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オリジナル小説のダストボックス

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 4月6日。
 ソウは、火星の衛星・フォボスの通信基地に到着した。
 ここは、月と同じく、大気の全く存在しない空間で、重力も微々たるものだ。「建物以外の場所でジャンプしないでください」と、冗談半分に小型輸送船の乗組員に言われたが、確かに、ここで思い切りジャンプをすれば、重力圏を離脱して遥か宇宙の彼方へ旅立てそうな、そんな気がする。
 通信基地には、設備維持のために、定期的に点検に訪れる職員が使う宿舎と、巨大な塔がふたつ建っている。
 ひとつは、無数のアンテナが取り付けられた、電波通信塔。もうひとつは、上陸できない船舶を繋留するための塔。いずれも、高さ数kmというシロモノだ。一体、どうやって建てたのだろうか……?
 ――今、その繋留塔に、ドミニオンを停泊させる作業が行われていた。見上げると、その巨大な腹部に、大きな裂損が見えた。……戦闘の傷跡だろう。
 だが、ドミニオンの次にやって来た、ひとまわり小さな戦艦の方が、見た目にもひどい有り様だった。艦体じゅうが凹み穴を穿たれ、ここまで持ち堪えたのが不思議なくらいだ。
 
 繋留塔のエレベーターから人が降りて来た。見覚えのある、ラボ専用の赤い防護服。――ジョルジュだ。
「ナカムラ参謀長!お迎えに上がりました!」
 何やらひどく機嫌が良さそうな様子で、ジョルジュはこちらに手を振った。
「クレアさんと一緒に来てくれるって聞いて、楽しみに待っていました!」
 ――クレアさん?誰だそれ。……確かに、医療関係らしい人たちと一緒には来たが、ついさっき会ったばかりで、名前も知らない。
 しかし、ジョルジュの目線がソウの持つカバンに固定されているのを見て、悟った。――確か、『鋼の操縦士』のヒロインの名前は、クレアだった。フォンシェがいろいろ送って来たと思えば、こういう事か……。
 
 エレベーターを昇り、ドミニオンの艦内に入ると、食堂に向かった。コーヒーを前に、この戦争の話を聞こうとしたのだ。が……
「――元帥、着せ替えフィギュアだって言ってたのに……。まぁ、でも、パイロットスーツバージョンは、着せ替え以上にレア度が高いので、いいです」
 ジョルジュは、ソウが渡したアニメのディスクセットとクレアさんに夢中で、それどころでは無い様子だ。
「……なぁ、そのパイロットスーツがコーヒー色に染まる前に、『アス会戦』の話をした方がいいと思うぜ?」
 半ば、こめかみの血管をピクピクさせながら言うと、ようやくジョルジュは話し出した。
 ――やたら擬音が多い説明だったが、ニュースや新聞では得られなかった情報が多かった。
 ……ディケイルによりアス・トンネルの中へ追い込まれた敵の指揮官・リンが、正気を失って味方を砲撃。その後、プリンシパリティとドミニオンが協力して、敵の旗艦・ヴァーチャーを撃ち落とした……。
 確かに、地球側としては、決して流したくない情報だろう。火星でも、そのような内容の報道は一切されていなかった。
「……で、ドミニオンもズバーンと砲撃を受けちゃったんで、ズワーッと修理をしてワープできるようになるまで、3日間、ジーッとここで待機だそうです」
「――プリンシパリティとか、他の艦の乗組員の人はどうするの?」
「元帥の話では、とりあえずここで修理をして、後は地球に帰るなりガニメデについて来るなり、好きにしていい、ってコトになってるみたいです」
「…………」
 あいつ、ガニメデ・コロニーの定員を考えているのだろうか?これだけの艦の乗員が全員ガニメデに来たら、明らかにパンクするぞ?
 
 その確認をするため、ソウは艦長室へ向かった。
 ――ノックをしても返事は無い。勝手に入って寝室を覗くと、案の定、ベッドで寝ていた。……今はそっとしておこうか。そう思って静かにドアを閉めようとすると、
「休暇はどうだった?」
と声を掛けられた。――眠ってはいないようだ。
「十分に満喫してきた。……それより、おまえ、大丈夫か?」
「あぁ。最高に悪い」
 ……意味が分からない。
「医者を呼んで来ようか?今、プリンシパリティに何人か行っているが」
「いや、いい」
 ――サイドテーブルの薬袋が目に入った。どうせ飲んでいないのだろう。
「じゃあ、せめて薬を飲め。こんな時に、いつまでも寝込んで居られては、みんなも困るだろう」
「イヤだ」
 ――ソウは腹が立ってきた。体調が悪いと言っておきながら、良くする手段があるにも関わらず、敢えてそれをしない。こんなワガママがあるだろうか?
「水を持ってくる。薬を飲め。それがイヤだと言うのなら、火星の病院に入院させる。3日もあれば良くなるだろう」
「イヤだと言ってるんだ。俺の事にいちいち口出しするな!」
 ディケイルが怒鳴り返してきたので、ソウは面食らった。……こう見えて、滅多な事では本気で怒ったりしないヤツだと思っていたのだが、――言い過ぎただろうか?
 ……気まずくなってしまったので、ソウが謝ろうかと考えていると、ディケイルが顔を向こうに向けたまま言った。
「――すまない。言い過ぎた」
 ソウには何となく分かった。……何かあったのだ。
 聞いたところで素直に答えるとも思えないので、自分から言い出すまで待とうと、ソウは隣のベッドに座った。
 
