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 ――地球、ジュネーヴのアース・コーポレーション本社ビルの、最上階のとある一室。
 ミカエル・アイヒベルガーは、革張りの椅子に身を預け、モニターを眺めていた。

 テオドア・カゼリの作戦は、ほぼうまくいっているようだ。テオドアの送り込んだ工作員は、見事に爆破テロを成し遂げ、ガニメデの市民は不安を感じている。
 ――あとは、私がそこへ種火を投げ掛け、もうひとりの「スパイ」が煽ってくれれば、ガニメデの軍部へ向ける市民の不信感は、烈火の如く燃え上がるだろう。
 
 ミカエルは、マスコミ向けのコメントを発表した。
 
 「先月、地球からガニメデへ『亡命』したという人物の中に、通称『ハイドロ・テラー』と呼ばれる水素爆弾専門のテロリストが居るという情報を得た。彼は、過去に何度も爆弾テロ事件を起こし、全世界指名手配をされている危険人物だ。そのため、ガニメデ政府へその情報を伝え、その身柄を引き渡すよう、再三に渡りお願いしてきた」
 
 ――「ハイドロ・テラー」。テオドアが、ブライアン・マルコーと共にガニメデに送り込んだ「工作員」だ。今、ガニメデにヤツが居るのは嘘では無い。……ただ、その情報を教えてやったという事実は無い。しかし、市民が信じるのは、「事実」よりも、よりそれらしい「ストーリー」なのだ。
 
 「だが、ガニメデ政府は我々の忠告を無視し、1カ月経った今も、何の返答も無く、身柄の引き渡しにも応じていない。それに対し、我々は、ガニメデ政府がテロリストを雇い、大量破壊兵器の制作に着手しようとしている、そういう疑いを抱かざるを得ない。
 その根拠として、ガニメデ・コロニー内で10日ほど前に起きた、大規模な爆発事故が挙げられる。これこそが、ガニメデ政府に管理能力が無いにも関わらず、無謀な兵器開発を行っている証拠なのではないか」
 
 恐らく、政府は軍部に問いただすだろう。これは真実か、と。――だが、軍部がいくら反論したところで、誰も信じる者など居まい。それだけ、軍への不信感が募っている事は、「スパイ」からの情報で確認している。
 
 「しかし、ガニメデ政府は、情報を操作し、その「事故」があたかも地球からの亡命者が行った「テロ事件」であるかのように市民に伝え、地球への反感を煽る材料にしようとした。これは、許されない市民への裏切りである。
 また、ガニメデ政府がそのような対応をしている以上、今後も今回のような惨事が起こる可能性が十分にある。我々としては、『人道的見地』から、それを見過ごす事が出来ない」
 
 ――「人道的」。火星がガニメデを支援する口実にも使った言葉だが、この言葉には、何事をも「正義」へと変換してしまう、とんでもない魔力が潜んでいる。
 
 「本来、ガニメデ・コロニーはアース・コーポレーションの所有物であり、そこに住む人々は、全員、アース・コーポレーションの従業員である。不法に占拠している『政府』を名乗る輩に対し、従業員の安全確保を第一に考え、これまで静観してきたが、占拠犯側に従業員の安全を保証する意思が無いと分かった以上、従業員をこれ以上危険な目に晒す事はできない。一刻も早く、彼らを『救出』しなければならない。
 また、ガニメデ政府が大量破壊兵器を所持している事が判明したからには、それが地球に対して使用される事も、防ぐ必要がある。
 ――よって、当社警備部の総力を以って、ガニメデ・コロニー内の占拠犯を排除し、従業員の解放に当たる事を、役員会総員の賛成で決定した」
 
 ……どうだ?いかにも愚民が喜びそうなストーリーではないか?
 ヘタすれば、いや、もっとうまくいけば、政府や軍に対する暴動が起きてもおかしくはない。そうなった場合、軍は、一般市民に銃を向けられるかな?
 ――銃を向けた途端、ガニメデは終わる。
 
 ミカエルは、執務室のモニターで、自分のコメントに対する人々の反応を見ていた。
 『アース・コーポレーションの対応は正当だ』と考える市民の数は、全体の80%を超えている。――あくまで地球での世論だが、ガニメデでもこれに近い数字が出ると、ミカエルは確信している。
 
 ……ブライアン・マルコーがやってくれた映像流出事件も、時間が解決してくれた。今はそんな事よりも、大物俳優と若手アイドル歌手との不倫騒動のほうが、熱烈に報道されている。
 内容の重要性などは関係無く、新しい刺激に流れ、古い出来事は忘れ去られる。人間の脳というのは、実に単純に出来ている。
 
