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40.  初恋
 
 
 ディケイルは、そのまま病院へ直行した。
 ワトソン空港長は張り切っていたが、戦勝パレードは、何となく流れてしまった。出迎えの市民が大勢居たのだが、無事に帰って来た家族や恋人の姿を見ると、それで満足したようで、いつしか、空港ロビーはいつも通りの閑散とした空気に戻っていた。
 
 そんな中、ソウは腕組みをした。
 ――さぁ、どうすればいい?
 
 フォボスに停泊していた時に調査したところ、アス会戦に参加していた宇宙艦隊8隻の乗組員は、総勢2500人。そのうち、墜落したヴァーチャーとアンゲロイの乗員が計800名。地球へ帰還する意思を示した者が200名。
 ――つまり、ガニメデの人口は1500人増える。
 ワープ航行できない程までダメージを受けたプリンシパリティと装甲艦は、そのままフォボスで修理中だが、整備要員で無い者は、他の艦に分乗して既にガニメデに到着している。
 ……さて、どこに収容する?
 さすがに、今回は火星も仮設住宅を貸してくれたりはしなかった。一応、「亡命」という名目にはなっているが、事実上、「捕虜」なのだから、そんな軍事的な事に手は貸せないといったところだろう。
 ディケイルに聞いてはみたが、
「コロニーを増やすしかねぇだろ」
という無責任極まる返答しか帰って来なかった。
 ――でも、実際、そうでもしなければどうしようもないところまで来ている。
 ……しかし、とりあえずは、空港のシェルターと軍施設の仮設住宅で何とかするしかないな……。
 
 「――ナカムラ参謀長!」
 声がしたのでそちらに顔を向けると、ニーナだった。
「おかえりなさい。一緒に帰っていらしたんですね。今聞きました」
「ただいま。――何だか、ついでに連れて帰ってやる、って感じだったけど……」
「でも、良かった。皆さん無事なようで」
 ニーナがニコリとした。――その笑顔を見ると、こちらまで幸せな気分になってくる。
「そういえば、これ、返すよ」
 ソウは思い出して、ポケットからメモリーカードのケースを取り出した。
「時間潰しに、すごく助かったよ。ありがとう」
「それなら良かった。男の人って、どんな映画が好きなのか分からないから、私のコレクションの中から、適当に選んでみたんですけど」
「どれも面白かったよ。特に、あの、犬の映画とか……」
「あれ、泣けますよね~。この前、テレビでも放映してましたけど、何回見ても、もう、号泣です」
 ニーナはケースを受け取りながら、少し照れたような顔をした。
「あの、それと、マタルくんたちと相談してたんですけど、参謀長たちが帰ってきたら、マックさん家で集まって、祝勝会というか慰労会というか、やりませんか?」
「お!いいねぇ。俺も行く!」
 突然、通りすがりのエドが話に入って来た。
「僕も!噂には聞いてますけど、マリーさんの手料理、食べてみたいです!」
 ……ジョルジュも一緒に居る。
「賑やかなのは大歓迎じゃないかしら。じゃあ、今度の週末ってコトで。みんなにも連絡しておきますね!」
 
 ――という感じで、4月13日の夕方、マックの家に集まる事になった。
「よぉ、アニキ、お疲れさん。狭いけど、まぁ、ゆっくりしてってや」
 玄関に出て来たマックが、そう言ってソウを招き入れた。ギブスも取れて、普通に歩ける程度には、怪我も治ったようだ。
 マタルとレイは、一足先に来て、準備を手伝っていた。ニーナとカティも居る。
「あ、参謀長!そこのグラス、テーブルに並べてもらえませんか?」
 早速、マタルから指示が飛んで来た。
「マタル、目上の方に向かって、そんな事頼むモノじゃないわよ」
「だって、手が小麦粉で汚れてるんだもん」
「い、いや、マリーさん、そんな、目上なんて身分じゃないですから。気にしないでください」
「でもね、こういう分別はしっかり覚えておかないと、大人になった時に、痛い目見るわよ。――ねぇアンタ」
「おぉ。上司だけは殴っちゃいけねぇ。それは覚えとけ」
「はーい!」
 
