忍者ブログ
オリジナル小説のダストボックス

WRITE | ADMIN

PR
カウンター
プロフィール
HN:
碧井 湊
性別:
非公開
自己紹介:
頭の中には、
いつも何かのストーリー。
なかなか、
文字にならないのが難点。

詳しい事はこちらへ。
メールフォーム
感想・ご意見等 お気軽にどうぞ
Powered by NINJA TOOLS
忍者サイトマスター
バーコード
ブログ内検索
当ブログの利用方法
★プラグイン最上部のブログタイ
 トルをクリックで、トップページ
 へ戻ります。
★トップページより、各小説タイ
 トルをクリックで、目次ページ
 へ進みます。
★プラグイン内「カテゴリー」から
 も、目次ページを開けます。
★小説各ページに「次へ」のリン
 クはありますが、「前へ戻る」
 リンクはありません。プラウザ
 内の「←」をご利用いただくか、
 一度目次ページへ戻るかして、
 ご覧ください。
アクセス解析


忍者ブログ [PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


web拍手 by FC2


 ドミニオンの艦橋では、テッド・アーロンが隣の席の男を、苦々しい表情で眺めていた。
 ――ジョルジュ・カリエ。何で鉱山ラボのシステム・エンジニアなんかが、こんなところに居るんだ?
 しかも、先程突然、「終わったあーっ!!」と叫んだかと思うと、
「やる事終わりましたから、僕は少し寝ます。用事があったら起こしてください。1週間もロクに寝て無いんです。少しくらいいいでしょ……」
と、誰に話しているのか独り言なのか分からない口調で呟いて、コンソールデスクに突っ伏して眠ってしまった。
 ――そのヨダレで航行に支障が出るとか、そんな事だけはよしてくれよ……。
 テッドは顔を正面の窓に戻した。
 
 巨大な強化樹脂の窓の向こうは、遥かなる宇宙空間だ。無数の星々が、この虚空を満たすかのように輝いている。――その光は、何年前、いや、何千年前に発せられたものなのかも分からない。そして、その星はどんな星なのか、今でも存在するのか、それすらも分からない。
 ――美しいようでいて、同時に儚く虚しいものであるようにも、テッドには見えた。
 
 テッド・アーロンは、元々、ガニメデ宇宙空港の管制塔で通信士をしていた。ドミニオンがガニメデを攻めて来た時にも、管制塔に居た。――守衛たちの銃口の中で、ひたすら「死人」を演じた。……あんなに恐ろしい思いは、もう二度としたくない、そう思っていたのだが……。
 
 「――なぁ、クリス」
 ジョルジュとは反対側の隣に座る、クリストファー・フリーデンに、小声で話し掛けた。――後方の艦長席に聞こえていないか、注意しつつ。
「俺たち、生きて帰れるのかな?」
 すると、クリスはくすんだブルーの瞳をテッドに向けた。
「負ければ、どちらにせよ死ぬんだ。船で死ぬか、コロニーで死ぬか。どちらでも結果は同じだ」
「――相変わらずクールだな、おまえ」
 クリストファー・フリーデンは、テッドと宇宙航空学校の同期生だ。学生当時は、専攻科も違っていたし特に親しくはなかったが、同じガニメデに配属されてから、話すようになった。
 テッドとは違い、クリスは航宙士というエリートの職業なので、若干引け目は感じていたのだが、当のクリスはそんな事を気にする様子は全く無く、クールなフリはしているが、中身もあっけらかんとしてサバサバしている、そういうヤツなのだ。
「――ガニメデに残ると決めた時点で、俺は、いつかこういう時が来ると覚悟はしていた。……元々、航宙士なんて職業、命を張れるバカじゃなきゃできない仕事だ。遭難して野たれ死ぬ可能性と、戦争で砲撃されて沈む可能性、どちらが高いかと考えれば、ま、似たようなモンだろ」
「よく、そんなに割り切れるな……」
 テッドは首を振った。
「俺は、少しでも安全な途を選んで、宇宙航空通信士という資格を選んだんだ。――今回ばかりは、親に遺書を預けて来たよ」
 すると、クリスは言った。
「早く結婚して、子供を作る事だな。生命保険の受取人の名義を愛する人にすれば、肝が据わるモンだぜ?」
「……おまえには勝てねぇよ」
 
