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 「つ、つまりだ。この写真の『女』がテロリストなんだろ?でも、この前死んだって報道されてたのは『男』だった。てことは、テロリストはふたり居て、まだこの女は生きてるってコトだ!」
 デッキブラシの男にサポートされた事に自覚はあるのか、野球バットの男は「どや顔」でマッド・テイラーを見た。
 
 マッド・テイラーは週刊誌を受け取って、記事を読んでみたが……。
 ――一体、どこでこんな写真撮られたのか、あいつは……。
 呆れてモノが言えないとはこの事だろう。マーガレットに付けた手錠の片方を手に取り、並んで歩く姿を、記事は「禁断の、そして裏切りの愛」と表現していた。
「な、何とか言えよ!」
 野球バットの男は虚勢を張り過ぎて、裏返った声で言った。
「――あのなぁ」
 マッド・テイラーは週刊誌を地面に置いた。
「……まず、この『女』っつーの。……あんたら、本気で『女』に見えるの?」
 ――どう見たって、ゴツい男がカツラを被って毛皮のコートを着ているようにしか見えない。
「その、テロリストってのが、『ゲイ』だったとしたら?」
 すると、人々はざわめいた。
「――ウェイニー元帥はゲイだったのか……」
 ………マッド・テイラーはどう説明していいのか分からなくなった。
「ちょっと待て、おまえら。アニキがゲイなワケねぇだろ。俺が保障する」
 マックが言ったが、何を以っての保障なのか、意味が分からない。人々は、マックに複雑な視線を送っただけだった。
 
 「――とにかく、この『女』と、病院で自殺したっていうテロリストの『男』は、同一人物だ。理解してもらえないか?」
 野球バットの男は返答に窮した。だが、デッキブラシの男がさらに突っ込んで来た。
「それじゃ、あんたが言うように、この『女』と死んだテロリストが同一人物だっていう証拠は?」
 それに合わせて、野球バットの男も「そうだそうだ!」と野次を飛ばした。
「指紋でよければ、確認できるハズだ。警察にある『ハイドロ・テラー』の指紋と、難民の個別資料にある、この女の指紋を照合すればいいか?」
 ――すると、一同はさすがに黙った。だが、野球バットの男は諦めていなかった。
「そ、そんな事で誤魔化されんぞ!何か、トリックを仕込んでいるかもしれないじゃないか!」
 ………俺はマジシャンか。困ったというよりも呆れて言葉が出なかった。
 とにかく、ここでいくら話をしたところで、水掛け論になる事は明白な気がした。――しかし、一体どうしたものか……。
 
 「あの……」
急に後ろから声が聞こえて、マッド・テイラーは振り返った。
 そこにはレイが立っていた。――マタルとレイチェルも居る。
「マリーさんが、みなさん寒いでしょうからって、紅茶の差し入れです」
 ……見ると、子供たちは手に手に、紙カップの束と大きなポットを持っている。
「お、さすがマリー、気が効くな。ちょうど何か飲みたいと思ってたところなんだよ」
 マックがそう言って、ポットを受け取り、カップに紅茶を注いだ。
「――あんたらも飲め。ほら」
 マックは次々と紙カップを紅茶で満たしていき、彼らを取り囲む人々に渡した。
 マッド・テイラーもそれを受け取る。――一体、この状況は何なんだ?
 だが、正直、少々冷えると思っていたところだ。一口飲むと、紅茶の香りと湯気が、身体の中からじわりと暖めてくれるようだった。
 ……見ると、つい先程まで息巻いていた男たちも、カップを両手で包んで、それぞれ寛いでいる。――奇妙なティータイムといったところだ。
 
