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35.  因縁
 
 
 ディケイル・ウェイニーはドミニオンの艦橋に居た。
 まだ、出港した訳では無い。――ソウにも言った事があるが、この「艦長席」の座り心地が、妙に良いのだ。……どうやら、俺は血生臭い状況の中に身を置いていないと落ち着かない性分らしい。昔から、薄々自覚はしていたが、世界平和という究極の命題を与えられた『トランセンダー』という立場でありながら、こんな性格をしているのはどうかと思う。
 ……いや、俺はどうせ出来損ないの落ちこぼれだから、『命題』とか、そんなモンはどうだっていい。
 ただ、ヴィクトール・ラザレフの『遺言』だけは、果たさなければならない、とは思っている。
 ――それはともかく、とりあえずの問題は、目の前にある。
 
 ディケイルの視野の中を、人々が忙しそうに動き回っていた。急に司令官がやって来て、「明日出発する」などと言うものだから、大慌てなのだろう。元々、軍人として訓練を受けた連中じゃない。空港職員がほとんどだ。
 ――こんな人たちを前線に連れて行くのは、心底、心苦しい。だが、ドミニオンを動かせるのは彼らしか居ないのだから、仕方が無い。
 ソウを通じて連絡はしておいた。
「――戦艦を動かせるだけの最低人員で戦地に向かう。悪いが、付き合ってくれ」
 結果、通常航行に必要な100名のみが、ドミニオンに乗り組む事になった。
 あとは、システムでカバーする。
 
 艦橋には、走り回る人々の中、ディケイルの他に、もうひとり、席に着いている人物が居た。――ジョルジュ・カリエだ。
 性格には何かと問題がありそうだが、システム・エンジニアとしての能力は、非常に優秀なのだ。「ハイドロ・テラー」の事件後、ジョルジュに、特殊なプログラムを組むように頼んだ。
「――そ、そんなモンを、たった5日間でやれって!?無理ですよ!無理!!」
 全力で拒否してきたジョルジュだったが、
「『鋼の操縦士』のお宝ディスクセット、残念だったなぁ。――火星に居る俺の知り合いに頼めば、取り寄せられるかもしれないけどな」
と言ったら、次の瞬間には肯定の返事に変わっていた。……分かりやすいヤツだ。
 ――要するに、攻撃全般をプログラムに自動でやらせる、という事だ。
 まだ、軍としての教育も不十分な中で、まともに砲台を操れる者なんて居ない。だから、コンピュータに全部やらせる。
 元々、ドミニオンは「イージス艦」としての機能も搭載されている。「戦艦」「空母」「ミサイル艦」、それに、「イージス・システム」。様々な機能を1隻に持たせた、最新鋭の巨大戦艦なのだ。だから、設備的には、ディケイルが考えているような事も、可能ではある。ただ、地球側としては、そのような事をする必要は無く、システムが構築されていないだけだ。
 
 ――エドとチャンも、予定通りに動いてくれている。あとは、『敵』が、予定通りに動いてくれれば……。
 
 ディケイルは、チャンを呼び出した。
「忙しいところ悪い。――敵の総大将『リン』というのは、どんなヤツなんだ?」
 すると、チャンが珍しく動揺した様子を見せた。
「なぜ、自分がリンの事を知っていると?――それに、やはり、敵の指揮官はリンなのか?」
「あぁ、まず間違いないだろう。宇宙艦隊総力を動かせる人物といったら、『警備部長』しか居ない。
 ……あんた、以前、ホームレスになった理由を俺に話したよな?」
「…………」
 
 ――クロード・チャンは、昔「中国」と呼ばれていた地域の、少数民族の出身だ。その民族は、政府からの独立を訴え、長年に渡り中国政府と対立をしてきた。それは、時には武力を伴う衝突になる事もあった。
 チャンはそんな中で、少数民族のゲリラ部隊を率いる立場にあった。
 ある時、政府軍が攻撃を仕掛けて来て、チャンは仲間と共に戦場に出た。……だが、その隙に、チャンたちの住む村が襲われ、家は焼き払われ、多くの犠牲者が出た。その中に、チャンの家族も居た。
 ――その後、アース・コーポレーションによる「統一」が行われ、紛争は終わった。
 チャンは職を探して入社試験を受け、アース・コーポレーションの警備部に配属された。
 そして……。
 
