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37.  アス会戦
 
 
 3月29日。
 
 宇宙戦艦ヴァーチャーの艦橋で、リンは前面の巨大モニターを眺めていた。
 その中には、かつて、自分の管理下に置かれていた、巨大な宇宙船の威容が映し出されていた。
 ――ドミニオン。アース・コーポレーションの技術の粋を集めて造られた、巨大宇宙戦艦。現在、アス・トンネルの入口を入ったところで、「翼」を畳んで、まるで繭に籠る蚕のように、じっと停船して、こちらを窺っている。
 
 ドミニオンの設計には、リン自らも関わった。……だから、その弱点も把握している。
 まず、その巨体そのもの。あの体躯をもってして、このような狭いトンネルの中で待ち伏せとは、作戦も何もあったモノでは無い。これでは、前方から敵が来た場合、転回すら出来ず、後退しかできないではないか。それに、側面に配備されたミサイルシステムの機能を、完全に殺している事になる。――誰が指揮しているかは知らないが、相手の指揮官は脳なしに違いない。
 それから、高性能コンピューターに制御された、迎撃システム。あれは、近くに対象以外のものがあった場合、誤作動を起こす可能性がある。元々、このような狭い空間での活動を想定していない艦体だ。虚空に放たれたミサイルや機雷を撃ち落とすためのものであって、それをこんな小惑星帯の中で使えば、小惑星を対象と認識して、肝心な敵のミサイルを見落とす確率大だ。
 ――戦いを始める前から勝負はあったな。リンは艦長席で腕組みをした。
 
 「――部長、ドミニオンから通信が入っています。……こちらの指揮官と話がしたいと言って来ていますが、どうしますか?」
 通信士がリンを振り返ってそう告げた。
「……繋げ」
 ――どうせ、こちらの数を見て、怖気づいたに違いない。降伏する気なら、それはそれでいい。
 ……だが、モニターに現れた人物を見て、リンは目を疑った。
「―――で、ディケイル・ウェイニー!?……なぜ、おまえが……!!」
 
 
 
 「――なぜって?俺が始めた戦争だ。俺が始末を付けて何が悪い?」
 ディケイルは、ドミニオンのモニターに映し出された、驚愕の表情を浮かべるリンに向けてそう言った。
「……だが、誰が出て来ようが、勝負はもう決まっている。降参するのなら、今のうちだ。今なら受け入れてやる」
 すぐにリンは気を取り直した様子でそう続けた。その言葉を、ディケイルは鼻で笑って返した。
「その言葉、そっくりそのままあんたに返す。――後悔したくなかったら、悪い事は言わない。このまま帰ったほうがいいぜ?今なら、何もせずに見送ってやる。――で、また、出直して来い。……まぁ、何回来ても、結果は同じだと思うけどな」
「何を根拠にそのような戯言を。
 ディケイル・ウェイニー。おまえは、自分の立場が分かっているのか?こちらの方が圧倒的な戦力を持っており、そちらは孤立無援。戦艦1隻で何が出来るというのだ?
 おまえが投降すれば、他の者の無事は保証しよう。さっさと白旗を揚げるがいい」
 ――やっぱり。こいつは状況を分かっていない。つまり、ミカエルに信頼されていると信じているだけで、肝心な情報は知らされていない。……哀れな道化だ。
 ディケイルは、左膝を抱えてその上に顎を置いた。
「……じゃあ、いい事を教えてやるよ。
 あんたらは、絶対に俺たちに攻撃できない。
 