 「――チャンに、怒られた」
 しばらくして、ディケイルがポツリと言った。
「ツメが甘い、だとさ。――確かに、今まで、俺が計画した通りになった事が無い。いつも、犠牲が出る」
 布団を被っているので表情は見えないが、布団の中でどんな顔をしているのか、何となく想像できた。
「犠牲を出すような計画しか立てられないのが、一番悪いんだ。――俺みたいな脳ナシが司令官だって?図々しいにも程がある」
 ……ディケイルは真剣に思い悩んでいるようだが、ソウには正直、嫌味にしか聞こえない。――戦艦1隻キリで、圧倒的多数の艦隊を撃ち破るような離れワザ、他に誰ができるというのだ?
 しかし、そんな事を言ったところで、今のディケイルには、救いにも何もならないだろう。……いつものネガティブ病だ。
 少し考えてから、ソウは言った。
「けれど、こちらの艦には、怪我人ひとり出て無いじゃないか。敵に犠牲が出たところで、これは戦争だ。相手だって、それは分かっているはずだ」
 だが、ディケイルがそんな薄っぺらい慰めで納得するワケは無かった。
「敵を殺せば、殺された者の家族が、こちらに恨みを持つ。それはまた、こちらを攻める理由になる。そしてそれは、負の螺旋になって、誰にも止められないまでに広がっていく。――敵だろうと誰だろうと、犠牲を出してはいけないんだ。いけなかったんだ……」
 ソウは黙って聞く事にした。胸の内を言葉にして吐き出せば、少しはスッキリするだろう。
「この独立戦争を泥沼に誘い込む、決定的な事を、俺はしてしまったのかもしれない。
 ――攻めて来たら追い返す。これを繰り返していれば、そのうち諦めてくれるだろう、その程度に思っていた。
 しかし、感情的に相手を『敵』にしてしまったら、そんな都合主義な考えは通用しない。
 今後、地球が恒久的にガニメデを攻める事ができる『理由』を、与えてしまった」
 ……ソウの期待とは裏腹に、ディケイルの言葉は、負の迷宮へとどんどん足を踏み入れて行く。
「なぁ、ソウ。俺を地球に差し出して、もうやめようと交渉してくれないか?それが一番いい方法だという気がしてきた。これ以上戦っても、犠牲が増えるばかりで、何も生まれない。――それで終わらせよう」
 
 「――おまえ、分かったような事を言ってるけど、何も分かってないな」
 ソウが言うと、ディケイルは布団から目だけを覗かせた。
「再びアース・コーポレーションの飼い犬になるくらいなら、野良犬のまま誰にも懐かず、手を出してくるヤツには噛み付いてやろう、そう考えてるヤツが、ガニメデにどのくらい居ると思う?」
「…………」
「おまえは、そんな野良犬のボスなんだよ。バラバラで動いていては力が発揮できないから、それをまとめている。――そのボスがいなくなったら、野良犬たちは好き勝手に噛み付きだして、優秀に訓練された飼い犬たちにヤラれてしまう。――それが分からないか?」
「だから、野良犬を飼ってもらえるように、飼い主に……」
「断る」
 ソウはキョトンとしたグレーの目を見下ろした。
「俺は、野良犬の生活が気に入ってる。飼われる気は無い。
 ――おまえ、前言ってたよな。……信用ならないヤツの言う事を聞いて、訳の分からない死に方をするくらいなら、野たれ死んだ方がマシだ、と。自分の死に方くらい、自分で決める。――これこそ、俺の事にいちいち口出しをしないでくれ」
 ディケイルは、再び布団を被った。
「――あんた、もう少しマシなヤツだと思ってたが、俺と同じくらい『バカ』だな」
「『類は友を呼ぶ』――日本の諺だ。意味は分かるか?」
「…………」
 
