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 ――ヴァーチャー艦橋。
 「……ドミニオン、前進してきます!このままでは接触しますが、どうしますか?」
 操舵士がリンを振り返って声を上げた。
 ―――バカか!?敵陣のただ中へ突っ込んで来るとは、自爆でもする気か!?
 ……だが、リンにはそれを止める事はできなかった。とりあえず攻撃を開始してはみたものの、やはり、本気で当てる事は出来ない。もし、急所にヒットして、ドミニオンが爆発でも起こそうものなら、何もかもが終わってしまう。
 アンゲロイに突入させ、ドミニオンを奪取する事も考えた。だが、隙の無い弾幕のせいで、近寄る事すらできない。――相手には、相当腕の立つ砲手が居るのかもしれない。
「――後退しろ」
 リンは操舵士にそう告げた。
 
 リンは頭を抱えた。
 ……ダメだ。頭が回らない。
 ――核兵器の開発という、地球の防衛にとって重要な情報を、ミカエルは私に隠していた……!!
 リンは、自分の足元の床が歪んで見えた。このまま床が砂の渦となり、その中へ椅子ごと飲み込まれ、虚無の死の空間に排出される。そんな幻覚すら見えた。
 ――要するに、ミカエルにとって、私は捨て駒のひとつに過ぎないのか。これまで、アース・コーポレーションと閣下のために、命を捧げて来た、この私が……!!
 
 「ドミニオン、さらに前進!このまま退却を続けますか?」
 操舵士の声でハッと我に返った。――そして、レーダーの空間地図を見て、ある事に気付いた。
 ………アス・トンネルへの障害が、無くなった。
 つまり、ドミニオンが入り口に栓をするような位置に居たから、トンネルを通る事が出来なかったのだが、ドミニオンが前へ出た事で、その栓が抜けた。
 ――私の役目は、ドミニオンの撃墜では無い。ガニメデの平定だ。
 一気にリンの頭は冴えてきた。――バカめ。調子に乗って前に出て来るはいいが、後ろがガラ空きではないか。このまま全速力でトンネルを通り抜け、先にガニメデを押さえてしまえば、こちらのものだ!
 ドミニオンの弱点、その3つ目。――その巨体故に、スピードが出ないのだ。航行速度の点では、このヴァーチャーが、宇宙艦隊が保有する戦艦の中で、最も優れている。
 リンは声を上げた。
「全艦、アス・トンネルへ向かえ!全速で通過し、そのままガニメデへ向かう。本艦が先導する。プリンシパリティと装甲艦で追撃を防げ。
 全速前進!!」
 ヴァーチャーは、ドミニオンの巨体を回り込むように迂回し、アス・トンネルに進入した。アンゲロイ、哨戒艦がそれに続く。
 ドミニオンは、その迅速な動きに為す術も無く、ただその艦影を見送っているように見えた。
 ――勝った!
 
 だが間もなく、リンの高揚した気分を一気に凍り付かせる情報が入った。
「先行した哨戒艦からの情報です!
 ……トンネルの出口が、何かで塞がれています!!」
 
 リンは、哨戒艦からの映像を目にして硬直した。
 ――ヴァーチャーの行く手には、白い塊のようなものが一面に浮かび、その進路を絶っていた。
「……小惑星の残骸を運んできたくらいのものだろう。主砲を撃て!破砕して進め!」
「いえ、それが……」
 モニターに向かっているひとりが、青い顔をして言った。
「成分分析をしたところ、……これらは、全て氷です」
「何だと……!!」
 
 「氷」というのは、宇宙空間においては非常に厄介な物質だ。
 氷というのは、言うまでも無く、水が固体化したもので、その特徴は、0℃という高い温度で凍結し、100℃という低い温度で気化する。そして、氷という物質は、様々な物質に貼り付きやすい性質を持っている。――主砲で氷の塊を粉砕するのは容易だが、高熱射撃を受けて気化した水蒸気は、すぐに固体化し、それぞれが結びついて、細かい氷の塊へと変化する。そんなものが無数に浮かぶ空間を宇宙船で通り、もしエンジンにでも入ったら……。
 エンジンに氷が張り付き、凍って固まったら、エンジンが故障し、航行不能に陥りかねない。
 しかも、その性質上、レーダーに映らない。熱源反応を見る特殊な電波を反射せず、透過してしまうのだ。
 宇宙軍事航行学において、「氷」というのは、最も忌避すべき物質である。
 
 ―――ヤラれた!!
 
