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34.  やっつけ仕事
 
 
 マッド・テイラーは、自分がいかに不条理な仕事を押し付けられたか、つくづくと思い知らされていた。
 
 この仕事を命じた本人は、病室に籠って、チャンやエドに指示を出しているだけだし、その仲介役とも言えた参謀長は、このピンチを前に、辞職してさっさと火星へと旅立ってしまった。
 チャンやエドは、ディケイルの指示で何やら動き回っているし、マックは未だに通常出勤できる状態では無い。
 
 ――事務所にひとり取り残され、ひたすら電話対応をする日々。
 一体、この作業に何の意味があるのか?それすらも疑問に感じて来る。
 
 頭では分かっている。
 「市民」と対立する事が、最も忌避されなければならない事態である事は。
 ――しかし、理不尽な罵声を浴びせられ続ける事に、マッド・テイラーは限界を感じ始めた。そもそも、こういう仕事に向いていないから、アース・コーポレーションに居た当時も、警備部に志願したのだ。それなのに……。
 
 再び電話が鳴った。
「――はい、ガニメデ独立支援軍本部……」
「早く地球に降参しろ!俺たちを殺す気か!」
「現在、総力を挙げて対策に努めている。一般市民に被害が及ぶような状況には……」
「そんな言葉が信じられるか!さっさと死ね!!」
 ――電話は切れた。
 ………ここのところ、ずっとこんなんばっかりだ。
 マッド・テイラーは頭を抱えて机に突っ伏した。こっちが鬱病になって死にそうだ!
 
 昨日、「作戦本部」という名の病室へ行き、ディケイルに、
「とにかく、今回の作戦の内容を教えてくれ。それを市民に説明すれば、市民のパニックを抑えられるかもしれない」
と訴えたのだが、
「国内にスパイが居る可能性がある。地球側に情報が渡る恐れがある以上、言えない」
と、突っぱねられた。――全く、どちらが上司なのだ?
 
 ――また電話の呼び出し音だ。
「もしもし!」
 今度はそう言っただけで、電話が切れた。……無言電話。苦情の電話よりもなお、意味が分からない。
 ――隣に建設中の『ガニメデ要塞』が完成し、そちらに移転した暁には、通信記録をきっちり取って、迷惑電話を掛けてくるようなヤツは、全部チェックしてやる!
 
 とりあえず、気休めという事は分かっているが、かかって来た電話とその内容を、日誌にメモしている。――今日、これまでに126件。まだ夜までには時間があるから、今日受ける電話は200件を超えるだろう。マッド・テイラーは気が滅入りそうだった。
 
 また電話が鳴った。――いい加減にしてくれ!
「はい!ガニメデ独立支援軍本部!」
 だんだん苛立ちが隠せなくなってきたのを自覚しながら、受話機を取った。
 だが、電話の主は聞き慣れた声だった。
「そんなに大声で怒鳴らなくても聞こえるぜ、アニキ」
「……マックか」
「おう、……ちょっと、本部の入り口の辺が大変なことになってるんだ。見に来てくれないか?」
「俺は電話番がある。――おまえが居るなら、何とかならないのか?」
「俺じゃ何ともならねぇ。とにかく、早く来てくれよ。――門が突破されそうなんだよ!」
 ……マックの説明ではよく分からないが、とにかく、見に行った方が良さそうだ。――正直、とりあえずこの事務所を離れる口実が欲しかったところだ。
 再び電話が鳴り出した。しかし、それを無視して、マッド・テイラーは門へと向かった。
 
 ――門といっても、軍事施設らしく柵がしてあったりする訳では無い。ただ、第2コロニーとの隔壁と第3コロニー仮駅から通じる通路の途中に、部外者が入らないように、念のための見張りを立たせている場所があるのだ。
 そこへ行くと、マックが大声を張り上げているのが聞こえた。
「―――だから、俺らもやれる事を必死でやってるって言ってるじゃないか。そんな無茶苦茶な事を言われても、俺らにはできねぇ」
 ……見ると、マックの前に、数十人、いや、百人近いだろうか。一般市民と思わしき集団が集まっている。
 そして、手に手に、デッキブラシやら野球のバットやらを持って、いかにも戦闘態勢といった様相でこちらを睨んでいた。
 門番の兵士二人が、銃を構え、その団体と向き合っている。
 ―――まずいな。
 
 「……一体、どうしたんだ?」
 マックに近付いて、声を掛けてみる。
「――あんさ、参謀長が火星に発つっていうから、みんなで見送りに行ってたんだよ。そんで、戻ってきたら、この有り様さ。
 テロリストとその証拠を出せ、じゃなければ、自分たちで探してやるからここを通せ、だとさ」
 ――テロリスト。マーガレットこと『ハイドロ・テラー』の事だろう。
 
 あの日は、臨時議会が終わってから事務所に戻り、テレビニュースで病院がテロリストに占拠されていると知って、大慌てで人を集めて病院を包囲に行ったのだ。
 しかし、犯人の自爆という結果に終わり、その他には被害者は出なかった。
 ――その件は、ニュースでも報道されていたはずだが。
 
