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38.  復讐
 
 
 ディケイル・ウェイニーに代わり、ヴァーチャーのメインモニターに現れた人物を見て、リンは驚いた。
「――クロード・チャン!!」
「覚えていてくれたようですね、光栄です、リン部長」
 ……ガニメデ暴動に参加していたという噂は聞いたが、まさか、向こうからコンタクトを取って来るとは……!
「今から、あなたにご忠告を申し上げます」
 チャンは、全く感情を見せない顔で、リンを見返していた。
「――さっさと言え!だが、先に言っておく。交渉に応じる気はない!!」
「あなたはそうだとしても、周囲の艦、さらにはあなたの周囲の部下の方たちはどうでしょうか?」
 チャンは目を細くした。
「――何が言いたい?」
「あなたは、自身の地位確保のために、罪の無い人々を殺してきた。――自分の身内も」
 チャンの眼光に射抜かれたように、リンの心臓はドクンと音を立てた。
「あなたは、私と同じ部族の出身だ。――なのに、なぜ、我々を売った?」
 ……リンは、言葉を返せなかった。――こいつ、知っていたのか……!
「あなたは、中国政府に対する我々の部族の独立運動が、不利である事を知り、政府軍へ寝返り、我々の村を襲撃するように誘導した。そして、私の家族や、自分の親族までもを皆殺しにした。――自分の身を守るためだけに」
 チャンは能面のように無表情だが、その目だけは、煮えぎるような光を発していた。
「そうして、政府に取り入り、果ては、アース・コーポレーションに雇用されると、同じような方法で、手を血に染めて、今の地位を築いた。
 私は、全て知っている」
「……だ、だから何だと言うのだ?組織に所属している以上、その職務に従い、なおかつ、自らの昇進を狙う。これは当然の事ではないか。何が悪い?」
「私は何も、あなたが悪いとは言っていない。
 だが、裏切りを重ねる生き方しか知らない人間が、人の信用を得られると思うな。……あなたは、ミカエル・アイヒベルガーの捨て駒に過ぎない。あなたの崇拝するミカエル・アイヒベルガーすらも、あなたを信用していないという事だ。
 それでも、まだ『誇り』だの『忠誠』だのとほざくか?
 ――あなたに一片の良心でも残っているのなら、降伏しろ。そして、部下たちを助けてやれ。もう、あんたに勝ち目は無い」
「――それが、おまえの『忠告』なのか?ならば、返事など言う必要も無い。
 先程から言っているではないか。おまえらなんかに屈する事は、死んでも無い!」
「勘違いするな。私は、そんな忠告をしているのではない。
――ただ、『後ろに注意した方がいい』。そう言いたかっただけだ」
 
 リンは振り返った。
 ――その目に入ったのは、手に電気配線のコードや非常脱出用のハンマーを持った、数人の部下たちだった。
「部長!お許しください!」
「先月、子供が生まれたばかりなんです。ここで死ぬわけにはいかないんです!!」
 部下たちは、一斉にリンに飛び掛かった。――まずい!!
 だが、抵抗する間も無く、リンは取り押さえられた。腕を背中に回され、床に倒される。
 ―――バカな!?私が、こんな結末を迎えるはずがない!!
 
 ほとんど無意識だった。
 リンは身体を捩じり、足を振り上げた。軍用ブーツの先が、背後を押さえていた部下の股間に命中し、その部下はよろめいた。
 その身体を蹴り飛ばして、足を押さえようとしている男と一緒に床に転がす。それに気を取られた隙に、腕を押さえていた男の手から逃れ、その顔を殴り付けた。
 ……俺を甘く見るな。軍で鍛えている年数が違う。
 
 自由になった手で、リンは、ホルスターからハンドガンを抜いた。立ち上がり、目の前で鼻血を出している部下に向けて発砲する。部下は胸から血を噴き出し、崩れ落ちた。
 それを待つ事もせず、銃口は、次の標的へ向かっていた。その隣で、コードを持って目を見開いている男の眉間を、弾丸は迷い無く撃ち抜いた。その次は、先程床に転がしたふたりの心臓……。
 
 リンに向かってきた部下たちが、全員床に横たわった頃、艦橋の空気は、外の絶対零度の虚無空間より凍えきっていた。
 リンは言った。
「私に刃向かうやつは、こうなる。覚えておけ」
 