 「……小惑星帯の中に、回避するポイントは無いか?」
「戦艦クラスが入れるような隙間はありません。せいぜい小型の貨物船が限度です」
「では、小惑星を粉砕しろ!そこを通り抜ける!」
「無理です!核でも無い限り、そんな事は……」
 リンは、かぶっていた帽子を床に叩きつけた。
「プリンシパリティより報告!ドミニオンが、アス・トンネル入り口に横づけし、退路を塞いだ模様!!」
「――そ、それから、周囲の小惑星帯の中に、小規模ではありますが、熱源反応多数!!」
 ――完全に袋の鼠となった、というワケか。この私を罠にハメるとは、いい度胸をしている!!
 
 「――部長、ドミニオンより通信が入っています。どうしますか?」
 
 
 
 「…………」
 通信は開かれたが、リンは無言のまま、ドミニオンのモニターの中に険しい顔で現れた。
「……もういいだろ。諦めろ」
 ディケイルは爪を噛みながらモニターを眺めた。
「――だ、誰がおまえなどに降伏するか!!」
「いいか。今なら、俺たちは攻撃しない。大人しく、艦を開け渡せ。そうすれば、あんたらは地球に帰してやる」
「ふざけるな!!」
 リンが頬を震わせ、激昂した。
「我々は、ミカエル閣下に忠誠を誓った精鋭だ!命を惜しんで裏切るような腰抜けなどおらん!」
 ディケイルは目を伏せた。――最悪の展開だ。
 リンの人となりを聞いてから、薄々は予測していた。追い詰められたら、部下の命よりも、自分の不要なプライドを優先させるタイプ。――あの時の、守衛隊のリーダーと同じように。
 自分がただ利用されているだけの存在だと知った上で、だからこそ、それを認めたくなくて、プライドに固執する。
 こういう人種を説得する術を、残念ながら、ディケイルは持ち合わせていない。
 
 「――なぁ。よく考えてみろ。今、あんたらは何かを守ろうとして戦っている訳では無い。このまま帰ったって、何も失うモノは無いだろ?もし、『責任』がどうとか言ってクビ切られる事になったら、ガニメデに来い。俺らはいつだって受け入れてやる。――な?そうしようぜ?」
 だが、案の定リンは顔を真っ赤にして怒鳴り返してきた。
「『誇り』を捨てるくらいなら、『名誉』の死を選ぶ!」
 ――『誇り』。ディケイルが最もくだらないと思うモノだ。そんなモノを固持したところで、誰が幸せになれる?
 ディケイルは髪を掻き回した。
「……あんたが『誇り』とやらを優先させるのはいいが、部下はどうなる?あんたのつまらない意地のために、未来ある命を道連れにするのか?地球に帰れば、家族も居るだろう。幼い子供の将来のために、無事な帰還をひたすら祈っている人だって居るだろう?あんたは、そういう人たちの未来までも背負ってるんだ。――分かってるのか?」
「言ったはずだ!我々の中に、そんなもののために命を惜しむような意気地の無い人間は居ないと!家族も覚悟の上でここに来ている。――おまえらが『戦争』というものをどのように解釈しているのか、そちらの方が理解できんわ!」
 
 ――『戦争』。「国家」という形骸的な枠組みのために、罪の無い若者の命と、平凡な市民生活を犠牲に捧げる事を強要する、この世で最も醜い行為。
 自分で始めておいて今さら何を言っているのか、と自覚はしているが、ディケイルは、戦争というものをそういう概念で理解している。――だから、できる限り、敵味方共に犠牲の少ない形で終わらせたいと思っている。
 ……それが都合のいい言い訳に過ぎない事も承知している。――こんな矛盾だらけな思考だから、油断を生んで、第3コロニーのような惨劇を招いているのかもしれない。
 しかし、今さら、後戻りはできない。
 今、できる事は、目の前の『命』を、少しでも多く、守る事だけ……。
 
 「――元帥、いいか?」
 チャンから通信が入った。
「自分にも、あいつと話をさせてもらえないか?」
 ……あの無口なチャンがこんな事を言ってくるとは、ディケイルにも予想外だった。家族の仇敵を目の前にして、暴走するのではないか、という不安を持っていたが、今のチャンは、冷静な目でディケイルを見ていた。
「――分かった。任せる」
 ディケイルが通信士を見ると、彼はひとつ肯いて、チャンの乗る船とヴァーチャーとの通信を繋いだ。


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