 今回、「独身」「家族なし」という者が優先的にドミニオンの乗組員に選ばれた。――それは、「死」の可能性が高いからだと、テッドには思えた。
 テッドは両親と住んでいる。一方、クリスは既婚で、しかも幼い子供が居るにも関わらず自ら志願したと聞き、それに刺激されて志願してみたのだった。
 ――だが、いざ、逃げ場の無い状況に来てみると、泣き事ばかりが口を突いて出る。
 
 「――敵の規模に関する情報は入っていないか?」
 ディケイル・ウェイニーの声がテッドをハッとさせた。
「確認してみます」
 慌てて答えて、ライトフライヤーとの通信を試みる。
 ――あの人、ついこの前、足を切断したばかりだと聞いていたのだが、すこぶる元気そうじゃないか。……とにかく、今は、あの人の一挙手一投足に、俺たちの運命が懸っているには違いない。これまでの実績は確かにある。しかし、薬物中毒だったって噂はどうやら本当のようだし、無責任に国外逃亡もしていたらしいし、本当に大丈夫なのだろうか……?
 すぐさまライトフライヤーのパイロットから返って来た通信の内容を、ディケイルに報告する。
「敵の規模は、8隻の艦隊のようです。
 そのうち、戦艦3隻。――形状を照合したところ、ヴァーチャー、プリンシバリティ、アンゲロイのようです」
「――これまた、骨董品を引っ張り出して来たな」
 ディケイルは、いつもの膝を立てた妙な座り方で、あごに手を置いた。
「チャンとエドにも、通信と繋いでもらえるか」
 テッドは別の回線を開き、そちらの通信士にチャンを呼び出すように頼んだ。――すぐさま、正面の窓の脇の空間にモニター映像が現れた。
「……チャン大将、そちらの状況はどうだ?」
 モニターの中で、チャンは無表情に答えた。
「予定通り、準備は完了した。あとは元帥に任せる」
 その後、エドとの通信を繋ぐと、あまり見覚えの無い景色が目に入った。狭い空間。何かの操縦席だろうか?その中で、ヘルメットに防護スーツ姿のエドが座っている。
「――何でもいいですけど、こんな中に何時間も座ってるのは、正直、キツいっす。早いとこ終わらせてくださいよ」
 無遠慮にエドが言うと、ディケイルが返した。
「分かってる。始まれば、3時間以内に終わる。――ただし、始まったら気を抜くなよ」
「分かってますよ!任せてください!」
 エドは、カメラに向かって親指をグイと立てて見せた。
 
 ――その通信が終わってから間もなく、クリスが声を上げた。
「……敵艦らしき船影、レーダーで捕捉できました!――レーダーによると、距離は8万km。……こちらに向かっています」
「………いよいよだな」
 ディケイル・ウェイニーが爪を噛んだ。
「総員、第1級臨戦態勢!――後は俺に任せろ。
 ……それと、これだけは言っておく」
 ディケイルは、正面に鋭い目を向けたまま、言った。
「もし、負けそうになったら、俺を敵に差し出して降伏しろ。――命を無駄にするな」
 
 
 
 レイ・マグアドルは、マタルと一緒に窓の外を眺めていた。
 ――どちらから言い出したという訳では無いが、夕食後、何となくそんな流れになった。
「……元帥たちの乗ってる宇宙戦艦って、ここから見えるのかな?」
 マタルが呟いた。
「多分、見えないよ。――だって、小惑星帯の向こうにまで行ってる訳だし」
「そうか……。そうだよな」
 マタルが、ベッドに腰を下ろした。
「……なぁ、レイ」
 レイが顔を向けると、マタルはどこともなく前を見ていた。
「俺たちが大人になった時、どんな世界になってるんだろうな?」
 レイも、マタルの横に腰を下ろした。
「――どんな世界になってるか、じゃなくて、どんな世界にするか、……だろ?」
 レイが言うと、マタルが大きな目を向けた。
「今、元帥たちは、世界をリセットしようとしてるんだ。――そして、まっさらな世界を、僕たちに残そうとしている。……そんな気がするんだ」
 
 ――そして、そうなった時には、レイのような『トランセンダー』は、もう必要なくなる。特殊能力など必要ない。人類が、自らの意思でその方向性を決めればいい。――たとえ、それがこれまでの歴史の繰り返しになろうとも。
 ……いや、もし、ナチュラルタイプのトランセンダーが人類の『進化形』であるならば、世界をより良い方向に導くのが、その生まれた「理由」なのだろうか?
 ――こんな考え自体が、元帥に言わせれば「傲慢」なのかもしれない。
 しかし、もしそうであるならば、レイの存在意義は、一体何なのだろう?
 