 「……嘘だ!嘘のニュースを流して、俺たちを騙そうとしている。早く、本物の『ハイドロ・テラー』を出せ!」
「俺たちは知っている!『ハイドロ・テラー』は難民施設にかくまわれてるんだ。とにかく、この目で確認させろ!」
 ――滅茶苦茶な論理だ。一体、どこにそのような根拠があるのだ?
「……と、とにかく、おまえたちは家に帰ってろ。部屋から出るんじゃないぞ?」
 マックが、傍らでそわそわした様子で状況を見ていた、奥さんと子供たちを促す。マリーがレイチェル、それにマタルとレイの手を取り、奥へ向かおうとすると、
「俺たちも通せ!不公平だ!!」
と、さらに意味の分からない野次が飛んだ。マリーが難しい顔で振り向いたが、マックが手を振って「早く行け!」と言うと、一同は走り去った。
 
 「――どうする?アニキ」
 ……マックにとって、自分以外の仲間は全て「アニキ」になるらしい。それはともかく……。
「――銃を下ろせ」
 マッド・テイラーは門番の兵士に指示をした。
「し、しかし……!」
 恐怖に引きつった顔で、門番のひとりがマッド・テイラーを見た。
「そんなモン、ここで使う訳にはいかん。誤射も許されない。とにかく、下ろすんだ」
 門番たちは仕方なくといった様子で、銃を下ろした。
「――じゃあ、俺たちを通すんだな」
 野球のバットを持った男が言うと、市民たちは一斉になだれ込もうとした。
「待て!!」
 マッド・テイラーはその前に両手を広げて立ち塞がった。
「何だ!?通すのか通さないのか、はっきりしろ!」
 野球バットの男がマッド・テイラーの鼻先にバットを突き付けた。
「見ろ。俺は丸腰だ。武器を隠し持って無いか、チェックしてくれてもいい。――それでも、実力行使でここを通ると言うのなら、そうするがいい」
 ……すると、息巻いていた男たちも、さすがにそれ以上進もうとはしなかった。
 
 ――悔しいが、こんな場合の対処法を、自分では考え付かなかった。そこで、マッド・テイラーは「ディケイルならどうするか?」と考えてみた。
 ……あの空港での演説の時、マッド・テイラーたち守衛が包囲する、何十もの銃口の前に、あいつは素手で出て来た。……抵抗の意思が無い相手に武器を向ける、その行為は誰の心にでも、何らかの罪悪感を生む。特に、周囲に人の目がある場合。あの時の俺もそうだった。
 暴徒化してしまえば、それも感じなくなるだろうが、まだ、そこまでには至っていない様子だ。
 その作戦は、今回も有効だったようだ。
 
 「――まず、『話し合い』という選択肢を選ばない理由を教えてほしい」
 マッド・テイラーは手を広げたまま、正面から人々に向き合った。
 『選択肢』というのも、ディケイルの受け売りだ。「独立記念日」のあの演説を聞いたなら、何らかの反応を示すハズだ、と思ったのだ。
 案の定、リーダー格と思われる、野球バットの男が、不安そうに周囲を見回した。
「そ、そんなもの、おまえらが話し合いに応じないからだろ!」
 ――どうせ、誰かに吹きこまれたのだろう。
「そんな事ねぇよ。俺はいつだって相談には乗るぜ?――まぁ、とりあえず座ろうぜ」
 マックが、ギブスをされた足を伸ばして、ヨイショと地面に座り込んだ。……確かに、座るというのはいい案だ。マッド・テイラーもマックの横へあぐらをかいた。
 すると、仕方無さそうに野球バットの男もその場に座った。それに従い、周囲の何人かも座る。
 ……いい大人が地面に座って顔を見合わせている。傍から見たら不可思議な光景に見えるだろう。
 
 「――じゃあ、落ち着いたところで、ゆっくり話を聞こうじゃないか、ん?」
 マックが言うと、だが、野球バットの男はもじもじと黙り込んだ。……勢いがあればどんな暴言でも吐けるが、面と向かって腰を落ち着けて話すとなると、何をしゃべっていいか分からないらしい。
 仕方ないので、マッド・テイラーは助け船を出してやった。
「まず、なぜ、テロリストが死んだというニュースが嘘で、まだ難民施設で生きてると思ってるんだ?」
 すると、野球バットの男の隣に座っている、デッキブラシを持った男が、ズボンのポケットに突っ込まれていた雑誌を広げて見せた。
「これ、この記事だよ。これでもおまえらは、テロリストは死んだと言い張るのか!?」
 ――見ると、週刊誌のゴシップ記事だった。
 ………見開きの中央に載せられた写真は、明らかにディケイルとマーガレットの姿だった。そして、大きく書かれたタイトルには、こうあった。
 
 『スクープ!ウェイニー元帥とテロリストの密会!!
  テロリストは生きている!?』


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