 それから間もなく、エドとジョルジュもやって来た。
「本日は、ご招待にあずかり、誠にありがとうございます」
 エドが小洒落たジャケットを着込み、手に赤いバラの花束を持って部屋に入って来た。
「おいおい、どうしたんだ?小僧。洒落込みやがって」
 マックにとって、エドは「小僧」に当たるらしい。
「もうすぐ、サン・ジョルディの日ですからね。ワタクシ、エドワード・ボスロイは、ニーナ・パルネラさんに、愛の告白をいたします!!」
 突然、エドが皿を並べていたニーナの前にひざまずいた。
「どうか、この気持ちをお受け取りくださいっ!!」
「…………」
 ニーナは、明らかに引いたような顔を見せた。
「あのね、大勢の前で言えば成功率が上がるだろうとか、そういう作戦、見え見えなんですけど」
 ――どうやら、ニーナにアタックするのは、これが最初では無いらしい。
「アタシは、今は仕事が恋人なの。彼氏が欲しいとか、そういう気分じゃないから。
 ――あ、でも、このお花はせっかくだからもらっとくわ。お花に罪は無いものね」
 ニーナは花束を受け取り、花瓶を借りてそこに差し入れると、テーブルの中央に飾った。
「華やかになったわ。エドちゃん、ありがとう」
 ――結局、エドの「愛」は、マリーに感謝されただけだった。
 
 「……で、では、気を取り直して、僕から子供たちにプレゼントなのですぅ!」
 今度はジョルジュが、小さな包みを子供たちに配って回った。
「何なに?………何、コレ?」
 慌てて手を洗って受け取ったマタルが、包みを開けてポカンとした。
「『鋼の操縦士』のソフビ人形なのですぅ!
 今どきの子供たちにも、『鋼の操縦士』の素晴らしさを伝えたいのですぅ!」
 ………一同はポカンとするしか無かった。
 
 ――そんなこんなで、波乱に富んだスタートとなったが、マクレガー家のパーティーは、賑やかに進んでいった。
「最っ高に美味しいです!」
と、ジョルジュが食べるだけ食べると、隣の部屋に子供たちを呼んで、『鋼の操縦士』の鑑賞会をやりだした。初めは渋々といった感じで付き合っていたマタルたちだったが、やはり、アニメというのは子供の心を掴むものがあるのだろう。カティとレイチェルも、一緒になって見ている。
 
 一方、ソウたち「大人」組は、テーブルを囲んで軽くアルコールを飲みながら、世間話をする流れになった。
「――で、元帥は本当に大丈夫なのかい?」
 ビールジョッキを片手に、マックが聞いてきた。随分と顔が赤くなっている。
 ディケイルはまだ入院中で、今回のパーティーの話はしたのだが、参加はできなかった。――まぁ、来たところで、食べられるものはごくごく限られていそうだが。
 ソウはアップルパイをつまみながら答えた。
「あの調子なら大丈夫だろう。入院したついでに、体調が戻り次第、義足を付ける手術もするそうだ」
 フォボスに寄った時、フォンシェに頼んで義足も取り寄せていたらしい。――それが、ただの義足では無いような雰囲気の話もしていたが……。
「義足を付けるのって、相当痛ぇらしいぜ?何せ、義足と神経を繋ぐコネクタを、直接埋め込むんだからな。こりゃ、当分動けねぇな」
「詳しいな、マック」
「地球に居た頃のツレが、事故で脚を落として、義足になったんだよ。そいつの見舞いに行った時、大の男が泣き喚いてたぜ。痛み止めが切れると死にそうだとよ」
「…………」
 薬嫌いのディケイルが、そんなのに耐えられるだろうか……。
「泣きたいのは俺のほうッスよ。これでフラれるの5回目ですよ。もう、心が折れそう……」
 酔っ払ったエドが、テーブルを枕にして寝言のように呟いた。
「そんなの、あなたの勝手でしょ?アタシの責任みたいに言わないでよ」
 ニーナがツンとして、紅茶のカップに口を付けた。
 ――何となく、ニーナがエドの告白を受け付けない理由は分かる。「仕事」を盾前にはしているが、まだ、亡くなった婚約者への想いがあるのだろう。いろいろありすぎて、時間の感覚がマヒしているが、彼が死んでから、まだ3ヶ月余りしか経っていない。そればかりは、エドがどんなに努力をしても、取り除けるものでは無い。可哀そうな気はするが。
「にしてもよ、元帥がそんなんで、これからどうするんだよ?また、地球が攻めてきたりしたら……」
「当分は来ないんじゃないかって、あいつは言ってた。さすがに、戦艦を3隻も失って、もう1回行ってきますとなったら、地球の市民が黙ってないだろ。おまえらアホか?と言われる」
「まぁ、それもそうだな。じゃ、また地球が何か仕掛けて来るまでの間に、参謀長に頑張ってもらうとして……。――ところで、参謀長を辞めたって話も聞いたんだけど、嘘だよな?」
「………あぁ」
 
 ガニメデに戻った後、ルドルフ防衛大臣に呼び出された。――その時、ソウが提出した辞職願を返された。
「悪いね。他事でちょっと忙しくてね。手続きが遅くなってたんだ。――そうしたら、軍への風向きも変わってきただろ?まぁ、これは、返しておいてもいいかな、って雰囲気になってきたからね」
 ――人の良さそうな顔をしておきながら、なかなかに食えない人物であるようだ。ソウは辞職願を受け取った。……それは、念のため、今も自分のデスクの引き出しに入ってはいる。
 