 レイは気付いていた。
 見た目は人間と同じ形をしているが、『トランセンダー』という存在は、決して人類に受け入れられる事は無い。
 
 だから、ディケイルは、レイの持つ特殊能力の事を極力隠して、普通の人間として世界に馴染ませようとしている。
 ――けれども、本当にそれでいいのか?トランセンダーとして生まれて来た以上、その「使命」がもしあるのならば、それを果たさないでいる事は、『罪』になるのではないだろうか……?
 
 ブライアン・マルコーの一件以来、レイはそんな事を考えるようになっていた。
 ……そんな気持ちが、レイを極端な行動に走らせているのかもしれない。
 元帥に、『トランセンダー』としての自分を受け入れて欲しい。それを分かってくれるのは元帥だけだから。
 でも、元帥は僕に、普通の子供としての行動を求めている。
 ――この矛盾は、どうすれば解消できるのだろうか……?
 
 「――おい、どうしたんだよ?急に泣き出して」
 ……無意識に涙が出ていたようだ。マタルが驚いた顔でレイの顔を覗きこんでいた。
「な、何でも無いよ。――ちょっと、コンタクトがずれただけ」
 レイは慌てて目を押さえて顔を背けた。
 
 ――人の感情って、ワガママなモノだな。
 ついこの前までは、誰も僕の事を分かってくれないと、物凄く孤独だった。それなのに、理解してくれる人が現れたら、それ以上の事を求めてしまう。
 こうして、傍に居てくれる「家族」が居るだけでも、幸せだというのに。
 
 涙を手で拭って、レイは言った。
「今は、僕たちにできる事をするんだ。――そうすれば、きっと、僕たちの思うような世界になるさ。……そのために、元帥たちを信じよう。必ず、勝って戻って来てくれるって……」
 
 
 
 ソウは、宇宙艦隊が月の基地を出発したというニュースを見た時から、ずっと、テレビの前で構えていた。今も、つまらないクイズ番組を見ているようだが、その実、時折流れるニュース速報と、サブ画面の文字情報をひたすらチェックしているのだ。
 
 「――その番組、面白い?私、その司会者嫌いなの。……何て言うか、自分をひいきにしてるタレントだけ連れて来たり、プロデューサーか何か知らないけど、自分が関わってるアイドルグループの宣伝をしてみたり……。やりたい放題よね。もう、クイズ番組じゃないわ、こんなの。前は好きな番組だったんだけどね」
 この部屋の主、――ジュリアーナという名前らしい――が、ソウに紅茶のカップを差し出しながら言った。
「――あ、そんなに気を遣わないでください……」
 ソウが言うと、ジュリアーナはニコリとして返した。
「あなた、真面目な方ね。――フォンシェが連れて来る人なんて、酒は無いか~とかつまみはまだか~だとか、遠慮の無い人ばっかりだから。
 特に、前来てたあなたのお連れの、……ディケイルとか言う人?あの人なんか、バナナは無いか~とか言うし……。そんなの、普通に買い置きがあるワケないじゃない」
 ジュリアーナは、自分用の紅茶のカップを手に、ソウの隣に座った。――キャミソールワンピースの、裾に入ったスリットから、太腿が大胆に現れて、ソウはドキッとした。
「本当、遠慮しないでね。――私、料理出来ないから、デリバリーものしか出せないけど、美味しいお店はたくさん知ってるのよ」
 ジュリアーナはそう言って、ソウにウインクして見せた。
 ――ソウは思った。勘違いでもいいから、この状況が恋人同士の関係だったらなぁ……。――いや、そんな事を考えていたら、フォンシェに抹殺されそうだ。
 
 すると、テレビでニュース速報の警告音が鳴った。のぼせ上った頭を強引に切り替え、ソウは慌ててテレビ画面に目を向けた。
 
 ドヤ顔で得意気に話をする司会者の顔に被るように、文字は、アス・トンネル付近で宇宙艦隊とガニメデ軍が軍事衝突を開始したと伝えた。


>> 次へ
PR

web拍手 by FC2


※ Comment
HN
TITLE
COLOR
MAIL
URL
COMMENT
PASS


※ この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:



Powered by 忍者ブログ  Design by まめの
Copyright © [ Second Box ] All Rights Reserved.
http://secondbox.side-story.net/