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 「――終わったみたいだよ?スージー」
 小型高速艇の窓から外を覗いていたカムイ・ミウラが操縦席を振り返った。
「今度こそ、ちゃんと撮れてるんだろうな?前みたいな事があったら承知しねぇぞ!」
 スージー・クーリンは、短いパンツのおかげで露わになった長い脚で座席を蹴り、窓の方へ向かってジャンプした。無重力が、スージーの身体をゆっくりとカムイの前に導く。
「それはもう言わないでよ、頼むからさぁ」
 カムイがスージーに手を合わせて見せた。そんな動作には気も留めず、スージーは窓枠に固定されたカメラを取り上げ、そのモニターを確認しだした。
 ――カムイ・ミウラ。こいつは信用ならない。……人間的に、という意味では無く、能力的に。
 
 一応、「報道カメラマン」という肩書きは持っているが、ロクな写真を撮って来た試しが無い。スージーはフリーライターをしているから、しばしば、カムイと組んで取材をする事があるのだが、最近、こいつと組んだ仕事の時だって、「オカマ」が「オカマ」にしか見えない写真を撮って来た。――ハイドロ・テラーの件だ。
 「ガニメデ軍がテロリストを飼っている」という噂を聞き付け、ウェイニーとかいう元帥の周辺を張っていた時。怪しいオカマと一緒に居る写真を撮ったところまでは良かった。が、その後で「ハイドロ・テラーはふたり居る」という情報が入り、その写真を「女」ってコトにして週刊誌に記事を持ちこんだ。しかし後日、それが掲載された雑誌が発売された直後、その情報がガセだって事が分かり、特に写真がヒドい、こんな写真でよく記事を書いたなと罵られた上、契約解除された。損害賠償請求されなかったのが、まだ救いだと思えるような状況だった。
 ――ッたく、オレが今こんなに生活が必死なのは、全部コイツのせいだ。
 ……冷静に考えれば、胡散臭い情報を信じ、それを強引に記事にした自分のせいだって事は分かっている。だが、分かっているだけに、余計この男のヘラヘラとした態度に腹が立つ。
 
 汚いモノでも見るような目を向けると、カムイはそんなスージーの心中など察する様子も無く、ジロジロとスラリと伸びた脚を眺めている。
「――どうせ、もっと女らしい態度と胸があればいいのに、とか、イヤラシイ事を考えてるんだろ。このドスケベ!!」
 スージーは、ピンヒールのブーツの踵で、容赦無くカムイの股間を蹴り上げた。意味も分からず、スージーのフラストレーションの捌け口にされたカムイは、目を白黒させながら、股間を押さえて船内を飛ばされて行った。
 
 スージーはカメラのモニターに目を戻した。
 ――やはり、この「アス会戦」には、何かがあった。小惑星帯に隠れて、一部始終を見ていたのだが、ドミニオンが地球の艦隊をトンネルの中へ追い込むまでは良かった。――だが、同じ地球艦同士である「ヴァーチャー」が「アンゲロイ」を撃ち落としたり、「ヴァーチャー」と「プリンシパリティ」が撃ち合って、ドミニオンが「プリンシパリティ」の援護をしたり……。
 ――恐らく、地球軍内で、造反か何かがあった。どちらが裏切ったかは分からないが、恐らく、地球では報道されない内容だろう。
 ………これは、スクープかもしれない。
 
 「火星に帰るぞ。『マーズ新聞』に売り込む」
「マ、マジで!?『マーズ新聞』っていったら、一流新聞社じゃないか?」
 行くところまで飛ばされたカムイは、壁を蹴ってターンして戻って来た。
「いつも三流ゴシップ誌ばっかりやってると思うな?オレだって、やる時にはやるんだよ」
「じゃ、じゃあ、僕の写真も『マーズ新聞』に載るってコト……!?」
「採用されれば、な。――とりあえず、先にメールで送っとけ」
 スージーはカムイにカメラをポンと投げた。カメラをキャッチし、慌ててパソコンに向かうカムイを見送る事も無く、スージーは操縦席へ向かった。メインエンジンを起動させるまでの時間が、もどかしいくらいだ。
 
 ――これからは、フリーライターなんていうセコい仕事は辞めて、戦場ジャーナリストとしてやっていってやる。その方が、旨い飯が食える予感がする。
 金さえ手にできれば、オレの人生も変わるハズなのだから……。
 
 
 
 スカルは、テレビを見ながら酒を飲んでいた。その目には、涙が溢れている。
 ――今、放映されている映画が泣けるのだ。……犬とお爺さんとの交流を描いたものだが、そのお爺さんが外出先で死んでしまい、それでもひたすら主人を待ち続ける犬の姿が、いじらしくて……。
 その横で、突然叫び声が上がった。チラリと目を向けると、賭け麻雀でもしていたのだろう、船員のひとりが腕を上げてガッツポーズをしていた。その隣では、這いつくばり、床を叩いて嘆く男。
 