 子供たちも、紅茶を受け取ると、地面に座って飲みだした。レイが、マッド・テイラーの背中にもたれるようにして、顔を覗きこんできた。
「――あの、僕の想像ですけど……」
 レイが、マッド・テイラーの耳元で囁いた。
「元帥なら、こんな時、みんなを中に入れちゃうと思います」
 マッド・テイラーはギョッとして、レイのバイオレットの瞳を見た。――今、ディケイルならどう解決するだろうかと、考えていたところなのだ。
「工場見学じゃないですけど、そんな感じで、みんなを順番に案内するってのはどうですか?」
 ……まぁ、確かに、こんな大人数で押し掛けられては困るが、10人単位くらいで案内を付けて施設内を見学させるのなら、問題は無さそうだ。が……。
「――こんな微妙な時期に、軍施設内を一般人に公開するというのは、問題があるんじゃないか?」
「そうでしょうか?対宇宙艦隊戦の『作戦本部』は病院だし、ドミニオンは宇宙空港です。ここに、機密にしなきゃいけない事、ありますか?」
 ――言われてみれば、名前だけは「軍本部」だが、実際の機能は、ディケイルの居る病室が果たしている。ここは、現在のところ、名目上の事務所に過ぎない。
「………分かった。やってみよう」
 ――悔しいが、レイの言った方法以外に、この連中を大人しく帰らせる手段が思い付かない。
「分かりました。僕たちも協力しますんで」
 レイは、顔を前に戻したが、マッド・テイラーは鳥肌が立って、レイの顔があった場所から目を外せなかった。
 ――子供が居た方が、この連中も無茶はできないのではないか。そこまで考えているのか?この少年は!?
 ディケイルが自ら指名して里子に引き取ったと聞いているが、ハイドロ・テラーの事件の時だって、ピーナッツを詰めたハンドガンで、長時間ハイドロ・テラーの動きを封じていたという話だし、一体、この少年は何者なのだ?
 だが、そんな詮索よりも先に、この状況を片付けてしまわなければ……。
 マッド・テイラーは紙カップを握り潰して立ち上がった。
「――よし!ならば、施設見学会を行う事にしよう!」
 
 マッド・テイラーは、10人1グループで、武器になるものを持ち込まない、マッド・テイラーとマタルの案内に従う、という条件で、事務所や難民施設など、軍本部の仮施設内を見学させた。
 ――少人数になると、野球バットの男もデッキブラシの男も大人しいもので、マタルの「迷子にならないように、ちゃんとついて来てくださいね!」という言葉に素直に従っている。
 夕食の準備を始めたボランティアや、手持ち無沙汰に廊下を散歩している難民が、キョトンとした顔で一行を眺めた。
 そして、コースの最後には、マリーお手製の蒸しパンのお土産付きという、何とも和やかな見学会となった。
 
 1周回って戻ってみると、マックがすっかり打ち解けたように男たちと談笑していた。その横で、レイとレイチェルも、誰かに遊んでもらっている。
「………よし!2周目のグループ、行くぞ!」
 マッド・テイラーが言うと、だが、座り込んで話に盛り上がっていた男たちは、
「リーダーが納得したんなら、俺らはいいよ、なぁ」
と、野球バットの男を見た。
「あ、あぁ。しっかり見て来たぜ」
「で、何かあったか?」
「う、うん、そうだな。――とりあえず、目に見えるところには、怪しいモノは無かったな」
「じゃ、まぁ、あんまりここに座り込んででも邪魔になるだろうし、俺らは行くわ」
と、男たちは腰を上げた。
「―――あら、やだ。こんなに大勢いるからと思って、蒸しパンいっぱい作っちゃったじゃないの」
 いつの間にか、マリーが大きなトレイを抱えて立っていた。そのトレイの上には、ラップで包まれた蒸しパンが山と積まれている。
「どうせだから、お土産に持ってって。――またいらっしゃい。紅茶くらいなら、いつでも用意するから」
 マリーが男たちに蒸しパンを配って回った。ニコニコとそれを受け取ると、潮が引くように、男たちは去って行った。
 
