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 軍本部からラボへ向かうには、元第3コロニーがあった場所を突っ切って、氷の大地を車で走るのが一番早い。ジョルジュも、そうして向かっていたはずだ。
 ――鉱山用シャトルの線路から外れた、真っ白の風景の中に、やはり1台の乗用車が止まっていた。赤い塗装を施された、ラボ専用の車だ。
 防護服とヘルメットの完全防備で軍用車から降り、そちらの車に近付くと、窓の中からジョルジュが涙目で顔を向けた。
「――助けてくださいぃ~」
 窓越しに震える声が聞こえる。
「いいか、まず、車を乗り換える。エンジンやエアコンはかけたままだ。ドアを開ける時間は最短にしろ。気圧差で箱が飛ばないように、上着でも掛けておけ」
「そんな事したら、僕が寒いじゃないですかぁ」
「贅沢言うな!ヘルメットだけは持ってきてやった。渡すから、少しだけ窓を開けろ。――準備ができたら、心臓が凍る前にこっちの車へ走れ。いいな?」
 マッド・テイラーに怖い顔で説明され、ジョルジュは渋々といった様子で肯き、ヘルメットが通る分だけ窓を開けた。そこからヘルメットを渡すと、すぐさまそれをかぶり、こちらに肯いて見せた。
「用意はいいな。ではいくぞ。――1、2、3!」
 マッド・テイラーが勢いよくドアを引く。それに合わせて、ジョルジュが車内から飛び出した。――その勢いで、マイナス160℃の大気に冷やされた氷の上に転がり、悲鳴を上げる。
「何やってんだ!さっさと乗れ!」
 今度はソウがジョルジュの服を引っ張り上げ、軍用車へ押し込む。急いで扉を閉め、爆弾の様子を確認してから、マッド・テイラーも戻って来た。
「――素手で氷を触っちゃいましたよ。……ほら、ここ、皮がめくれてるでしょ?凍傷ですよ。……これって、労災効きますかね?」
「知るか!今、命があるだけでも幸せだと思え!」
 ルームミラー越しに、マッド・テイラーに怒鳴りつけられ、ジョルジュはさらに泣きそうな顔をした。
 
 「――それで、これからどうするんですか?あの爆弾」
 マッド・テイラーは、守衛隊の指揮官をしていたくらいだから、爆弾の知識は多少あるようだった。ここまで来る途中の車内で、ソウに、水素爆弾の危険性は、著しい温度差だと説明した。金属化水素を覆っている金属製のカプセルが、圧力を保てなくなり、破損する可能性があるかららしい。
 逆に考えれば、急激な温度差さえ与えれば、起爆方法が何か分からなくても爆発させる事はできるワケで……
「爆発させて処理するのが、一番安全な方法だ」
と、足元からショットガンを取り出した。
「――ンなモンで、な、何するんですか?」
 助手席の後ろから、ジョルジュが不安そうな声を上げる。
「だから、爆発させるって言ってるだろうが!少しは黙ってろ!」
 マッド・テイラーに睨まれ、ジョルジュは首をすくめて小さくなった。
 ――要するに、人間が快適に過ごせる程度の室温を保っている乗用車の窓を破ることで、室内の温度を急激に下げ、爆発させる、と。
 しかし、それには計算しておかなければならない事があるのではないか?
「――あの、ショットガンの射程と、爆弾の爆発半径と、どちらが大きいと思いますか?」
「知らねぇよ、そんな事」
「…………」
「とにかく、車内の温度が下がって、カプセルが破損するまでの間に、多少のタイムラグがあるハズだ。その間に、全速力で離脱する。いいな?」
「……わ、分かりました」
 ――ディケイル並みに無茶苦茶な作戦だ。
「あ、あの……」
 ジョルジュがそれを聞いて、慌てた様子で言った。
「車の中に、『鋼の操縦士』の初回限定スペシャルディスク・コンプリートセットを置いて来たんです。あれ、今じゃ手に入らない超レア物なんですよ!」
「じゃあ、それも一緒に爆発するだろうな」
「そ、そんなぁ……」
「じゃあ、取りに行ってくるか?――次にドアを開けたら、爆発するかもしれんがな。命よりもそっちが大事なら、止めはしないから行って来い。……そうすりゃ、俺が撃つ手間も省ける」
 もの凄い顔でマッド・テイラーに睨まれ、ジョルジュは絶望的な表情で天井を仰いだ。
 ……ソウは、ジョルジュという人物に対して、エドの友人という程度の認識しか、これまで持っていなかったが、これほどのマニア趣味があるとは……。女性に対して態度が軽いエドとは、全くタイプが違う気がする。どうやって友情を育んできたのか……?
 