 ソウは部屋を出た。
 ――何だか、目的の話をしていなかった気がするが……、まぁ、何とかなるだろう。
 とりあえず、どうしようか……、と、廊下を歩いていると、慌てて走って来る人影が見えた。「走る」といっても、こんな低重力の中では、まともに走る事などできない。壁に取り付けられた「動く手すり」を持って移動しているのだ。ドミニオンの乗員のようだが……。
 ソウを見ると、その人物はこちらに寄って来た。
「参謀長!大変です!!」
 ……正式には「元参謀長」だが、その言葉の雰囲気から、そんな訂正をしている場合では無い事を察した。
「プ、プリンシパリティの艦長が、………自殺しています!」
 
 ディケイルがあの状態で、しかも、ドミニオンには指揮官となるべき人員はディケイルしか居ない。――仕方なく、ソウがプリンシバリティに向かった。
 すると、チャンが居た。先にガニメデに帰還したが、ディケイルからの連絡で、補給物資と修理の人員を運んで来ていたらしい。
「到着後、プリンシパリティに抵抗の意思が無いか、部下たちと艦内を確認して回っていた」
 しかし、肝心のメイリン艦長が姿を現さない。そこで、艦長室に入ってみると……
「――この有り様だ」
 ソウは、できるだけ見ないようにと思っていたが、「見るも無残な」という状況では無かったので、大丈夫なようだった。
 メイリン艦長は、ベッドの上で布団を被り、ハンドガンで心臓を撃ち抜いて死んでいた。銃口と胸の間に枕を押し当て、音を立てないように気を遣った跡も伺えた。部下たちに動揺を与えないためと推測される。
「………な、なんで自殺なんかを……?」
 投降して捕虜となったではないか。ここで自殺をする理由などあるのか?
「考えられるのは、『プライド』か『責任』か、どちらかだろう。
 あの戦争での彼の行動を見ると、自分は後者だと思う」
 ――要するに、「降伏」をした責任を、地球側に示すため、という事だ。
 自分が死を以って責任を取る事によって、部下たちに、捕虜としてガニメデへ行くだけでなく、「地球へ戻る」という選択肢も与えることができる。……地球側としては、上司が責任ある形で区切りを付けたのだから、無条件に受け入れざるを得ない。
 そんな内容の事が、サイドテーブルに置かれた遺書にも書いてあった。
「―――艦長!!」
 入口付近で、プリンシパリティの乗組員と思われる、警備部の制服を来た男が声を上げた。その背後で、無言で泣き崩れる者。
「……相当慕われていたようですね」
「――俺も、当時の上司がリンでは無くこの人なら、今頃、こちら側で戦っていたかもしれない」
 チャンがボソリと言った。ソウには意味が分からなかったが、聞き返しても答えてくれるとも思えなかったので、そのまま聞き流しておいた。
 
 「……私は、元帥のやり方に、完全には賛同できない」
 部屋を出て、ドミニオンに戻る途中、チャンが言った。
「できるだけ人を殺したくない。それは誰だって同じだ。
 しかし、その甘い考えで味方を傷付ける事になるのなら、躊躇無く敵を殺すべきだと、私は思っている。
 それができないのなら、指揮官としては失格だ」
 チャンはそう言って、思わず足を止めたソウを残し、プリンシパリティを出て行った。
 
 ――ソウから見て、チャンは、他のホームレス出身の者たちとは、明らかに違うところがある。チャンがどんな経緯でガニメデに来たかは知らないが、何か、重い過去を背負っている、そんな感じがした。
 ……チャンとディケイル。
 目指すものは同じはずだ。だが、その「理想」は微妙に異なる。――これが、決定的な分裂にならなければいいが……。
 ――いや、そうならないように人と人とを繋ぐのが、俺の役割なのか……。戦略も考えられない、戦闘もできない、死体を見れば倒れる。こんなヤツが役に立てる場面といったら、それしか無い。
 役職がどうのというのは関係無く、それが、ソウのやるべき事のような気がした。
 しかし、これは想像以上の重責かもしれない……。

 プリンシパリティを出ると、急激に寒さが襲ってきた。一応、塔の内部だから外とは違うが、それでも、艦内に比べれば、空調やら何もかもが満足にされていない。無意識に首をすくめ、ポケットに手を突っ込む動作をしたが、そもそも防護服にはポケットなど無い。腰に手を当てただけだった。
 ――が、防護服の下に着ている服のポケットに入っている、何かの存在に気付いた。……ニーナから借りている、映画のメモリーカードのケースだ。火星に来る途中の宇宙船の中では、随分とお世話になった。小さなものなので無くすといけないと思い、ジュリアーナの部屋を引き揚げる時、ポケットに入れておいたのを思い出した。
 それで、何となく、ニーナが言っていた言葉が頭に浮かんだ。
 ――やれる事をやる。
 人間、結局は、それしか出来ない。ディケイルのようにあれこれ思い悩んだところで、ネガティブになるだけだ。ニーナのように、前向きにいこう。


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