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オリジナル小説のダストボックス

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 「――はぁ?何寝ぼけたコト言ってるの?」
 ハイドロ・テラーは両手を広げて呆れた様子を示したが、だが、動揺を隠す事は出来なかった。
「あんたが俺を殺しに来る事くらい、予測してなかったとでも思うか?」
「…………」
「ミカエル・アイヒベルガーの声明を見て、必ずあんたは、形振り構わずに俺を殺しに来る、と思った。だから、標的を病院から遠ざけるために、軍本部へ行ったんだ。――そしたら、ソウ、あんたが余計な事を言うから、病院に戻らされる事になった。仕方ないから、チャンとエドに、病院から全員避難させるように伝えておいた。今頃、俺たち5人以外、この病院はもぬけのカラだぜ?
 ――いや、完全武装のチャンの部下たちが、廊下からあんたをライフルで狙ってるかもな」
 ……言われて初めて、ソウは出入り口の引き戸が、微妙に開いている事に気付いた。――よく見ると、その僅かな隙間から、いくつもの銃口が覗いている。
「この部屋の様子は、マックの足のギブスの間に押し込んでおいた、エドの携帯端末から外に中継されてる。あんたが不審な動きをすれば、レイよりも早く、チャンが動くだろうな」
 それから、ディケイルは細い目をこちらに向けた。――ハイドロ・テラーを牽制する言葉とは裏腹に、壁にぐったりともたれ掛かり、手で身体を支えている。
「予定外だったのは、レイとソウだぜ。……レイ、おまえ学校があったろ?なんで今、こんなところに居るんだ?」
「…………」
「それに、ソウ。――あんた、病院に来た時、何か違和感は感じなかったのか?あんたが来た頃には、もう避難誘導が始まってたハズだぜ?」
「………あ、いや………」
 自分の事ばかり考えていて、周囲の状況になど、全く注意していなかった。
「――だが、正直なところ、レイがハイドロ・テラーの足止めをしてくれたおかげで、避難の時間が十分に取れた。……それと、あんたがベラベラおしゃべりしてくれたおかげだな。
 ――とにかく、どちらの立場が有利なのか。もう一度、ゆっくり考えるんだな」
 
 だが、ハイドロ・テラーは不敵な笑いを見せた。
「そんなの、人質の数が減っただけじゃない。それがどうかしたの?」
 ――確かにそうだ。銃の焦点を合わせてトリガーを引くか、リモコンのボタンを押すか、どちらの行為の方が早く行えるかと考えれば、圧倒的に後者の方が有利だ。
 
 「――僕が、本当に撃たないとでも思ってる?」
 急にレイに話し掛けられ、ハイドロ・テラーは後ろを振り向いた。
「あんたみたいな子供に、銃が使えるワケないじゃない」
「僕を、ブライアンと一緒にしないでほしいな」
 レイは、ハイドロ・テラーを真正面から見据えていた。前に向けられた銃口は微動だにしない。
「僕が本気かどうか、あなたくらい修羅場を積んできてる人なら、目を見れば分かるでしょ?」
 ハイドロ・テラーがギョッとした目をレイに向けた。――レイも、その目を見つめ返す。
「――やめろ、レイ!」
 なぜだか、ディケイルが鋭い声を飛ばした。だが、レイはそれを無視して、言った。
「……どう?僕の本気が分かった?
 僕は、あなたみたいな、人の命を弄んで何とも思わない人を許せない。
 隙があったら撃つから、覚悟しておいたほうがいいよ」
「レイ!黙れ!」
 ディケイルは低いが威圧的な声でレイを制した。
「おまえに、人を裁く権利など無い。権利には、必ず『責任』が伴う。前から言っていたはずだ。――自分で責任を負えるようになってから、そういう事は言うんだ」
「分かってますよ。――何も、心臓を狙うとは言ってません。その、リモコンを持ってる手を狙えばいいでしょ?」
 レイが、わずかに銃口を動かした。
「―――笑わせるんじゃないわよ。アンタに、そんな離れワザできる?
 言っとくけど、このリモコンが壊れても、爆弾は起動するから。それは承知しておいてね」
 そう言いながらも、ハイドロ・テラーはリモコンを握った手を背後に隠した。リモコンが自分の生命線である事は、十分に理解しているのだろう。
「――偉そうな事は言ってるけど、死ぬのは怖いんだ。あんなにたくさんの人を、それも一番残酷な方法で殺しておきながら」
「…………」
 ハイドロ・テラーは、レイを見たまま、1歩下がった。
 
