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オリジナル小説のダストボックス

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 ――ボサボサ頭とアザだらけの顔で、臨時議会が開催されている会議室に入ると、
「遅れて来るとはけしからん!」
と椅子から立ち上がって指を差しながらヤジを飛ばしていた議員も、言葉を詰まらせた。
 
 「時間が守れなかった事はお詫びします。爆弾をひとつ、処理してきましたので」
 マッド・テイラーの発言に、早速キャサリン女史が食い付いた。
「軍部で極秘に作ってた爆弾を、公にならないように処理してきた、というワケですか」
 ……ミカエル・アイヒベルガーの言う事を鵜呑みにしている様子だ。――いや、ディケイルの考えがもし当たっているのなら、これも計画のうちか。
「冗談よしてください。あの金髪の詐欺師の言う事と、命懸けでガニメデ・コロニーを守ろうとしている我々と、どちらを信用するんですか?」
「その、命懸けというのが信用ならないと言っているのです。あなたがたは、少なくとも不注意で、200名以上もの犠牲者を出した。それなのに、何の責任も取っていない。これが誠意ある対応ですか?」
「誠意誠意とおっしゃいますが、我々のメンバーの中にも、爆破事件の犠牲者は数多く出てるんです。――そう言うあなたは、市民のために何をしたというのだ!?」
 ……ここのところの展開で、マッド・テイラーはすっかり頭に血が昇っていたと見える。すぐにキャサリン女史に食ってかかった。
「私は、事故の直後に現場に行き、両親とはぐれて迷子になっていた子供を救出しました。あなたは、テレビニュースも見ていないのですか?」
「あぁ、見たさ。――そして、その子供を近くに居た救助隊員に預けて、どこかに行ってしまったそうだな。貴重な人員である救助隊員の手を煩わせて、自分だけ英雄気取りか?聞いて呆れる。その子供を家まで送り届けるなり、避難所まで連れて行くなり、もっと責任ある行動は取れなかったのか?あんたは!」
「あ、あんたとは……!!ここは神聖な議会の場ですよ?もっと礼節をわきまえた議論はできないものですか!?」
 
 ――勝手にヒートアップしているマッド・テイラーとキャサリン女史の間に、防衛大臣を務めるルドルフが割って入った。
「まぁまぁ、ふたりとも落ち着いて。今はそんな事で言い争いをしている場合ではないでしょう?」
 しかし、キャサリン女史はルドルフの顔をキッと睨んだ。
「そもそも、防衛大臣たるあなたがしっかしていないから、こんな事になったんです。その点は、反省しておられるのですか?」
 ルドルフは薄い頭を撫でながら、渋い顔で引き下がった。
「ギルバート法務大臣、ルドルフ防衛大臣の言う通りだ。落ち着いて話し合いをしなければ、まとまるものもまとまらないだろう。――一度、全員席に着いたらどうかね?」
 アームストロング代表が声を上げて、不満顔をしながらも、ようやくキャサリン女史は自分の席に腰を落ち着けた。
 マッド・テイラーとソウも、円状に並んだテーブルの中央に置かれた椅子に案内された。――まるで、被告人席だ。
 
 「――まずは、先刻の、ミカエル・アイヒベルガー、アース・コーポレーション最高経営責任者の発言の真偽を、マッド・テイラー軍総司令官に問いたい」
 アームストロングがマッド・テイラーに発言を促した。マッド・テイラーはそれに応え、立ち上がった。
「それは、我々の方がお伺いしたいくらいです。ミカエル・アイヒベルガーは、『ガニメデ政府』に、テロリストの身柄引き渡しを要求していたと言っていました。少なくとも、我々はそんな情報を聞いた事もありません。どうなのでしょうか?」
「それには、私が答えよう。――国家代表として返答するが、私は、そのような要求を、一度も受けた事が無い」
「それもそのはずですわ。監視カメラ類を取り外したと同時に、軍が地球との通信を全てシャットアウトしてしまったのですから」
 キャサリン女史が口を挟む。
「ならば、ミカエル・アイヒベルガーの言っていた事は、嘘だという事になる。『地球から再三受け渡しの要求を出した』というのは、物理的に不可能ではないですか」
「軍だけは通信を使えるようになっていて、要求を受けてはいたが、それを隠していた、という考えも、成り立つのではありませんか?」
「何を根拠に、そんな事をおっしゃるのか!?先程からのあなたの発言は、『真偽を問う』というよりも、軍を何としても悪者に仕立て上げたい、そんな意思が見て取れるが、いかがか?」
「まぁ……!暴言も程々にしていただきたいわ」
 キャサリン女史は憤慨した様子を見せた。
「なら、軍の通信記録を、全て公開すれば、その証拠になるのではありません?それすらしないで、私を悪者呼ばわりとは、聞いて呆れます!」
 すると、キャサリン女史に調子を合わせたように、「そうだそうだ!」という野次があちこちから飛んだ。会議室が一斉に騒がしくなる。――市民を煽っているだけではなく、議会の内部にまで反軍部勢力の輪を広げていたようだ。
 
