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 テオドアは、誰も居ない部屋の壁にもたれ、窓の外を見下ろした。
 3月も末とはいえ、スイスの春は遅い。真冬に比べれば雪の量は減ったものの、まだ白さの目立つジュネーヴの街並みが一望できる。
 
 ――ハイドロ・テラーは、それなりにはやってくれたと思う。爆破テロ事件を起こし、ガニメデ政府と軍部との溝を、大きく開いてくれた。……そこまでは、テオドアの思惑通りだった。
 ……なぜ、さっさとディケイル・ウェイニーを殺さなかった?
 そして、ブライアン・マルコーの行動。
 自意識の強いガキのままで居てくれたら、今頃は、ガニメデは内紛状態になっていただろう。なのに、なぜ、テロ事件の真相をテレビで語ったりしたのだ?
 ――途中まではうまくいっても、結果を見れば大失敗だ。
 このままでは、ミカエルの信用を失いかねない。
 
 ブライアン・マルコーのインタビューは、地球では放送されていない。あんな事を地球の市民に知られたら、ガニメデ遠征自体を取りやめなければならなくなる。
 だが、このままリンがガニメデへ赴き、任務を見事果たして帰って来られても困るのだ。
 ――そんな事をされては、テオドアの汚名返上の機会が、無くなってしまうではないか。
 
 テオドアは考えている。
 ディケイル・ウェイニーは必ず出て来る。
 ミカエルも、当然リンも、ヤツは当分動けないと思っているようだが、あの程度の怪我で折れるような男では無い。
 ――そうすれば、リンがいくら戦力差を以って攻めても、落とせはしないだろう。
 だが、宇宙艦隊全艦で対すれば、万一という事もある。それに、全艦で戦いを挑んでもし敗れ、その戦力を失うような事があってはならない。
 そうなったら、次にテオドアがリベンジする機会が、遠く逸してしまう。
 
 リンという「出る杭」を打ちつつ、自分に与えられるべき戦力をキープする。
 先程の電話は、そのためのものだった。
 
 テオドアは、現在の地位――ミカエル・アイヒベルガーが最も信頼を置く側近という立場を、何としても守りたかった。
 それが、ヴィクトール・ラザレフが彼に与えた「課題」への答えだと信じていた。
 
 
 
 3月26日。
 ソウ・ナカムラはアマゾニス総合空港に降り立った。――これで2度目だ。
 案の定、美人のグランドホステスに紙を渡され、それに従いタクシーに乗り、今度は大学の図書館を訪ね、それから大型ショッピングモールのレストランで食事をし……、その度に目を見張るような美女から「指令」を受け、やっと見覚えのあるマンションに着いたのは、夕方近くの時刻になっていた。――まぁ、「棺桶」に入らなくて済んだのは有難かったが。
 
 インターホンを押すと、すぐさま例の美女が現れた。……相変わらず、目のやり場に困る。
「待ってたわよ。さ、入って。――珍しくフォンシェも来てるのよ」
 リビングに入ると、確かに、フォンシェ・アレハンドロが居た。――が、その前に、見覚えの無い人物が座っている。
 その人物は、ソウを見ると、ジロリと不審そうな目を向け、ソウの挨拶にも「フン」と返しただけだった。ドレッド・ヘアに黒い眼帯、たくし上げたコートの袖から覗く腕には、ドクロのタトゥーが入っている。――昔の映画に出て来る「海賊」みたいだ。
「――俺は、つまらん仕事は引き受けねぇって言ってるだろ」
 手持ち無沙汰に立ち尽くすソウを気にする様子も無く、その人物はフォンシェに言った。――ひどく横柄な態度だ。ディケイル以上かもしれない。
「金は払う。当然前金だ」
「金の問題じゃねぇんだよ。『ヘル・ビートル』に退屈な思いをさせたくねぇ、それだけだ」
 その男は、美女が差し出したウイスキーのグラスを、顔も見ずに受け取った。
「そんな事を言うな。――これが終わったら、もっと面白い仕事を斡旋してやる」
「本当か?信じられねぇな」
「信じていなければ、ここにも来なかったはずだ。そうじゃないのか?」
 突っ込まれると、その男は渋い顔でフォンシェを睨み付けた。
「――分かったよ。やればいんだろ、やれば。……で、金は?」
 フォンシェは、傍らに置いてある旅行用トランクに手を置いた。そのフタを開ける。
 その中身を見て、ソウは目を疑った。――現金。多分、ドルだ。しかも、――ものすごい大金。映画か何かでしか見た事が無いレベル。
 アース・コーポレーションが取り仕切る社内マネー「CP」の裏で、現金取引もされているらしいという噂は、聞いた事はある。だが、それはソウにとっては都市伝説みたいなもので、実際にこんな現金を目の当たりにしたのは初めてだ。ソウはゴクリと唾を飲み込んだ。
 だが、眼帯の男はまた「フン」と言って、グラスを一気に空けると、トランクごとそれを受け取り、さっさと出て行ってしまった。
 ―――何だったんだ?
 
