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39.  英雄の凱旋
 
 
 テレビで「アス会戦」がガニメデ軍の勝利で終わった臨時ニュースが流れた時、火星は夕方近い時間だった。
 それを見て、ソウは思わず、ソファーから立ち上がった。
「よっしゃあーっ!!」
 ……不謹慎な事だとは分かってはいるが、まるでサッカーのワールドカップで自分の国が勝利した時のような、そんな気分だった。
 ――そんな例えで考えてしまうくらい、「日本人」という人種にとって、戦争というものが縁遠い事柄であった証拠でもあるのだが。
 
 自分の部屋で出勤支度をしていたジュリアーナが、ソウの声に驚いて「どうしたの?」と顔を出した。
「勝った!!勝った!!」
 ガッツポーズを繰り返すソウを見て、ジュリアーナも声を上げた。
「おめでとう!良かったわね!」
 そして、両手を広げてソウに駆け寄ってきた。それを無意識に受け止めた後、ソウの脳内は沸騰した。――こ、こんな薄着の美女と、俺は図らずもハグをしている。や、ヤバい。あらゆる意味でヤバい……!!
 
 しかし、ジュリアーナはそんなソウの様子を気にする事もなく、軽く頬にキスを残して、自分の部屋へと戻って行った。――ソウは、しばらくそのまま呆然と立ち尽くした。
 ……も、もし、この部屋に監視カメラがあって、その映像をフォンシェが見たら、俺は間違いなく「抹殺」される……!!
 そんな思いが脳裏を過り、血が昇り切った頭は一気に冷却された。
 
 ジュリアーナが「出勤」した後、ソウはソファーで考え込んだ。
 ――ガニメデ軍が地球の宇宙艦隊を撃退した。これはいい。
 ……この先、どうなるだろうか?
 地球がこれで諦めてくれるとは思えない。――必ず、また何か仕掛けて来る。
 それが、軍事行動であれば、分かりやすいから、逆に好ましい。……しかし、前のハイドロ・テラーの件のような事をされると厄介だ。
 だが、軍事遠征が失敗した以上、またすぐに艦隊を動かしてくるとは考えにくい。つまり、何か陰謀的な事を企んで来る可能性が高い。
 ――もし、そうなった場合、果たして今度は持ちこたえられるだろうか?
 
 ……いや、そんな事より、俺はガニメデに戻れるのか?
 ブライアン・マルコーが「第2コロニー駅爆破事件」の真相をテレビで語った事は、マタルからの電話で知った。さすがに火星では、地球の監視の手前、その放送は流されなかった。それにより、市民の非難の目は、軍から地球へと向かったようだ。
 そして、今回の戦勝だ。これで、軍の存在が認められればいいが……。
 しかし、一度「辞める」と言ってしまった以上、ソウの軍への復帰は、キャサリン女史が許さないだろう。……ソウは、勢いでしてしまった事に対して、少なからず後悔していた。あの時は、あれが最善策だと思ったのだが、今となれば、もっと他に方法があったような気もする。
 
 ソウはソファーに身を投げた。
 ――どっちにしろ、迎えに来てくれない事には、帰るに帰れない。勝手に帰って居場所が無いでは、あまりにも虚しいではないか。
 ……ディケイルのヤツ、大丈夫だろうか?怪我が完全に治り切っていないのに、無理矢理出て行ったのだろう。また倒れたりしていなければいいが……。
 
 
 
 だが、ソウの予想通り、ディケイルは寝込んでいた。
 せっかくレイが持ってきてくれた薬を、素直に飲めばいいのは分かっているのだが、「薬を飲む」という行為が、どうにもディケイルには受け入れられないのだ。
 投げ付けられた薬袋を、ジョルジュがかき集めて持ってきてくれたが、手を付けられないまま、ベッドの脇のテーブルに置かれている。
 脚の痛みは、それでもかなり治まった。しかし、熱がなかなか下がらず、そこからくる体調の悪さで、ここ1週間、ほとんど艦長室のベッドで過ごしている。かといって、休めているわけでも無い。――俺の作戦の何が間違っていたのか?ずっとそんな事が頭の中を巡っていた。
 
 計画としては、こうだった。
 アス・トンネルの出口を、ガニメデから切り出して運んだ氷で塞ぎ、ドミニオンを入口側に待機させる。――この時点で、すでにかなりのギャンブルだった。前方から敵が来れば、逃げ場が無い。まさに「背水の陣」。本気で押されたら負けていた。
 だが、相手に攻撃させないよう、「核」という盾をかざした。ここで簡単に撤退してくれるとも思ってはいなかったが、さすがに、地球側が玉砕覚悟で突っ込んでくる事もなかった。攻める側にとって、そんな事をしても全く意味が無いからだ。――案の定、地球側は後退した。
 それから、ドミニオンを前に出し、トンネルの入り口を開ける。冷静な判断のできる指揮官なら、ドミニオンに固執せずにトンネルへ向かうだろう。その読みも当たった。ヴァーチャーはじめ、宇宙艦隊の艦は迅速に隊列を組み、トンネルへと向かった。
 そして、ドミニオンが入口を塞ぎ、罠は完成する。
 それでも、宇宙艦隊が全艦を挙げて攻めてきたら、うまくはいかなかっただろう。前進したドミニオンに対処する部隊と、トンネルに進む部隊、二手に分かれるような事があったら、完全にこちらの敗北だった。――そうならなかったのは、テオドアの嫉妬心様々だ。
 
 ――ここまでは計画通りだった。
 
 ディケイルは、ここで説得すれば、折れてくれるだろうと思っていた。その説得力を増すために、チャンが氷を運んで来た貨物船や、エドの乗った「ロボット」を、小惑星帯のトンネルの周囲に配置した。熱源反応を見れば、囲まれていると判断して、ドミニオンに攻撃を仕掛けても、周囲の援軍に狙われる、と思わせる作戦だった。
 