 「ガニメデ要塞の建設に空港の再建、新コロニーも増やさなきゃいけないし、戦艦が増えたから軍の人員も増やさなきゃいけない。その募集に訓練に、そろそろ軍服も変えなきゃな。空港の制服を借り続けてるワケにもいかないだろうし……」
「――そんな金、どこにあるんだよ」
「………これが、どうにかなるモノなんだよ」
 
 ……というのも、ガニメデの通貨である「GM(ガニメデ・マネー)」が制定された直後、ディケイルが裏で手を回して印刷しておいたストックが大量にある。ガニメデの市場に流れている量は、安定させておかなければいけないが、対外的に使う分なら、いくら使っても問題は無い。それで、火星から大量に資材を輸入しているのだ。
 それに、元々、ガニメデ・コロニーは鉱山を中心に経済が動いている。「G-883」が採掘される限り、それを売っていけば、金には困らない。「G-883」は、火星でも地球でも、主要なエネルギー資源として利用されている。ガニメデから火星が買い、火星がまた地球に売るという流れが出来ているので、顧客は太陽系全世界に及ぶのだ。
 かつて、石油で繁栄を極めた地球の中東諸国のように、ガニメデ・コロニーでは、現在も、税金を徴収していない。将来はどうなるかは分からないが、政府のやり方によっては、アース・コーポレーションに属していた頃よりも、数段豊かな国にできると思う。
 そのためには、まず、何よりも「平和」というものが大前提だが……。
 
 「――さぁて、忙しくなりそうだな、また……」
 ……とにかく、また、地球が妙な事を仕掛けて来ない事を祈る、今はそれしか無い。
 
 
 
 地球、ジュネーヴ。
 ミカエル・アイヒベルガーに呼び出され、テオドア・カゼリは、アース・コーポレーション本社ビルの最上階へ向かった。
 エレベーターホールを過ぎ、正面に伸びた廊下の突き当たりの扉を開く。
「――テオドア・カゼリ様。CEOがお待ちです」
 金属の肌をした女性型アンドロイドのケリーが、そのまた奥の扉に案内した。
「――CEO閣下、お呼びでしょうか?」
 『閣下』というのは、リンの受け売りだ。ミカエルが気に入っている呼び方のようなので、使ってみたのだが……
 ミカエルは、冷たく刺すような視線をテオドアに向けた。
「おまえ、リンに何を言った?」
「――はい?お言葉の意味がよく……」
「私が知らないとでも思っているのか?」
 テオドアは動揺を隠し切れなかった。
「人の心は読めるが、自分の心はコントロールできないのか、おまえは」
 ミカエルは、大きなデスクを回り、テオドアの前に立った。そして、ヘーゼルの瞳が泳ぐのを隠していた銀ぶち眼鏡を取り上げた。
「私が、携帯端末の通信記録をチェックしていないとでも思ったのか?
 ――リンが負けたと聞いて、おかしいと思った。全艦の出撃許可を出しておいたにも関わらず、なぜ、8艦しか連れて行かなかったのかと。
 ……おまえは、私の立場を潰す気か?」
 口調こそは落ち着いているが、ミカエルは激憤する感情を、手にした眼鏡に向けた。床に落とし、それを踏み付ける。フレームが歪み、レンズは粉々に砕けた。
「……も、申し訳ございません!!」
 テオドアは床に膝をついた。絨毯に額を擦り付けるようにして頭を下げる。――極東の日本という地域では、このような方法が最上級の謝罪を示すと聞いた。これで通用してくれないか……?
「ま、まさか、リンがこのように不甲斐無い結果で終わるとは、思ってもいなかったのです。私は、彼の能力を高く評価していました。ですから、それを信じて……!!」
「言い訳はいい。態度で示せ。
 ――明日、アス会戦の生き残りが200人、地球に到着する。……『核』の存在を知られたのはまずい。分かっているな?」
「………つ、つまり……」
「本来なら、リンに任せるべき仕事だった。リンが居なくなった以上、おまえに、その責任は取ってもらう。
 ――爆薬を積んだ輸送艦を1隻与える。燃料は片道しか積んでいない。……以上だ」
 テオドアはミカエルを見上げた。――相当情けない顔になっているだろうが、そんな事に意識を回す余裕は無かった。
 ……つまり、帰還者が乗った船に突っ込み、自爆せよ、と……!
 絶望と動揺で、涙を浮かべながらミカエルを見上げるテオドアに向かって、彼は言った。
「消えろ」
 その言葉は、氷の槍となって、テオドアの心臓に突き刺さった。


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