 「――じゃあ、行くぜ?」
 マッド・テイラーは細く窓を開け、そこに銃口を通した。強烈な冷風が吹き込み、ジョルジュがヒッと声を上げて襟を立てた。
「準備はいいか?」
「バッチリです!」
 ソウは、ギアを入れ替え、アクセルペダルに足を運んだ。
「3、2、1、――ファイアー!!」
 マッド・テイラーの合図と共に、銃撃音が車内に響いた。同時に、思い切りアクセルを踏む。氷の上をタイヤが空回りした感覚があったが、すぐにタイヤは大地を捉え、急激な加速感がソウの身体をシートに押し付けた。
 後ろでジョルジュが悲鳴を上げたようだが、その声はソウの耳には届かなかった。
 
 強烈な爆音がソウたちを襲った。それと同時に、烈風が後ろから車体を持ち上げた。
 ――飛ばされる!!
 ソウはハンドルにしがみ付き、耐衝撃姿勢を取る。
 軍用車は、いともあっさりと、タバコの空き箱が転がるかのように横転した。氷の上を何度も転がっているようだ。ソウの視界の上下が激しく入れ替わる。
 ――しかし、間もなく車は止まった。……頭が重い。どうやら、天井が下の状態で止まったらしい。
 ガニメデで使われている車は、横転くらいの衝撃では窓が破れないようにできている。その点では心配はしていなかったが……。
「……い、生きてるか?」
 マッド・テイラーの声がした。横を見ると、座席にしがみ付いている。――そして、その背中におんぶされるように、ジョルジュが抱きついていた。……どうやったらこういう状況になるのか、全く訳が分からない。
「お、俺は大丈夫です」
 ソウは返事を返したが、返答できない程のショックを受けている人物が居た。
 マッド・テイラーの背中で、ジョルジュが情けない声を上げた。
「……ぼ、僕の宝物が……、僕の青春がぁ……」
 ――まだ『鋼の操縦士』に未練があるようだ。
 
 ……それはともかく、これだけの威力がある爆弾が、もし、ラボの中で爆発していたら……。――ラボの建物自体が木端微塵になっていたに違いない。何とか間に合った……。
 ソウは頭に血が昇るのを感じつつも、ホッと胸を撫で下ろさずにはいられなかった。
 
 ……しかし、ここからどう脱出すればよいのか。
 考えていると、マッド・テイラーの携帯端末が鳴った。――エドからのようだ。ジョルジュの手を強引に引き外し、電話に出る。
「総司令官、一旦事務所に戻ってきたんですけど、あのオバサンが司令官を呼びに来てますよ。時間を過ぎたのに、来る気はあるのか、って言ってますけど……。
 すいませんけど、ちょっとこっちも大変なんです。何とかしてください」
 その声の後ろで、「誰がオバサンなのよ!軍の教育はどうなってるの!?」というキャサリン女史の甲高い声が聞こえた。
「……そういや、議会に顔を出す約束だったな。大変なところ悪いが、エド、ちょっと迎えに来てくれ。――こっちも大変な事になってる」
「だ、大丈夫ですか!?」
「あぁ。爆弾は無事処理した。……ただ、動けない」


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