 ……どっちでもいいが、俺の映画鑑賞の邪魔をするとはいい度胸だ。
 
 スカルは慌てて涙を拭い、ソファーの上に立ち上がった。そして、ガッツポーズをする男の頬にジャンピングキックをお見舞いする。男は壁際までスッ飛ばされ、目を回して床に転がった。
「テメェら!うるせぇぞ!!今、俺が何をしてるのか分かってんのか!?」
 すると、ワイワイとまくし立てていたギャラリーの連中も、水を打ったように静まり返った。
「――し、仕事中だってコトは分かってます!キャプテン!!」
「し、しかし、あまりにヒマだったモンで……」
「キャプテンだって、テレビ見てたじゃないですか?」
 最後に発言したヤツの顔面に、靴底の模様をスタンプしてから、スカルは言った。
「ヒマだヒマだ言うな!俺だって、好きで引き受けた仕事じゃねぇ!!」
 シュンとなった船員たちを残し、スカルはテレビの前のソファーに戻った。――畜生!犬と駅員との交流っていう、泣ける場面が終わってるじゃねーか!!
 スカルはさらに不機嫌になった。
 
 そもそも、こんな行為に何の意味があるのか、スカルにはさっぱり分からない。
 フォンシェ・アレハンドロからの依頼の内容は、「火星船籍の貨物船を装って、ユナイテッド・トンネル内で指示があるまで待機せよ」。
 ……で、こうして3日間も、ずっと何もせずに停泊している。
 ――金が欲しい時期だったから引き受けたが、いくらフォンシェの依頼でも、もう二度と、こんなつまらない仕事は引き受けるモンか。スカルは心に誓った。
 俺のヘル・ビートルが、暴れたくてウズウズと嘆いてるぜ。
 
 ヘル・ビートル。――この船の名前だ。
 今は武器類を収納し、一般の船に見せ掛けているが、本来は海賊船だ。いざとなれば、数十門の砲台にミサイル発射台、相手の船の動きを押さえるためのロボットアームなんてのも付いていて、サイズこそは小さいが、そこらの軍用船には負けない程度の働きをする。
 ――だが、その最も大きな特徴は、名前の通り、カブトムシみたいに突き出た鋭いツノだ。船首部分に細長いドリル状の突起があって、それで相手艦の横っ腹に穴を穿つ。そこから強制乗艦するのだ。
 ヘル・ビートルは、一般の貨物船なんてつまらないモノは襲わない。――相手は、軍用艦艇のみ。
 「武器」というのは、非常に商用的価値の高い商品なのだ。……いいお客サンも居るもので、それで商売をしていた。
 ……が、アース・コーポレーションが目を光らせ始めてからは、商売がうまくいかなくなった。仕方ないので、フォンシェの飼い犬となってはみたものの……。
 
 スカルはあくびをした。
 ――つまらない。とにかく、つまらない。
 見ていた映画は、緊急ニュースに押されて終わってしまった。ラストの、犬が死ぬ場面に備えて、タオルを用意して泣く準備をしていたのに!
 スカルは、グラスにウイスキーを注ぎ、近くに転がっているチュッパチャップスでそれをかき混ぜ、飴を口に放り込んだ。
 ―――やっぱり、脳には糖分が必要なようだ。
 スカルはテレビニュースの内容に、ようやく気付いた。
 アナウンサーは、「アス会戦」に於いて、ガニメデ軍が圧倒的勝利を収めたと伝えていた。
「…………」
 なるほど。この仕事の真の意味が分かった。とすると……。
 
 「――おい!引き揚げるぞ!もう用事はねぇ」
 唐突に命令を受け、船員たちはポカンとスカルの顔を見た。
「何やってんだ!帰るって言ってンだ!さっさと用意しねぇか!!」
「ら、ラジャ!!」
 船員たちは、バネ仕掛けの人形のような動きで立ち上がって、それぞれの受け持ち場所へと散って行った。
 ――用事が済んだら、さっさと消えないと、アイツに見つかりかねない。
 ……ディケイル・ウェイニー。あいつとだけは顔を合わせたくない。
 
 「――キャプテン!帰るって、火星にですか?」
 操舵桿を握った男が、スカルを振り向いた。
「『ヘヴン』に決まってンだろ!バカ!!」
 頭に舐めかけの飴を投げつけられ、その男は一瞬イヤな顔をした。
 だが、そんな事には気も留めず、スカルはソファーに身を沈めて腕を組んだ。
 
 ――フォンシェが言ってた、「もっと面白い仕事」というのは、そういう意味か……。
 確かに面白そうだ。――だが、それ以上に「面倒」なのは避けたいところだが。
 
 ヘル・ビートルのメインエンジンはすぐに唸りを上げた。そして、後部から激しく火を噴くと、一瞬で小惑星帯の中へと消えて行った。


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