 その時期を見計らっていた事もあるが、このコメントの発表を決めるに当たり、もうひとつ、重要な情報が、テオドアを通してミカエルの元に入った。
 それは、ディケイル・ウェイニーが重傷を負い、当分は動けないだろう、という事。
 ――このチャンスを逃す手は無い。あいつには、病室で爪を噛んで自分の不運を嘆いていてもらおう。
 
 ミカエルは、デスクのスイッチを押した。
 すぐさま、モニターにリン警備部長の精悍な顔が映し出された。
「――ニュースは見てくれたな?例の件、遅くなったが、実行してもらう時が来た」
「承知しております、閣下」
「いつ、出られる?」
「7日後には」
「了解した。――期待している」
 敬礼を返すリンの顔がモニターから消えると、ミカエルの顔に不敵な笑みが浮かんだ。
 
 ……私に逆らわない方がいい。どんな手段を使ってでも、必ず潰して見せる。
 
 
 
 ガニメデ、旧第3コロニーの軍施設の休憩室。

 3人は、繰り返し放送される臨時ニュースの画面から、目を離す事ができなかった。
「――や、やばいんじゃないすか、これ」
 ミカエルのコメントが2周目の終わりに近付いたあたりで、ようやくエドが声を出した。
「いや、滅茶苦茶な内容だ。地球の住民に向けて、自分の正当性を訴えてるだけで、ガニメデではこんな茶番は通用しないさ」
「いや、それはともかく、……宇宙艦隊が全力で攻めて来たら、どうやって対抗するんですか?」
「…………」
 それもそうだ。理由はともあれ、本気で実力行使をされたら、どう考えたって太刀打ちできない。――しかも、ディケイルが動けないのを見計らったかのように!
 『絶体絶命』という言葉が、これほどまでに見合う状況が、他にあるだろうか?
「……でも、まず、やれる事だけはやっておかないと」
 ニーナが立ち上がった。
「私、空港に戻って、ドミニオンがいつでも発進できるように整備するよう、みんなに連絡しておきますね」
 ……やはり、こういう緊急事態では、女性のほうが冷静なのだろうか?ソウとエドに後ろ姿を見送られ、ニーナは走り去って行った。
「どどどどどどうします?俺たち??」
 一方、エドの発言はまともに言葉にもなっていない。だが、動揺で頭がパニックになっているのはソウも一緒で、返す言葉すら見付からない。
「と、とにかく、事務所に戻りましょう!」
 エドに言われて、ようやくソウは心を決めた。――ニーナの言う通り、今はやれる事をやらなければ。
 
 事務所も、やはり半ばパニック状態になっていた。各所からの電話に追われ、マッド・テイラーは大声を張り上げていた。
「……一体、この状況、どうするんだ!?」
 呼び出し音が鳴り止んだ隙に、マッド・テイラーは椅子に身を投げ頭を抱えた。
「今の電話、ほとんどが、アイヒベルガーCEOの発言は本当なのか?っていう、一般市民からの問い合わせだぜ?あんなデタラメ、信用するヤツがこうも居るとはな!」
 そう愚痴をこぼす間にも、再び呼び出し音が鳴り、マッド・テイラーはイライラ顔で受話器を取った。
 ソウの背筋を冷たいものが流れた。
 
 ――ソウは、軍部に身を置いているから、ミカエルの発言が嘘だと知っている。しかし、事実を直接目にしているわけでは無く、報道の情報をぼんやりと受け入れている市民にとっては、どうだろうか?
 そして、何よりも、ソウは軍の目線から事態を見てきていたから気付かなかったが、想像以上に、市民の軍への不信感は高まっていたのかもしれない。
 ……これは、地球の宇宙艦隊を相手にするよりも前に、ガニメデの一般市民を敵に回す事になるかもしれない。
 
 ―――そうなった時こそが、最悪の事態だ!!
 
 以前、ディケイルが言っていた。「爆弾テロの目的は、政府と軍の対立を狙ったもの」だと。――それが、このような形で訪れようとは……。
 ……完全にヤラれた!
 
 ソウの近くの電話が鳴った。電話対応をしながら、マッド・テイラーがこちらを見た。――仕方ない。ソウは受話器を取った。
「……軍は、俺たちを騙して何をやってたんだ!もうおまえらなんか、信用できるか。みんなに呼び掛けて、おまえらを叩きのめし、地球に投降してやる!」
 ソウが何も言わないうちから怒鳴り散らして、電話は切れた。
 ――その、最悪の事態は、もう目前に迫っている!ソウは受話器を置きながら、唇を噛んだ。……どうして、こうなる事を、もっと早くに予測できなかったんだ!
 