 
 
 ディケイルは、一部始終をモニター越しに見ていた。
 ――最悪を通り越した、悪夢の展開だ。
 ディケイルはチャンが映ったモニターに目をやった。チャンは、まるで精巧に作られた人形のように、全く感情を見せずにそこに立っていた。――だが、その目にだけは、例えようも無い暗い光が宿っている。
 ―――まさか!!
「チャン、おまえ……!」
 
 以前から、チャンがディケイルのやり方を生ぬるいと思っているだろう事は、把握していた。だからといって、自分のやり方を変えるつもりは無かったが、それはチャンにとっては不満の種になっていただろう。
 しかも、今回の相手は、チャンの仇敵だ。――自らの手で八つ裂きにしても気が済まないに違いない、そんなヤツだろう。
 なのに、ディケイルはひたすら降伏を勧めているだけで、手を出す気配は無い。
 だが、勝手な行動をすれば、こちらの軍規が乱れる事になる。それは決してしてはいけない事だと、これまでの経験上分かっている。
 ――そこで、チャンはリンの部下を使った。
 それまでに、ディケイル自身でリンの部下たちの感情を十分に揺さぶっていた。そこを煽れば、部下たちの造反を促せるかもしれない。
 ……そして、その通りになった。
 だが、リンの凶弾の前に、その作戦は失敗に終わった。
 
 ――いや。
 これこそが、チャンの目的か……!!
 
 リンは、部下たちの凶行によって、理性を失い、極端な行動に出る。
 ―――そして、リンとリンの部下たちを敵対させ、自滅させる……!!
 
 アース・コーポレーションを辞めた後、チャンはホームレスになった。ホームレスを殺すのが主な仕事である警備部のヤツらに、負の感情を抱いていてもおかしくは無い。
 リンの部下たちがいくら死のうが、チャンには関係の無い事、むしろ、歓迎されるべき事なのだ。
 
 これが、チャンなりの「復讐」なのだろうか?
 
 チャンは言った。
「宇宙艦隊各艦に告ぐ。――これで、おまえたちの上司の本性が分かっただろう。
 ……それでも、まだ命を懸ける気か?」
「チャン!やめろ!」
 だが、チャンはディケイルに冷たい目を向けただけで、言葉を続けた。
「『降伏』か『死』か。自らの意思で決める権利が、おまえたちにはある。言っておくが、私は、元帥のように容赦はしない。これ以上反抗しようものなら、即刻撃ち落とす」
 
 すると、隣のモニターの中で、リンが叫んだ。
「撃て!ドミニオンを撃て!これ以上しゃべらせるな!!」
 ――全員で自爆しようという気なのか!?完全に正気を失っている。
 だが、当然の事ながら、ドミニオンに最も近い位置に居る戦艦プリンシパリティも、動く気配を見せなかった。
「撃てと言っているだろう!なぜ動かない!!」
 リンは逆上したように叫び、ハンドガンを持ったまま、通信士からマイクを取り上げた。
「アンゲロイ!聞こえるか?――ドミニオンに突っ込め。そして、奪取しろ!!」
「――し、しかし、トンネルの中は後続の艦で埋まっていて、身動きが取れません!」
 通信を通して、声が聞こえた。
 リンは、こちらとの通信を切るのを忘れているようだ。ヴァーチャーの中で何が行われているかが、ドミニオンの艦橋から一目瞭然に見て取れた。
「……俺に逆らうのだな。いい度胸をしている。――砲手、アンゲロイを撃て!」
「…………!!」
 モニターの右端に居る人物が、ギョッとした目でリンを振り向き、硬直した。
「撃たないのか?おまえも俺に盾突くのだな!」
 リンはそう言うと、砲手に近付き、そのこめかみに向かって発砲した。ガクリと座席に身を預けた砲手を押しのけ、リンはレバーを操作した。
 
 メインモニターの中で光線が走った。
 トンネルの奥の方で、大きな光が炸裂した。続いて、衝撃波がドミニオンの艦体を揺らした。
 その光が消えると、アンゲロイがあった場所には、その残骸が漂うだけになっていた。
「――――!!」
 ディケイルは立ち上がった。――こんな姿勢をすると足の傷が痛むが、今はそんな事など全く気にならなかった。
 
 「――全砲台発射準備。ヴァーチャーを撃ち落とす」


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