生活してそう」
「……俺、ニーナちゃんにそんなイメージで見られてたのか……」
 エドがしょげて見せた。それにはお構いなく、ニーナは思い出したようにソウを見た。
「そうそう。――あの、マーガレットちゃんて、本当に『オカマ』なんですか?」
 
 ――ニーナの言葉に、ソウとエドは顔を見合わせた。
「……なんで、そう思ったの?」
「何となく、イメージなんですけど、『オカマ』とか『ニューハーフ』とか、女装をする男性って、本物の女性よりも女性としての意識が高い、って気がするんです。
 ……地球に居た頃、学校の同級生に、性同一性障害の男の子が居たんです。ある時を境に、その子、それまで男の子っぽい格好をしてたのに、急に化粧しだして。――それが、私なんかよりもすっごく上手でセンスも良くて。女友達で集まって、メイクテクニックを教えてもらったくらいです」
「へぇ……」
「だけど、マーガレットちゃんのメイクって、何か、中途半端というか……。
 さっき、メイク道具がチラッと見えたけど、口紅はあんなにたくさん持ってるのに、リップグロスを持ってなかったり、マスカラは何本も入ってるのに、アイシャドウは1色しか入ってなかったり……。
 チークやフェイスパウダー用のハケとかブラシとか、メイクにこだわる人なら絶対に持ってるハズのものを使ってる様子も無かったし。バランスが悪いっていうのか……、何となくですけど、本当にメイクの事知ってるのかな、って感じちゃって。
 それに、『安物だから見ちゃイヤ』って言ってたじゃないですか。でも、マーガレットちゃんがもってた化粧品、ブランド品ばかりでしたよ。私じゃ絶対に買えないような……」
 ……女性でなければ、全く感じなかった違和感だろう。ソウは気になりもしなかった。エドもそれは同じようで、再び、ソウとエドは顔を見合わせた。
 
 「まぁ、本当に女性になる事を目指してるニューハーフさんとか、男性のままで同性を好きになっちゃうゲイさんとか、そのへんは良く分からないですけど……」
「――いや、これは、もの凄く重要な手掛かりになるかもしれない」
「………え?」
 ニーナがキョトンと見守る前で、ソウはガバッと立ち上がった。
 ――もし、その違和感が図星なら、マーガレットの尻尾が、今まさに、目の前に現れたのかもしれない。あとは、それを掴むだけだ!
「行くぞ!エド」
「はい!参謀長!」
 ふたりは、半ば駆け足で休憩室を出て行こうとした。
 
 ――が、それをニーナの声が止めた。
「ちょ、ちょっと待って!」
 振り向くと、ニーナはこちらでは無く、休憩室の奥で点けっ放しになっていたテレビに顔を向けていた。
 ソウは、それを見て硬直した。
 
 画面には、金髪の若い男――ミカエル・アイヒベルガーが映っていた。
 そして、画面の右上のテロップには、
『アイヒベルガーCEO、ガニメデの市民救出に、宇宙艦隊全軍の投入を決定』
とあった。


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