 「巨大戦闘ロボット」プロジェクトの進行状況は、未だ実戦に使えそうな段階には至っていなかった。だが、試作機が3機と、専用のミサイルランチャーは完成していた。――迷ったが、念のため、それも使う事にした。
 試作機は、起動方法にクセがあるため、実際は2機しか動かす事ができなかった。それを、エドと、エドの元で操縦の練習をしているエトウ・パルネラに預け、小惑星の陰に潜ませ、トンネル内の敵を狙うように指示した。これならば、ロボットの機動性が未完成でも使える。
 
 しかし、貨物船とロボット2機だけでは心許ない。多数の敵に取り囲まれていると相手に思わせるために、ゴリアテやダンプカーのエンジンだけを小惑星帯のあちこちに置き、敵がトンネル内に閉じ込められたタイミングに合わせ、リモートコントロールで一斉起動するよう、チャンに指示してあった。――それは完璧にやってくれた。
 
 勿論、それらの作戦は、万一、地球側が窮地に追いやられても説得に応じなかった場合の対処法でもあった。ドミニオンとエドたちのミサイルランチャーで挟み撃ちにできる。
 敵に抵抗の意思があるのならば、トンネル内を全て焼き尽くす。それはそれで計画のうちだった。
 
 ――だが、ディケイルには、「投降の意思のある者を殺す」決断ができなかった。
 
 チャンが取った作戦は、間違ってはいないと思う。敵同士に戦わせ、自滅を待つのは、こちらにとってはむしろ最良の手段だ。
 ――しかし、その一方が、こちらに救援を求めるならば、それを黙殺する事は出来ない。助けられる命があるのならば、少しでも多くそれを守りたい。そう思っている。
 
 ……それが、俺の「甘さ」なのか……。
 
 ――いや、そうでは無い。
 そもそも、全ての状況を予測し得なかった、この作戦自体に問題があるのだ。
 どんな状況にも対応し得る、そして、被害を出さない完璧な計画さえ立てていれば、ヴァーチャーを撃つ事も無かったし、アンゲロイを犠牲にする事も無かった。そもそも、戦闘自体を回避できたかもしれない。血を流す事など無かった……。
 
 つまりは、俺の未熟さ故の犠牲……。
 
 ディケイルは、ある意味では、ミカエル・アイヒベルガーを尊敬していた。
 ――あいつは、全く血を流す事無く、世界を手の内に収めた。
 今になって、ホームレス狩りをしたり、反乱分子を武力で鎮圧しようなどとしているが、それは、今の体制を維持するためのものであって、創り上げる段階では、本当に頭脳だけを武器として戦っていた。
 目の前の戦闘さえも、満足にコントロールできない俺とは大違いだ。
 
 それから、時として、フォンシェならこんな時、どういう対応をするか、と、考える事もある。
 ――いや、あいつでも、俺みたいな血生臭い作戦は絶対に立てないだろう。
 交渉と取引で、争いを回避する。そういうヤツだ。
 
 そもそも、「独立戦争」なんていう事を始めた時点で、俺は、あいつらには勝てないのかもしれない。
 勝てないと分かっている戦を仕掛ける。――こんな事をするのは、「馬鹿」以外の何者でも無い。
 
 ――後悔したところで、もうどうしようもない事は分かっているが、考えれば必ず、この結論に行き着く。
 絶望的な気分で、ディケイルは窓の外に目を向けた。数え切れない星が帯となって、ゆっくりと動いている。
 
 ドミニオンは、未だ宇宙空間を漂っていた。被弾したプリンシパリティを牽引しているので、ワープ航行ができないのだ。しかも、アス・トンネルは氷で埋めてしまった。そこを通れないから、小惑星帯をぐるっと迂回して、ユナイテッド・トンネルまで回らなければならない。通常航行でまともに行けば、数か月コースの道程だ。
 とてもじゃないが、それは敵わないので、火星に連絡を取り、一旦プリンシパリティを上陸させ、修理を頼もうとした。――しかし、通信に出たフォンシェが、シレッと断ってきた。
「我々、マーズ開発は、地球とガニメデにおける紛争には、中立の立場を取ると宣言している。従って、軍用船舶の上陸は、許可できない」
 ……この野郎……!!
「しかし、プリンシパリティ及び装甲艦には怪我人が大勢いて、医療物資が不足している。彼らへの『人道的支援』も断るというのか?」
 すると、フォンシェは渋い顔をした。
「ああ言えばこう言う。そうやって、我々に捕虜を押し付ける気か?ただでさえ、トンネルをひとつ埋められて、こちらとしては非常に迷惑をしている。損害賠償請求をしたいところだ」
 ディケイルは頭を掻いた。
「そういうワケじゃない。ガニメデに来たいヤツは受け入れる。トンネルの件は……、まぁ、何と言うか、流れだ。――何でもいいから、とりあえず、補給させてくれ」
「わがままなヤツだ……」
 仕方ないといった顔で、フォンシェは言った。
「衛星・フォボスに、通信用のアンテナ基地がある。現在は無人だが、少し前までは有人だったから、ある程度は生活できる設備もある。戦艦を何隻も上陸させる事は難しいが、繋留塔があるはずだから、それを使えばいいだろう。
 到着次第、そこに、医療要員と支援物資を運ぶ。――これで文句はあるか?」
「――無い。……強いて言えば、支援物資に『鋼の操縦士』のヒロインのフィギュアをひとつ追加してほしい」
「…………」
「それから、医療要員をひとり指名したい」
「誰だ?」
「ソウ・ナカムラだ」


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