 ――なぜなら、この船には、『核』が積んであるからな」
 
 ……その言葉に、艦橋の空気が凍り付いた気がした。「えっ……!?」という顔で、通信士や航宙士ら、モニターの前で作業していた面々がディケイルを振り向いた。――まぁ、今まで極秘にしてきていたから、当然の反応だろう。
 そして、それ以上に、モニターの中のリンの表情が硬直しているのが分かった。
「何なら、本部に確認してみるといい。爆弾本体に書いてあった製造番号を言おうか?――『ATMB-883-10000/256dc8937』。……確認できたか?」
 だが、リンは強張った表情のまま、動こうともしない。――多少は核の事について心当たりがあるのか、それとも、ミカエルに裏切られた事にショックを受けて動けなくなっているのか……。
 『核』について、以前、ミカエルと取引をした。「ガニメデに居る者の家族に手を出さない代わりに、その存在を黙っていてやる」、と。――だが、そんな口約束、こちらの条件が完了してしまった以上、律義に守ってやる必要は無い。
 勝つためには手段を選ばない。ミカエルも、同じように考えているはずだ。
 
 「――さぁ、どうする?
 ヘタに攻撃すれば、ドミニオンと一緒に核が爆発するぜ?あんたなら、何となくは分かるだろう?砲台やミサイルの射程と、この核爆弾の爆発半径と、どちらが大きい?……まぁ、普通に考えて、ドミニオンが沈めば、あんたら全員、道連れに宙の藻屑と消える事になるわな。
 ――あんたは、警備部部長という立場にありながら、ミカエルが極秘に核を開発している事を知らされていなかった。だから、ここまで来て無様に立ち往生をしている。
 それでも、ミカエルに尽くすか?それとも、大人しく地球に帰って、ミカエルの本性を暴いた暴露本でも書いて、その印税で優雅な老後を過ごすか?――どっちにする?」
 リンは、大きく目を見開いたまま、沸騰したように顔を紅潮させている。……このまま、脳の血管でも切れてくれれば、犠牲者は最小限で終わるだろうが、――そううまくはいかないか。
 リンが、喉の奥から絞り出すように声を発した。
「――私が……、私が負けるはずが無い……」
 そして、通信は切れた。
 
 「………あちらさんはやる気らしい。迎撃準備……、って、おい、ジョルジュ、起きろ!」
 ディケイルは、テーブルの薬袋を取り、それをジョルジュの頭めがけて投げ付けた。紙袋はゆるやかな弧を描き、明るい色のクセのある髪の上に落ち、その中身をバラ撒いた。
「――痛っ……、いや?痛くない。……ん?――なんだこれ」
 周囲に散らばる錠剤のシートを見て、ジョルジュが不思議そうな顔をした。
「今から戦争が始まる。さっさと準備しろ!」
 ディケイルが怒鳴りつけると、ジョルジュは目を丸くした。
「えっ……!そ、そんなの聞いてませんよ!!」
「まだ寝ぼけてんのか?死にたくなかったら、敵のミサイルを撃ち落とせ!おまえが組んだプログラムだろ。おまえ以外に誰が使える?」
 ジョルジュは不服そうにディケイルを睨んで言った。
「僕は、プログラムを組めばいいって言われたから来たんです。戦争に参加するとか、聞いてませんから!――特別ボーナスを付けてもらえるとかなら、話は別ですけど」
 ディケイルはため息をついた。
「あぁ、付けてやる。おまけに『鋼の操縦士』のヒロインの、激レア着せ替えフィギュアも付けてやる!」
「やります!喜んでやらせていただきます!!」
 ――初めからその返事をしろ!ディケイルは頭痛がしてきた。
 ……いや、頭痛の原因は、ジョルジュにペースを乱されたからだけでは無い。確実に近付いている惨劇の予感――。それが、ディケイルの神経を刺激していた。
 
 ヴァーチャーの姿は、モニターを通さずとも、目視でその形までも確認できるまでになっていた。
 
 
 