 マッド・テイラーが受話器を置き、またすぐに鳴り出した電話に出た。――その声を聞いて、マッド・テイラーはスピーカー機能をONにした。
「――キャサリン・ギルバートです。ニュースは見ました。真相を教えていただけませんか?
 1時間後、臨時議会が招集されます。その時に、総司令官には出席していただき、真実を明かしていただきます。それが、一般市民に対する『誠意』じゃありませんこと?」
 ……金切り声でまくし立てられ、マッド・テイラーは耳を押さえながら受話器に苦々しい視線を向けた。
「分かりました。行きますよ、行けばいいんでしょ?」
 マッド・テイラーの投げやりな返答に対して、また何か声を荒げていたが、ソウはその受話器を受け取り、キャサリンの声を遮った。
「ナカムラ参謀本部長です。――私も、総司令官と共に議会に伺います。よろしいですね?」
 キャサリンはまだ何か言っていたが、ソウは受話器を置いた。
「――おい、おまえ、議会に行って何をする気だ?」
 マッド・テイラーがキョトンとした顔でソウを見た。
「自分でもよく分かりません。……でも、もしかしたら、この騒動を少しは抑えられるかもしれない。やれる事だけやってみます」
 
 ――その後、マッド・テイラーの命令で、事務所じゅうの電話線が全て抜かれた。……かなり強引な手段だが、おかげで、事務所内は静かになった。実際、こうでもしなければ、まともに今後の対策の話し合いなど出来やしない。
「――さて、これからどうする?」
「早急に、宇宙艦隊に対抗する策を練らねばならないでしょうね」
「……誰が、その指揮を執るんですか?」
 エドの言葉に、一同は沈黙した。
「――テイラー大将が指揮を執るのが、妥当な考えだと」
 ソウは思い切って言ってみたが、マッド・テイラーは首を横に振った。
「俺には無理だ。――知ってるだろ?俺は軍の連中に信用が無い」
 
 ……確かに、マッド・テイラーは元エリートの守衛で、軍のメンバーの大多数を占める元ホームレスたちにとっては『敵』だった存在だ。そして、実際にホームレス仲間が多く殺された『一斉清掃』を指揮していた人物である。恨みを買っていてもおかしくない。
 これまでは、ホームレスたちの不満をディケイルが抑えてきていたが、そのディケイルが居ない状況、しかも命懸けの戦争ともなれば、マッド・テイラーの求心力は危ういだろう。「総司令官」の立場も、実戦ではなく対外的な交渉力の点を重視して、ディケイルは任命したのだろうと思う。
 ――そういえば、チャンが事務所に姿を見せないのは、表には出さないが、そういったわだかまりを抱えているから、というのも、理由のひとつかもしれない。
 
 「俺は、チャン大将が適任だと思う」
 マッド・テイラーが言った。
「彼なら、冷静な判断力で、対応してくれるに違いない」
「いや、俺よりも、ナカムラ参謀長のほうが向いている」
 ――いつの間に居たのか、少し後ろで、チャンが机にもたれてこちらを見ていた。さすがに今回ばかりは、自分も参加せずにはいられないと思ったのだろう。
「俺は、人間同士の戦闘には慣れているが、戦艦など動かした事が無い。戦艦1隻で艦隊を相手にするなど、俺の能力ではとても出来ない」
 ………まさか、自分の名が挙がるとは、思ってもいなかった。
「ちょ、ちょっとそれは……」
「死体を見て倒れるようなヤツに、人殺しの算段ができると思うか?」
 無遠慮な声が、後ろの方から飛んで来た。
 ハッとして振り向いてみると、――入口のドアの脇に背を預けて、ディケイルが立っていた。
「――まさか、俺抜きでドンパチやろうなんて事は、考えてねぇだろうな?」
 松葉杖で身体を支えながら、ディケイルはソウの隣にやって来て、近くの机の上に腰を下ろした。――パジャマのズボンが力なくぶら下がっているのが痛々しい。
「……おい、また脱走してきたのか?」
「人聞きが悪い事を言うな。医者が『歩く練習をしろ』と言うから、歩いて来た。何が悪い?」
「じゃあ、その、パジャマの上に羽織った白衣は?」
「そのへんにあったのを拝借した。――だって、着るモン無かったし」
 ……後からまた、病院に謝りに行かなければならないだろう。
 しかし、そんなソウの心配をよそに、ディケイルは言った。
「俺が、今回の指揮を執る。――文句があるヤツは居るか?」


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