 ―――一体、何だったんだ?
 マッド・テイラーは唖然と見送るしか無かった。
 
 ……そして、その翌日。
「た、大変です!総司令官!!」
 マッド・テイラーが事務所で電話対応の準備をしていると、門番のひとりが掛け込んで来た。
「ま、また、門の前が大変な事に……!」
 慌てて見に行くと、昨日と同じか、それ以上かもしれない、軍本部への連絡通路が人で埋め尽くされていた。
「――またか!」
 マッド・テイラーはウンザリした。今度は、どんな理由で俺たちを責めようって気だ!?
 ……だが、よく見ると、昨日とは絶対的に雰囲気が違っていた。野球バットなど、武器になりそうなものを持っている者も居なければ、男よりも、女性や子供連れの老人の姿が多い。
 戸惑うマッド・テイラーに、列の先頭に居た人の良さそうな老婆が言った。
「見学会は、何時から始まるのかねぇ?」
 ―――え?
「ここで美味しいお茶とケーキが頂けると聞いて、孫と一緒に見に来たんだけどね」
「…………」
 マッド・テイラーは開いた口が塞がらなかった。――何なんだ?この展開は?どうしてこうなった??
 すると、人混みの中から、ひとりの男が出て来た。――昨日の、デッキブラシの男だ。
「これ、うちの婆ちゃんと娘。昨日もらった蒸しパン、こいつにやったら、気に入っちゃってさ」
と、隣の少女の頭を撫でた。
「婆ちゃんと一緒に行くんだ、って聞かないモンだから、連れて来た。――そしたら、いつの間にか、話が広がっててさ……」
 男は、照れた顔で頭を掻いた。
「昨日は、妙なイチャモンつけて悪かったな。あんたらが悪くない事はよく分かった。全ては、地球の陰謀だってな」
「………は?」
「なんだ、あんた、朝のニュースまだ見て無いのか?」
 ――そういえば、このところストレスで寝付きが悪く、今朝は寝坊してしまったから、ニュースも見ないで出勤した。
「爆弾テロ事件の犯人だと、最初に名乗り出た、マルコー元コロニー長の息子が、自分は騙されただけで、本当の犯人は、ハイドロ・テラーと、ハイドロ・テラーを雇った地球のヤツらだって言ってたぜ?」
 
 
 
 ――『自分の居場所』。
 それを考えた時、今のままではダメだと思った。
 何の興味も抱かれない、そんな空気以下の存在じゃ、「居場所」どころの話じゃない。とにかく、誰かに認めてもらう事。それが第一歩だ。
 
 ブライアン・マルコーは考えた末に、火星のテレビ局のガニメデ支社へ向かった。
 受付で、「『第2コロニー爆破事件』の真相を話す」と言うと、あっさりとディレクターに通してくれた。
 ……で、特大スクープとして、朝のニュース番組のゲストとして出演する事になった。
 
 「――地球に居た頃、難民船の話をネットの掲示板で見た時から、罠じゃないか、そう思ってたんです。でも、地球にはもう居場所が無かった」
 アナウンサーにガニメデに来た経緯を聞かれ、ブライアンは答えた。
「そして、僕の前に『ガニメデに恨みがある』という人が現れた。……その時は、ハイドロ・テラーなんて人だとも知らなかったし、全然疑わなかったけど、今から考えると、アース・コーポレーションがガニメデに送り込んだスパイと思えて仕方ありません。
 ……僕も、知らないうちにその一員にされてたのかと思うと、腹立たしいというのか、恥ずかしいというのか……、後悔してます」
「それで、『第2コロニー駅爆破事件』はどのように起こったのですか?」
「僕は……、ただ、『自分が犯人だ』と名乗れば、ヒーローになれる、そう信じ込まされてました。それで、証拠を隠して工作したり、友達に『自分が犯人だ』って言いに行ったりしました。それらしく話ができるように、どういう風に爆弾が置かれるのかも知ってました。
 ――1個目は、上りのシャトルの中。2個目は、その近くで時間差で、って……」
「事件には、爆弾が2個使用されたのですね?」
「はい。しかも、あの、カミラっていう自殺した人だけじゃなくて、他にも爆弾を置きに行った人が居ます」
「ほ、本当ですか!?それは、一体誰……?」
「分かりません。教えてくれませんでした」
「――しかし、爆弾が2個使用された、犯人は他にもうひとり存在する、というのは、新しい情報ですね」
「でも、爆弾を作ってたのはハイドロ・テラーなんで、死んでしまった以上、もう爆弾は無いと思います。犯人がまだ居るからといって、また事件があるんじゃないかって、心配しなくていいと思います」
「では、そのもうひとりの犯人に向けて、一言ありますか?」
「………自分で自覚はないけれども、操られている、地球にはそんな事ができる、恐ろしいヤツが居ます。多分、もうひとりの犯人の人も、そうやって操られてると思うんです。早くそれに気付いてくれればいいな、と思います」
「では、これでインタビューを……」
「すいません、もう一言だけいいですか?」
 ブライアンはアナウンサーの言葉を遮ると、カメラに向かって言った。
「この事件の被害者になってしまったみなさま、本当にごめんなさい。事件を混乱させてしまった事は、とても深く反省しています。
 ――それから、僕にそれを気付かせてくれた友達に、お礼を言いたいです。……ありがとう」


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