 その野次を制するように、議長が槌を打った。
「静粛に!」
「――テイラー総司令官、その通信記録は、我々に公開できますかな?」
 アームストロングがマッド・テイラーに尋ねるが、
「……通信記録というモノ自体が、存在しません。何せ、仮の施設でして……」
と、マッド・テイラーは頭を掻くしか無かった。その返答に、さらなる野次が飛ぶ。
「そんな無責任な管理体制でいるから、今回のような事件が起きたのです。
 そもそも、難民の受け入れをもっと厳重にしていれば、その『ハイドロ・テラー』とかいうテロリストが国内に入る事も、水際で阻止できたのではありませんか?
 そして、監視カメラを取り外さず、しっかりチェックしていたなら、あのような惨事も防げたはずです。
 そのへんの責任は、どうお考えですか!?」
 キャサリン女史は、『責任』という言葉を天下の宝刀か何かだと思っているらしい。勝ち誇ったようにマッド・テイラーを見つめ、指を突き出した。
 別の議員も、立ち上がって声を上げた。
「たとえ、ミカエル・アイヒベルガーの話の内容に誤りがあるとしても、軍の怠慢のせいで、市民200名以上が犠牲になった事は事実だ。この責任は、どう取るつもりか?」
「それに、『ハイドロ・テラー』を差し出さなければ、宇宙艦隊が攻撃してくるというではないか!軍がかくまっているのだろう?さっさと差し出すべきだ。これ以上、無責任に市民を犠牲にする気なのか!?」
「いや、あんな声明を発表してるんだ。そのテロリストだけを差し出したところで、地球は納得してくれないだろう。軍がきちんと責任を取って、地球に頭を下げないと、収まらないだろうな」
「どうしてくれる?ガニメデの明日はあなたたち軍の姿勢にかかってるんだ!誠意と責任ある態度を見せてもらおうじゃないか!」
 
 ――次々と「無責任な」発言が飛ぶ中、マッド・テイラーは黙って目を閉じていた。その横で聞いていて、ソウはウンザリしてきた。
 こんな無意味な話をしている暇があったら、もっと他にやる事があるだろ?こんな無駄な時間を費やすくらいなら、対宇宙艦隊戦の対策を練るべきだ。
 そもそも、地球は、ガニメデを攻撃する口実を作るために、テロリストを送り込んだのだから。それにどう「誠意ある」対応をしたところで、無視されるだけだと分からないのか?
 まだ、野次だか自己陶酔だか分からないような「責任、責任」という言葉が飛び交っていた。ソウはこの場に居るのが馬鹿らしくなってきた。俺もテイラー総司令官も、こんな茶番に付き合っている暇は無いんだ。さっさと終わらせよう。
 
 唐突に、ソウは目の前の机をドンと叩き、立ち上がった。
 今まで、置物のように無言で座っていた人物が急に動いたので、一同は声を止めた。マッド・テイラーも、横で丸い目をしてソウを見上げた。
「――責任、責任と、バカのひとつ覚えみたいにピーチクパーチクさえずりやがって、あんたら、それでも市民を守るべき立場の人間か?」
 
 ソウは、総務大臣をしていた当時も、こんな暴言を吐いた事など無い。生真面目で落ち着いて話をする人物だという認識で見られていた――と思う。
 鉱山で働いていた当時から、いや、地球に居た頃から、ずっとそういうキャラで通してきた。可も無く不可も無く、とりあえず面倒事はあいつに押し付けておけば、文句も言わずに片付けてくれる、……そんなイメージがあったからこそ、今の立場もあるのだろうが。
 それが、どこの三流ヤクザ映画かと思われるようなセリフを喚き立てだしたものだから、一同は唖然として静まり返った。
 