 その時、ディケイルが動いた。
 レイから遠ざかるという事は、ディケイルに近付く、という意味でもあったのだ。ディケイルのぐったりした様子に、すっかり油断していたのだろう。
 ディケイルは、ハイドロ・テラーに気付かれないよう、手の甲に鎖を巻いていた。それをナックル代わりに、背中に回していたハイドロ・テラーの手を思い切り殴り付けた。
「―――!!」
 ハイドロ・テラーは慌てて振り向くが、叩き落とされたリモコンを拾い上げる事はできなかった。
「元帥!」
 ディケイルがリモコンを確保するのとほぼ同時に、レイがハンドガンを床に落とし、それを前方に蹴った。ハンドガンは、くるくると回転しながら真っ直ぐに床を滑り、ハイドロ・テラーの足の間を抜けて、ディケイルのもう一方の手の中に収まった。
 その銃口をハイドロ・テラーの顔へ向けて、ディケイルは言った。
「勝負あったな」
 
 廊下に待機していた、チャンとその部下たちも、病室になだれ込んで来た。計7つの銃口が、一斉にハイドロ・テラーに向けられた。
 しかし、ハイドロ・テラーは怯んでいなかった。
「……それはどうかしら?」
 そう言って、挑発的な笑みを見せる。
 
 「………仕方無いわ。さっきは言わなかったけど、じゃあ、この爆弾が起爆する、もうひとつのフラグを教えてあげる」
 ハイドロ・テラーはそう言って、いきなり服を脱ぎ出した。――何をする気か!?ソウの周囲で銃が擦れ合う音がしたが、
「今は撃たない方が利口よ?」
と念を押され、動きが止まった。
 ……だが、ハイドロ・テラーは上着を脱いで、筋肉質な上半身を露わにしただけで、上着を手にしたまま両手を上に挙げた。――その心臓に当たる部分に、心電図に使うような端子が貼られ、そこから伸びたコードが、ズボンの腰の部分に差し込まれた四角い箱に繋がっていた。――その箱の上部で、緑色の小さなランプが規則的に点滅している。
「――分かる?もうひとつの爆発フラグ。……それは、ワタシの心臓が止まる事。
 この装置は、ご覧の通り、小型の心電図の記録装置よ。もし、この装置が心臓の鼓動を感知しなくなったら、その途端に爆弾に信号が送られて、ドカンよ。
 ……つまり、私を撃てば、爆弾は破裂する。――この白衣を拝借したヒトが持ってて、冗談半分に作っただけなのに、意外と役に立ちそうね」
 
 ――再び、事態は膠着するかに見えた。だが、速攻で流れを変えたのはハイドロ・テラーだった。
 チャンと部下たちが一瞬怯んだ隙に、手に持った白衣を彼らめがけて投げ付けた。白衣は空中で広がり、視界を遮る。
 その隙に、ハイドロ・テラーはディケイルの脚を蹴飛ばした。上を見上げる姿勢だったディケイルは、虚を突かれた事になり、脚――傷がある側を押さえ、呻き声を上げて床に倒れざるを得なかった。
 そのディケイルの手からハンドガンを奪い取り、同時にディケイルの身体を抱え上げると、そのこめかみに銃口を押し当てた。
「――形勢逆転ね。こいつの頭に穴を開けたくなかったら、道を開けなさい」
 
 ……情けないが、ソウは全く動く事ができなかった。身を低くして、戦闘態勢だけは整えているが、それと動けるかどうかは別問題だった。
 軍の制服を着ているだけで、有事には全く役に立たない。――情けなくなってくる。
 
 大柄なハイドロ・テラーに首に腕を回して持ち上げられ、強引に立たされているディケイルは、半ば首を締め上げられている状態だ。そのディケイルに、ハイドロ・テラーは命じた。
「爆弾を拾いなさい!」
 苦しそうな顔でハイドロ・テラーを睨みながら、ディケイルはアタッシュケースに手を伸ばした。――が、手が届かない。
「早くしなさいよ!」
 仕方なく、手錠で繋がれた鎖を引っ張り上げて、ようやくアタッシュケースを拾い上げる。――リモコンは床に転がったままだが、この事態では、既に不要の産物だった。
 だが、やられたままになっているディケイルでは無い。アタッシュケースを手にした瞬間、それを思い切りハイドロ・テラーめがけて振り回した。したたかに横っ腹を殴られ、ハイドロ・テラーはよろめいた。その隙に、ディケイルは腕から抜け出す。
 