 テッドは横目で隣の男を眺めた。
 ――先程までヨダレを垂らして眠っていたクセに、『鋼の操縦士』の名を聞いた途端、キラキラした目をパッチリ開いて前を見ている。……要するに、オタクか。彼女も居無さそうだ。あまり親しくはなりたくないな……。
 だが、そんな思考はクリスの鋭い声に遮られた。
「前方8時方向より、ミサイル接近!!」
 すると、
「よっしゃ!いくぜぇ!!」
 ジョルジュが張り切った声を上げ、コンソールパネルを操作した。
 次の瞬間、艦橋内に、腹に響くような振動が走り、前方に向かって光線が走るのが見えた。
「――迎撃ミサイルってのは、こうでなきゃダメなんだよ。あんなに緩い設定にしてあったら、近くの小惑星を敵だって判断しかねないだろ。誰がプログラムを組んだか知らないけど、そいつは、一度『鋼の操縦士』を見た方がいい。戦艦戦ってのがどんなモンだか、勉強し直した方がいいってんだ!」
 ……よく分からない独り言をブツブツ言いながら、ニヤニヤした顔でモニターを眺めている。その画面の中で、光が炸裂した。
「――敵ミサイル、爆破」
「やりぃーっ!」
 ジョルジュが椅子から飛び上がった。
「おい、踊ってるヒマはねぇぞ。――ほら、ミサイルがどんどん飛んできてる」
 ディケイルがまるで他人事のように言う。すると、ジョルジュは椅子の上に立ち上がり、コンソールデスクに片足を上げ、前方を指差した。
「僕の組んだプログラムに死角は無い!」
 ……テッドも、『鋼の操縦士』の事は、少しは知っている。数年前、放送されていた当時はかなりの人気だったから、たまには見ていた。だから、主人公がバトルを始める前、戦闘ロボットに乗って敵を指差し「俺のマシンに死角は無い!」と言う、決めゼリフは知っている。――その真似のつもりだろうか?
 しかし、ジョルジュの言葉通り、モニターの中で十数個の光が次々と破裂し、消えていった。
 ――認めたくはないが、プログラムを扱う腕だけは、相当なモノのようだ。
 
 「前方10時方向より、敵艦接近。――アンゲロイです」
 クリスの声が艦橋に響く。
「弾幕を張れ。前に出る。――できるか?」
「アイアイサー!弾幕は任せなさい。このボディーには、指ひとつ触れさせないぜ!」
 ジョルジュは椅子から飛び降り、コンソールパネルに顔を近付けた。
「ドミニオン、前進します。――しかし、その前に、ひとつだけ質問をする許可をください」
 クリスが後ろを向き、艦長席を見た。ディケイルは、黙ってクリスに顔を向ける。
 
 「艦長が先程おっしゃられた、『核』がこの艦に搭載されている、というのは、ハッタリですか?真実ですか?」
 
 ――その言葉に、艦橋に居るジョルジュ以外の全員が、ディケイルに注目した。
「……真実だ。爆発半径100km規模の核爆弾が、ドミニオンの中にある。――ただし、正確には、『搭載』されている訳では無く、ただ乗せてあるだけだ」
「つまり、使う意思は無いが、『盾』として乗せてある、と。――もし、その『盾』が破られた場合は?」
「全員、死ぬ」
「…………」
 艦橋を、重い沈黙が満たした。だが、それは、すぐにクリスによって破られた。
「了解しました。――ドミニオン、前進します」
 レバーを操作するクリスに、テッドは小声で話し掛けた。
「……つまり、俺ら、人質みたいなモンってこと?」
「そうだな。だが、俺たちだけじゃない。敵も含め、この場に居る全員が艦長の人質ってワケだ」
 ――『核』を盾にして、攻撃できないように威圧する。……確かに、敵にとってはやりにくいだろうが、だが実際、攻撃してきてるじゃないか?
 本当に大丈夫か……??
「敵は本気では攻撃して来ない。この艦を沈めはせず、乗っ取る事を考えて来るだろう。――なら、防御を固めて敵を近付かせなければ、それでいい。敵に空母は無いようだから、ライトフライヤーで急襲される心配も無い。――安心しろ、そう簡単には死なせない」
 ……まるで、テッドの心中を察したかのように、ディケイルが言ったので、テッドはドキリと息を呑んだ。
 その横で、周囲の空気にはお構いなく、ジョルジュが鼻歌を歌っている。――かなり音程は外れているが、『鋼の操縦士』の主題歌のようだ。
「――アンゲロン、後退。ドミニオン、アス・トンネルから出ます」
 クリスが告げた。


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