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 ハイドロ・テラーが自爆した後、チャンが気を利かせて、レイに「それ」を見せないように、部屋から連れ出した。
 相変わらずソウは、血の気を失って、しばらく動けなくなってしまった。……もう、この体質を何とかしたい!
 
 その後、ソウはディケイルに、軍を離れる事を告げた。
「―――火星にホテルを用意しておく。宅配ピザでもてなしてくれるだろう」
 ……要するに、フォンシェ・アレハンドロの彼女の、あの人のマンションにしばらく滞在しろ、という意味だろう。――しかし!
「待て。俺はガニメデを離れるつもりは無い。――これから、地球の艦隊が攻めて来るというのに、俺だけ逃げ出すような真似は……」
「――『参謀長』でも無いあんたに何ができる?」
「…………」
「それに、他に頼みたい事もある」
 だが、その用件は言わずに、ディケイルは目を伏せた。
「――必ず、迎えに行く」
 
 3月24日。
 昼下がりのガニメデ宇宙空港の出発ロビーには、授業を終えたマタルとレイ、マック一家、――それに、ニーナが、「休憩時間中だから」と、見送りに来てくれた。――さすがに軍の他の人たちは、宇宙艦隊迎撃の準備で、とてもじゃないがそんな暇は無さそうだった。
「――はい、これ。船の中で食べて。……マタルとレイと、レイチェルも一緒に作ったのよ」
 マックの奥さんのマリーに渡されたのは、いかにも手作りという感じの、いびつな形のクッキーだった。マリーの背中に隠れるようにして、レイチェルもこちらを見ている。
 正直、手作りのお菓子なんてモノをもらう機会は、これまでの人生に無かった。――妙に照れ臭い。
「マタルたちの事は任せろ。――つか、アニキたち、子供をほったらかしにし過ぎだぜ?そのうちグレても知らねぇからな」
 一応、これまで通りレイとマタルで、ディケイルの家に一緒に住むようになっている。だが、いくらしっかりしているとはいえ、子供たちだけ置いて行くのは、保護者としてどうかと思ったので、同じ棟に住むマック夫妻に、面倒を見てくれるよう頼んでおいたのだ。ニーナも気を掛けてくれているようだし、大丈夫だろう。
「お土産よろしく!……あ、でも、ロゴ入りTシャツじゃないモノがいいな」
 ――前に買って帰った、『Mars Development』のスタッフTシャツは、子供たちには不評だったようだ。……ネタ的にアリかと思ったのだが、逆に子供たちからセンスを疑われる結果になってしまった。
 レイは黙ってソウを見ていた。――何となく、4日前の、ハイドロ・テラーの最期の時を思い出した。
 
 ……一体、レイはどうやってあの爆弾が失敗作だと気付いたのだろうか?――それとも、本当に『解除』したのか?
 だが、それが追及される事は無かった。ディケイルが、あの時の件に関して、それ以上捜査する事を止めてしまったからだ。
 ――その後、マーガレットの部屋から、口紅ケース型の金属水素のカプセルや、マスカラに見立てたドライバーなどが入った化粧ポーチが見付かった。他にも、ファンデーションのチューブに入った通電性接着剤、――それらに混じって、ごく普通のアイシャドウなど。
 ……筋違いだとは分かっているが、何となく、女性の存在を空恐ろしく感じてしまった。
 
 これにより、マーガレットこと「ハイドロ・テラー」とカミラが、『第2コロニー爆破事件』の犯人だという事で、一応は片は付いた。
 結局、ディケイルの最終的な推理である、『キャサリン・ギルバート黒幕説』を証明する物は、何ひとつとして出て来なかった。――それは、これから徐々に詰めていくことになるだろう。
「火星で、キャサリン・ギルバートの、得られる限りの情報を探って来てくれ」
 後から、ディケイルはメモでソウにそう伝えた。不特定多数が出入りする病院、しかも、あんな騒ぎがあった後だ。盗聴器などを警戒したのだろう。
 
 ――これからが、本当の始まりかもしれない。何となく、ソウはそんな気がした。
 
 「これ、良かったら持ってってください。宇宙船の中って、ヒマ過ぎません?私も何回か旅行してるから、何となく分かるんです」
 そう言って、ニーナがソウに小さなケースを渡してきた。――中を見てみると、映画のタイトルが印刷されたメモリーカードが、いくつか入っていた。
「趣味が合うかは分かりませんけど。――あ、ちなみに、貸すだけですから、こちらに戻ってきたら、ちゃんと返してくださいね」
 ニーナがそう言ってソウに笑顔を向けた。……何だろう、マリーのクッキー以上に照れる。
 それを見ながら、マックが何やらニヤニヤしている。
「……な、何だよ、マック?」
「いいや。――ちゃんと返してやりなよ」
「分かってるってば!」
 
 その後、やはりニヤニヤしているマタルの、
「風邪引かないように、気を付けてくださいね!ちゃんと、歯を磨くんですよ!」
という、まるでこっちが子供であるかのような言葉に見送られ、ソウは火星行きの旅客船に乗り込んだ。
 
 この先、一体どうなるのだろう?
 果てしなく続く白い大地を見下ろしながら、ソウは思った。
 ……だが、あまり先の未来の事なんて、俺のような凡人には分からない。
 ただ、『帰る場所』があり続ける事を、祈るしか無い。
 
 
 
 レイの姿が屋上から消えた後も、ブライアンは、レイから受け取ったハンドガンを両手に載せたまま、呆然とその場に立ちすくんでいた。
 ――一体、なぜ、レイは僕に、こんなモノを渡してきたんだ?
 それは自分の『罪』を象徴するものであるかのように、ブライアンの手にズシリと重く冷えた感触を与えていた。
 