 ――が、抵抗もそこまでだった。
 自力で歩ける状態では無い。ハイドロ・テラーの太い腕から逃れたはいいが、そのまま床に倒れただけで、ディケイルは動けなくなった。
 ハイドロ・テラーは怒りを込めた目でディケイルを見下ろし、銃口を突き付けた。
「本っ当、意味の無い事をするのが好きね!そんなに死にたいの!?」
 
 しかし、その緊迫した空気を、レイの声が破った。
「……遅くなってすいません。爆弾の解除ができました」
 
 ――違う意味で、部屋の空気が凍り付いた。
「………な、何言ってるの?意味分からないわ」
「言葉通りだよ」
 ディケイルは、かすれた声でそう言った。そして、混乱した目をレイに向けたまま硬直しているハイドロ・テラーの、腹に下がった心電図のコードに手を伸ばした。そして、勢いよく引っ張り、胸の端子を引き剥がす。
 
 ――な、何してるんだ!!
 ソウは心臓が止まるかと思った。反射的に目を閉じる。……だが、しばらくしてもソウの心臓は動いていた。――恐怖と緊張で脈が上がってはいるが。そして、爆発も起きていない。
 
 「―――ど、どういうこと……!?」
 ハイドロ・テラーの表情は、混乱から驚愕へと変わった。
「だから、言葉通りだと言ってるだろ?」
「そ、そんな……。――不可能だわ!嘘よ!何かの間違いよ!!」
 ハイドロ・テラーは、ディケイルに銃口を向けたまま、手を伸ばして床のリモコンを取り上げた。そして、震える指でボタンを押す。
 
 だがやはり、アタッシュケースはピクリともせず、放り投げられた状態のまま、床に鎮座していた。――それを見詰めるハイドロ・テラーの表情が、恐怖へと移行した。
 
 「――もういい加減、諦めろよ」
 床の上からディケイルに言われるが、逆上したように喚く。
「ま、まだよ!アナタっていう人質が居るわ!……さぁ立つのよ!一緒に空港まで行きましょ!!」
「――あ、それと」
 またレイの声だ。
 
 「その銃の中に入ってるの、弾じゃなくて『ピーナッツ』ですから」
 
 ハイドロ・テラーの口が「まさか」という形に動いたが、声にはならなかった。信じられない顔で、ゆっくりと引き金を引いた。――だが、何かが潰れる軽い音と、ピーナッツの香ばしい香りが漂っただけだった。
 ハイドロ・テラーの身体から、ガクリと力が抜けた。そのまま床に崩れ落ち、呆然とハンドガンを見つめる。
「―――終わったな」
 ディケイルが床の上に身体を起こした。
「……えぇ、終わったわ」
 ハイドロ・テラーはそう答え、ズボンのポケットに手を入れた。
 
 ――そして、手を出すと、そこには化粧品の瓶が握られていた。カミラが持っていたものと同じヤツだ。
「―――まさか、自分でコレを使うハメになるとはね」
 ソウは、カミラの最期を思い出した。そのトラウマが何とかソウの身体を動かし、ディケイルの身体を引きずるようにしてハイドロ・テラーから離した。
「ちなみに、さっきは言わなかったけど、コレを爆発させるフラグ、実は3つあるの。さっき言った、『フタを開ける』と、『伏せろ』っていう声と、――あとは、『銃声』よ。
 狙撃で自殺を阻止されちゃうコトだってあるじゃない?だから」
 
 ハイドロ・テラーは瓶を顔の高さに持ち上げ、それをじっくりと眺めた。
「――ひとつだけ、聞いていい?」
「……何だ?」
「あの子、何者なの?」
 そう言って、力を失った目をレイに向けた。
「――俺の息子だ」
 ディケイルが答えた。それを聞いて、ハイドロ・テラーは笑った。
「あの子、ワタシ以上の『悪魔』になれる素質を持ってるわよ。
 ――ピーナッツでワタシを騙すなんて、しかも、あんなに平然とした顔をして……。
 負けたわ」
 
 それから、ハイドロ・テラーはディケイルに顔を向けた。
「全部真実は話して無いけど、アナタへの気持ちだけは嘘じゃないから。……地獄で待ってるわ。
 ―――伏せろ!!」
 
 最後は男の声だった。
 病室が閃光に包まれ、爆風が室内のあらゆるものを吹き飛ばした。
 
 ――床に伏せた頭上を爆煙が行き過ぎるを待ち、ソウが顔を上げると、頭を失った屈強な男の肉体が床に転がっていた。


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