 呆然と見送るソウに、フォンシェが言った。
「あの男を知っているか?」
 ソウは急に声を掛けられたため、ドキッとして振り返った。
「い、いや、知らないです」
「あいつは『宇宙海賊』だ」
「―――え!?」
 ソウは、フォンシェの言葉を理解するのにしばらく時間がかかった。――あまりにも、見た目そのまんまじゃないか。
 それに構わず、フォンシェは続けた。
「『スカル』という名くらいは、聞いた事があるだろう」
「………え、えぇ……」
 
 人類が地球以外にその行動範囲を広げるのと同時に、悩まされる問題が発生した。
 ……それは、宇宙海賊。
 人類が地面に貼り付いた生活から一歩踏み出した16世紀頃、大海原に乗り出し、大陸を行き来しだした時代にも、同じような問題が起こった。
 取引される様々な品物や財宝を狙って、荒くれ者たちが船を襲った。――それの、宇宙版みたいなものだ。
 その中でも、「スカル」というのは、ソウでも聞いた事があるくらい有名な宇宙海賊だ。相当派手に暴れ回るやり方らしいが、それでも全く手掛かりを残さないため、捕まらない。全世界指名手配が出され、ICPOが総力を上げてその行方を追っていると、ニュースで見た事がある。
 だが、そんな宇宙海賊たちも、アース・コーポレーションによる「統一」後は、すっかり大人しくなった。……圧倒的軍事力で、徹底的に排除されたためだ。
 「スカル」も、そんな中で消えて行ったかと思っていたが……。
 
 「あの、腕のタトゥーから、『スカル』と呼ばれているそうだ」
「へぇ………」
 ――しかし、なぜ、そんな話を俺に?
 ソウが心に思い浮かべたその疑問を読んだように、フォンシェは言った。
「そのうち、彼をディケイルに紹介する時が来ると思う。そのためにも、顔くらい覚えておいてくれ」
 ………もはや、意味が分からない。
「スカルは、宇宙艦隊に脅されたくらいでめげるようなヤツではない。だが、自由にのさばらせておくのも厄介だ。だから、私が『飼う』事にした。それだけだ」
 フォンシェが補足したが、ソウは唖然とグリーンの瞳を眺める以外のリアクションが出来なかった。
 
 それから、フォンシェにソファーに座るよう促され、ディケイルの怪我の事とかガニメデ国内の様子とかを聞かれた。それらを一通り説明すると、「そうか」と言って、フォンシェは立ち上がった。
「せっかくの機会だ。休暇だと思って、ゆっくりして行ってくれ」
 フォンシェはそう言ったが、ソウはとてもじゃないがそんな気分にはなれなかった。
「宇宙艦隊の動向が気になります。休暇なんて気にはなれませんよ」
「気にするな。あいつは勝つ。何なら、私が保証しよう。――しかし、あなたも不運な人だ。あんなヤツと知り合ったばかりに、毎日寿命が縮む思いだろう」
「……まぁ、それは、俺だけじゃないと思いますけどね」
「心より同情する」
 フォンシェはそれから、思い出したように言った。
「そういえば、『鋼の操縦士』とかいうアニメのディスクを用意するように頼まれている。後日、ここに宅配便で送る。ガニメデに帰る時に、持って行って欲しい」
 ――一体、そんなモノを用意してもらって、何をする気なんだ??
「それから……」
 フォンシェは、手にしたビジネスバッグから何やら取り出し、ソウに渡した。――携帯端末だ。
「あいつがこの前忘れていった。他の通信からだと傍受の恐れもあるし、面倒だから、これをあいつに返しておいてもらえないか?」
 それだけ言うと、フォンシェは出て行った。――帰り際に、美女に熱いキスを返してから。
 
 ――それから、美女もすぐに「出勤」して行ってしまった。
 ……他人の家にひとり残されるというのは、何とも居心地が悪い。しかし、この際、贅沢は言えない。
 仕方なく、リビングでテレビのバラエティー番組を見ていたが……、どうしても気になり、ディケイルの携帯端末を眺めた。
 ――電話番号を見てしまおうか。
 そんな誘惑に駆られ、ボタンを押そうとして、――やめた。やはり、そういうのは良くない。これを渡す時に、本人から聞こう。
 
 ソウはソファーに寝転がった。
 ……今頃、みんな、どうしているかな……。
 
 正確な時間は分からないが、確実に、あと何日か後、戦争が始まる。
 そんな中で、バラエティー番組を眺めながらソファーに寝転んでいる。ソウは、自分が場違いな事をしているようで仕方無かった。だが……。
 ――何とかみんな、生きていてくれ。
 今のソウには、そう祈る事しかできなかった。


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