 ………つまり、僕に「死を選べ」と言っているのだろう。
 
 ブライアンは、ゆっくりと右手に持った。――ディケイルに教えられた通り、安全装置を外す。
 そして、頭の高さに持ち上げ、銃口をこめかみに当てた。
 ――あとは、この引き金を引けば、僕の命は終わる。
 ブライアンは目を閉じた。
 
 ………頭の中で、これまで経験した様々な出来事が、映画のダイジェストか何かのように駆け巡った。
 「自分が一番」で居られた、最も幸せだった頃。――その当時は、何も分かってなかった。自分が「幸せ」であると考えた事も無かった。
 父さんの死。全てを失った、寒くて苦しい日々。
 マーガレットの不細工な顔。――ブライアンに何か言っているが、ぐわんぐわんと頭の中に響いているだけで、言葉の意味が分からない。……全部嘘だった。それは、マックとかいう黒人の大男から聞いた。
 僕をバカにしたヤツら。――ディケイル・ウェイニー。……結局、彼らの評価が一番正しかったのだと、今さらながらに思う。
 そして、レイ・マグアドル。
 ……同じ人間のはずなのに、絶対に勝てない気がするのは、なぜだろう?――でも、いつか、必ずあいつの上に立ってやりたい。
 
 ――いつか?……生まれ変わったら?………そんな当てにならないモノを信じるのか?
 ………もういいや、どうでもいい。
 死ねば、僕の存在をこの世から消せば、それでいいんだ。
 
 ―――だが、引き金を引く指に、力が入らない。
 何とか指を握り込もうと、必死で手に力を入れるのだが、ブルブルと手が震えるだけで、指にその力が伝わらない。
 なぜだ?
 
 ――その時、理解した。
 
 ………『死』の恐怖。
 
 死ぬって、こんなに怖い事なんだ。
 ――今まで、他人のやった事を自分のものにしてまで、「人を殺す」事に憧れていた自分は、何だったんだろう?
 自分を殺しもできないクセに、目に入る人全員が、死ねばいいと思っていた。
 ……僕は、こんな矛盾を抱えていたんだ……。
 
 死にたい。でも、死への扉の、とんでもない深さの段差を越えられない。
 ――こんな臆病者を受け入れてくれるほど、『死』というのは、甘くないのかもしれない。
 
 じゃあ、どうする?
 ……『生きる』のか?
 
 ブライアンの脳裏を、クラスメイトたちの顔がよぎった。
 ――事件前は、ブライアンの事を見下し、冷たい目で見てたヤツらも、釈放されてから初めて登校した今日は、何も言わなかった。
 ………まるで、ブライアンの存在がそこに無いかのように、ブライアンの前を通り過ぎて行った。
 『軽蔑』、『恐怖』、『嫌悪』――。いろいろな感情を投げつけられる事を想定していた。いや、半ばそれを求めて学校に来ていた。その、悪意の感情こそが、今のブライアンの「存在意義」そのもの、そんな気がしたからだ。……しかし、彼らがブライアンに向けて来たのは、『無関心』だった。
 ……要するに、嘘までついて悪人になりたかったヤツなんて、彼らの理解を超える。――理解不能な存在。つまり、どうでもいい。
 
 分かった。
 ――結局、生きてても死んでも、同じ事なんだ。
 
 ブライアンは銃を下ろした。
 
 そして、思った。
 ―――レイのヤツ、僕が『死ねない』事まで、見抜いていたのか?
 ……ヤツも、僕の事を「どうでもいい」と思っているから、そんな予想ができたのだろう。
 いや、違う。もしそうならば、ハンドガンを返すなんて行動を取るハズが無い。では、なぜ?
 
 ブライアンはハッとした。
 
 ――『生きる』という選択肢を、僕に気付かせるため。
 
 ブライアンは、ハンドガンを取り落とし、床に座り込んだ。
 ……僕は、あいつには、絶対に勝てない。
 
 ブライアンは、そのまま、床に転がった。――コンクリートのザラザラした感触が、なぜだか、とても心地良い。
 そのまま、仰向けに大の字になり、空を見上げた。
 コロニーの屋根の内部に、人工的に青空が投影されているだけなのだが、こんなにも心を落ち着けるものだったなんて、初めて知った。
 
 なぜ、人は空を見上げるのか?
 それは、自分の手が届かないものの存在を認識させられるからだろう。
 それともうひとつ。――下を見ないで済むから。
 
 ――下から見上げるって、居心地の良いものなんだな。
 今まで、人の上に立とうとして、人を踏み台に上に上がろうとばかり考え、下ばかり見て来た。……ブライアンは、初めて自分の居場所を見付けた気がした。
 
 ブライアンの手に何かが触れた。――さっき落としたハンドガンだ。
 それを構えて、銃口を空に向けた。そして、今度は躊躇無く、引き金を引く。
 
 誰も居ない屋上に、乾いた銃声が響いた。
 ――僕の居場所を見付けた記念の、祝砲だ。
 
 その音を聞き付け、誰かが屋上に駆け上がって来たのが分かった。だが、ブライアンが居るのを見ると、回れ右をして降りて行ってしまった。
 ――そのうち、先生の誰かが来て、ハンドガンを取り上げるだろう。先生なら、適切に処理してくれるはずだ。
……もう、僕には、こんなモノは必要無い。
 
 誰とも比べない、「ひとり」って、こんなに良いものなんだ。
 今度からは、他と比べての「一番」では無く、自分の目標を立てていこう。
 
 ――とりあえずは、自分の居場所を、もっと確かなものにしよう、かな。


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