 「――上司が自分の家族を殺した『仇』だったから、どうしても耐えられず、会社を辞めて地球を離れ、ガニメデに来たって話、してたよな?」
「……あぁ」
「そういう話の流れからすると、必然的に、リンがあんたの元上司であり、仇である、という事になる。違うか?」
「――違いない」
 チャンは目を伏せた。
「自分が私情で動くと考えるのであれば、今回の作戦から外してもらって構わない」
「いや、そんな事をするつもりは無い。俺があんたを信頼している。――それに、あんた以外に任せられる人は居ない」
「…………」
「――で、どうなんだ?その、『リン』ってヤツの人間性は?」
「飼い慣らされた『犬』だ」
「――つまり?」
「主人の機嫌を取るためなら、何でもやる。――ただ、どうすれば主人の機嫌が取れるかを考えられる、優秀な『犬』だ」
「…………」
 ――それならば、ディケイルの目論みがさらに確実になるだろう。
「――分かった。ありがとう」
 チャンは去って行った。
 
 ディケイルは考えた。左足を座席の上に乗せて、膝を抱える。
 ――「あいつ」が動いてさえくれれば、必ずうまくいく。
 「ハイドロ・テラー」の事件の概要が明らかになればなるほど、あの男が関わっているという予感が確信に変わっていった。「ハイドロ・テラー」事件と今回の出撃は、無関係では無い。
 こればかりは、ディケイルには策の施しようが無いが……
 ディケイルは信じていた。――テオドア・カゼリという男を。
 
 
 
 テオドア・カゼリは、携帯端末を手に、あるボタンを押した。
 しばらくして画面に現れた人物は、――リン警備部長だった。
「――お忙しいところ、申し訳ございません。すぐ終わりますので、少しだけ、お時間よろしいでしょうか?」
 分かっている。リンがテオドアの事を拒否したりしない事は。
 
 テオドアは、社内では特に「役職」といったものは無いが、ミカエルにとって「特別な存在」である事は、会社の中枢に近い人間なら、誰でも知っている。
 特に、リンのような、ミカエルに気に入られたいと考えているヤツは、テオドアのご機嫌を取っておく事も、欠かしてはならないのだ。
 もちろん、テオドアはそんな傲慢な素振りを見せる事は決して無い。それは、頭の悪い人間のする事であって、賢者は、常に謙虚で、――そして、決して目立とうとはしないものだ。
 
 リンは、無言で肯定の意思を示した。
「では、お話いたします。
 ――今回の、ガニメデ遠征の件です。ミカエルCEOは全軍の使用許可を出されているとの事ですが、リン部長は、まさか、その言葉通りに、全艦艇を動かそうなどと、考えてはおられませんよね?」
「…………」
 リンはひたすら沈黙している。――リンがテオドアの事を快く思っていない事も分かっている。当然だ。リンのような叩き上げのツワモノよりも、テオドアという、どこの誰とも分からない若造の方をミカエルは重用しているのだから。だが、テオドアの機嫌を損ねては厄介なので、話だけは聞いている、そういう格好だろう。
「ミカエルCEOは、ガニメデの平定をお望みです。
 それと同時に、宇宙艦隊の力を、火星の反乱分子どもにも、見せ付けなければなりません。
 ――ここまで言えば、リン部長でしたらお分かりになりますよね?」
「失敗は許されない。それは百も承知している」
「そうです、もちろんそれは前提条件です。――しかし、それだけではありません。
 ……アース・コーポレーションの全軍事力を以ってして、ようやくガニメデを鎮圧できたのでは、意味が無いのです。
 お分かりですよね?――余力を残しての勝利。こうでなければなりません」
 テオドアは、銀ぶち眼鏡を軽く持ち上げた。その反射で、ヘーゼルの瞳が隠れる。
「今回は、あの、ディケイル・ウェイニーも居ないのです。しかも、相手の戦力は軍艦1隻。――そんな相手に、宇宙艦隊の保有する全戦艦を動かしていては、ミカエルCEOもガッカリなさいます。
 ……これは、リン部長のために、念のためのご忠告を申し上げているまでです」
 しばらくテオドアに渋い顔を向けていたリンだったが、やがて、
「分かっている」
と返した。
 ――「分かった」ではなく「分かっている」。この違いは大きい。「分かっている」は、リンの余計なプライドの誇示だ。要するに、リンは、テオドアの思惑通りに動く。
 テオドアはニヤリとした。
「では、ご健闘をお祈りいたします」
 電話は切れた。


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