 「責任責任と言うが、じゃあ、軍の誰かが責任を取って辞めたところで、何が変わる?それは良かったですねと、地球が鉾を収めてくれるとでも思ってんの?
 確かに、軍にも落ち度はあった事は認める。それに対しての『誠意ある責任』を、と言うのであれば、ガニメデの盾となり、地球側の理不尽な暴力から市民を守る事、そうじゃないのか?」
 先程まで野次を飛ばす算段をしていたような議員たちも、ソウの勢いに呑まれたのか、口をポカンと開けてソウを眺めている。
「しかし、こんな正論を語ったところで、20万人の市民までをも納得させる事はできないのは分かってる。『責任』という形式も必要だろう。
 
 ――なら、俺が辞める」
 
 ……今度は、マッド・テイラーが目を見開いた。
「お、おい、いきなり何を言い出す……!?」
と、口をパクパクさせた。が、ソウはそれを無視して続けた。
「俺は総務大臣当時、難民の受け入れに立ち合い、最も責任のある立場だった。難民を上陸させる許可を出したのは俺だ。その俺が、テロリストを不用意に国内に入れてしまった責任を取って、辞職する。俺ほど、責任を取るのに相応しい人物は居ないだろう?」
 
 ――すると、明らかに、キャサリン女史が慌てた様子を見せた。
「あ、あなたは、一度、総務大臣を辞職なさっていますよね。それはどういう意味で?」
「あれは、議会を無断で欠席した責任を取ったまでです。今回の件とは無関係ですので。今回は、軍の一員としての責任です。
 ――もし、これでも納得いかないと言われるのであれば、誰がどうすれば納得できるのか、具体的に教えてもらいたい」
 ……だが、キャサリンは渋々といった表情で口を閉ざした。
 
 分かっている。『敵』の目的は、ディケイル・ウェイニーを軍から追放する事。もしくは、それに反発した軍が暴走する事。
 ――しかし、ソウがもっともらしい理由を付けて、『責任』という区切りを付けてしまえば、それ以上の追及ができなくなる。
 だが、具体的にその「目的」を言ってしまえば、あまりに不自然で、自分が地球の『スパイ』だというのがバレてしまう。
 市民に対しての言い訳にはならないかもしれないが、議会を押さえ込む手段としては、効果はあったようだ。
 
 しばらくして、アームストロング代表が言った。
「ギルバート法務大臣、ナカムラ参謀本部長が軍を辞職なさるという事で、納得されましたかな?――他の皆さまも、ご意見はおありかな?」
 だが、誰も言葉を口に出す者は居なかった。
「……では、我々は市民を落ち着かせ、できる限り地球と和議を結べるよう努力する。軍には、万一の場合に備えて、市民を守れるように対策を立ててもらう。――異議が無ければ、これにて臨時議会を解散する」
 
 
 
 そそくさと会議室を出て、ソウは早足にコロニー管理局ビルを出た。途中、マッド・テイラーが慌てた様子で
「おい!おまえ、何を考えてる!?」
と追い掛けてきたが、後で事務所に説明に行くとだけ伝え、先を急いだ。
 
 ――臨時議会という名の時間の無駄遣いの最中にも、気になって仕方が無かったのだ。
 それは、マーガレットの行方。
 ラボの爆破計画は阻止され、この先、どうする気だろうか?失敗はしたものの、やることだけはやったと満足して、地球にでも帰ってくれれば、それに越した事は無いが。
 ――そうはならない気がする。
 
 軍は辞めてしまったが、個人的に事件の捜査をしても、問題は無いだろう。
 しかし、とりあえず、あいつにだけは報告しておかなければならない。
 ――それに、マックに付き添いを頼んだはいいが、また、「注射はイヤだ」とか言って暴れてはいないだろうか?さすがに、ケガ人相手に無茶な事をするとは思えないが。……それに、当の本人もケガ人なのだ。キックを繰り出す足すら無い。
 
 ソウは、病院へ向かった。
 
 ディケイルの病室のドアを開け、中に1歩踏み入れ、――固まった。
 
 マックが、ベッドの脇の椅子に包帯でぐるぐると縛り付けられている。
 その奥の、正面の壁際に、ディケイルがうずくまっていた。その傍に、金属製のアタッシュケースのようなもの。
 そして、部屋の中央に、見慣れない男。何かを手に持って、こちらを見ている。
 ――いや、正確には、出入り口近くに立っている、レイの手元に目を向けている。
 
 ………その白すぎる手には、ハンドガンが握られていた。


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